報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「京王バスの旅」 3

2025-03-24 20:33:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月21日09時15分 天候:晴 栃木県那須郡那須町 東北自動車道下り線・那須高原サービスエリア]

 

 バスは特に大きな渋滞に巻き込まれることもなく、2回目の休憩地、那須高原サービスエリアに到着した。

〔「ご乗車お疲れさまでした。那須高原サービスエリアに到着です。こちらで、15分ほどの休憩を取らせて頂きます。発車は9時30分です。……」〕

 ここでもバスを降りてみることにした。

 

 ここはさすがにサービスエリアなだけあって、ガソリンスタンドも併設されている。
 羽生パーキングエリア同様、東北方面に向かう高速バスの休憩地の1つである。

 愛原「珍しいな。もう夏合宿始めてるらしいぞ?」
 リサ「ホントだねぇ……」

 大型駐車場には、貸切観光バスも止まっており、トイレに行くがてら、そのバスのフロントガラスを見てみると、どこかの学習塾の名前が書いてあった。
 もう夏合宿を始めている所があるようだ。
 リサ達は8月のお盆の時期であるが。
 スマホを見ると、善場係長から返信が来ていた。

 善場「了解致しました。気をつけて行ってらして下さい」

 とのこと。
 あとは、定時連絡を怠らなければ良いか。
 トイレは広く、リニューアルされていてきれいなものだった。
 学生の頃、夜行バスで旅行していた時は、もっと古い建物だったのだが。
 羽生パーキングエリアで買ったコーヒーの紙コップは、ここで捨てる。
 代わりに、ここで水を買っておいた。
 そしたら……。

 リサ「先生」

 リサのヤツ、また何か買って来たようだ。
 ホットドックを売っていたらしく、そこで大きなソーセージが挟まれたホットドックを買ったようだ。
 鬼の食欲は計り知れない。
 もっとも、これでも鬼の中では少食な方だという。
 いや、鬼というか、BOWか。

 愛原「また食べ物買って……」
 リサ「旅をしているとお腹が空くからね」

 これではそのうち、リサの小遣いが無くなるな。
 次の国見サービスエリアでも、何か買うつもりだろうか?

 リサ「ヘリコプター、まだ飛んでるね?」
 愛原「ああ。仙台に着くまで飛んでるんだろうかねぇ……」
 リサ「仙台に着陸できる所ってあるの?」
 愛原「いくつかある。軍用地が良かったら、仙台市東部に霞目飛行場がある。そこに着陸すればいいんじゃない?この飛行訓練はBSAA北米支部と極東支部日本地区本部との合同訓練みたいだから」
 リサ「それもそうか」

 恐らくは、バスが無事に仙台駅前に到着できた時点で訓練は終了なのだろう。

 愛原「そろそバスに戻ろう」
 リサ「うん。戻って早く食べたい」
 愛原「全く……」

[同日11時00分 天候:晴 福島県伊達郡国見町 東北自動車道下り線・国見サービスエリア]

 福島県に入ると、ちょっと道路事情は変化する。
 宇都宮から北は片側2車線になるのだが、福島県に入ると、所々で工事が行われていた。
 今日が平日だということを改めて思い出す。
 車線規制が行われ、左車線が塞がれていたり、かと思えば右車線が塞がれている場合もあった。
 この為、工事区間とその前から速度50km規制が敷かれ、必然的に速度が落ちる。
 東名高速なら渋滞ものだが、さすがにそこより車の少ない東北自動車道ではそこまではならない。
 到着したのは、11時頃。
 また、15分ほどの休憩だという。
 最後の休憩箇所だ。

 

 愛原「ここもリニューアルしたんだなぁ……」
 リサ「そうなの?」
 愛原「すっかり、高速道路も令和化されていくもんだ」
 リサ「昭和はどうだったんだろう?」
 愛原「子供の頃の思い出だと、夜は薄暗くて不気味だったな。夏場に行くと、自販機コーナーとか蜘蛛の巣だらけでさ……」
 リサ「蜘蛛?食べればいいんじゃん」
 愛原「食えるか!あと、トイレも薄暗くて汚かった。個室も和式しか無かったりして」
 リサ「ゲッ!ヤッダ!!……いい時代だねぇ……」
 愛原「いい時代だよ」

 ここではトイレと自販機コーナーで缶コーヒーを買って、その場で飲んだ。

 リサ「美味しそうなフードコートもあるのにねぇ……」
 愛原「高速バスでは、利用する機会は無いな」

 尚、青森県のバス会社、弘南バスが運行する“スカイ号”は昼行便でありながら、上野駅前~青森駅前を走り通す長距離路線である為、途中のサービスエリアで昼食休憩が設けられている。
 これは乗客だけでなく、乗務員の昼食休憩も含まれているのだろう。
 これくらいの長距離でないと、そういった休憩は無いようだ。
 もっとも、昼行であることが条件のようで、同じ区間、同じバス会社が運行する夜行便には、そういった食事休憩は無い。

 愛原「車で移動するような機会があれば、こういう店を利用してもいいだろう」
 リサ「いいね!」

 ここでは唐揚げ串を買って食べていたリサだった。

 愛原「それじゃ、バスに戻るか」

 空き缶などをゴミ箱に捨てた後、私達はバスに戻った。
 最後の休憩地を出た後、私は両親にLINEを送った。
 今から出発だと、ダイヤの11時55分には間に合わないだろう。
 仙台市内も車が多いから、そういうところで渋滞に巻き込まれたりすると、もっと遅れる恐れがある。
 その旨を送った。
 母親からは、『バスセンターの近くの駐車場に車を止めて待ってる』とのことだ。
 着くのが昼時だから、一緒に昼食を食べ、それから買い物に一緒に行く約束をしているのである。
 もちろん、他にも行く所はあるがな。
 いずれにせよ、車があった方が便利なので、実家の車を借りることにしたわけだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「京王バスの旅」 2

2025-03-24 11:06:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月21日06時40分 天候:晴 東京都渋谷区千駄ヶ谷 京王バス9551便車内]

 

〔「お待たせ致しました。6時40分発、仙台駅前行き、まもなく発車致します」〕

 バスは扉を閉め、定刻通りに発車した。
 前に止まっていたエアポートリムジンバスを交わして、出口への車路を進む。
 バスタ新宿というのは、要は立体駐車場のようなもの。
 だが、バスの立体駐車場というのもなかなか珍しい。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ お待たせ致しました。本日は、京王の高速バスをご利用くださいまして、誠にありがとうございます。このバスは、仙台駅前行きでございます。バスはこの先、首都高速道路、東北自動車道を経て、仙台駅まで参ります。道路事情により、到着が遅れる場合がございますので、予めご了承ください。途中、羽生パーキングエリア、那須高原サービスエリア、国見サービスエリアにおいて、休憩を予定しております。お手元の乗車券は、降車停留所で回収させて頂きます。……〕

 出口に向かっている間、反対車線には、上りの夜行バスが続々と到着しているのが見える。
 バスタ新宿の出入口は甲州街道に直結しているが、信号機が設けられ、それで出入りする仕組み。
 甲州街道は左折し、下り線に入る。
 この近くには首都高速の新宿出入口があり、まずはそこに向かうのだろう。
 下り線から反対車線を見ると、バスタ新宿に入る為、各地からやってきた夜行バスなどが列を成して、右折の矢印が点灯するのを待っていた。

〔「皆様、おはようございます。本日も京王の高速バスをご利用頂き、誠にありがとうございます。……」〕

 自動放送が終わると、今度は運転手がピンマイクを使って肉声放送を行う。

〔「……仙台までの所要時間は、5時間15分を予定しております。……」〕

 私はパンを食べ終わり、お茶を飲むと、フットレストを使用した。

 

 尚、上記写真のように、最前列にはフットレストが無いので注意。
 そこに座った作者は、大して気にしなかったようだが。
 私はスマホを取り出すと、善場係長にメールで報告した。
 『予定通り、バスタ新宿を出発しました』と。
 平日なので、後でメールは見てくれるだろう。
 あとは実家の両親にも、LINEを送っておいた。
 今や悠々自適の年金生活を送っている両親だが、年寄りの朝は早いからな……。
 国民年金、厚生年金、企業年金全部貰えりゃ、そりゃ悠々自適だろうよ。

 リサ「当日、ミキが駅まで迎えに来てくれるってよ」
 愛原「そうか。何駅だ?」
 リサ「かく……つの……」
 愛原「角館(かくのだて)駅だな。秋田新幹線の駅で、秋田内陸縦貫鉄道の始発駅でもある。急行に乗ると返信しといてくれ」
 リサ「うん。昼間から活動できるんだぁ……」
 愛原「生粋の鬼さんは、普通そうだからな?てか、転化組のお前もだろ」

 日本版リサ・トレヴァー達の中で、最大の失敗作は『6番』。
 元から男の『10番』と違い、体は成長し、グラマーな女性となったが、太陽光に弱く、昼間は活動できなくなった。
 公一伯父さんのプリウスミサイルにより、家の壁をぶっ壊したことで西日の直射日光に当て、焼殺している。
 ……プリウスじゃなかったら、“彼岸島”みたいなノリで倒したんだな、あの時は。

 リサ「そうだった。……何か、転化組って呼ばれるの、ヤだな……」
 愛原「うーん……新卒採用に対して、中途採用みたいな呼び方かな?」

 新卒者が、『中途の人』と呼んで来るような感覚なのだろうか。

[同日7時45分 天候:晴 埼玉県羽生市弥勒 東北自動車道下り線・羽生パーキングエリア]

 バスは首都高速で、朝ラッシュの渋滞に巻き込まれた。
 今日が平日であることを思い出す。
 それは東北自動車道下り線に入ることで解消されたが、それでも下り線は下り線でそれなりに車は多かった。
 もっとも、上り線の渋滞に比べれば、まだ法定速度で走れるだけマシだったが。
 渋滞も考慮したダイヤになっているのだろうか?
 エアポートリムジンバスなど、首都高名物の渋滞に巻き込まれることを前提にしてダイヤを作成していると聞いたことがあるが。

 

〔「羽生パーキングエリアでございます。こちらで15分ほど、休憩を取らせて頂きます。発車は8時ちょうどとさせて頂きます。お時間までにバスに戻るよう、お願い致します」〕

 バスは最初の休憩地、羽生パーキングエリアに到着した。
 東北自動車道としては、最も南にあるパーキングエリアであり、埼玉県最北のパーキングエリアでもある。
 実際、このパーキングを出ると、すぐに利根川を渡って栃木県に入ることになるので。
 この南側には蓮田サービスエリアもあるが、そこと休憩箇所を二部する形で設置されている為、パーキングエリアにしては規模が大きい。
 ただ、サービスエリア並みに規模が大きいとはいえ、そこはパーキングエリア。
 蓮田と違って、ガソリンスタンドは無い。
 下り線もリニューアルされて、きれいな施設が整えられているが、上り線は上り線で、観光客向けの様相になっている。

 愛原「どうする?降りる?」
 リサ「うん」

 私達はバスを降りた。
 バスにもトイレは付いているが、やはり、広いトイレを使いたいのだろう。
 多くの乗客達がトイレに向かった。

 愛原「おっ?」

 上空を見ると、1機のヘリコプターが低空飛行していた。
 よく見ると、それはBSAAのヘリ。
 どうやら本当に、飛行訓練を行っているようだ。
 デイライトが懸念しているのは、こうしてエリア内を移動している時。
 ハイエース辺りが横付けされて、いきなり拉致されるようなことを懸念しているという。
 BSAAが飛行訓練しているのも、それを想定したものだとのこと。
 トイレに辿り着くが、今のところそんなトラブルは無い。

 愛原「これだよ、これ。高速道路のサービスエリアといったら、これだよなぁ……」

 トイレを先に済ませた私は自動販売機コーナーに立ち寄り、紙コップのコーヒーの自販機を利用した。
 モニターが付いていて、豆から挽いてドリップしているところを見せてくれるあの自販機である。
 しかもその最中は、“コーヒールンバ”が流れるという。

 リサ「先生?」
 愛原「ん?リサもコーヒー飲むか?」
 リサ「私はこっちのジュースがいい」
 愛原「そうか」

 まあ、ジュースくらい買ってあげてもいいだろう。

 愛原「上にいるレイチェルに、手でも振ってあげたら?」
 リサ「それがさぁ、任務中はできないみたいなんだよね」
 愛原「フランクなアメリカ人にしては、真面目だな」

 私はできあがったコーヒーを持ってバスに戻った。
 リサもジュースを手に後ろから付いてきた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「京王バスの旅」

2025-03-23 20:44:05 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月21日06時20分 天候:晴 東京都渋谷区千駄ヶ谷 バスタ新宿]

 

 バスタ新宿に到着した。
 入口には出発案内板が掲げられており、まるで空港ターミナルのようだ。
 エスカレーターで『出発ロビー』に向かう。
 早朝ながら、既にターミナル内は多くの高速バス利用者で賑わっていた。
 チケットカウンターの様相など、空港ターミナルのそれにそっくりだ。
 因みにバスは全席指定なので、既に乗車券は購入済みだ。

 リサ「先生、チケットは?」

 私はスマホを見せた。

 愛原「この中だ。この中に2人分入っている」
 リサ「ふーん……。先生と隣同士だよね?」
 愛原「もちろん。出発は6時40分発だ。まだ少し時間があるから、買い物でもしようか」
 リサ「そうだね」

 

 ターミナル内にあるデイリーヤマザキへ向かう。
 かつてはファミリーマートが入居していたが、撤退してしまっている。
 高速バス利用者にとって、出発前のコンビニは欠かせない存在となっている。
 東北急行バスも、一部は東京駅八重洲口に乗り場が移転しまったが、それでもまだ専用のバス停がある東京駅八重洲通りでは、目の前にあるコンビニが、バスの出発前は賑わうという。
 仙台側では、バスの営業所の建物にコンビニがあるというくらい。
 その為、このバスタ新宿でも、出発前の利用者でコンビニが賑わっている。
 ターミナル内にはこれ以外にも土産物店があるが、そこほど品揃えは豊富ではないものの、コンビニ店内でも土産物は売っている。
 私は朝食以外に、ここで両親への土産を購入した。

 リサ「東京ばな奈……」
 愛原「東京土産といったらこれだろー!」
 リサ「ミキは買って行かなかったなぁ……」
 愛原「マジか?……あー、高尾山口駅周辺じゃ無いか」
 リサ「御両親にお酒は買って行かないの?」
 愛原「うちの両親、そんなに大酒飲みってわけじゃないからね。缶ビール1個とか、サワー1杯だけでお腹一杯になるくらいだ」
 リサ「ふーん……。先生と違うね」
 愛原「隔世遺伝なんだろう。逆に祖父は、大酒飲みだった記憶がある」
 リサ「そうなんだ」

 さすがはデイリーヤマザキである。
 やはりパンのラインナップは凄い。
 私はここでパンを購入した。
 朝食は軽めでいいだろう。
 尚、アンパンは欠かせないw
 リサは、『新宿さぼてん』のヒレカツサンドを目ざとく見つけた。

 リサ「ランチパックのゴリ押しが凄い」
 愛原「そりゃ、ヤマザキパンだからな。で、ここはデイリーヤマザキだ。そりゃゴリ押すだろう」
 リサ「埼玉のエレンの家の近くの店しか行ったことない」
 愛原「まあ、店舗数はファミマとかに比べれば少ない方だもんな」

 私はアンパンとランチパックを購入した。
 一先ずはこれで良い。
 飲み物はペットボトルのお茶を買った。

 愛原「こんなところでいいか」

 ついでにリサの分も買ってやる。
 ブランドもののヒレカツサンドのお値段は、【お察しください】。
 これは、途中休憩でも絶対何か買って食べるパターンだ。
 3食は私が面倒を看るが、間食は自分の小遣いの範囲内でと言ってある。

 愛原「それじゃ、行くか」

 買い物を終え、店を出る。

 愛原「俺達が乗るバスは、A2乗り場から出るらしい。他に、買い忘れた物とかは無いか?」
 リサ「取りあえず大丈夫。もし足りないようなら、現地調達で」
 愛原「まあ、それもそうか」

[同日06時30分 天候:晴 バスタ新宿→京王バス9551便車内]

 

 バス停のポールの前で並んでいると、隣のバス停の列がここまで来る事がある。
 見ると、だいたいが空港行きだったりする。
 夏休みの学生というよりは、インバウンドの外国人が多い。
 東京空港交通が運行するエアポートリムジンバスは、特急料金の掛からない鉄道より往々にして運賃が高いからだろう。
 翻って長距離バスの方は、新幹線よりも運賃が遥かに安い為、学生の利用も多い。
 ただ、京王バスの方は、格安というわけでもない。
 新幹線より格安という意味であって、他の高速バスと比べると、割安路線ではない。
 その為、学生の利用もあるが、どちらかというと、私のような中年の利用が多い感じである。

 
(隣のバス停に停車中のエアポートリムジンバス。外国人の利用が多い上、乗車待ちの列が隣のバス停にまで波及している)

 愛原「おっ、あのバスだな」

 

 LEDの行き先表示に、『仙台』と書かれた京王バスが入線してきた。

 愛原「荷物、預かってもらおう。さすがにこの荷物は多過ぎて、荷棚に入らない」
 リサ「うん」

 バスタ新宿なら、そういった係員がいるので預けられる。
 バスが停車し、運転手が降りて来た。
 親会社の京王電鉄の制服と似ているようで、少し違う。

 運転手「お待たせしました。6時40分発、仙台行きです」

 私は朝食や飲み物などが入った袋と、スマホを手に列に並んだ。
 リサも飲食物とスマホ、それから小さなバッグ。
 学校用のかな。
 でもサイズ的に、荷棚に乗せられるだろう。
 私は運転手にスマホの画面を見せた。

 愛原「愛原と他1名です」
 運転手「はい、愛原様、2名様ですね。3Aと3B席になります」
 愛原「ありがとう」

 私達はバスに乗り込んだ。

 愛原「ほお……」

 

 高速バスと言えば4列シート、また独立3列シートに慣れた私にとっては、新鮮な座席配列になっていた。
 進行方向に向かって、左側が2人席、右側が1人席という独立型ではない3列シートになっていた。
 一部の在来線特急のグリーン車とか、新規参入の高速バスではたまに見られる座席配列だが、既存の高速バスでこの配列は珍しいと思った。
 これなら、リサも納得だろう。
 私はリサを窓側に座らせ、私は通路側に座った。
 小さいながらもテーブルがあり、ドリンクホルダーもある。
 テーブルは前の座席から倒すタイプと、肘掛けに収納されているタイプと2つあった。
 いずれにせよ、ノートパソコンが置けるほどの大きさは無い。
 スマホは余裕で置けるが、あとはタブレットがギリギリ置けるくらいだろう。
 そのテーブルの上に、朝食を置いた。
 あとはフットレストもあるし、コンセントもある。
 WiFiもあれば、1番後ろにトイレもあった。
 シートピッチも、比較的広めだと思う。
 これなら、仙台までの長距離も疲れずに済むと思われる。

 愛原「たまには、こういうのんびりした旅もいいな」
 リサ「わたしは先生と一緒なら、何でもいいよ」

 リサはカツサンドを箱を開けながら、大きく頷いた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「早朝出発の探偵達」

2025-03-23 16:25:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月21日05時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線511T電車・先頭車内]

 

 予定通り、私達は早朝に事務所を出発した。
 パールには寝てていいと言ったのだが、起きてきて見送ってくれた。
 それから私は大きなボストンバッグ、リサはキャリーケースを引いて菊川駅に向かった。
 早朝とはいえ平日ということもあり、駅に行くとそこそこ人はいた。
 まあ、朝ラッシュが始まる前なので、激混みというわけではなかったが。

 愛原「リサ、よく起きられたな。偉いぞ」

 ホームで電車を待っている間、私はリサの頭を撫でた。

 リサ「エヘヘ……。あふ……」

 リサは大きな欠伸をした。
 やはり眠いことは眠いらしい。

 愛原「まあ、バスの中で寝てていいから」
 リサ「それじゃ、つまんないよぉ……」

〔まもなく、1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で、到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 接近放送がホームに響き渡る。
 私達はこれからバスタ新宿に向かうところだ。
 今日はこれから仙台まで、高速バスで向かう予定。
 その理由は経費節減というのもあるのだが、もう1つ理由がある。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 東京都交通局の車両がやってくる。
 朝ラッシュが始まる前なので、そんなに混んではいなかったが、さすがに座席は全て埋まっており、私達は車椅子スペースに荷物を置くとその前に立った。
 すぐに短い発車メロディが鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 車両のドアとホームドアが閉まる。
 電車は久しぶりに乗る初期タイプの物なので、車内はやや薄暗い。
 座席も硬めのタイプだろう。
 ドアが閉まる切ると、運転室の方から発車合図のブザーが微かに聞こえて来た。
 車内は冷房の稼働音が響いているが、それでもブザーの音も聞こえてくる。
 それから電車は動き出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 私達が高速バスで移動するもう1つの理由。
 それは、デイライトから持ち掛けられた話。
 今のところ、リサが利用できる公共交通機関の中に、高速バスは入っていない。
 今まで長距離移動が新幹線や飛行機、或いは船舶だったのは、それは許可が出ているから。
 かつては飛行機や船舶も許可されていなかったのだが、八丈島への旅行で両方乗った時、リサの安全性はそれで証明された。
 今まで高速バスが解禁されていなかったのは、偏に外部からの攻撃を警戒してのこと。
 長距離バスともなれば途中休憩もあるが、その際に敵対団体から拉致などをされかねないし、陸上の公共交通機関で最も速度が遅く、逃げ場の限られているバスではリサが暴走しなくても、外部からの攻撃に弱いのでは?という懸念からであった。
 しかし今、その団体は『コネクション』のみとなっており、最も近い所にいた高橋が逮捕されている。
 また、言っては何だが、他にリサを狙う(と、デイライトから疑われている)“青いアンブレラ”もいるので、BSAA、“青いアンブレラ”、コネクションと三すくみの状態が確立されており、私もいることから、手が出せないであろう。
 何なら本当に大丈夫かどうか確認してみるか、ということになったわけである。
 レイチェルの話では、ヘリの飛行訓練に参加すると言っているくらいだし。
 つまり、そのヘリで私達のバスを上空から警備するということだろう。
 要するに、デイライトの実験の他、BSAAの訓練も兼ねているということだ。
 これに対して特に報酬は無いのだが、バス代はせしめることができた。( ̄ー ̄)ニヤリ
 新幹線の片道分で往復できるほど安い運賃、デイライト側からすれば、はした金なのだろうが。

[同日06時06分 天候:晴 東京都新宿区西新宿 都営地下鉄新宿駅・京王新線ホーム→2番出口]

 途中の馬喰横山で空席ができ、その次の岩本町駅でまた空席ができたので、そこで私達は着席できた。
 東京の地下鉄は、各駅でちょこちょこ乗降が多くあるので、よほどの混雑でもなければ、終点まで立ち通しということは意外と少ない。

 

〔「おはようございます。新宿、新宿です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。4番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです」〕

 さすがは東京でも屈指のターミナル駅ということもあり、ここで下車する乗客は多い。
 当然、私達も荷物を持って電車を降りた。
 ここからバスタ新宿まで行くのだが、初見だとやや分かりにくい。
 1番簡単なのはJR埼京線、湘南新宿ラインで乗り付けるルートが最も難易度が低い。
 尚、難易度最高ランク☆5つは西武新宿駅からのルートである。
 丸ノ内線からのルートも負けず劣らずだろう。
 都営地下鉄からのルートは、☆2つといったところ。
 地下5階にある新線新宿駅のホームからは、真ん中のエスカレーターで地下4階に上がる。
 それから一気に地下1階まで上がるエスカレーターに乗る。
 上がり切ると、左手に改札口があるので、そこを出たら右に曲がる。
 階段を昇って道なりに行くと、また右手に地上に上がる階段がある。
 2番出口だ。
 それで地上に上がると、目の前に甲州街道があるので、それを右に曲がればバスタ新宿に着く。
 2番出口は階段しか無いので、リサみたいな大きなキャリーケースを持っている場合は注意だ。
 もっとも、リサは持ち前の鬼型BOWの力でヒョイと持ち上げていたが。

 愛原「雨が降ってなくて良かったな」
 リサ「そうだねぇ……。ここ、前に、ミキと一緒に予備校の本部に向かう時に通った道じゃない?」
 愛原「そうだな。よく覚えてたな」
 リサ「ミキ、これくらいの人通りや車通りくらいで目を回しそうになってたねぇ……。田舎の鬼w」
 愛原「やめなさいって。とにかく、早く行くぞ。長距離バスに乗るんだから、その前に朝飯とか買わないと」
 リサ「それはそうだね」

 私達はバスタ新宿へ向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「出発前日」

2025-03-20 20:46:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月20日15時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 愛原「ただいまァ」

 PTA懇親会も終わり、私は事務所に戻った。

 パール「お帰りなさいませ。雨が上がって良かったですね」
 愛原「そうだな」

 予報ではこの後しばらく晴れが続き、このまま行けば梅雨明け宣言が出るだろうとのこと。
 もっとも、夕立やゲリラ豪雨は発生するだろうが。

 パール「冷たいお茶でも飲まれますか?」
 愛原「そうだな。カフェインの無いヤツで頼む。懇親会で、コーヒーやらウーロン茶やら飲んで来たから」
 パール「かしこまりました」
 愛原「リサは?」
 パール「お部屋で、明日からの旅行の準備をしております。片付けられる宿題は、早めに片付けるとか……」
 愛原「そうか」

 1日で全部は片付かないだろうが、まあ、やれるだけのことはやるということか。
 私は鞄を置いて、自分の机の椅子に座った。
 パールがグラスに入った麦茶を持って来てくれた。
 確かに麦茶なら、カフェインは入っていない。

 パール「警察から電話がありまして、マサのことで、先生にもお話をお伺いしたいと……」
 愛原「明日から出発だから、帰って来てからになるな。まあ、来月になるんじゃないか?」
 パール「そのように伝えてございます」
 愛原「おっ、さすがだな。ありがとう」
 パール「いいえ」
 愛原「高橋の方はどうだ?」
 パール「接見禁止令が出ていますので、面会できない状態です」
 愛原「すると、手紙もダメか」
 パール「はい。ただ、差入は可能ですので、それはしておきたいと思います」

 接見禁止令にも高低のレベルがあって、弁護士以外の面会は禁止だが手紙のやり取りまでは禁止されない緩いものと、それすらも禁止される厳しいものとがある。
 高橋の場合は、残念ながら後者である。

 愛原「テラセイブとしても、コネクションとは繋がっておきたいということか?」
 パール「コネクションが日本にだけ活動拠点を置いているのであれば、あとは警察だけに任せておけば良いのですが、実際は違いますから。また、警察に逮捕されたマサが心配です。コネクションが口封じの為に、マサを処分しようとするかもしれません。そんな時、テラセイブ側も監視しているというアピールをすることによって、それを抑止したいと思っております」
 愛原「なるほど……」

 但し、手紙のやり取りをも禁止されても、差入までは禁止されない。
 最大レベルの禁止令を受けたとしても、だ。
 本来は物の授受も禁止されているそうなのだが、そう言ってる割には食料の差入は禁止ではないという変な話になっている。
 そこで現場では、拘置所や留置場内で使用できる現金や衣服などの日用品の差入までは禁止しないという判断が取られている事が多いのだそうだ。
 これは担当の秤田弁護士から聞いた。
 パールはこの運用に便乗して、積極的に高橋に差入を行う作戦をしているようである。
 もちろん、変な物が混じっていないか、そこはしっかり確認されるので、そんなことはできないが。
 更に、そういった施設では『どこの誰が差入したか』はしっかり記録される。
 そんな時、パールは『愛原学探偵事務所の高橋真珠』ではなく、『NGO団体テラセイブの霧崎真珠』として差入しているとのこと。

 愛原「今のところ、俺はあいつに何もしてやれないな」

 日本ではどんな被告人に対しても、弁護士が付く。
 秤田弁護士も、国選弁護人として高橋に付いている。
 最初は私も弁護士費用を負担して私選弁護人にしようとしていたのだが、段々高橋の余罪が明らかになる度に、こりゃダメだと少し諦めている。
 高橋自身も諦めて、既に私に手紙や差入を求めることは無くなってしまった。
 今のところ高橋はこの事務所は休職扱いであるが、いずれ懲戒解雇処分となるだろう。
 せめてリサが大人になって、もっと積極的にこの事務所を手伝ってくれるようになってくれたら良いのだが……。

 パール「しょうがないですよ。当初は闇バイト的な立ち位置だったのかもという話でしたが、そうでもなくなってきましたから」

 闇バイトとしての実行犯だったかもしれない、から、指示役かもという所まで行き、今では指示役に指示する役か?という疑惑まで浮上している。
 そこまで行ってしまったら、さすがに庇いきれないからね。

[同日18時00分 天候:雷雨 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 リサ「また、雨だよ?しかも、雷がゴロゴロ鳴ってる」
 愛原「ゲリラ豪雨か?リサ、窓を閉めろ。雨風が入って来る」
 リサ「はーい」

 リサは引き戸タイプの窓をガラガラと閉めた。
 直後、遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえてくる。
 雨自体は強くなっており、風も吹いて来た。
 夏なのでこの時間帯でも外は明るいのだが、ゲリラ豪雨のせいでかなり暗くなっている。
 私はカーテンも閉めた。

 

 パール「できましたよ」
 愛原「おー、ありがたい。早速、頂こう」
 リサ「いただきまーす!」

 豚の角煮だった。
 これなら酒も進むな。
 美樹からもらった酒もあるし。

 パール「先生、明日はお早い出発でしたね?」
 愛原「そうだ」
 パール「飲み過ぎにはご注意ください」
 愛原「も、もちろん、分かってるよ」

 軽く釘を刺されてしまった。

 

 他にもホッケの開きがおかずに出て来て、ますます酒が進むのだが。

 愛原「というわけだ、リサ。明日は早く出発するから、寝坊しないように」
 リサ「分かってるよ。アラーム何個か仕掛けておく」
 愛原「なるべく多くの宿題を片付けたいのは分かるが、夜更かししないように」
 リサ「もちろん!」

 こういう時、大人だと、酒を寝落ちさせに使えるんだがな。
 寝酒って言うね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする