報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原が見た夢」

2025-01-03 21:11:16 | このブログについて
[2010年6月某日21時00分 天候:晴 長野県北安曇郡白馬村某所 某洋館]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を始めたばかりの駆け出しの探偵だ。
 今日は仕事で長野県、山奥の村までやってきた。
 仕事の依頼さえあれば、どこにだって行くつもりである。
 クライアントの元へ到着した時には、既に21時を回っていた。
 何故そんな時間なのか。
 答えは簡単。
 クライアントがこの時間に来てほしいと依頼したからである。
 現場は長野県の山奥の村の更に村はずれ。
 確かに、洋風のペンションなどが途中で散見されてはいたが、クライアントの家はそれにもっと輪を掛けたものだ。
 はっきり言って、西洋の洋館風。
 幸い今の天気は晴れで、上空には東京では見られない美しい星空、そして月が煌々と輝いている。
 これで雷雨なんかあった日には、間違い無くホラーチックな佇まいであろう。
 そんな雰囲気を放っていた。
 大きな屋敷である。
 いかに地方の山奥とはいえど、こんなに大きな洋館を建てられるのだから、クライアントはよほどのセレブに違いない。
 これは高額な依頼料が期待できそうだ。
 天候が悪ければホラーチックと言ってしまったが、正門の門扉やそこからエントランスに通じる中庭には煌々と明かりが灯り、そして館内にも照明が灯っているのが分かる。
 だから決して、廃屋ではないことが分かる。
 明らかに、クライアントは私を待ってくれている。
 そう確信した。
 正門から敷地内に入り、玄関へ向かう。
 クライアントが私の元に寄せて来た依頼内容は、とても不可解なものだった。
 長野県内にも探偵事務所はあろうに、それが悉く断ったが故に、ついに回り回って私の所に依頼が来たという次第だ。

 『何者かに命を狙われている。それが何者なのかは分からない。どうか、私の命を狙っている者が誰なのかを突き止めてくれ』

 というもの。
 もしこれが本当だというのなら、もう私立探偵を通り越して警察の出番となるであろう。
 だがクライアントはその疑問を見越してか、

 『警察は私が死体にならないと動いてくれない』

 と、言っていた。
 結構その通りかもしれないので、クライアントの気持ちは分かる。
 私も命の危険にさらされる恐れはあるが、しかし実はハードボイルド系の探偵に憧れている所があり、また、高額な依頼料も約束してくれるとのことだ。
 また、それにクライアントの被害妄想などで、実は犯人だと最初からいなかったという場合も考えられる。
 とにかく、私は他の探偵達が断る中、あえてこの仕事を受けてみることにした次第である。

 玄関前に到着し、私はベルを押した。
 しばらく経ってから、ドアが開けられた。
 出て来たのは歳の頃、60歳から70歳くらいと思しき老人。
 だが、クライアントである屋敷の主人ではなさそうだった。
 白髪頭のてっぺんは禿げ上がっており、まるで河童のようである。
 タキシードにネクタイを着けていることから、恐らく執事か何かであろう。

 老執事「……どちら様ですか?」
 愛原「あ、私、東京から参りました探偵の愛原と申します。クライアント様からこの時間に来るように依頼されて、伺ったのですが……」

 私が自己紹介していると、ふと何やら違和感を覚えた。
 この老執事らしき男から、血の匂いがしたのだ。
 よく見ると、黒いタキシードに、所々シミがついているうな気がする。
 黒いタキシードに赤黒い血がついても、乾いてしまえば、薄暗い屋敷内だ。
 パッと見、分かりはしないだろう。
 だが、私の探偵としての鼻は誤魔化せない。
 言葉に気をつけないと、私も酷い目に遭わされる恐れがある。
 どうもこの執事、クライアントから聞いていないのか、それとも聞いていて忘れているのか、何だか私を警戒するような目つきで見ている。
 何だか気まずい。
 だが、クライアントはこの老執事の事を見越してか、もしもすぐに私を中に案内しないようなら、暗号を言うようにと言われていた。

 愛原「ぱ、パンツはかせてください!!」

 何という卑猥な暗号だろう!?
 いくら仕事の為とはいえ、私にこんな事を言わせるとはっ!
 だが、逆にインパクトのある暗号ではある。
 これを聞いて、ようやく老執事はハッと気が付いたようだ。

 老執事「……ああ!確かご主人様が今夜、来客があると仰せでした。あなたがそうでしたか。これは失礼しました。どうぞ。中で、ご主人様がお待ちですので」

 老執事は私を屋敷内に招き入れた。
 それにしても、今の暗号は正しかったようだが、もしも間違った文言を言ってしまうとどうなるのだろう?
 追い返されるのだと思うが、果たしてそれだけで済むのだろうか?

 愛原「ほお……」

 屋敷の外観はとても古い造りだったが、中も相当年季が入っている。
 それに拍車を掛けているのが、やはりアンティークな家具や調度品だ。
 その高そうな調度品に目を奪われていると、老執事は足を止めた。

 老執事「……何か、私に仰る事はございませんか?」
 愛原「えっ?……あっ!」

 そうだった!
 中に入ったら、今度は別の暗号を言うのだった。
 えーと……2番目の暗号は……。

 愛原「『あなたと一緒にスキーがしたいな』」
 老執事「結構でございます」

 老執事はここでようやく微笑を浮かべると、踵を返して屋敷の奥へと進んだ。
 私もその後ろを付いて行く。
 私達はエントランスホールを抜け、薄暗い廊下を進んだ。
 ……と、執事の方に糸くずが付いているのが分かった。
 タキシードが黒いものだから、白い糸くずは目立つ。
 私はそれを取ってあげようと、手を伸ばした。
 が!

 愛原「うわっ!?」

 廊下の途中には段差があり、廊下が薄暗いのと、糸くずに気を取られてそれに気づかなかった私はそれに蹴躓いた。
 そして、後ろから執事に抱き着くような形で倒れ込んだ。
 だが、その隙に糸くずを取ってあげることはできた。

 老執事「も、申し訳ございません!そこに段差があるので御注意をと申し上げるはずが、失念してしまいまして……」
 愛原「い、いや、大丈夫……です。こちらこそ、体を支えて下ってありがとうございます」

 不思議なことに、執事は一見小柄そうな体つきではあるものの、足腰はしっかりしているし、何より筋肉質だった。
 私がいきなり後ろから抱き着くように倒れ込んだというのに、しっかりと私を受け止めたくらいだ。
 だが……。
 やはり、血の臭いがした。
 気をつけないと……。

 老執事「こちらが、御主人様の御部屋でございます」

 しばらく廊下を歩くと、突き当りに木製の重厚な扉があった。
 老執事はその前で立ち止まる。
 えーと……最後の暗号は……。

 愛原「『ありがとう』」

 最後は普通だ
 私がノックをして入ろうとした時だった。

 ???「ぎゃああああああっ!!」

 主人の部屋の中から叫び声がした。
 私は急いで、部屋の中に飛び込んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「出張の準備」 2

2025-01-01 20:23:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日12時59分 天候:曇 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅→デニーズ錦糸町駅前店]

 

〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は、亀戸に、停車します〕

 私達を乗せた総武線各駅停車は、錦糸町駅に到着した。
 ここで電車を降りる。

 愛原「ファミレスでいいかな?」
 淀橋「いいと思います」
 愛原「すると、南口だな……」
 小島「南口だと、ヨドバシがあるか……」
 淀橋「ヨドバシならここにいるけど?」
 小島「いや、違うw そうじゃないw」

 南口の改札口を出て、駅の外に出る。
 錦糸町に戻って来るくらいなら、最初からここでも良かったな。
 ここにも“みどりの窓口”はある。

 リサ「先生、大丈夫なの?頭……」
 愛原「ああ、大丈夫だよ」
 リサ「この前、手術したのに……。その後遺症?」
 愛原「いや、そんなことは無いと思うけど……」

 後遺症か……。
 まさかとは思うがな。
 しかし、あの症状は頭の中に入っていたチップを取り出す前とそっくりだ。
 ただ、フラッシュバックの内容が変わっていたな……。
 まさか、また別のチップが入ってるとか?
 いや、そんなことはない。
 もしそうなら検査で見つかっているし、そこをすり抜けたとしても、手術の時に見つかっているはずだ。
 とはいうものの、一応、善場係長に後で報告しておこう。
 歩道橋を渡って国道14号線を渡り、商業ビルに向かう。
 そこにデニーズがあるので、そこに入って昼食を取ることにした。

 リサ「ステーキがあるねぇ……!」
 淀橋「リサ、さすがに今日は先生の奢りなんだから遠慮した方がいいよ」
 小島「昼デニセットから選べばいいんだよ」
 愛原「確かにハンバーグはあるな。ま、遠慮しないで好きなの頼んでいいよ。まあ、俺は昼デニセットのてりたまチーズハンバーグのセットするけど」
 淀橋「はい、先生基準」
 リサ「じゃあ、わたしもハンバーグにしとく」
 小島「私はパスタで」
 レイチェル「ハンバーグランチの中から選んでいいですか?」
 愛原「構わんよ。好きなの頼んで」

 秋葉原駅で変な頭の症状は出たが、それ以降は特に出ることもなく、食欲が落ちることもなかった。

[同日14時00分 天候:曇 デニーズ錦糸町駅前店→錦糸町駅前バス停]

 昼食が終わって会計を済ませる。
 今日はカードで払った。
 これなら、後でポイントが付く。
 付いたポイントは、後で有効活用させて頂くとしよう。
 私はこのまま帰るつもりだった。
 恐らくリサ達は、今度は買い物や遊ぶ場所を錦糸町に移して続行するものだと思っていたが……。

 愛原「えっ、リサも帰るのか?」
 リサ「うん、何か先生が心配だから」
 愛原「アキバのことは何かの間違いだよ。軽い熱中症みたいなものだったんだろう。水分や塩分も補給したし、あれから何の症状も出てないから大丈夫だと思うよ」
 リサ「でも……本当は病院に行った方がいいと思う。頭の事だから」
 愛原「そう言われると……」
 小島「私達のことなら、心配しなくていいよ。ちょっとヨドバシで買い損ねた物があるだけだから」
 淀橋「あと、ドンキね」
 小島「買う物は決まってるから、それが終わったら私達も帰りますよ。空模様も怪しいし」

 確かに、空は午前中よりも更に暑い雲が出て来た。
 天気予報によると、夕方から雨が降るらしい。
 しかし、この曇り方からして、予報よりも早めに降ってくるのではないだろうか。
 そんな気がした。

 淀橋「レイチェルはどうする?」
 レイチェル「それなら私も、リサ達に同行します。確か、バスで途中の駅まで行けたはずです」
 愛原「そうだな。俺はこれから築地駅行きのバスに乗るが、築地駅からなら日比谷線に乗り換えできる」
 リサ「じゃ、決まりだね。それじゃ、ヨドバシとコジマ、また明日」
 淀橋「うん。それじゃ」
 小島「また明日」
 レイチェル「See you!」

 私はリサやレイチェルと共に横断歩道を渡り、バス停に向かった。

 愛原「本当にいいのか?せっかくの日曜日なのに。ヘタすりゃ、来週も休みは日曜日だけになるというのにだぞ?」
 リサ「わたしはもう欲しい物はアキバで買っちゃったし」
 レイチェル「私もです。それに、今回はリサの監視が目的です」
 愛原「なるほど。まあ、そこまで言うのなら……」

[同日14時19分 天候:曇 錦糸町駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 菊川方面に向かうバスに乗り込む。
 今度はこのバス停が始発の為、やってきたバスに先客が乗っていることは無かった。
 乗り込んで1番後ろの席に座る。

 愛原「レイチェルは終点まで乗って行けばいいよ」
 レイチェル「そうします」
 リサ「先生、頭痛は?」
 愛原「だから無いって」
 リサ「そう……」

 とは言ったが、バスを待っている間、善場係長にはメールで報告した。
 だが、日曜日ということもあり、今のところまだ返信は来ない。
 そうしているうちに発車の時間になり、バスは前扉を閉めて発車した。

〔発車致します。お掴まり下さい〕
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは、浜町中の橋、八丁堀二丁目経由、築地駅前行きでございます。次は錦糸堀、錦糸堀でございます。警備会社の全日警、東京中央支社へは菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、錦糸堀でございます〕

 愛原「……BSAAはどうなんだ?」
 レイチェル「Huh?どうとは?」
 愛原「いや、偽情報に踊らされて混乱しただろう?もう収束したのか?」
 レイチェル「問題無いですよ。センセイ達の疑いは晴れました」
 愛原「そうか……」

 いや、そうじゃなく、偽情報を掴んで混乱させた者の責任問題とか、今後の対策は大丈夫なのか聞きたかったのだが、多分教えてくれないだろうと思い、これ以上の質問はやめた。

 愛原「明日、俺の出張先でBSAAが護衛に当たってくれるという話は?」
 レイチェル「……聞いてはいますが、私は呼ばれていません。まあ、私もリサと同様、学校があるからでしょうね」

 か、もしくは訓練兵を訓練目的で連れて行けるほど簡単な現場ではないかもしれないってこともあり得る。
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“私立探偵 愛原学” 「出張の準備」

2025-01-01 16:20:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日12時20分 天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅前→秋葉原駅みどりの窓口]

 私は善場係長のコペンに乗って、秋葉原駅に向かった。
 初めて乗るオープンカーであったが、夏は暑いとのことで幌が付けられ、クーラーが点けられた。

 善場「冬はむしろオープンにしても、ヒーターを強めにすれば暖かいのですが」
 愛原「それにしても、係長がこういう車にお乗りだとは知りませんでした」

 しかもこのコペン、マニュアル車である。

 愛原「高橋と、いい勝負ができるんじゃないですか?」
 善場「どうでしょうねぇ……。ただ、高橋被告が勝負を掛けてきた時点で、私は道路交通法違反の現行犯で逮捕しますが」
 愛原「それはそう」

 私が思いっ切り納得すると、係長は仕事の話に戻った。

 善場「今回の費用についても、後ほど請求して頂ければ、精算させて頂きます。場所柄、またレンタカーを借りて向かうことになるでしょうから」
 愛原「ありがとうございます」
 善場「急な宿泊に関しましても、費用は後ほど請求してください」
 愛原「かしこまりました」
 善場「一応、BSAAにも応援を依頼しておきます。武装集団たる彼らのことですから、現地集合になるかとは思いますが」
 愛原「承知致しました」

 こうして私は、休日で賑わう秋葉原の駅前で車を降りた。
 善場係長は軽自動車ながら、マニュアル車ならではの吹かし方をして去って行ったが、もしかして、乗ろうと思えばもっと大きな車に乗れるのではないだろうか。
 私は再び蒸し暑い屋外に出されると、そこから逃げるように、同じく多くの人で賑わう秋葉原駅の中に入った。
 そして、その中にある“みどりの窓口”に並んでいると……。

 リサ「せーんせっ!」
 愛原「!」

 後ろからリサに声を掛けられた。
 振り向くと、そこにいたのはリサだけではなかった。

 淀橋「ホントだ!愛原先生だ!」
 小島「よく遠くから分かったね!?」
 レイチェル「ハンター、ですね」
 リサ「匂いで分かるんだよ!エッヘン!」(`・∀・´)
 愛原「……犬かな?」
 リサ「鬼だよ!……それより、何してるの!?」
 愛原「新幹線のキップ買ってるんだよ。明日から出張だから」
 リサ「ええっ!?じゃあ、私も行く!」
 一同「学校は!?」
 リサ「えっ?」
 愛原「お前は学校があるだろ。俺1人で行くことになったから」
 リサ「ええっ!?」

 私の順番が回ってきたので、私は窓口に向かった。

 愛原「“レール&レンタカー”で予約した者ですが……」
 駅員「かしこまりました。……」
 リサ「ここは涼しいね!」
 淀橋「なにちゃっかり涼んでるのw」
 小島「いや、それ、うちらもヒトのこと言えないからw」
 レイチェル「Gee...」

 あのコ達は、もうアキバでの用事は済んだのだろうか。
 よく見ると、ドンキの袋とか色々と持っているが……。

 駅員「……それではお会計が……」
 愛原「はい」

 私は支払いを終えた。

 淀橋「そういえば先生って、運転できるんですか?」
 愛原「できるよw」
 リサ「八丈島に行った時は、先生が運転してた」
 淀橋「あっ、これは失礼しましたw」
 愛原「1人で仕事してた時は、車も自分で運転してたものさ」

 ライトバン借りて、山奥の屋敷に行った話とか……。

 愛原「うっ……!」
 リサ「先生!?」

 突然、私の頭に激しい頭痛と眩暈が起きた。
 危うく倒れそうになったが、レイチェルとリサが支えてくれた。

 レイチェル「愛原センセイ、Are you OK?」
 愛原「あ、ああ……」

 それはすぐに治まった。
 だが、フラッシュバックも起きた。
 その時に見えた光景は……。

 愛原「今日は蒸し暑いから、軽く熱中症になったのかもな……」
 リサ「ええっ!?」
 レイチェル「No.愛原センセイ、今のふらつきは……。!」

 レイチェルが何か言い掛けたのを、小島さんが止めた。

 小島「先生、どこかで休んだ方が……」
 愛原「い、いや、大丈夫だ。ちょっと水分補給したら、帰るつもりだよ。それより、キミ達こそ、買い物はいいの?」
 淀橋「アキバでの買い物は終わりました。お昼どうするか悩んでたら、魔王様が鋭い嗅覚で駅の中に走って行ったというわけです」
 愛原「そうだったのか。錦糸町で良かったら、昼食奢るよ」
 リサ「マジ!?」
 小島「いいんですか!?」
 淀橋「どうして錦糸町?」
 愛原「いや、ここは人が多くて落ち着かないし……」
 レイチェル「それもそうですね。インバウンドも多いです」

 レイチェルは立場上は留学生であり、旅行客(インバウンド)ではない。

 淀橋「錦糸町も賑わってないですか?」
 小島「アキバよりはマシってことでしょ?奢ってもらえるんだから、錦糸町行こうよ」

 私達は改札口に向かった。
 因みに錦糸町の店に関してだが、アキバをコンパクトにした感じだと思ってもらっていい。
 例えばヨドバシカメラは錦糸町にもあるが、アキバよりはコンパクト。
 ドン・キホーテもあるが、やはりアキバよりはコンパクトである。
 また、飲食店も、チェーン店ならアキバにある店はだいたい錦糸町にもある。
 だが、混雑度で言うなら、小島さんの言う通り、錦糸町の方がまだマシだということだ。

 小島「アキバじゃ、混んでてゆっくり見れなかったお店あるじゃない?錦糸町の方がマシかもよ?」
 淀橋「でも錦糸町の方が小さいから、ある確率は落ちるよね?」
 小島「大丈夫でしょ。結構メジャーなヤツだし」

 どうやら、秋葉原で買い損ねた商品とかもあるようだ。

[同日12時53分 天候:曇 JR秋葉原駅・総武線ホーム→総武緩行線1224B電車・先頭車内]

〔まもなく、6番線に、各駅停車、津田沼行きが、参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、浅草橋に、停車します〕

 改札の中に入り、自販機で飲み物を買って水分を補給する。
 それから、ホームに向かった。
 十字型の秋葉原駅は、最上層に中央・総武線ホームがある。

〔「6番線、ご注意ください。各駅停車の津田沼行き、到着致します」〕

 ラインカラーのカナリアイエローを巻いた電車がやってきたが、明らかに、かつて山手線で走っていた車両である。
 山手線に新型車両が入った現在、そこでの運用を離脱し、中央・総武線各駅停車の運用に移っている。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、浅草橋に、停車します〕

 ここでの乗降は多い。
 リサがいる都合で、私達は先頭車に乗り込んだ。

 リサ「先生は座って」
 愛原「あ、ああ」

 降りる乗客の方が多かったが、乗り込んでみると、そんなに混んでいなかった。
 今は千葉方面よりも、新宿方面の方が賑わっているのかもしれない。
 私の1つ隣も空いたので、そこにはリサが座った。
 案の定、リサは密着してくる。
 ホームから、発車メロディが鳴り響いた。

〔6番線の、中央・総武線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ドアチャイムと共に電車のドアが閉まる。
 中央・総武線ホームには、ホームドアが無い。
 各駅停車の車両はほぼ規格が統一されているのだが、ここには特急車両も発着することがあるので、そのせいで設置できないのだろう。
 電車はドアが閉まると、すぐに発車した。

〔次は浅草橋、浅草橋。お出口は、左側です。都営地下鉄浅草線は、お乗り換えです〕

 リサ「先生、何を奢ってくれるの?」
 愛原「何が食べたい?」
 リサ「焼肉」
 愛原「この前食ったろ?」
 リサ「ステーキ」
 愛原「重くないか?」
 リサ「全然」

 そりゃ、リサには普通の食事だろうけどさぁ……。
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