報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「出張の準備」 2

2025-01-01 20:23:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日12時59分 天候:曇 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅→デニーズ錦糸町駅前店]

 

〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は、亀戸に、停車します〕

 私達を乗せた総武線各駅停車は、錦糸町駅に到着した。
 ここで電車を降りる。

 愛原「ファミレスでいいかな?」
 淀橋「いいと思います」
 愛原「すると、南口だな……」
 小島「南口だと、ヨドバシがあるか……」
 淀橋「ヨドバシならここにいるけど?」
 小島「いや、違うw そうじゃないw」

 南口の改札口を出て、駅の外に出る。
 錦糸町に戻って来るくらいなら、最初からここでも良かったな。
 ここにも“みどりの窓口”はある。

 リサ「先生、大丈夫なの?頭……」
 愛原「ああ、大丈夫だよ」
 リサ「この前、手術したのに……。その後遺症?」
 愛原「いや、そんなことは無いと思うけど……」

 後遺症か……。
 まさかとは思うがな。
 しかし、あの症状は頭の中に入っていたチップを取り出す前とそっくりだ。
 ただ、フラッシュバックの内容が変わっていたな……。
 まさか、また別のチップが入ってるとか?
 いや、そんなことはない。
 もしそうなら検査で見つかっているし、そこをすり抜けたとしても、手術の時に見つかっているはずだ。
 とはいうものの、一応、善場係長に後で報告しておこう。
 歩道橋を渡って国道14号線を渡り、商業ビルに向かう。
 そこにデニーズがあるので、そこに入って昼食を取ることにした。

 リサ「ステーキがあるねぇ……!」
 淀橋「リサ、さすがに今日は先生の奢りなんだから遠慮した方がいいよ」
 小島「昼デニセットから選べばいいんだよ」
 愛原「確かにハンバーグはあるな。ま、遠慮しないで好きなの頼んでいいよ。まあ、俺は昼デニセットのてりたまチーズハンバーグのセットするけど」
 淀橋「はい、先生基準」
 リサ「じゃあ、わたしもハンバーグにしとく」
 小島「私はパスタで」
 レイチェル「ハンバーグランチの中から選んでいいですか?」
 愛原「構わんよ。好きなの頼んで」

 秋葉原駅で変な頭の症状は出たが、それ以降は特に出ることもなく、食欲が落ちることもなかった。

[同日14時00分 天候:曇 デニーズ錦糸町駅前店→錦糸町駅前バス停]

 昼食が終わって会計を済ませる。
 今日はカードで払った。
 これなら、後でポイントが付く。
 付いたポイントは、後で有効活用させて頂くとしよう。
 私はこのまま帰るつもりだった。
 恐らくリサ達は、今度は買い物や遊ぶ場所を錦糸町に移して続行するものだと思っていたが……。

 愛原「えっ、リサも帰るのか?」
 リサ「うん、何か先生が心配だから」
 愛原「アキバのことは何かの間違いだよ。軽い熱中症みたいなものだったんだろう。水分や塩分も補給したし、あれから何の症状も出てないから大丈夫だと思うよ」
 リサ「でも……本当は病院に行った方がいいと思う。頭の事だから」
 愛原「そう言われると……」
 小島「私達のことなら、心配しなくていいよ。ちょっとヨドバシで買い損ねた物があるだけだから」
 淀橋「あと、ドンキね」
 小島「買う物は決まってるから、それが終わったら私達も帰りますよ。空模様も怪しいし」

 確かに、空は午前中よりも更に暑い雲が出て来た。
 天気予報によると、夕方から雨が降るらしい。
 しかし、この曇り方からして、予報よりも早めに降ってくるのではないだろうか。
 そんな気がした。

 淀橋「レイチェルはどうする?」
 レイチェル「それなら私も、リサ達に同行します。確か、バスで途中の駅まで行けたはずです」
 愛原「そうだな。俺はこれから築地駅行きのバスに乗るが、築地駅からなら日比谷線に乗り換えできる」
 リサ「じゃ、決まりだね。それじゃ、ヨドバシとコジマ、また明日」
 淀橋「うん。それじゃ」
 小島「また明日」
 レイチェル「See you!」

 私はリサやレイチェルと共に横断歩道を渡り、バス停に向かった。

 愛原「本当にいいのか?せっかくの日曜日なのに。ヘタすりゃ、来週も休みは日曜日だけになるというのにだぞ?」
 リサ「わたしはもう欲しい物はアキバで買っちゃったし」
 レイチェル「私もです。それに、今回はリサの監視が目的です」
 愛原「なるほど。まあ、そこまで言うのなら……」

[同日14時19分 天候:曇 錦糸町駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 菊川方面に向かうバスに乗り込む。
 今度はこのバス停が始発の為、やってきたバスに先客が乗っていることは無かった。
 乗り込んで1番後ろの席に座る。

 愛原「レイチェルは終点まで乗って行けばいいよ」
 レイチェル「そうします」
 リサ「先生、頭痛は?」
 愛原「だから無いって」
 リサ「そう……」

 とは言ったが、バスを待っている間、善場係長にはメールで報告した。
 だが、日曜日ということもあり、今のところまだ返信は来ない。
 そうしているうちに発車の時間になり、バスは前扉を閉めて発車した。

〔発車致します。お掴まり下さい〕
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは、浜町中の橋、八丁堀二丁目経由、築地駅前行きでございます。次は錦糸堀、錦糸堀でございます。警備会社の全日警、東京中央支社へは菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、錦糸堀でございます〕

 愛原「……BSAAはどうなんだ?」
 レイチェル「Huh?どうとは?」
 愛原「いや、偽情報に踊らされて混乱しただろう?もう収束したのか?」
 レイチェル「問題無いですよ。センセイ達の疑いは晴れました」
 愛原「そうか……」

 いや、そうじゃなく、偽情報を掴んで混乱させた者の責任問題とか、今後の対策は大丈夫なのか聞きたかったのだが、多分教えてくれないだろうと思い、これ以上の質問はやめた。

 愛原「明日、俺の出張先でBSAAが護衛に当たってくれるという話は?」
 レイチェル「……聞いてはいますが、私は呼ばれていません。まあ、私もリサと同様、学校があるからでしょうね」

 か、もしくは訓練兵を訓練目的で連れて行けるほど簡単な現場ではないかもしれないってこともあり得る。
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“私立探偵 愛原学” 「出張の準備」

2025-01-01 16:20:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日12時20分 天候:曇 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅前→秋葉原駅みどりの窓口]

 私は善場係長のコペンに乗って、秋葉原駅に向かった。
 初めて乗るオープンカーであったが、夏は暑いとのことで幌が付けられ、クーラーが点けられた。

 善場「冬はむしろオープンにしても、ヒーターを強めにすれば暖かいのですが」
 愛原「それにしても、係長がこういう車にお乗りだとは知りませんでした」

 しかもこのコペン、マニュアル車である。

 愛原「高橋と、いい勝負ができるんじゃないですか?」
 善場「どうでしょうねぇ……。ただ、高橋被告が勝負を掛けてきた時点で、私は道路交通法違反の現行犯で逮捕しますが」
 愛原「それはそう」

 私が思いっ切り納得すると、係長は仕事の話に戻った。

 善場「今回の費用についても、後ほど請求して頂ければ、精算させて頂きます。場所柄、またレンタカーを借りて向かうことになるでしょうから」
 愛原「ありがとうございます」
 善場「急な宿泊に関しましても、費用は後ほど請求してください」
 愛原「かしこまりました」
 善場「一応、BSAAにも応援を依頼しておきます。武装集団たる彼らのことですから、現地集合になるかとは思いますが」
 愛原「承知致しました」

 こうして私は、休日で賑わう秋葉原の駅前で車を降りた。
 善場係長は軽自動車ながら、マニュアル車ならではの吹かし方をして去って行ったが、もしかして、乗ろうと思えばもっと大きな車に乗れるのではないだろうか。
 私は再び蒸し暑い屋外に出されると、そこから逃げるように、同じく多くの人で賑わう秋葉原駅の中に入った。
 そして、その中にある“みどりの窓口”に並んでいると……。

 リサ「せーんせっ!」
 愛原「!」

 後ろからリサに声を掛けられた。
 振り向くと、そこにいたのはリサだけではなかった。

 淀橋「ホントだ!愛原先生だ!」
 小島「よく遠くから分かったね!?」
 レイチェル「ハンター、ですね」
 リサ「匂いで分かるんだよ!エッヘン!」(`・∀・´)
 愛原「……犬かな?」
 リサ「鬼だよ!……それより、何してるの!?」
 愛原「新幹線のキップ買ってるんだよ。明日から出張だから」
 リサ「ええっ!?じゃあ、私も行く!」
 一同「学校は!?」
 リサ「えっ?」
 愛原「お前は学校があるだろ。俺1人で行くことになったから」
 リサ「ええっ!?」

 私の順番が回ってきたので、私は窓口に向かった。

 愛原「“レール&レンタカー”で予約した者ですが……」
 駅員「かしこまりました。……」
 リサ「ここは涼しいね!」
 淀橋「なにちゃっかり涼んでるのw」
 小島「いや、それ、うちらもヒトのこと言えないからw」
 レイチェル「Gee...」

 あのコ達は、もうアキバでの用事は済んだのだろうか。
 よく見ると、ドンキの袋とか色々と持っているが……。

 駅員「……それではお会計が……」
 愛原「はい」

 私は支払いを終えた。

 淀橋「そういえば先生って、運転できるんですか?」
 愛原「できるよw」
 リサ「八丈島に行った時は、先生が運転してた」
 淀橋「あっ、これは失礼しましたw」
 愛原「1人で仕事してた時は、車も自分で運転してたものさ」

 ライトバン借りて、山奥の屋敷に行った話とか……。

 愛原「うっ……!」
 リサ「先生!?」

 突然、私の頭に激しい頭痛と眩暈が起きた。
 危うく倒れそうになったが、レイチェルとリサが支えてくれた。

 レイチェル「愛原センセイ、Are you OK?」
 愛原「あ、ああ……」

 それはすぐに治まった。
 だが、フラッシュバックも起きた。
 その時に見えた光景は……。

 愛原「今日は蒸し暑いから、軽く熱中症になったのかもな……」
 リサ「ええっ!?」
 レイチェル「No.愛原センセイ、今のふらつきは……。!」

 レイチェルが何か言い掛けたのを、小島さんが止めた。

 小島「先生、どこかで休んだ方が……」
 愛原「い、いや、大丈夫だ。ちょっと水分補給したら、帰るつもりだよ。それより、キミ達こそ、買い物はいいの?」
 淀橋「アキバでの買い物は終わりました。お昼どうするか悩んでたら、魔王様が鋭い嗅覚で駅の中に走って行ったというわけです」
 愛原「そうだったのか。錦糸町で良かったら、昼食奢るよ」
 リサ「マジ!?」
 小島「いいんですか!?」
 淀橋「どうして錦糸町?」
 愛原「いや、ここは人が多くて落ち着かないし……」
 レイチェル「それもそうですね。インバウンドも多いです」

 レイチェルは立場上は留学生であり、旅行客(インバウンド)ではない。

 淀橋「錦糸町も賑わってないですか?」
 小島「アキバよりはマシってことでしょ?奢ってもらえるんだから、錦糸町行こうよ」

 私達は改札口に向かった。
 因みに錦糸町の店に関してだが、アキバをコンパクトにした感じだと思ってもらっていい。
 例えばヨドバシカメラは錦糸町にもあるが、アキバよりはコンパクト。
 ドン・キホーテもあるが、やはりアキバよりはコンパクトである。
 また、飲食店も、チェーン店ならアキバにある店はだいたい錦糸町にもある。
 だが、混雑度で言うなら、小島さんの言う通り、錦糸町の方がまだマシだということだ。

 小島「アキバじゃ、混んでてゆっくり見れなかったお店あるじゃない?錦糸町の方がマシかもよ?」
 淀橋「でも錦糸町の方が小さいから、ある確率は落ちるよね?」
 小島「大丈夫でしょ。結構メジャーなヤツだし」

 どうやら、秋葉原で買い損ねた商品とかもあるようだ。

[同日12時53分 天候:曇 JR秋葉原駅・総武線ホーム→総武緩行線1224B電車・先頭車内]

〔まもなく、6番線に、各駅停車、津田沼行きが、参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、浅草橋に、停車します〕

 改札の中に入り、自販機で飲み物を買って水分を補給する。
 それから、ホームに向かった。
 十字型の秋葉原駅は、最上層に中央・総武線ホームがある。

〔「6番線、ご注意ください。各駅停車の津田沼行き、到着致します」〕

 ラインカラーのカナリアイエローを巻いた電車がやってきたが、明らかに、かつて山手線で走っていた車両である。
 山手線に新型車両が入った現在、そこでの運用を離脱し、中央・総武線各駅停車の運用に移っている。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、浅草橋に、停車します〕

 ここでの乗降は多い。
 リサがいる都合で、私達は先頭車に乗り込んだ。

 リサ「先生は座って」
 愛原「あ、ああ」

 降りる乗客の方が多かったが、乗り込んでみると、そんなに混んでいなかった。
 今は千葉方面よりも、新宿方面の方が賑わっているのかもしれない。
 私の1つ隣も空いたので、そこにはリサが座った。
 案の定、リサは密着してくる。
 ホームから、発車メロディが鳴り響いた。

〔6番線の、中央・総武線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ドアチャイムと共に電車のドアが閉まる。
 中央・総武線ホームには、ホームドアが無い。
 各駅停車の車両はほぼ規格が統一されているのだが、ここには特急車両も発着することがあるので、そのせいで設置できないのだろう。
 電車はドアが閉まると、すぐに発車した。

〔次は浅草橋、浅草橋。お出口は、左側です。都営地下鉄浅草線は、お乗り換えです〕

 リサ「先生、何を奢ってくれるの?」
 愛原「何が食べたい?」
 リサ「焼肉」
 愛原「この前食ったろ?」
 リサ「ステーキ」
 愛原「重くないか?」
 リサ「全然」

 そりゃ、リサには普通の食事だろうけどさぁ……。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの依頼とデイライト」

2024-12-29 20:38:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日11時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 善場係長からついに返信があり、詳しい話が聞きたいので、事務所にお邪魔するということだった。
 車で来るというので、ガレージのシャッターを開けておく。
 ガレージには既に業務用にリースしているライトバンがあるが、その横に1台駐車できるスペースがある。
 更にその横に、ギリギリ軽自動車なら駐車できそうなスペースはあるのだが、ギリギリ過ぎるので、高橋夫婦のバイク置き場にしている。
 やってきたのは、いつもの黒いミニバンではなかった。
 白のコペンである。
 あれ?飛び込みの客でも来たかな?
 私が呆気に取られていると、普通にバックしてガレージの中に入って行った。
 しょうがないのでエレベーターに乗って、ガレージまで迎えに行ってみようと思う。

 愛原「あれ?善場係長!?」

 エレベーターで1階に下りると、車から降りて来たのは善場係長だった。

 善場「愛原所長、お疲れさまです。本日は休日で公用車が使えませんので、私用の車で来ました」

 善場係長、相変わらずスーツ姿ではあったが……それにしても……。

 愛原「意外ですね。意外なお車にお乗りですね」
 善場「よく言われます。それより、斉藤容疑者から連絡があったということで、詳しいお話を」
 愛原「ああ、そうでした。どうぞ、こちらへ」

 私は今しがた乗って来たエレベーターに、係長を案内した。
 あのコペン、もしもマニュアル車だったら、高橋やパールと勝負できるかもな。

 パール「いらしゃいませ」

 エレベーターが2階に到着すると、パールが出迎えた。

 善場「急な訪問、失礼致します」

 外はもう梅雨が終わったのかと思うくらいの暑さだが、事務所内は冷房を効かせている。

 愛原「何か冷たいもの、お出しして」
 パール「かしこまりました」
 善場「おかまいなく」

 私は係長を応接コーナーに案内した。
 すかさずパールが、冷たい麦茶を持って来た。

 善場「恐れ入ります。所長、まずは斉藤容疑者から連絡があった時の状況からお伺いします」
 愛原「はい。私が部屋で就寝していましたら、今朝7時頃に電話がありました」

 私は覚えている限りの事を善場係長に話した。

 善場「電話の内容は録音されていますか?」
 愛原「すいません。寝ている時の電話だったもので、録音ボタンを押していなくて……」
 善場「承知しました。ファックスの送信元と、電話の内容から、容疑者は本当にウラジオストク市内から電話を掛け、ファックスを送った物と思われます。ウラジオストクとの時差は1時間です。向こうが1時間早く進んでいます。今、こちらは午前11時くらいですので、向こうは12時くらいということですね」
 愛原「私は斉藤社長……失礼、斉藤さんの依頼を受けるべきでしょうか?」
 善場「本来なら受けるべきではありません。が、容疑者が何を企んでいるのか気になるので、受けたフリをしてください。表向きには、容疑者の言う通りにしてみてください」
 愛原「わ、分かりました。それには、例の『プラチナカード』が必要のようですが?」
 善場「解析は明日終了しますので、明日の夜までにはお返しします」
 愛原「夜ですか」
 善場「容疑者が何を考えているのか分からないので、行動はなるべく早い方がいいと思います。ただ、今日は日曜日で解析チームも休みですし、明日から再開するにしても、1日掛かりになると思われます」
 愛原「なるほど。どうやって、こちらに返して頂けるのですか?」
 善場「バイク便で返却します」
 愛原「あ、なるほど、バイク便!」

 通常の宅配便よりも料金は高いが、都内であれば、当日配達も深夜配達も可能である。

 善場「発送しましたら御連絡致しますので、お受取りの方、よろしくお願い致します」
 愛原「分かりました。そうなると、明後日には出発しないといけませんね」
 善場「はい。急な事で申し訳ありませんが、宜しくお願い致します」
 愛原「はい。ただ、リサは学校だから連れて行けないですねぇ……」

 パールは事務所で留守番していてもらわなくてはならない。
 超絶久しぶりに、私が1人で調査に向かうのか……。

 愛原「いや、ちょっと危険な場所ですので、護衛は必要なんですが……。高橋を超法規的な措置で釈放してもらえませんか?」
 善場「それは無理ですねぇ……。BSAAに依頼することも可能だったのですが、どうも心配です」
 愛原「レイチェルは……レイチェルも学校か」
 善場「斉藤容疑者が愛原所長に依頼するくらいですから、そんなに危険ではないと思いますが……。もちろん銃の携行は許可しますし、危険だと判断されたら、発砲も許可します」
 愛原「はあ……」

 まあ、そりゃかつては1人で調査していた時期もあったけどね。

 愛原「それではこの契約書は、ファックスして構いませんね?」
 善場「結構です。もちろん、コピーは取ってありますね?」
 愛原「もちろんです」

 私は契約書をロシアのウラジオストクのホテルに向けて送信した。

 善場「ここから斉藤容疑者に電話できないのですか?」
 愛原「それが、電話番号見たら、ロシアの番号で……」

 私はスマホを見せた。

 善場「なるほど。滞在先のホテルの電話から掛けたようですね。恐らく、ここからホテルに掛けたところで、ホテル側は斉藤容疑者への取り次ぎを拒否することになっているわけですね。考えたものです」

 そして、斉藤元社長へのファックスが届いたら、自分の所へ持って来るようにとでも命じているのだろう。
 彼の滞在先のホテルはどこなのかは不明だが、安宿ではないと思われる。
 何せ、シベリア鉄道のロシア号でも1等車に乗っていたというのだから。

 善場「それでは移動しましょう」
 愛原「移動?」
 善場「新幹線のキップを購入しないといけませんね?車でJRの駅まで送りしますよ」
 愛原「は、はあ……。ありがとうございます」

 初めてオープンカーに乗るのだと理解した。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの連絡」

2024-12-29 12:53:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月18日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 今日は日曜日だ。
 ゆっくり寝ていよう。
 そう思ったのだが、枕元においたスマホがアラームを鳴らした。
 時間設定を間違えてしまったのだろうか?
 それにしては、メロディが違う。
 これは……起床のアラームではなく……音声着信のメロディだ。
 私はパッと飛び起きると、すぐに電話に出た。

 愛原「も、もしもし!?」
 ???「私だ。仕事の依頼だ」
 愛原「ぼ、ボス!?……って、ええっ!?」

 電話からは懐かしい声がした。
 零細探偵事務所の私は、探偵協会から依頼人を斡旋されることが多い。
 そんな時、協会幹部が、何故か『私だ』と名乗るので、高橋からは、『私田さん』と呼ばれていた。
 その正体は、探偵協会に出資していた斉藤秀樹元社長であったのだが。
 てことは、つまり……。

 斉藤「あれ?もしかして、朝早かったですかね?こちらはもう午前8時なんですが……」
 愛原「斉藤社長!?」
 斉藤「はっはっは!私はもう社長をクビになった男です。『斉藤』で結構」
 愛原「し、しかし……」

 斉藤元社長が私のスマホの電話番号を知っていることは、何ら不思議なことではない。
 ただ、よく掛けられたものだ。

 愛原「いいんですか?私の電話にのんきに掛けて……」
 斉藤「大丈夫。安全は確保されている。イエメンやレバノンよりもロシアの方が安全だよ」
 愛原「ウクライナと戦争中なのに!?」
 斉藤「戦争中だからこそ、却って安全なこともある。ロシア政府はそれを理由に、BSAAの介入を認めていない」
 愛原「そういうもんですか。移動はシベリア鉄道で?」
 斉藤「ああ。ロシア号だよ。是非とも、今度は愛原さんとシベリア鉄道旅行をしたいものです」
 愛原「私もロシアに逃亡するようなことになったら、宜しくお願います」
 斉藤「ああ、いいでしょう。それより、仕事の依頼があるのですがね?」
 愛原「ほ、報酬はあるのですか?」
 斉藤「私の家から、『プラチナカード』は受け取りましたかね?」
 愛原「はい」
 斉藤「結構です。それを持って……」

[同日09時00分 天候:晴 愛原家3階ダイニング]

 

 今朝はハムエッグとロールパン。

 愛原「はぁぁ……」
 リサ「先生、どうしたの?」
 愛原「ちょっと……今日は日曜日だが、休めそうにない……」
 リサ「これのこと!?」

 リサはテレビを指さした。

〔「……斉藤秀樹容疑者は、シベリア鉄道でウラジオストク市内に入り、現在はホテルに滞在しているものと見られています。ウラジオストク市と日本との時差は僅か1時間ほどであり、今日は日曜日ということもあって、日本国総領事館の職員の接触も月曜日以降になると見られ……」〕

 愛原「そうだな。斉藤元社長絡みだ」

 私は溜め息をついた。

 リサ「わたしは出かけない方がいい?」
 愛原「いや、アキバや錦糸町くらいならいいよ。何かあったら、連絡するから」
 リサ「分かった」

 因みに私は善場係長にメールを送ってみたが、日曜日ということもあって、まだ返信は来ていない。
 斉藤元社長が日曜日に連絡してきたのは、役所関係が休みになるからだろうか。
 リサが手に入れた『プラチナカード』は、まだデイライトに貸したままである。
 明日以降に解析と複製を終えて返却されるものと思われる。
 なので、私は今日は動けない。

[同日09時30分 天候:晴 愛原学探偵事務所2階]

 朝食を食べ終えた後で2階の事務所に行ってみると、ファックスが受信されていた。
 これは仕事の依頼書である。
 発信元はウラジオストクであった。
 ロシア語は読めないが、ロシア語が書かれていた時点でお察しだろう。
 もちろん、依頼書を作成したのは斉藤元社長だから、内容は日本語であったが。
 試しにロシア語の部分を翻訳アプリで翻訳してみたら、ウラジオストク市内のホテルからだと分かった。
 報道の通り、今はウラジオストク市内のホテルに滞在しているのだろう。
 もちろんその町とて、純然たるロシア国内。
 BSAAが介入できない国となっている。
 ロシアは世界一広い国土を持っており、いくら戦争中と言っても、全土が戦闘地域というわけでもない。
 さすがに世界大戦や冷戦の時は全土が危険地域だっただろうが、ウクライナとの戦争中に現時においては、極東地域はそんなに危険というわけでもないようだ。

 愛原「これもコピーして、保存しておくか……」

 依頼書は契約書ではない。
 あくまでも依頼書であり、この仕事を引き受けるといった場合は契約書を作成してそれを取り交わすのが通例となっている。
 多分、デイライトから何か言われるだろうが、一応、契約書の作成まではしておこう。

 リサ「先生……」

 その作業をやっていると、リサが上階から下りて来た。
 体操服にブルマから、Tシャツとデニムのショートパンツに着替えている。

 リサ「わたしは出かけて来るけど……」
 愛原「ああ、気をつけて。Pasmoはチャージしてあるな?」
 リサ「……チャージするから、おこづかいw」
 愛原「……あんまり無駄遣いはするなよ?」
 リサ「ついでにお使いやるよ?このレターパック、ポストに入れておけばいいんでしょ?」

 それはデイライトに出す物だった。
 先日の出張に絡み、それに掛かった費用を先に精算する為の書類等が入っている。

 愛原「ああ、宜しく頼む」

 私は追跡番号が書かれているラベルを剥がすと、リサに渡した。

 愛原「ポストの場所は分かるか?」
 リサ「郵便局の前でいいんでしょ?」
 愛原「そうそう」

 郵便局なら菊川駅からそんなに離れていないから、まだリサが単独行動が許される範囲で済むはずだ。
 リサの単独行動が認められるのは、通学のみ。
 菊川駅~岩本町駅~秋葉原駅~上野駅である。

 リサ「行ってきます」
 愛原「行ってらっしゃい」

 リサはレターパックを持って、事務所の外に出ていった。
 今のところ、まだ善場係長からの連絡は無い。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹の動向」

2024-12-28 20:51:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月17日18時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 食卓に就く。

 

 リサにはポークステーキ。

 

 久しぶりに魚が食べたかった私には、ホッケの開きが出された。

 愛原「いただきまーす!」
 リサ「いただきます!」

 比較的簡単にできる夕食で、時短を図ったらしい。
 だが、美味いのでOKである。
 もちろんおかずはこれだけでなく、冷凍食品ではあるものの、ポテトフライやコロッケもあった。
 サラダもある。

 愛原「そういえば高橋からの手紙が何通が届いていたらしいな?」
 パール「そうなんです。一応、私宛てでした」
 リサ「先生とわたしには?」
 パール「それは……無かったです」
 リサ「なんだw」
 愛原「ふーん……俺宛てには無かったのか」
 パール「こんな大事件を起こしておいて、先生に手紙を出すのは申し訳ないと書いてありました」
 愛原「そんなことないよ!そんなこと気にしなくていいよ!遠慮しないで、ガンガン手紙出してくれていいんだよ!?」
 パール「今度、面会した時にそう伝えておきます」
 リサ「お兄ちゃん、変な所で気を使うよね」
 愛原「全くだ……。手紙には他に何て書いてあったんだ?」
 パール「……『レズガキのパパは、シベリア超特急に乗っている。もうすぐ東海岸に着く』と」
 愛原「レズガキって、斉藤……我那覇絵恋のことだよな?」
 パール「そのパパ……つまり、絵恋お嬢様のお父様とは、御主人様のことです」

 つまり、斉藤元社長だ。

 リサ「シベリア超特急って?」
 愛原「シベリア鉄道を舞台にしたB級映画のタイトルだが、今で言うならロシア号やボストーク号がそれに当たる。2つとも、シベリア鉄道を走る超特急の名前だ」
 リサ「東海岸って?」
 愛原「その2つの列車のうち、海沿いの町に着くのはロシア号の方だな。ボストーク号はロシアのモスクワと中国の北京を結ぶ列車。ロシア号は、モスクワから同じロシアのウラジオストクに向かう列車だ。で、ウラジオストクは日本海に面している。向こうでは『東海岸』とは言わないけど、首都モスクワから見れば、東の海岸に位置する町ではあるから、そういう暗号なんだと思う」
 パール「つまりは……」
 愛原「斉藤元社長は、シベリア鉄道のロシア号に乗って、ウラジオストクに向かっているということだ」
 リサ「どうしてそこへ?」
 愛原「ウラジオストクという町は、日本とも密接的な関係にあるんだ。姉妹都市もいくつかあるしな。変な韓流ブームのせいで、マスコミだけが盛り上がってる韓国のソウルよりも近いんだよ」
 リサ「へえ……」
 愛原「映画のシベリア超特急も、1941年に、陸軍大将の山下泰文大将がロシア視察を終えて、シベリア鉄道でウラジオストクに向かっている最中に殺人事件に巻き込まれたという設定だからな。ウラジオストクからは昔は船が出ていて、それで日本と行き来していたそうだ」
 リサ「ふーん……」
 愛原「今は飛行機が飛んでいるが、果たして、斉藤社長、本当に日本に戻って来るつもりなのか?」
 パール「よく列車に乗っていられますね?映画だと途中の駅から、警察隊が乗り込んで来て、無理やり逮捕なんてありそうですけど……」
 愛原「まず、日本とロシアとでは、犯罪人引渡条約が結ばれていないんだ。だから、斉藤社長がロシア国内で何か犯罪でもやってない限り、向こうの警察はそうしないよ」
 リサ「BSAAは?」
 愛原「分からん。どうしてBSAAが動かないのか。はたまた、動けないのか」
 パール「動けない?」
 愛原「シベリア鉄道は、ロシア政府が所有する、いわばロシア国鉄の一部だ。BSAAが勝手にやってきて、ドンパチするのは困るだろうさ」
 パール「御主人様は、バイオテロに加担した国際指名手配犯とのことですが……」
 愛原「指名手配しているのは、BSAAだけ。実はインターポールなどは指名手配していない。証拠が無いから」
 パール「では、何故BSAAは御主人様を追っているのですか?」
 愛原「BSAA独自では、斉藤社長がアンブレラと繋がっていたという何かを見つけたんだろうさ。BSAAはあくまで、バイオテロの防止、鎮圧、そして事後処理までが仕事だ。BSAAとしては、未だにアンブレラの事件の事後処理は終わっていないとする。何を持って終了とするのかは不明だが、少しでも関与した者は片っ端から捕まえないと気が済まないんだろう」

 その時、テレビに気づいたリサが……。

 リサ「あーっ!エレンのお父さん!」

 テレビの画面を指さした。

 愛原「!」

 私もつられて画面を見ると、確かに彼が映っていた。

〔「……繰り返します。20××年、○×県霧生市で大規模バイオテロ事件を起こした日本アンブレラ製薬。それに資金提供などの形で加担したとされ、国連組織BSAAに国際指名手配されている斉藤秀樹容疑者ですが、現在はロシア国内に潜伏しているされ、シベリア鉄道で移動しているとされています。この事に際し、ロシア政府では、『特に確認していない。確認の義務も無い。もしもBSAAが我が国のインフラを傷つけるようなことがあれば、直ちに常任理事国として、BSAAへの出資を一切取りやめる』と発表しています」〕

 リサ「ロシア強っ!」
 愛原「まあ……ロシアもどちらかというと、生物兵器を使いたい側だろうからな……。あんまり関わり合いになりたくないんじゃないか?」

〔「これに対し、アメリカ政府は、『ロシア政府の態度は、世界中のバイオテロを根絶する正義に反するものだ。強い表現でこれを非難する』との声明を発表しています」〕

 愛原「要はアメリカの思惑か……。あれ?だったら、ロシア号じゃなくて、ボストーク号で中国行った方が安全か?だって、武漢ウィルス、世界中にバラ撒いたくらいだもんな?」
 リサ「あー……」
 パール「御主人様はあまり中国が好きではありませんでしたから、それは無いと思いますよ?」
 愛原「そうかな」

 もしも斉藤元社長が日本に帰って来るようなことがあったら、大変な騒ぎになるだろう。
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