報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「新富士駅に到着」

2024-11-30 11:16:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日08時32分 天候:晴 静岡県富士市川成島 JR東海道新幹線705A列車・1号車内→新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”サビ)♪♪。 まもなく、新富士です。お出口は、左側です。新富士を出ますと、次は、静岡に停まります〕

 愛原「新幹線だと1時間弱で行けるから楽だな」
 パール「はい。東名高速は、早くも行楽客の車で渋滞です」
 愛原「だろうな」

 私達は降りる準備をした。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく新富士、新富士です。お出口は、左側です。ホーム進入の際、電車が大きく揺れる場合がございます。お立ちのお客様は、ご注意ください。また、網棚のお荷物にもご注意ください。新富士駅で、5分ほど停車致します。発車は、8時37分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 荷物を降ろしてデッキに向かう。
 すると、本線からホームのある副線に移る為、そこで列車が左右に揺れた。
 本線を最高速度285kmで走る列車からすれば、かなり減速するポイントなのだろうが、それでも在来線で似たような構造の駅よりは減速しないで入線できる構造になっているはずだ。
 このまま列車は、時速30kmまでは自動で減速する。
 この時、その速度に落ちるまで、運転士は手動でブレーキボタンを押さなくてならない。
 自動なのに手動で?と思うかもしれないが、あえてそうさせることで、運転士に異常が発生していないことを確認する為である。
 かつて山陽新幹線で、停車駅に到着した列車が、所定の停止位置よりかなり手前に停車してしまい、再加速することもなく、そのまま止まってしまったということがあった。
 駅員や車掌が確認に行ったところ、運転士が意識を無くしており、ブレーキボタンの操作が無かった為、自動で緊急停止したものだとされた。
 時速30km以下になったら、あとは運転士が手動でブレーキハンドルを操作して停車させる。
 ここまでできたのだから、まさかこの期に及んで運転士が意識が無くすとは考えられないが、万が一の為、所定の停止位置を過ぎたら、今度は車掌がブレーキ弁を引いて緊急停車させる。
 この辺りは在来線と同じ。
 で、この列車は、ちゃんと所定の停止位置に止まった。
 ドアチャイムの音色と共に、ドアが開く。
 JR東日本だと、『ドアが開きます』という自動放送だが、こちらはチャイム。
 ドアが開く速度が速いのは、特筆できる。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 

 新富士駅に到着した。

 愛原「それじゃ、レンタカーショップに行って、レンタカー借りてくるか」
 パール「はーい」
 愛原「その前にタバコの吸い溜め、してきていいぞ。最近のレンタカーも禁煙車だからな」
 パール「……ですよね」

 パールはホームの上をキョロキョロしたが……。

 愛原「新富士駅の喫煙所はコンコースにあるよ」
 パール「そうでしたか」

 ホームを歩いているうちに、後続の通過列車が轟音を立てて通過していく。
 この辺りは線形か良いらしく、通過列車も基本的には最高速度の285kmで通過するという。
 階段を下りて、パールはコンコースにある喫煙所に入って行った。

 リサ「あっ、先生。これ……」

 リサが見つけたのは、大石寺の広告。

 

 愛原「どうやら、ここの信徒達も、この駅を使うようだな」

 栗原蓮華を思い出す。
 鬼化してしまい、壮絶な最期を遂げてしまったが、何だろう?
 人間だった頃よりも幸せだったように見えたのは。
 人間だった頃は、鬼のようなBOWのリサ・トレヴァー『1番』に片足を食い千切られてしまったが、自身もBOW化したことで、足が再生したのが大きかったか。
 BOWの特徴として、致命傷を負っても、見る見るうちに回復してしまうというのがある。
 ハンドガンの1発や2発食らっても倒れないのはその為だ。

 愛原「まさかとは思うけど、最終的に、BSAAの重鎮様が来日されて全て解決なんてことは無いよな?」
 リサ「まさか……」
 愛原「なあ。……まあ、いいや。俺達は改札の外で待っていよう」
 リサ「うん」

 自動改札機にキップを入れて、外に出る。
 改札外コンコースに自動販売機があったので、これで缶コーヒーでも買ってパールを待つことにした。

 

 リサ「焼肉……🤤」
 愛原「何だ?今は行かないぞ?」

 新富士駅は“こだま”しか停車しない小さな駅ながら、やはり小さいながらも駅ビルはある。
 主に飲食店が入居しているようだが、何だか高そうな焼肉屋もあった。

 リサ「今は!?後で行くの!?」
 愛原「この店かどうかは分からんが、この仕事が無事に終わったら、打ち上げに焼肉くらい食わせてやるよ」
 リサ「やったーっ!」

 ……後で食べ放題の店を検索しておこう。
 多分ここ、食べ放題じゃない。

 パール「お待たせしましたー」

 しばらくしてパールがやってきた。

 愛原「いや、いいよ」

 私は缶コーヒーを飲み干すと、回収ボックスに入れた。

 愛原「じゃ、レンタカー屋に行くか」

 私達は富士山口から駅の外に出ると、予約しているレンタカーショップに向かった。
 頭上からは、通過列車の轟音が響いていた。
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“私立探偵 愛原学” 「こだま705号の旅」

2024-11-29 20:54:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日07時15分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線705A列車・1号車内]

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく、16番線に、7時27分発、“こだま”705号、名古屋行きが、入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に停車致します。グリーン車は、8号車、9号車、10号車。自由席は、1号車から、6号車までと、15号車、16号車です。……〕

 

 コンコースの売店は混雑していたので、ホームの売店で駅弁を購入した。
 もちろんリサが購入したのは、肉系。
 『炭火焼牛カルビ重』だった。
 私は魚系で、『深川めし』にした。
 パールは小食で、『おにぎり弁当』である。

〔「16番線、お下がりください。7時27分、当駅始発、“こだま”705号、名古屋行きが入ります。安全柵から離れてお待ちください。……」〕

 駅弁とお茶などを買った後、ホームに戻る。
 すると、列車がホームに滑り込んで来たところだった。

 愛原「N700Aか……。さすがに、“こだま”じゃ、N700Sには当たらないかな……」

 駅弁を手に、先頭の1号車に向かう。
 そうしている間に、可動式の安全柵が“乙女の祈り”のメロディを鳴らしながら開いた。
 平日ということもあり、ビジネス客の方が多かったが、外国人旅行客の姿も多く見かける。
 それでも、まだ“こだま”は空いている方だった。
 隣の“のぞみ”が発車する17番線の方が、乗客が列を作っている。

 愛原「おー、修学旅行だ」
 リサ「おー!」

 発車票を見ると、“こだま”705号の後、16番線には『修学旅行』と表示されていた。
 16両編成をまるっと修学旅行生が貸し切るわけだが、多くが1つの学校で16両編成をまるっと借りるわけではなく、いくつかの学校が何両かに分けて乗ることが多い。
 今や修学旅行も、行先多彩の時代で、全員で関西方面に……という時代ではないのだ。
 リサ達のように沖縄に行ったり、海外に行ったりすることも多い。
 先ほどの修学旅行生達はここにはいないので、別のホームに行ったのだろう。
 人数的に2~3両ほどの貸切で事足りそうだったので、一般の列車で数両貸切にしたのかもしれない。

 愛原「リサは修学旅行で新幹線に乗る機会は無かったな」
 リサ「中等部代替修学旅行では乗ったけどね」
 愛原「あ、そうか!帰りか!」
 リサ「そう。郡山から」
 愛原「修学旅行専用列車じゃなかったが、“なすの”の車両を何両か貸切にしたんだったな」
 リサ「そう」

 そんなことを話しながら、先頭の1号車に向かう。
 パールは途中の喫煙所に立ち寄り、吸い溜めしてから乗るという。
 “こだま”は空いていて、この時点で1号車は数えるほどしか乗っていなかった。
 富士山観光には“こだま”と“ひかり”が需要がありそうな気がするが、さすがに端っこの車両は空いているようだ。
 1号車に乗り込み、空いている3人席に座る。
 リサには窓側に座らせ、私は真ん中の席に座った。
 荷物は網棚に載せる。
 機内持ち込み可能サイズの荷物ということもあり、こちらの棚にも載せることはできた。

 

〔ご案内致します。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に、停車致します〕
〔「皆様、おはようございます。本日も新幹線をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は7時27分発、“こだま”705号、名古屋行きです。品川、新横浜、小田原、熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松、豊橋、三河安城、終点名古屋の順に停まります。……」〕

 座席に座ると、リサは早速テーブルを出して、駅弁を食べ始めた。
 私も駅弁の蓋を開ける。

 リサ「先生は魚系好きだね」
 愛原「まあ、こういう時にしか食べれないからな」

 隣の15番線に、列車が来たが、そこに多くの学生が乗り込んでいる。
 どうやら、他にも修学旅行生が乗るようだ。
 私服のリサと違って、制服を着ていた。
 まあ、当たり前か。
 そのリサだが、黒いプリーツスカートを穿いて、上は白いTシャツというラフな姿だ。
 半袖のグレーのパーカーを羽織って、いざという時はそのフードで角が隠せるようにするという。
 今のところは、完全に人間に化けている状態。
 化け切れないのは、牙と少し長くて尖った爪と、毛先がオレンジ色に染まっているおかっぱ頭くらいか。

〔「……発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ「修学旅行生は、こっちに乗って来ないね?」
 愛原「そりゃそうだろう。大体が皆、関西方面に行く。多くは“のぞみ”や“ひかり”で行くものだよ。あともしくは、修学旅行用列車か」
 リサ「先生の時は?」
 愛原「俺の時は往復“ひかり”だったな。行きは100系で帰りは300系だった。今はもう廃車だから、懐かしいよ」

 ましてやこの電車は名古屋止まりだから、尚更乗ってこないだろう。

[同日07時27分 天候:晴 JR東海道新幹線705A列車・1号車内]

〔「レピーター点灯です」〕

 発車の時間になり、ホームに発車メロディが鳴り響く。
 かつて、初代“のぞみ”300系の車内チャイムで使用されたものだ。
 これを今は、東京駅の発車メロディに使われている。
 その頃には、パールも座席に戻っていた。

〔16番線、“こだま”705号、名古屋行きが、発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側まで、お下がりください〕
〔「ITVよーし!乗降……終了!16番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ホームにけたたましい客扱い終了合図のブザーが鳴り響く。
 かつてはベルだったのだろうが、今はブザー。
 JR東日本側が甲高い音色なのに対して、東海側は重厚なブザー。
 紛らわしくないようにする為だろうか。
 そして、ドアチャイムの音と共にドアが閉まった。
 “乙女の祈り”のチャイムと共に、安全柵も閉まる。
 それから、列車が走り出した。
 私はスマホを取り出し、善場係長に東京駅を出発した旨の報告をメールで行った。

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”イントロ)♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 メールはすぐに返信が来て、『どうかお気をつけて』というものだった。
 予定通りの新幹線に乗れたので、この時点では、善場係長も何も言う事は無いということだ。
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“私立探偵 愛原学” 「出発の朝」

2024-11-27 20:38:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日05時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・愛原の部屋]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばして、そのアラームを止めた。

 愛原「ん……もう朝か……。どれ……」

 私は伸びをしてベッドから這い出た。
 真冬と違い、この季節では寒くて布団から出られないなんてことはない。
 部屋の鍵は1つだけ。
 前のマンションでは、リサ侵入防止用に3つほど付けていたのとはだいぶ緩くなっている。
 リサも成長しつつあり、さすがに部屋への侵入は遠慮しているらしい。
 その代わり……。

 愛原「シャワー使用中か……」

 リサは毎朝シャワーを浴びるようになった。
 別に、きれい好きになったというわけではない。
 私への思いを発散する為、毎晩オ○ニーに興じるようになり、そのせいで発生する体臭を洗い流す為である。
 鬼の女は、往々にしてそういうことが多いらしい。
 私はトイレを済ませて、それから洗面所で顔を洗った。
 シャワールームは後付けである為、付属の脱衣所は存在しない。
 私が顔を洗っている間は、リサは全裸で外に出られないはずなのだが……。

 リサ「先生……バスタオル取って……?」

 シャワーの音が止まると、リサは折り戸を僅かに開けて、わざとモジモジしながら私にバスタオルを要求した。
 この時、本当にバスタオルを渡すとリサに手を掴まれ、シャワールームの中に引きずり込まれてしまう。
 こういう時は……。

 愛原「『悪鬼滅殺』の御札」
 リサ「ヒッ!?」

 ドアを閉めて、『悪鬼滅殺』の御札を貼り付けると良い。
 こんな物効くか?と思うかもしれないが、リサは暗示に掛かりやすいタイプなのである。
 この御札は効くと暗示を掛ければ、案外効く。

 愛原「洗面所、使い終わったら剥がしてやる」
 リサ「そんなぁ~!」

 リサはドンドンとドアを叩く。
 鍵なんか掛かってないのに、本当に開けられないようだ。
 案外、怪奇現象で、『掛かってないはずのドアに、鍵が掛かって閉じ込められた』なんてのも、正体はこういうのだったりしてな。

[同日06時30分 天候:晴 同地区内 愛原家→日本交通タクシー]

 

 パール「先生、タクシーが到着しました」
 愛原「よし、早速行こう!忘れ物は無いか?」
 パール「大丈夫です」
 愛原「戸締りはしっかりとな!」
 パール「かしこまりました!」

 私達はタクシーに近づいた。
 気づいた運転手が助手席後ろのスライドドアを開ける。

 愛原「予約していた愛原です」
 運転手「愛原様ですね!」

 実は私達、ある程度の大きさの荷物がある。
 探偵調査の為に必要な機材が入っていたりする為だ。
 もちろん、飛行機だと機内持ち込みサイズくらいの大きさなのだが、それを1人1つくらい持っていたりするものだから、車だと後ろに積むことになる。
 運転手にハッチを開けてもらい、そこに積み込んだ。
 それから、リアシートに乗り込む。
 こういう時、トールワゴンタイプのタクシーだと後ろに3人余裕で乗れるから楽だ。

 運転手「それでは……東京駅八重洲口のタクシー降り場で宜しいですか?」
 パール「はい、お願いします」
 運転手「かしこまりました」

 車が走り出す。

 パール「これで行っても、予定の新幹線には少し早いくらいですが?」
 愛原「その余裕がいいんだよ。駅弁ゆっくり選べるし、キミもゆっくりタバコ吸えるだろう?」
 パール「確かに。ありがとうございます」
 リサ「駅弁……🤤」

[同日06時55分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅]

 タクシーは八重洲中央口のタクシー降車場に到着した。
 既に多くのタクシーが列を成しており、入るのに少々時間が掛かったが。

 運転手「お待たせ致しました。ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 アプリ配車で予約している為、紙の領収証も発行されない。
 タクシーを降りると、リアシートに積んであった荷物を降ろした。
 交通費の精算は、帰って来てからやることになる。

 愛原「次はキップの購入だ」

 大丸百貨店の建物の中を通じて、八重洲側から東京駅の中に入った。
 元々は旧国鉄1つであった東京駅を、JR東日本と東海で無理やり分けた感が高い。
 八重洲中央口など、券売機が東日本と東海でバラけている感が凄い。
 そりゃまあ、新幹線のキップならどちらの券売機でも購入できるのだが……。

 愛原「で、支払いはカードにしておく」
 パール「ポイントが溜まるわけですね」
 愛原「ポイントは後ほど還元するさ」
 リサ「おー!」

 新富士駅までは片道1時間程度なので、自由席で十分である。
 キップを買っていると、ぞろぞろと修学旅行の高校生らしき集団が有人改札口から中に入って行った。

 パール「あらま、リサさんと同世代のコ達が……」
 愛原「そして、絵恋さんと同世代のコでもあるというわけか……」
 リサ「見たこともない制服だねぇ……」
 愛原「都内でも、城西とか、多摩方面の高校かもしれないな」

 一瞬、他県からの修学旅行生で、これから地方に帰る所かとも思ったが、その割には朝が早過ぎる。
 また、彼らが話す言葉には、地方の訛りっぽいものは聞こえなかったので、やはり都内のどこかだろう。

 愛原「自動改札を通るから、キップは1人ずつ持とう」
 パール「ありがとうございます」
 リサ「わたし、先生の隣ぃ~!」
 愛原「自由席だっつってんだろw」

 修学旅行生達をやり過ごし、私達は自動改札機からコンコースに入る。
 そこで、ふと思った。
 当たり前の話だが、こうしてリサや他の首都圏の中高生が修学旅行で地方に行くわけだから、逆に地方から都内へ修学旅行に来る学校もあるだろう。
 私は仙台市の中学校だったが、修学旅行は東京都内であった。
 リサと秋北学院の太平山美樹は、たまたま偶然、沖縄で会った。
 他の地方にも、鬼の末裔がいることを考えると、そんなコ達が修学旅行で都内に来ることもあるだろうと思った次第だ。
 聞いた話、秋北学院の修学旅行は海外が無い代わりに、国内での行き先に選択肢の幅を持たせているという。
 その中に、首都圏もあるということだ。

 リサ「先生、駅弁買っていい!?」
 愛原「ああ、そうだな。俺も買って行こう」

 私達はホームに上がる前に、駅弁売店に立ち寄った。
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“私立探偵 愛原学” 「出発の前日」

2024-11-27 16:12:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月13日17時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 私は事務所の電話で、アンバーと連絡を取っていた。
 しかし、リサが赤い瞳を光らせ、牙を剥き出しにして監視している。

 アンバー「久しぶりのお客様ですので、とっても楽しみですぅ~!」
 愛原「そ、それは光栄だね。ところで、キミのお友達から聞いてるよ。キミは顔は美人で、スタイルもとても良いと」
 リサ「ム!」
 アンバー「そんなぁ……!ちょっと成長が早かっただけですぅ~」
 愛原「あー、もし良かったら、スリーサイズなんか教えてもらえると……」
 リサ「先生ッ!

 バリバリバリバリバリバリバリ(リサの電撃が愛原に直撃)

 愛原「ぎゃああああっ!」

 奇しくも、外は再びのゲリラ豪雨による雷雨。
 リサの電撃と同時に、外からも落雷があった。
 私は感電したが、外の落雷で停電ということはなかった。

 リサ「2度と電話して来ないで!」

 リサは私から電話の受話器を奪い取ると、そう言い捨てて電話をガチャンと切った。

 愛原「あ、相手の情報を得る為だよォ……」
 リサ「何言ってるの!!」

 その時、机の外線電話と違う所に設置されている内線電話が呼び出し音を鳴らす。

 リサ「もしもし!?」

 リサがその電話を取った。

 パール「ああ、リサさんですか。申し訳無いのですが、夕食の準備を手伝ってもらえませんか?」
 リサ「えー……わたし、先生の監視で忙しいしィ……?」

 リサはジト目で私を見た。

 愛原「も、もう事務所の仕事は切り上げるよ。明日の準備は、ほぼほぼできたし。パールの手伝いをしろよ」
 リサ「むー……」

 リサはそれでも不審顔。

 リサ「えーと……」

 リサは口をモゴモゴさせると、ペッと寄生虫を吐き出した。
 白い大きなイモムシのような姿をしている。
 それはカサカサと天井に這って行った。

 リサ「私の代わりの監視役。分かるよね?」

 リサの視界ジャック能力により、この寄生虫の視界をリサが見ることができる。
 離れた所からでも監視できる優れもの。
 この寄生虫自体に攻撃力などは殆ど無く、踏み潰したり、殺虫剤でも噴霧してやればすぐに死ぬ。
 監視役だけでなく、相手の体内に戻り込ませ、下痢や嘔吐などの症状を引き起こさせることも可能。
 一時期はリサの体内からいなくなったが、今もまた復活している。
 リサの能力は『電撃』『火炎放射』『寄生虫操作』ということになる。
 ……どこが弱い鬼だ?

 愛原「……はい」

 寄生虫は上手く使えば、諜報活動に使えたりもするのだが。
 リサはエレベーターに乗って、3階に上がって行った。

[同日18時00分 天候:雨 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 私も仕事を終えて、ダイニングにやってきた。

 

 今日のメインディッシュは、豚肉の生姜焼き。
 ばら肉ではなく、ロース肉を使った物だ。
 今日は豚肉が安かったのだろう。
 リサの皿は肉が大盛……いや、特盛だったが、これなら余ることは無いだろう。
 明日はパールも一緒に行くことになる為、食材は余らない方が良い。

 パール「先生、お疲れ様です。ビールを」
 愛原「ああ、ありがとう」

 リサ「わたしが注ぐねー!」

 テーブルの向かいに座るリサが、身を乗り出して私のグラスにビールを注いだ。
 体の線が出やすいTシャツを着ているが、まだ17歳ということもあって、成長期だな。
 でも、胸はある程度大きくなってきたかも。
 Gウィルスのヤツ、少しは宿主の成長ホルモンを解放したか?

 パール「……それでは、宜しいでしょうか?」
 愛原「そうだな。いただきます」
 リサ「いただきまーす」

 リサは早速、肉から行った。

 愛原「明日は7時台の新幹線で現地に向かうから、寝坊しないように」
 リサ「ー!」(←口の中に肉を頬張っている為、返事ができない)
 パール「タクシーはアプリで予約しておきました。6時半くらいで良かったですか?」
 愛原「そうだな」
 リサ「むー……」

 リサは私の方を見ていた。
 それで何か考え事をしているようだが、私には鬼に睨まれているような感じがしてビックリした。

 愛原「おっと!」

 そのせいで箸を床に落としてしまった。

 パール「大丈夫ですか、先生?」
 愛原「す、すまん!手が滑ってしまった!」

 私は急いでテーブルの下に潜り込み、落とした箸を拾った。
 その際、向かい側に座るリサの下半身が目の前に見える。
 リサは足を開いて座っていたので、スカートの中が見える。
 ……白!
 珍しくリサのヤツ、白いショーツを穿いている。
 いつもは黒やグレーや紺色なのに。

 パール「どうしました、先生?」
 愛原「い、いや、何でも無い!」

 私は急いで箸を拾った。

 パール「すぐ別の箸に交換します」
 愛原「あ、ああ。すまんな」

 拾った箸をパールに渡してリサを見ると、リサはニヤニヤ笑っていた。

 愛原「大人をからかうんじゃない!」
 リサ「え、何のこと?w」

 リサは牙を覗かせてニッと笑った。
 私服の下には、ブルマを穿かないのがリサの主義か。

 愛原「新幹線は新富士駅で降りて、そこからレンタカーで向かうから」
 パール「運転でしたらお任せください」
 愛原「ああ、頼む」

 その時、リサのスマホにLINEの着信があった。

 リサ「おっと……どこからだ?」

 リサはスマホを見た。

 リサ「フム……なるほど」
 愛原「また、『魔王軍』か?」
 リサ「いや、違う。今週の金曜日、新聞部で毎年恒例の七不思議の特集をやるから、『七不思議を語る会』に参加しないかって。今度は語り部として参加するのもアリかなぁ?」
 愛原「オマエは停学中だろうが」
 リサ「授業はダメだけど、部活の手伝いくらいならいいでしょ?」
 愛原「そこまでは禁止されていないと思うが……」
 リサ「じゃ、決まりだね」
 愛原「騒ぎを起こすなよ?」
 リサ「今やもう、『七不思議』の中心人物、ほぼほぼわたしだからね」
 愛原「それなぁ……」

 だったら語り部ではなく、イベントキャラとして登場する方がいいんじゃないかと思うが……。
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“私立探偵 愛原学” 「善場に報告」

2024-11-25 20:38:16 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月13日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 時間通りに善場係長がやってきて、まずは係長から高橋に面会した時の状況について話してくれた。
 高橋があんな面倒な仕掛けを施したのは、どこで“コネクション”に見つかるか分からないからだとのこと。
 高橋が逮捕されたことは、“コネクション”も知っているだろう。
 そこで“コネクション”としては、高橋を消そうとしてくるかもしれない。
 幸い彼は拘置所の独房という安全な場所にいる為、収容中は消されることはないだろう。
 もちろん、検察庁や裁判所にいる時もだ。

 善場「金庫に隠したブルマについては、通販で購入したものだそうです。“コネクション”の諜報能力は侮れないらしく、リサが既に日常的にブルマを穿いていることは知っているだろうとのことで、リサの名前を刺繍したブルマを入れておけば怪しまれないと思ったそうです」
 愛原「いや、俺達は知ってるからいいけど、直接見たこと無い人間が見たら、やっぱり怪しいような気がする」
 善場「高橋被告も、慌てていたようなので、正常な判断ができなかったのでしょう。あのUSBに入っている独白は、全て正直に話したものだそうです。あれを残したのは、愛原所長に真実を知って欲しいのと、“コネクション”に消されてもいいようにとのことです」
 愛原「うーむ……」
 善場「私達は引き続き、証拠探しを続けたいと思います。どうも、高橋被告にとって、都合の良い証言にしか聞こえないのです。もちろん黙秘権はありますから、自分に不利な証言はしなくて良いことにはなっていますが……」
 愛原「分かりました」
 善場「それで、そちらはどうですか?何か動きがあったようですが?」
 愛原「はい」

 私は依頼を受けた話をした。

 善場「斉藤元社長の隠し別荘!ずっと探していたのですが、ようやく見つかりました!ありがとうございます!」

 国家機関が探していて、見つからなかっただとォ!?

 愛原「待ってください。まだ、その可能性があるというだけで、もしかしたら、これとて偽情報である可能性は拭いきれないんです。何しろ、いくら匿名での依頼とはいえ、私はまだ直接依頼人に会っていないのですから」
 善場「しかし霧崎さんは、すぐにそこが斎藤元社長の隠し別荘だと分かったのですよね?」
 パール「静岡県にあるという話は聞いていました。静岡県のどこかまでは聞いていませんでしたから」

 静岡県も広いからな。

 パール「お金持ちの別荘というからには、熱海とか伊豆とか、富士山の麓とかにあるのかと思いましたが、富士山の麓で合っていたようですね」

 パールが確信したのは、メイド仲間のアンバーが管理を任されていたと聞いたからだった。

 パール「アンバーは危険な女ですから、あまり先生に会わせたくないです」
 愛原「しかし、俺が行かないと話にならんだろう?」
 善場「霧崎さんは、アンバーなる人物を御存知なんですか?」
 パール「はい。かつてのメイド仲間です。本名は小迫と言います」
 善場「分かりました。それでは、霧崎さんに同行してもらえば宜しいでしょう」
 リサ「あのー……わたしは?」
 善場「事務所で留守番です」
 リサ「えーっ!」
 パール「私がいれば、アンバーに手出しはさせませんよ」
 愛原「何だか心配だねぇ……」

 確かにパールは、私を守ってくれるだろう。
 だが、どちらかが死ぬまでケンカしそうで嫌だ。
 その時、止める者は私だけしかいなくなる。
 殺しを厭わない2人のケンカを、私が止められるかどうか……。

 善場「では、3人で行ったらどうですか?」
 愛原「しかし、事務所を空にするわけには……」
 善場「私からも依頼させて頂きます。つまり、私共からも依頼料を支払わせて頂くということです。結果的に事務所は臨時休業状態にはなりますが、その分の報酬はお支払い致しますよ?」
 愛原「そういうことなら……」
 リサ「やった!」
 善場「依頼内容は、これから所長方が調査に行かれる廃墟が、本当に斉藤元社長の隠し別荘だったのかどうか。その証拠を掴んで来てください」
 愛原「分かりました」
 善場「ついでに、最初の依頼人、『依頼人ボス』の正体を掴んで頂ければ、追加の報酬もお出しします」
 愛原「それは助かります!すぐに契約書を作成しますので、少々お待ちを!」

 私は応接コーナーを出て、自分の机に向かった。

 リサ「先生の事は、わたしが守るからね!」

 リサも席を立って私の横に来ると、ガッツポーズをして言った。
 まあ、リサなら暴走さえしなければ大丈夫だろう。
 仮にパールやアンバーとやらがリサを殺そうとしても、リサを殺すにはロケットランチャーを直撃させないといけないという頑丈さだ。
 BSAAなどの軍隊にはそれがあっても、1個人がそれを持っているとは思えない。

 愛原「あ、ああ。宜しく頼む」

 私は契約書を作成すると、それを善場係長の所に持って行った。

 愛原「こちらが契約書です」
 善場「かしこまりました。宜しくお願い致します」

 善場係長は、すぐにサインをしてくれた。

 善場「気をつけて行ってください。もしも高橋被告の独白通りなら、どこで“コネクション”が嗅ぎ付けてもおかしくはありません」
 愛原「分かりました」
 善場「着手金は後ほど振り込ませて頂きます」
 愛原「ありがとうございます」

 私は善場係長をガレージまで見送った。
 そして、またエレベーターに乗って2階に戻ると……。

 愛原「善は急げだ。明日にでも行こう。すぐに準備するぞ」
 パール「かしこまりました」
 愛原「パールは個人的に、アンバーの連絡先は分かるか?」
 パール「一応は。ただ、今ここで私から連絡しない方がいいかもしれません」
 愛原「確かに、警戒するかもしれないな」

 私は直接アンバーに電話を掛けることにした。
 すると今度はリサが警戒して、私が変な事言わないかジト目で見て来るのだ。

 愛原「急な話で申し訳ないけど、明日でいいかな?」
 アンバー「いいとも!……お待ちしております!」

 とのこと。

 愛原「随分ノリが良くて明るいコのように聞こえるが?」
 パール「上辺だけですよ。外面だけです。すぐにメッキ剥がれますよ」
 愛原「そ、そう?」
 パール「ところで、アンバーとはどこで合流を?」
 愛原「現地らしいな。つまり、現地まで自力で来いってことだ」
 パール「どうします?」
 愛原「途中まで新幹線とか電車で行って、そこからレンタカーでも借りて行った方がいいだろう。その予約もしよう」
 パール「かしこまりました」

 私は自分の机に座ると、明日の準備を始めた。
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