報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤秀樹からの最後の電話」

2025-02-23 21:11:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日11時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング→愛原学探偵事務所2階]

 日曜日は生憎の雨。
 それでも、今週中に梅雨が明ける見込みとのこと。
 その後はゲリラ豪雨や、台風の雨になるというわけか。
 雨なので私は外出せず、家にいた。
 リサは傘を差して出掛けて行った。
 『魔王軍』メンバーが受験勉強に入ったので、受験勉強とは無関係のレイチェルと遊びに行くとのこと。

 パール「先生、お昼ご飯ですが、何に致しましょう?」
 愛原「そうだな……。日曜日だから、朝食も遅かったからな……。サンドイッチで宜しく。BLTサンドで」
 パール「かしこまりました」

 そこへ私のスマホに電話が掛かって来る。
 画面を見ると、斉藤元社長からだった。

 愛原「も、もしもし!?」
 斉藤「愛原さん、こんにちは。これが最後の電話となります」
 愛原「えっ、どういうことですか!?」
 斉藤「まだ、警察には捕まってませんよ。今、徳島港を出たところです」
 愛原「徳島港!?四国にいらっしゃったんですか!?」
 斉藤「そうです。さすがに四国はノーマークだったでしょう?」
 愛原「四国に、何かあるんですか?」
 斉藤「あるかもしれないし、無いかもしれない。別に、徳島港はただの寄港地であって、私がそこで何かを探索したわけではありません。当然、船からも降りていません」
 愛原「な、何だ……。ん?今、徳島港を出たということは、1日がかりですね!?」
 斉藤「はい。なので、明日、東京港に着いて、警視庁に出頭するつもりです。船はもうどこにも寄港しませんからね」
 愛原「船なら、途中で捕まるんじゃないですか?海上保安庁が臨検してきたり、BSAAがヘリで上空から降下して来たり……」
 斉藤「乗客の安全第一を考えるなら、このまま東京まで運航させてくれた方が幸せだと思いますがねぇ……」
 愛原「ど、どういうことですか!?」
 斉藤「さっきも言った通り、私が乗った船は、もうどこにも寄港しません。私の警視庁出頭を信用できないのなら、この船の到着地で待っていれば宜しい。デイライトさんには、そのようにお伝えください。もっとも、今日は日曜日なので、繋がりますかね」

 まさか斉藤元社長、それを狙っていたのか?

 愛原「船に乗っているのは、斉藤さんだけですか?」
 斉藤「一般のフェリーなので、他にも乗客はいますよ?」
 愛原「そうじゃなくて、斉藤さんの仲間は乗り合わせているのですか?」
 斉藤「ああ、そういうことですか。それなら、私1人です」
 愛原「明日に、東京港に到着するのですね」
 斉藤「はい」
 愛原「フェリー会社と、東京港到着時刻は何時ですか?」
 斉藤「オーシャン東九フェリー。東京港着は朝の5時30分とのことです」

 どうやら斉藤さんは、包み隠さず話す気のようだ。

 愛原「私が、白井伝三郎からの『転生の儀』対象から逃れるには、どうしたら良いですか?」
 斉藤「まずは、白井に鬼の血を提供した者を探し出してください。その鬼の血より強力な鬼の血を飲めば、上書きされて、『転生の儀』の対象から外れるはずです」
 愛原「そんなバカな……!」

 鬼の血なんか口にしたら、私まで鬼になってしまうのではないか!?

 斉藤「今のところ、私が考えられる対策はそれしか……」
 愛原「…………」
 斉藤「おっと!そろそろ沖合に出るようなので、電波も着れてしまいます。それでは、ごきげんよう。もしも面会できたり、手紙のやり取りができれば、宜しくお願いしますよ」
 愛原「斉藤さん……」

 しかし、電話は切れてしまった。

 パール「御主人様からですか?」
 愛原「ああ。テラセイブの出番ではないだろうがな」
 パール「そのようですね」
 愛原「ちょっと、下の事務所に行ってくる。サンドイッチが出来たら教えてくれ」
 パール「かしこまりました」

 私はリビングを出ると階段を下り、2階の事務所に向かった。
 そして、事務所の照明を点灯させ、冷房を入れる。
 冷房が効くまでの間、蒸し暑い事務所の中で臨時の事務作業を行うことになる。
 天井に埋め込まれたエアコンが、フルパワーで稼働する音が響く中、私は自分の席に座り、PCを立ち上げた。
 そして、今の斉藤元社長とのやり取りを録音したデータを、PCに落とし込む。
 善場係長のPCメールにそのデータを送信した。
 それからスマホを取り出し、善場係長のスマホにその旨のメールを送った。
 やはり日曜日なのか、すぐには返信は来なかった。

 愛原「まだ、少し時間があるか……」

 私はPCで少しネット検索を行った。
 事務作業が終わる頃には、冷房も効き始めて涼しくなっている。

 愛原「山に行きたいか……」

 鬼が山に棲んでいる理由は、いくつかある。
 鬼ヶ島みたいに、海に近い所に棲んでいる方が珍しい。
 実はもう、そこまで行く為の電車のキップは確保してある。

[同日12時00分 天候:雨 愛原学探偵事務所2階→愛原家3階]

 ポー♪と甲高いブザーが鳴る。
 これは内線電話の呼び出し音だ。

 愛原「はいはい」

 初めて警備会社で働き始めた頃、派遣された先が随分と古いビルで、エレベーターも古く、非常呼び出し音のブザーが随分と甲高い音であった。
 それを思い出す。

 愛原「はい」
 パール「あ、先生、お疲れ様です。昼食ができました」
 愛原「ありがとう。今行く」

 私は壁掛け式の受話器を戻した。
 その横には、正面玄関やガレージ内のインターホンの受信機も付いている。
 私はPCの電源を落とし、照明やエアコンも切ると、事務所をあとにした。
 もちろん、事務所のドアも施錠するのを忘れない。
 それから階段を昇って、3階に向かった。

 パール「どうぞ、こちらです」
 愛原「悪いね」

 私はダイニングテーブルに就いた。

 パール「一応、テラセイブの本部には連絡しておきました。デイライトの方はどうですか?」
 愛原「今のところ、まだ返信は来ていない。それで、テラセイブはどうするって?」
 パール「警視庁に連絡するそうです。もっとも、警視庁がテラセイブの事を知っているかどうかですが……」
 愛原「あー……」

 知らないと、イタズラだと思われるかもしれないってことか。
 私は取りあえず、サンドイッチを口に運んだ。
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“私立探偵 愛原学” 「それから……」

2025-02-23 15:29:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月8日09時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 私はメールで善場係長に、斉藤元社長から電話があったことを伝えた。
 そしたら、電話が掛かって来たわけである。

 善場「愛原所長のスマートホンには、録音機能が付いていますね?」
 愛原「付いています」
 善場「そのデータを送って頂けませんか?」
 愛原「分かりました。一応、波の音とかは聞こえていましたから、本当に船の中にはいたようです」
 善場「その辺も含めて、確認したいので」
 愛原「了解です。少々お待ちください」

 私は電話を切り、自分のスマホのアプリを立ち上げた。
 スマホそのものに録音機能があるわけではない。
 そういうアプリがあって、それを使用する。
 アプリの中には、データを送れる機能もある。
 それで、善場係長の所にデータを送った。
 それから、また電話。

 善場「データを受信しました。ありがとうございます。これから具体的な解析に入らせて頂きます」
 愛原「了解しました。お役に立てて何よりです」

 というやり取り。
 後で調べてみたが、沖縄県から他県に向かう航路はいくつかある。
 だが、斉藤元社長のことだ。
 一般的なフェリーなどは利用しないかもしれない。
 例えば2017年にアメリカのイリノイ州で起きたベイカー農場におけるバイオハザード事件。
 エブリンを開発・製造した組織は、貨物船に乗せて移送しようとしていた。
 ネットで調べみると、沖縄から直に東京に向かう貨物船が運航されているようだ。
 そういうのに便乗する可能性もある。
 もっとも、それくらいのことはデイライトも分かっているだろう。
 海上保安庁に依頼して、臨検させることくらいするかもしれない。
 斉藤元社長の事だ。
 途中で捕まることなく東京に上陸し、直接警視庁の庁舎まで赴いて出頭することはするかもしれないな。

[同日13時30分 天候:晴 同地区内 同事務所2階]

 昼過ぎになってリサが帰って来た。
 どうやら、赤点は取らなかったようだ。
 もちろん、全教科の点数が分かるのは、来週になってからだ。

 リサ「ミキからの連絡。3連休で上京した時に行きたい場所」
 愛原「東京見物だな。どこに行きたいって?」

 私がリサのスマホを見せてもらったが……。

 愛原「え?ここなの?」
 リサ「ここらしい」
 愛原「女子高生らしく、もっと派手な所に行けばいいのに」
 リサ「ねー。あとは、ずっと山に棲んでるんだから、海とかね」
 愛原「うん。どうして山に行きたいって?」
 リサ「『東京の山には、どんな鬼が棲んでいるのか?』だって」
 愛原「いないだろ!?」
 リサ「前に高尾山に行ったら、タイラント君とか出て来た事があったでしょ?」
 愛原「あったけど、あれは別の話だろ?……てか、話したのか!」
 リサ「ちょっとしたネタで……。でも、タイラント君は鬼じゃないからね。角も無いし」
 愛原「当たり前だ。あれだってBOWなんだから。だいたい、人工的に造られた生物兵器なのに、どうして角があるんだ?」
 リサ「そんなの知らないよ。生えるんだからしょうがないじゃない」

 だから太平山の氏族では、『東京にも鬼がいる!』と、大騒ぎだったらしい。
 本当は、それを模したBOWなだけなのだが。
 と、その時、事務所に電話が掛かって来た。

 愛原「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所です」
 善場「愛原所長、お疲れ様です」

 電話を掛けて来たのは善場係長だった。

 愛原「あっ、どうも!善場係長、お疲れ様です!」
 善場「解析の結果ですが、確かに斉藤容疑者は船舶に乗船中のようです」
 愛原「やはり、そうでしたか」
 善場「今、沖縄近海を航行中の船舶全てを調査している最中ですが、愛原所長は何かお心当たりがございませんか?」
 愛原「私ですか?どうでしょうねぇ……。斉藤さんも、どこの船とかは言ってなかったので。ただ、斉藤さんの事ですから、普通の船で向かうことは無いんじゃないですかね?」
 善場「と、仰いますと?」
 愛原「調べてみたら、沖縄から東京に直に向かう貨物船があるようです。それに便乗して……なんて事は考えられませんかね?」
 善場「可能性は無きにしも非ずですね。ありがとうごさいます」
 愛原「それと係長、1つ質問宜しいでしょうか?」
 善場「何でしょう?」
 愛原「今更で申し訳ないんですが、どうしてリサは鬼の姿を模したBOWになったんでしょう?オリジナルのリサ・トレヴァーとは、全く違う形態になってますね?」
 善場「その件についても、沖野献受刑者に質問したではありませんか。……失礼。所長はショックを受けて放心状態でしたね」
 愛原「す、すいません」
 善場「いえいえ。やはり、白井に『鬼の血』を提供した者がいるのは事実のようです」
 愛原「そうなんですか?」
 善場「はい。それをGウィルスに混ぜた事で、日本版リサ・トレヴァー達は、鬼の姿をするようになったのではないでしょうか?」
 愛原「誰ですか、血を提供したのは!?」
 善場「栃木の上野利恵さんとかではないです。彼女は特異菌の亜種でもって鬼の姿になっているので」
 愛原「上野利恵も、元・人間ですからね。違うと思いますよ。……いでっ!?」
 リサ「むー……!!」

 上野利恵の名前を出したことで、リサが誤解して噛み付いてきた。

 愛原「違う!違うってば!」
 パール「あらあら、大変!」

 見かねたパールが、リサを引き離してくれた。

 善場「大丈夫ですか?」
 愛原「だ、大丈夫です。えーと……太平山美樹は、少なくとも彼女の氏族では提供した者はいないと言っています」
 善場「すると、他の氏族かもしれませんね。彼女が上京した時に、話を聞かせてください」
 愛原「分かりました」

 因みに、白井伝三郎は行方不明とのこと。
 恐らく“青いアンブレラ”が拘束しているだろうから、もう終了だとは思うがな。
 あとは、私が『転生の儀』から逃れる術を見つけることか……。
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“私立探偵 愛原学” 「意外な展開」

2025-02-23 11:41:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月8日02時12分 天候:雨 沖縄県・某離島]

 沖縄は台風のような雨風が吹き荒れているらしい。
 そこの地下研究所では、激しい攻防戦が行われていた。

 斉藤秀樹「ここまで来たら、覚悟するんだな。私はあなたの助手だった男だ。あなたが研究していた『転生の儀』の弱点は知っている。それを克服せずに使用したことが、あなたの運の尽きだ」
 斉藤早苗(白井伝三郎)「私をどうする気……?」
 秀樹「今さら女の子のフリをしても、罪は重くなるだけだが?」
 高野芽衣子「斉藤社長、早いとこ『例の物』を!」
 秀樹「うむ。あなたの人生も、ここで終わりだな」
 早苗「ヒデキ……」
 秀樹「姉の斉藤早苗は、もうとっくに死んでるんだ。勝手に姉の体を蘇らせるのみならず、その体を乗っ取って使っている罪の重さ、地獄で理解してもらおう!」
 早苗「……愛原学さんは元気か?」
 秀樹「愛原さんがどうした?」
 早苗「キミも私の助手だったのなら、知っているだろう?『転生の儀』の材料には、あの人も含まれていると」
 秀樹「! 気づいていたか……」
 早苗「仮にここで私を殺しても、私の魂が愛原学さんの所に行くだけだ。そして今度は、私が彼の体を使わせてもらう。『私立探偵 白井伝三郎』の新連載開始だ!」
 秀樹「むむ……」
 高野「どうしますか、社長?」
 秀樹「対策は考える。取りあえず、白井をここまで追い詰めたのは事実。しばらく動けないよう、大ケガさせて拘束しておけ。『転生の儀』は、今の肉体が死なないと使えん」
 高野「分かりました。なるべく痛めつけておきます」
 秀樹「帰りの船の時間に間に合わんから、すぐここを出るぞ」

 秀樹は地上までのエレベーターに乗り込んだ。
 地上に出ると、研究所の非常口から外に出る。
 小さな漁港には一隻の漁船が停泊している。

 秀樹「出してくれ」
 船長「へい」

 漁船は波のうねりが高い中、出港していった。
 背後からは銃声の音と、ヘリコプターの音がした。

[7月8日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「……という夢を見たんだ」
 リサ「まさかの夢オチ!?」
 パール「御主人様が、まさかそんなこと……」
 愛原「斉藤さんの事だから、白井の弱点を知っていて、それを突きに行ったんだろうと思っていたから、それが夢になって現れたんだろうね」
 リサ「白井を殺せば、わたしの復讐も終わり。でも、わたしがやりたかったなぁ……」
 愛原「現状、白井を確実を殺せる方法を知っているのは斉藤さんだけだからな、しょうがない。これが現実だよ」
 パール「でも、その御主人様が諦めたって……」
 愛原「白井もそうだが、斉藤さんもまだ完璧ではないということだろうな」
 リサ「まだわたしにも機会があるということだね」
 愛原「う、うん。そうだな」
 リサ「白井の血肉なら食べてもいいよね?何か、女の子の肉体使ってるみたいだし」
 愛原「いや、それは……」

 実害は無いんだよなぁ……。

 パール「早く食べないと、電車に乗り遅れちゃいますよ」
 リサ「おっと、そうだった!今日は土曜日だから、電車のダイヤが違うんだ!」
 愛原「今日も午前中だけかい?」
 リサ「テストの答え合わせで終わりでしょ?で、赤点者は残って追試か補習」
 愛原「だろうな」

 リサの事だから、赤点を取ることはなく、そのまま帰ってくるものと思われる。

 リサ「食堂開いてないから、途中で食べて帰って来る」
 愛原「そうかい」
 リサ「というわけで、昼食代」
 愛原「……お釣りはちゃんと取っておくんだぞ?」
 リサ「もち」

 私はリサに1000円札を渡した。

 リサ「ていうか、駅でPasmoにチャージしておく」
 愛原「そうしてくれ」

[同日08時00分 天候:晴 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 リサは学校に行き、私はパールに淹れてもらったコーヒーを飲んでいる。
 私はテレビを観ていたのだが、その時、私のスマホに着信があった。
 画面を見ると、それは斉藤元社長から。
 私は急いで電話を取った。

 愛原「も、もしもし!?」
 斉藤秀樹「愛原さん、おはようございます。斉藤です」
 愛原「斉藤さん!どうしたんです!?」
 斉藤「白井を追い詰めたのですが、愛原さんの身に危険が及ぶ恐れがありましたので、残念ながらあの世に送ることができませんでした。そうしてしまうと、今度は愛原さんが白井に乗っ取られてしまうからです」
 愛原「それは……『転生の儀』のことですか?」
 斉藤「あ、やっぱり御存知なんですね」
 愛原「昨日、千葉刑務所に行って、沖野献受刑者と面会して色々聞いてきましたから」
 斉藤「なるほど。さすがは愛原さん。そこに行き着きましたか」
 愛原「斉藤さんがかつて、白井の助手だったことも聞きましたよ」
 斉藤「参りましたなぁ……。では、私が今言ったことの意味も御存知なんですね?」
 愛原「信じたくは無いですが、私も白井に色々とされたわけでしょう?白井が喜んでいたというのは……」
 斉藤「愛原さんもまた、白井の転生先の体として最適認定を受けたというわけですよ」
 愛原「それが、私が自由の身になっているのは?」
 斉藤「ただ単に管理が面倒なだけでしょう。素体が自由行動していても、乗っ取りはいつでもできますから」
 愛原「それで、白井は?」
 斉藤「“青いアンブレラ”に任せておきました。あそこなら、生かさず殺さずの処置をしてくれることでしょう。BSAAは殺すことしかできませんし、テラセイブは甘過ぎて逃がしてしまう。“青いアンブレラ”くらいがちょうど良いのです」
 愛原「な、なるほど。それで、斉藤さんは今どこに?」
 斉藤「沖縄を出るところです。まあ、沖縄を出る船のどれかといったところですか」
 愛原「次の行き先は?」
 斉藤「いつまでも逃げ回ってばかりいては卑怯ですからな、そろそろ出頭しようかと思っています。私を追っているのは警視庁でしたね」
 愛原「それと、公安調査庁です」

 BSAAもなのだが、それはこの際、ここでは言うまい。

 斉藤「信じてもらえるかどうかは不明ですが、来週中には出頭すると伝えておいてください」
 愛原「分かりました」

 どうやら、私がデイライトに通報することは既に予測済みのようだ。
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物語の途中ですが、ここで怪奇現象発生についてお知らせ致します。

2025-02-22 20:36:36 | 日記
 本日は埼玉県某所にて、真如苑信者の伯母の告別式が行われた。
 しかし葬儀は真言宗形式で行われ、表向きは家族葬という名の密葬で行われた。
 日蓮正宗信徒の私としては、子供の頃にお世話になった伯母がこのまま邪教の害毒で堕獄するのを指を咥えて見ているわけには行かず、大石寺にて塔婆供養を行い、阿弥陀如来が垂らした切れる前提の蜘蛛の糸ではなく、ちゃんとした成仏の道しるべを建ててあげたいという思いからだった。
 当初は塔婆供養からの添書登山で御開扉という予定であったが、報恩坊御住職の計らいで、『葬儀』という形を採って下さった。
 それなら御供養、もう少し奮発するんだった。
 御住職からも為になる御指導を賜り、また、御開扉もつつが無く終了し、往復ともに順調な交通機関と、御加護に見舞われた御登山であった。

 ……とまあ、日蓮正宗信徒としては万々歳のハッピーエンドで終わる話だったのだが、『向こう側』はそうでもなかったらしい。
 『向こう側』とは、伯母の葬儀会場。
 私も今現在のところは、日蓮正宗独り信心状態だが、それは伯母も同じこと。
 その為、葬儀は真言宗形式で行われたという。
 当家は代々真言宗であり、私の実家にあっては、菩提寺は陸奥国分寺である。
 ……自慢じゃないが、そこの檀家になるということは、『実家が太い』ことの証であるという。
 ま、今となっては邪宗は邪宗だ。

 

 御登山からの帰り、新富士駅で16時41分発、“こだま”732号、東京行きを待っている時だった。
 伯母の葬儀に参列した従兄から連絡があった。
 何でも、葬儀の直後に怪奇現象が起きたという。
 私がああして日蓮正宗の御塔婆を建てたのと同様、真言宗側でも塔婆を建てたわけだ。
 ところがその塔婆を墓地に持って行く最中、塔婆にヒビが入ったという。
 最初は塔婆の木材が悪かったのかと真言宗住職に申し入れ、新たに書き直してもらったとのこと。
 ところが、2本目の塔婆が割れた
 その為、『向こう側』は怪奇現象が発生したと大騒ぎになったらしい。
 真如苑が心霊現象についてどのように捉えているかは不明だが、私が子供の頃はよく怪談話をしてくれたりした伯母だから、もしかして、真言宗から派生した新興宗教でありながら、神道寄りの宗教なのかも。
 寺院側は、『今は乾燥している時季だから、材料柄割れやすい』とか、『急激に寒い所に出したので、割れたのだろう』とか言い訳していたそうな。
 真如苑はともかく、同じく心霊現象については否定する側の伝統仏教である真言宗だから、さすがにそれは認めなかったか。

 私は知っている。
 その怪奇現象の正体。
 こちら側で建てた御塔婆の仏力・法力が、真言宗の塔婆を打ち砕いたのだと……喉元まで出掛かったよ。
 折伏に繋がるのかもしれないが、さすがに不謹慎だろうと思ったからだ。
 まあ、話を聞いていると面白そうだから私が口を挟む余地は無さそうだから、しばらく黙ってておくことにした。

 雲羽「兄さん、その割れた塔婆の写真とか無いの?(ブログに載せたいのだが?)」
 従兄「あるわけないだろ!そんなもの撮って、罰当たったらどうするんだ!?」

 まあ、そりゃそうだ。
 ただの御塔婆なら、御住職の許可を取って撮影は可能なのかもしれないが、怪奇現象が起きた塔婆なんて、気持ち悪くて撮れないか。

 ただの偶然と言ってしまえばそうかもしれないが、さすがに現証がタイムリー過ぎたもので、今回は内容の予定を変更して、このように書かせて頂いた。

 御住職の話。

 ➀カンダタの蜘蛛の糸の話は、主に浄土宗系で話されているものであり、作品によって蜘蛛の糸を垂らしたのは釈尊だったり、観音菩薩だったりと統一性が無いが、本当は阿弥陀如来のことだろう。浄土宗は現世に救いを求めないので、蜘蛛の糸のようなすぐ切れる糸で救おうとする儚さを訴えているのだろう。
 ②日蓮正宗の塔婆供養は違う。闇夜を照らす灯となり、良馬となり、三途の川を渡る大舟となるのである。
 ➂雲羽さんだけでも日蓮正宗で塔婆供養をしてあげられて、伯母さんもお喜びだろう。

 まあ、カンダタの蜘蛛の糸の話は子供の頃に聞いたことがあるが、私は今でも蜘蛛は嫌いだ。
 ハエトリグモやアシダカグモなど、網を張らないタイプは暖かい目で見てあげるくらいの慈悲の心は持てるようになったが、家の敷地内で網を張る蜘蛛に対しては、「勝手に網を張るな!賃料払え!」と、請求しに行くくらい冷たい。
 ②のことだが、以前、私は三途の川の中州に滞在する夢を見たことがある。
 そこから此岸に戻るのか、彼岸に向かうのかは知らないが、何故か中洲の果てにはモノレールの乗り場があり、ホームには東京モノレールに酷似した車両が停車していたというところで目が覚めたことがある。
 三途の川の広さは人によって違うらしいが、どうやら私の場合は、東京湾くらいの広さのようだ。
 どうしてそう言えるのかというと、東京モノレールには東京湾を潜る海底トンネルがあるからである。
 御住職は、「いずれも自力で渡るのは困難」と仰っていたが、確かに東京モノレールが海底トンネルで通る区間、泳いで渡るのは無理だな。
 私がモノレールに乗り込んだ時、発車してはくれなかったが、もう少し功徳を積めば、彼岸まで運転してくれるのかな。
 ➂について。
 伯母に夢枕に立ってまで礼を言って欲しいとは微塵も思っていない。
 そんな暇があるのなら、南無妙法蓮華経の良馬(私の場合はモノレールらしい)に乗り、南無妙法蓮華経の大舟(私の場合はモノレー【以下略】)に乗って三途の川を渡って頂きたい。
 遺族達は『怪奇現象』に驚いたようだ。
 もしも『怪奇現象』に悩んでいる人がいたとしたら、少し自分の身辺を洗ってみると良い。
 それを引き起こした原因の人物がいるはずである。

 最後に……。

 

 『売店』こと、仲見世商店街にある“なかみせ”さんのチャーシュー麺は美味い。
 女将さんのお孫さん、大きくなったな。
 私が信心を始めた頃は、まだ小学生だったのに。
 私も歳を取ったということだ。

 ……『怪奇現象』の種明かし、いつやろう?
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“私立探偵 愛原学” 「事務所に帰る」

2025-02-21 21:42:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月7日12時20分 天候:晴 千葉県市川市八幡2丁目 シャポー本八幡・タリーズコーヒー]

 私はデイライトの車で本八幡駅まで送ってもらっている。
 本当は千葉駅までのはずだが、善場係長が特別に、都営新宿線の始発駅である本八幡駅まで送ってくれることになった。
 もう1つの理由が、沖野献受刑者のことについて打ち合わせしたく、あえて乗車時間を延長させる目的もあったのだろう。

 善場「斉藤容疑者なら、『転生の儀』に成功したとされる白井容疑者の倒し方を知っているのかもしれませんね」
 愛原「……なるほど。斉藤さんは、白井の『転生の儀』を気にしていたわけですね。そしてようやく、白井を本当にこの世から消す方法を見つけ出したと」
 善場「とはいうものの、このままで良いと思っておりません。2人を逮捕して取り調べる義務があります」

 公安調査庁には逮捕権は無いが、現行犯逮捕という形でやるつもりだろうか。

 愛原「斉藤さんは沖縄に向かったはずです。白井も沖縄にいるはずです」
 善場「分かっています。沖縄にデイライトの職員が派遣されています。また、沖縄県警やBSAAも沖縄に展開していて警戒に当たっています」
 愛原「高橋はどこへ行くつもりでしょうか?」
 善場「捜査機密なのであまり大きな声では言えないのですが、高橋容疑者もまた何らかの方法で沖縄に向かうのではないかと見ています」
 愛原「沖縄が最終決戦の地になるわけですね……」

 主人公の私としては、是非ともその最終決戦に参加したいところだが、一介の私立探偵が首を突っ込んで良い話ではないことも分かっている。
 善場係長も、そんな私の気持ちを呼んだようだ。

 善場「色々と気になるでしょうが、白井の事は我々に任せてください。それと……」
 愛原「ん?」
 善場「群馬県のペンションから送られてきた映像なんですが……」
 愛原「は、はい」
 善場「原本のVHSテープだけで解析は可能のようですので、ダビングされたDVDに関してはお返しします」
 愛原「そ、そうですか」
 善場「後ほど宅配便か何かで送らせて頂こうと思っておりますが、リサが手に入れた物に関しては、リサが18歳になるまで見せないでください」
 愛原「は、はい。もちろんです」

 リサの両親による、リサの製造工程記録動画だ。

 白峰「到着しました。公道上なので、速やかに且つ気をつけてお降りください」
 愛原「あ、はい。今日はありがとうございました」
 善場「それではまた何かありましたら、御連絡をお願い致します。こちらからも何かありましたら、御連絡させて頂きます」
 愛原「分かりました」

 私は車を降りると、横断歩道を渡って、駅のショッピングモールに入った。
 その中にタリーズコーヒーがあり、そこで昼食を挟んでから帰ることにした。
 既にパールには、昼は食べてくる旨の連絡はしてある。
 面会中や面会直後は、とても喉を通りそうな感じが無かったが、係長と話をしているうちに、少しは気持ちが落ち着いた。
 私は店内に入ると、ホットドッグとアイスコーヒーを注文した。
 本当に軽い昼食ではあるが、まだ完全にショックから立ち直り切っているというわけでもない。
 今のところは、この量で大丈夫だろう。

[同日13時10分 天候:晴 同地区 都営地下鉄本八幡駅→都営新宿線1335T電車・先頭車]

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。……〕

 昼食を食べて少し寛いでいると、リサからLINEがあった。
 何でも、秋田の太平山美樹から連絡があったという。
 秋田県北部から東京までのルートはいくつかあるが、今回の3連休では上京に飛行機を使うという。
 要は大館能代空港から羽田まで、飛行機で来るということだ。
 彼女と初めて会った沖縄でも、修学旅行ということもあり、飛行機で来ていた。
 きっと、飛行機の方が便利なのだろう。
 合宿を主催している予備校の本部は新宿にあり、そこまで案内を頼まれているという。
 これは空港まで迎えに行って、それから一緒に新宿に向かうパターンだな。
 私は了解の旨を返信しておいた。
 地下鉄のホームに降りると、都営の車両の電車が止まっており、私は先頭車に乗り込んだ。

〔この電車は、各駅停車、笹塚行きです〕
〔「13時10分発、京王新線直通、各駅停車の笹塚行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 

 発車ベルがホームに鳴り響く。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 ホームドアと、電車のドアが両方閉まる。
 電車のドアチャイムは、JR東日本の普通列車のそれと同じ。
 ドアが閉まり切ると、運転室から発車合図のブザーが聞こえ、それからハンドルをガチャガチャ操作する音が聞こえてくる。
 それと連動するようにエアーの抜ける音がして、電車が動き出した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、笹塚行きです。次は篠崎、篠崎。お出口は、右側です。……〕

 千葉県に唯一存在する東京都交通局の駅を出る事で、私は千葉県から出ることになる。
 善場係長達は、2人だけで千葉県全域を探しているのだろうか?
 いや、違うな。
 千葉刑務所から出て本八幡駅に向かう間、上空ではヘリコプターを何機も見た。
 BSAAのヘリもあったのだろうが、千葉県警のヘリとかもあったのだろう。
 高橋は本当に千葉県内に潜伏しているのだろうか?
 それとも……。

[同日13時31分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 都営地下鉄菊川駅]

 電車が西に向かう度に、電車内が賑わって来る。
 平日とはいえ、まだ夕方のラッシュでもない為、混んではいない。
 それに、途中駅でも下車する乗客はいたりする。
 まあ、菊川駅においては、私もそうなのだが。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 というわけで、菊川駅に無事に到着する。
 電車は短い発車メロディを流した後、すぐに発車して行った。
 エスカレーターに乗り込み、改札階へ向かう。
 改札口を出たところで、私はふとあることを思い出した。
 都営地下鉄に限らないだろうが、駅構内にはフリーペーパーの配布スタンドがある。
 ここは都営地下鉄の駅なので、主に東京都交通局が発行している物が置かれている。
 地下鉄に限らず、都営バスや都電荒川線の沿線ガイドの物もある。
 その中には、都内の地下鉄路線図もある。
 上京者が度肝を抜かされるのは、都内の地下鉄路線図であるという。
 これを太平山美樹に渡して、勉強させておこう。
 場所によっては、グーグルマップも役に立たんぞw
 私がフリーペーパーや路線図を物色していると……。

 リサ「あ、先生!」

 リサが改札口から出て来た。
 制服姿であることから、どうやら今、学校から帰って来たところのようだ。

 愛原「よお、リサ。学校終わったのか?」
 リサ「テスト最終日は、午前中で終わり」

 で、昼食は『魔王軍』のメンバーやレイチェルと食べて来たってわけか。

 リサ「先生も面会終わったの?」
 愛原「まあな」

 私はフリーペーパーを鞄にしまった。

 愛原「一緒に帰るか?」
 リサ「帰るー!」

 リサはそう言って私の腕を取って来た。

 愛原「こらこら、制服姿で引っ付くんじゃない」
 リサ「えー!」
 愛原「誤解される」
 リサ「もー!」
 愛原「いいから、帰って俺は仕事だ。色々やることがある」
 リサ「わたしも手伝うよ。テストは終わったことだし」
 愛原「そうか?自信の方はどうだ?」
 リサ「赤点ゼロ作戦は上手く行きそう」
 愛原「そうか。それならいいな」

 リサの行きたい大学がそんなに偏差値の高い所ではないことから、そこまで猛勉強し、高得点を狙わなければならないわけではないことは知っている。
 そもそも就職先のデイライトが、リサに大卒の学歴を求めていたわけではないので。
 私達は地上へのエスカレーターと階段を昇り、事務所へ向かった。
コメント
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