報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「罠」

2024-12-02 20:36:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日11時45分 天候:不明 静岡県富士宮市某所 斉藤家隠し別荘・地下室]

 斉藤家の隠し別荘を探索し、地下室に着いた私達。
 まるで大企業の社長室のような豪勢な造りの部屋には、立派な執務机があり、その上には電話があった。
 そして、その電話が鳴り、最も近くにいた私が電話を取った。

 愛原「も、もしもし?」
 高野芽衣子「もしもし?」
 愛原「ん!?その声は、高野君!?」
 高野「えっ、愛原先生!?これはどういうことですか!?」
 愛原「いや、こっちが聞きたい!君こそ、どうしてここに電話を掛けたんだ!?」
 高野「私はあの女に、ここに電話するように言われたんです!」
 愛原「あの女!?あの女って誰だ!?」
 高野「その前に先生、今どこにいるんですか!?」
 愛原「俺達は静岡県富士宮市郊外の別荘だ!斉藤家の隠し別荘だという……」
 高野「!!! そこに、小迫という名前の女はいますか?」
 愛原「コハク?……いや、いないが?」

 私はこの時、コハクの意味をすっかり忘れていた。

 高野「そ、そうですか!その隠し別荘とやらは、今探索中なんですね?」
 愛原「そうだ」
 高野「今、異変は発生していますか?」
 愛原「異変?いや、今は発生していないが……。ん?」

 その時、私はパールがやたら緊張した面持ちになっているのが分かった。
 私は受話器の送話口を押さえた。

 愛原「どうした、パール?」
 パール「い、いえ……何でもありません」

 私が電話中の間も、リサは室内の探索を続けている。

 リサ「おっ、グリーンハーブ発見!……そっちにはレッドハーブも!」
 アンバー「調合できるのですかぁ~?凄いですねぇ~!」
 リサ「霧生市にいた時、USSの奴らとか、研究員がやっていたのを真似してたらできるようになった!」

 私は再び高野君との会話に戻った。

 愛原「ああ、悪い。これといって異変も無いし、大きな発見も無い」
 高野「先生、悪い事は言いません。速やかにそこから離れてください。恐らく、そこは罠です。先生の命が危険です」
 愛原「それはどういうことだ?キミ達はどこから電話してるんだ?」

 すると、電話口の向こうからけたたましい警報音が聞こえて来た。

 高野「ここも自爆装置が作動したようです!離脱します!先生方もどうかお気をつけて!」
 愛原「あっ、おい!」

 だが、電話が切れてしまった。

 アンバー「どなたからお電話だったんですかぁ~?」
 愛原「ああ……いや、俺の知り合いだ。何か知らんが、この電話の番号に間違って掛けてきたらしい」
 アンバー「そうでしたかぁ~……」
 愛原「キミ、この部屋には何か重要な物が隠されていると思うか?」
 アンバー「先ほども申し上げました通りぃ~、私はここに入るのは初めてなんですぅ~。だから、何とも申し上げられません」
 愛原「そうか……」
 パール「アンバー」
 アンバー「なーに?」
 パール「この部屋にトイレはある?」
 アンバー「やぁねぇ~。さっきから具合悪そうにしてたの、そうだったのォ~?トイレは地上にしか無いわよ~」
 パール「ほ~……そうか」
 リサ「……ねぇ、先生。この部屋って、随分きれいだよね。まるで、さっきまで誰かいたみたい。っていうか、掃除された後みたい」
 愛原「そうだなぁ……」

 そして、私はようやく思い出した。
 私はショットガンを、パールはサバイバルナイフを、リサは鬼形態に戻った。

 愛原「高野君が言ってたコハクって、琥珀で、アンバーの事だよな?」
 パール「地下室に来るのは初めてなのに、どうしてここにトイレが無いって分かるの?」
 リサ「1階と同じように、あなたはここも掃除したでしょ?」
 アンバー「み、皆さん、どうなさったのですかぁ~?落ち着いてください~!」
 パール「洗いざらい吐いてもらおうか!」
 アンバー「わ、分かりました~!それなら……」

 と、またここで机の上の電話が鳴る。

 愛原「な、何だこんな時に!?」

 私達の注意が一瞬逸れた隙を、アンバーは見逃さなかった。

 リサ「! 先生!!!」

 リサが真っ先に気づいたが、遅かった。
 アンバーはメイド服のポケットに入れていた閃光手榴弾を取り出し、それを炸裂させた。

 愛原「わぁーっ!」
 パール「うっ!!!」
 リサ「きゃっ!!」

 閃光手榴弾とはその名の通り、炸裂させると強い光を放ち、そして大きな爆発音を起こす手榴弾である。
 しかし、効果はそれだけで殺傷能力は無い。
 とはいえ、敵に眩暈やショック状態を起こさせる効果があるくらいなので、あまりにも大音量なことから難聴を引き起こしたり、火薬で火傷をすることはあるという。

 アンバー「キャハハハハハハハハ!!!ここで全員死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 アンバーはそう叫ぶと、地下室を出て行った。

 愛原「く、くそっ!まさか、こんな物を持っていやがるとは……!」

 しばらくは視界が効きそうにない。
 パールが、手探りで、ようやく電話を取った。

 パール「も、もしもし……」
 善場「その声は、霧崎事務員ですか!?どうしてそこに!?」
 パール「……え、何ですか?!聞こえません!」

 パールもまだ聴力が戻っていないようだ。

 リサ「貸して!」

 この中では、最もリサが回復が早いのだろう。
 さすがはラスボスをルーツに持つBOW(生物兵器)だ。

 リサ「もしもし!リサです!」
 善場「リサまで!?すると、そこに愛原所長も?」
 リサ「そうだよ!斉藤家の隠し別荘とやらにいるの!」
 善場「そこは罠です!直ちに退避してください!!」

 すると、室内のスピーカーから、けたたましい警報が流れて来る。

〔自爆装置作動!自爆装置作動!このプログラムを停止させることはできません。在館者は直ちに屋外へ退避してください。繰り返します。この建物は、まもなく自爆します。このプログラムを停止させることはできません。在館者は直ちに屋外へ退避してください。……〕

 愛原「自爆装置だって!?」
 善場「遅かったですか!静岡事務所が救助に向かいます!なるべく速やかに脱出してください!」

 電話が切れた。

 愛原「くっそ!罠だったのかよ!」
 リサ「お兄ちゃんが先生を裏切った!?」
 愛原「いや、違う!どこかで手違いが発生したんだ……!」
 パール「先生、それより脱出しましょう!」
 愛原「ああ!」

 私達は廊下に飛び出た。
 不思議なことに、地下室そのものの鍵は掛かっていなかった。
 もしかしたら、外から鍵を掛けられて閉じ込められたかと思っていたのだが。
 しかし、廊下の照明は消えてしまい、真っ暗だった。
 こんなこともあろうかと、服に付けて前方を照らすボディライトを持って来ている。
 私とパールが付けた。
 リサは暗闇でも目が見えるので、付けなくても良い。

 愛原「エレベーターがいない!」
 パール「アンバーですよ!アンバーが上に上がってしまったんです!」

 私はボタンを押した。
 意外なことに、エレベーターが素直に下りて来る。
 だが、下りて来たエレベーターの鉄格子の扉越しに、私達はある物を見た。
 それは……。

 ①アンバーの死体
 ②ゾンビの群れ
 ➂ハンター数匹
 ④タイラント1匹
 ⑤宝箱
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の隠し別荘を探索」

2024-12-01 20:25:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日10時45分 天候:晴 静岡県富士宮市某所 斉藤家隠し別荘]

 外観が洋館みたいな雰囲気だと思ったが、内装もそのような感じだった。
 エントランスが2階吹き抜けになっており、2階の天井からシャンデリア風の照明がぶら下がっている。
 廃墟だとは聞いていたが、案外館内は綺麗に掃除されていた。
 外観は古いままなのだが……。

 愛原「もう少しリニューアルすれば、また再利用できそうだな?」
 アンバー「急いでお掃除しましたので~」
 愛原「キミが?」
 アンバー「はい~」

 アンバーの受け答えに、パールは鼻で笑った。

 愛原「よし、とにかく行こう」
 リサ「ここが……エレンのもう1つの家……」
 パール「ただの隠し別荘です。ここには御嬢様は、幼い頃に1度しか来られていないそうです」
 アンバー「そう。パールが来る前だったわぁ~。今から10年前……それはもう小っちゃくて可愛かったですよぉ~」
 愛原「そうか。それで、QRコードで開く鍵のドアはどこだ?」
 アンバー「こちらですぅ~」

 アンバーが案内したのは、エレベーター。
 しかも、ただのエレベーターではない。

 愛原「鉄格子のエレベーター!?」

 恐らくは東京・日本橋高島屋にあるようなエレベーターがあった。
 ただ、確かあそこにあるエレベーターは、内側が鉄格子になっているだけで、外側はガラス扉になっているはずだ。
 こちらのエレベーターは、内側も外側も鉄格子である。

 アンバー「そうなんですぅ~」
 愛原「若い頃に働いていた運送会社に倉庫に、似たようなものがあったな」

 ただそれは荷物運搬用のリフトであって、内側では操作できないものだ。
 しかしこれは中を覗くと、ちゃんと内側から操作できるようになっている。

 愛原「このエレベーター、動かせるのか?」
 アンバー「停電中なので、予備電源を起動させないとダメなんですよぉ~」
 愛原「そ、そうか」

 それが廃墟たる所以だ。
 主を失った家は光熱費が支払われず、止められる運命にあるのだろう。

 愛原「予備電源のスイッチはどこにある!?」
 アンバー「お気になさらず~。正規の電源を復旧させれば良いのですぅ~」

 アンバーはパチンと指を鳴らした。
 すると、どこかでガチャンというレバーを操作する音が聞こえ、屋内の照明が復旧した。
 と、同時に、エレベーターの電源も入る。

 愛原「??? 電気代払ってなくて止められてるんじゃ???」
 アンバー「その理由は、下に行けば分かりますぅ~」
 愛原「下!?」

 私はボタンを押した。
 すると、鉄格子のロックが外れる音がする。
 私は外側の鉄格子を開け、それから内側の鉄格子を開けた。
 当然、エレベーターの電源も復旧したので、内側の照明も点灯している。
 乗り込むと、私は外側の鉄格子を閉め、それから内側の鉄格子も閉めた。
 ちゃんと閉めないと、エレベーターが起動しない仕組みだということは、雑学で知っていた。
 しかし、『B』のボタンを押しても、エレベーターが動かない。
 まさか、下の方で鉄格子が開いてしまっているのでは?

 アンバー「これですぅ~」

 アンバーはボタンの横の蓋を開けると、そこから読取機を取り出した。
 まさか、これに例のQRコードを読み取らせろと?
 QRコードが書かれたカードを翳した。
 すると、ピッという音がして、『B』ボタンのランプが点灯する。
 私がもう1度押すと、やっとエレベーターが動き出した。

 愛原「ここまで面倒なことをさせるとは、相当な秘密がこの地下に眠っているらしい」
 パール「と、先生は推理されておられるけど、どうなの?」
 アンバー「はい~!きっと、愛原先生にとっては、重要な秘密ですぅ~」
 愛原「それは期待させてもらおう」

 そして、エレベーターがドンという衝撃をさせて止まる。
 古いエレベーターなので、衝撃があるのはしょうがない。
 そして、カチンという鉄格子のロックが外れる音がした。
 内側から開け、外側も開ける。

 パール「そして、ちゃんと閉めるのですね?」
 愛原「そういうことだ」

 地下室は、1本の廊下が伸びていた。
 まるで渡り廊下のように、左右には何にも無い。
 地下なので窓は無く、所々天井に設置された20ワット程度の白熱電球が灯っているだけ。
 なので、廊下は薄暗かった。
 廊下の突き当りには、1枚の扉があった。
 木目調の高級そうなドアだ。
 そのドアは、カードキーで開けるタイプだった。

 パール「アンバー、カードキーを」
 アンバー「無いですぅ~」
 パール「あぁ?てめェ、フザてんのか?」

 パールはアンバーの胸倉を掴んだ。
 パールの口調は、明らかにヤンキー時代のものである。

 愛原「パール!落ち着け!」
 パール「は、はい!」

 パールはパッとアンバーを放した。

 アンバー「このマーク、見たこと無いですかぁ~?」

 アンバーはカードキー差込口の上を指さした。
 そこには、アンブレラのマークが描かれていた。
 ということは……。

 愛原「リサ!オマエのカードキーだ!」
 リサ「う、うん!」

 リサは定期入れからアンブレラのゴールドカードキーを取り出した。
 そして、それを読取機に差し込む。
 すると、ピッという音がしてドアロックが外れる音がした。

 愛原「開けた瞬間、タイラントが飛び出して来るなんてことは無いよな?」
 アンバー「分かりません」
 パール「何で分かんねーんだよ!?」
 アンバー「地下室は、そもそも私も入ったことが無いのでぇ~……。申し訳無いですぅ~……」
 愛原「まあ、仕方が無い」
 リサ「タイラント君がいるなら、わたしに反応して、向こうからドア開けてくれそうなものだけどね」
 愛原「じゃあ、リサが先に入ってみるか?」
 リサ「そうだね。もし罠が仕掛けられてたとしても、わたしは死なないもの」

 リサはそう言うと、ドアを開けた。
 部屋は真っ暗だった……が、人感センサーになっているのか、すぐにカチッという音がして、室内の照明が点灯した。
 主にアクリルカバーに入った白い蛍光灯だ。
 中はまるで大企業の社長室みたいな造りになっており、立派な執務机がある。
 だが、中には誰もいなかった。

 リサ「先生、大丈夫みたいだよ」
 愛原「ああ」

 私は銃を構えて、中に入った。
 そして、周囲を見渡す。

 愛原「……!」

 私は天井の片隅に、監視カメラがあるのを見つけた。
 何故この部屋に、そのような物があるのだろうか。

 愛原「うっ!?」

 その時、机の上の電話が鳴り出した。
 私が電話を取る。

 愛原「も、もしもし?」

 電話口に出た人物とは?

 ①愛原公一
 ②高橋正義
 ➂高野芽衣子
 ④善場優菜
 ⑤それ以外の人物
 ⑥無言
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の隠し別荘」

2024-12-01 12:51:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日10時00分 天候:晴 静岡県富士宮市山宮 ファミリーマート富士宮山宮店]

 店の外では、一服しながらパールがどこかに電話していた。
 そして、電話口で何か口論している。
 私がそんな彼女に近づくと、パールが私に気づいた。

 パール「愛原先生が戻って来たから切るから!首を洗って待っていろ!」

 ピッと電話を切る。

 愛原「おい、何の騒ぎだ?」
 パール「申し訳ございません。アンバーがフザけた事を言ってきたので、言い返してやったところです」
 愛原「まさか、『やっぱ今日は無理だから、出直して来て』なんて言って来たんじゃ?」
 パール「いえ、そこまでフザけたことを言うのであれば、私がズタズタに切り裂いて、富士山の山奥に埋めておきます」
 リサ「あっ、わたしが食べていい!?」
 パール「結構ですよ。でも、骨までは食べられないでしょう?」
 リサ「そうだねぇ……」
 パール「骨を埋めるのを手伝ってくださいね」
 リサ「分かったー!」
 愛原「でも実際は違うんだろ!?実際は何だって!?」
 パール「アンバーは先生が単独で来られると思っていたそうです。それが私から連絡をしたものですから、それで不審に思ったそうですね。『何でパールが来るの?意味分かんないんですけど~?』とか、『パールが来るなら案内してやんない』とか言いやがりましたので」
 愛原「ガキのケンカか!アンバーって、キミより年上なんだよな!?」
 パール「アラサーのオバハンですよ。『愛原先生、素敵な人そうね』とか言ってたので、協力的だと思ってましたのに!あんなフザけた女だったとは!」

 するとリサ、私の腕にしがみ付いてくる。

 リサ「ほんとフザけてるよね!先生はわたしのモノなのに!」
 パール「帰りましょうか?」
 リサ「帰ろ帰ろ!」
 愛原「いや、待て、お前ら!このまま帰ったら、今度は善場係長に殺されるぞ!」
 パール「あ……」
 リサ「あ……」
 愛原「分かったら前進あるのみだ!分かったか!?」
 パール「先生の御命令は……」
 リサ「絶対……」

 リサはそそくさとリアシートに乗り込んだ。

 リサ「うわ、車暑い!」
 パール「すぐにエンジンを掛けます」

 パールは運転席のドアを開けてエンジンを掛けた。

 愛原「パールもちょっと休憩したらどうだ?トイレとか、タバコの補給とか……」
 パール「はい、そうさせて頂きます」

 パールは車から降りて、コンビニの中に入って行った。
 と、今度は私のスマホに着信が入る。

 リサ「ム!?」
 愛原「あー……アンバーだ……」

 リサは鬼形態に戻る

 愛原「はい……もしもし?」

 リサ、赤い瞳をボウッと光らせて、後ろから私を監視していた。

 アンバー「愛原先生、お疲れ様ですぅ~!何でパールなんか連れてきやがったんですかぁ~?温厚な私でも、さすがにブチギレですよぉ~?」
 愛原「それは申し訳ない。パールは今、うちの探偵事務所のスタッフなんだ。今回行く所はどうも危険な所っぽいからね。パールの攻撃力は、キミも知っているだろう?護衛にいいんじゃないかと思ってさ……」
 アンバー「護衛なら、ガイドの私がさせて頂きますよぉ~?」
 愛原「それは頼もしい。だが、ここまで来てしまったものはしょうがないだろう?ここは1つ、私に免じて収めてくれないか?」
 アンバー「も~、しょうがないですねぇ~……!」
 愛原「ところで、スリーサイズを教えてくれる約束なんだけど……」
 アンバー「ここまで来てくれたら、お教えしますわぁ~」
 リサ「ム!」

 バリバリバリバリバリバリバリバリ

 愛原「ぎゃあああああっ!!」
 リサ「2度と掛けてくんなっ!!」

 リサは私に電撃を放つと、スマホを奪い取って電話を切った。

[同日10時30分 天候:晴 静岡県富士宮市某所 斉藤家隠し別荘]

 パール「先生、着きましたよ。起きてください」
 愛原「んん……」

 私はリサからの電撃を食らって意識を無くしていたようだ。

 愛原「着いたのか?」
 パール「はい。何しろ、ナビですら、途中までしか案内できないほどでして……」
 愛原「そうか」

 車から降りると、目の前には廃墟の建物があった。
 それでも、別荘地としては良い場所だったのだろう。
 背後には富士山が聳え立っているのが見えるし、反対側を見れば、富士宮の市街地が遠くに見える。
 きっと夜は夜景が綺麗なのだろう。
 にも関わらず、ここが別荘地として整備されなかったのは不思議だ。

 愛原「別荘地としては、良い場所だな。しかし実際に建ってるのは、斉藤家の隠し別荘だけだ。これは一体、どういうことだろう?」
 アンバー「大日本製薬が、保養所にする為に土地を購入したのですが、頓挫してこのままなんですよ~」
 愛原「あっ!?」

 その時、聞き覚えのある声が建物の中から聞こえて来た。
 ドアを内側から開けたのは、メイド服姿の女。
 髪を金色に染め、2つ結びにしている。

 愛原「えーと……アンバーさんかな?」
 アンバー「はい。アンバーでございますぅ~。以後、お見知りおきを」
 パール「先生。あの、ゆるふわセリフに騙されないでくださいね?メイドカフェのメイドが、『お帰りなさいませ、御主人様』と言うのと同じです」
 愛原「あ、ああ」

 とはいうものの、確かにスリーサイズはパールやリサより大きそうだ。
 さすがは、ここにいる女達の中では最も年上だ。
 身長はパールより低いがな。
 まあ、パール自身が170cmちょいくらいあるからしょうがないが。
 それでも、私と同じくらいの身長(165cm)はあるのか?

 パールは腰にミリタリーナイフなどを下げ、リサは荷物の中から金棒を取り出した。
 私はハンドガンとショットガン。

 アンバー「……随分、物々しい装備でございますのねぇ~……」
 愛原「一応、念の為だ。何しろ、“コネクション”のお宝が眠ってるかもしれないんだからな」
 パール「愛原先生はお忙しいの。さっさと案内して」
 リサ「先生、今度あいつのスリーサイズ聞いたら、この金棒で百叩きの刑だからね?」
 愛原「はい……」
 アンバー「皆さん、楽しそうで羨ましい……」
 パール「でしょ?さっさと案内して」
 アンバー「相変わらず、気が短い女ねぇ……」
 パール「正当防衛性を確保する為に、呑気に被害者サイドになるのを待つ方がおかしいの!」
 愛原「アンバー。こっちは準備万端だ。案内の方、よろしく頼む」
 アンバー「かしこまりました~。どうぞ、中へ~」

 アンバーは木製のドアを開けた。
 思わず、『お邪魔します』という言葉が出て来るほどの丁寧な対応だ。
 そこは本当に元メイドだったのだろう。
 で、肝心の中はどうだったのかというと……。

 ①荒れ果てていた。
 ②綺麗に片付けられていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする