報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「愛原の退院」

2020-12-03 20:07:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日09:30.天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津田島駅→福島県立南会津病院]

 予定通り、ホテルをチェックアウトしたリサ達は、まず駅に向かった。

 善場:「バスの便が悪いので、病院までタクシーで行きます」
 高橋:「そうかい」

 駅前のタクシー乗り場からタクシーに乗り込む。
 タクシーは駅前ロータリーを出て公道に出た。
 途中までは見覚えのある景色を通った。
 前回来た時に宿泊したホテルの前を通り、夕食に食べたラーメン屋の前を通り……。
 町の中では一番大きな病院ということもあって、運転手も通い慣れた道のようだ。
 駅からものの5分~6分くらいでタクシーは病院に着いた。
 もちろん土曜日で外来診療は休み。
 入院患者への面会も、コロナ禍の影響で原則禁止である。
 それでも入院患者が退院しようとすると、費用の支払いなどの関係で平日午前中がベタな法則である。
 それがどういうわけだか、土曜日なのである。
 何か特別な理由がありそうだが、リサや高橋はその理由を知らない。

 善場:「すいません。ちょっと待っててもらえますか?」

 善場が一旦ここまでの料金を払うと、運転手に言った。
 総合病院なのだから、タクシー乗り場くらいはある。
 ただ、これが平日の診療時間だったり、土休日でもコロナ禍前であれば、客待ちのタクシーもいただろう。
 しかし、この状況のせいか、タクシーはいない。
 そこで善場は、このタクシーも帰りに利用しようと考えたのだ。

 運転手:「いいですよ。予約扱いにしておきます」

 運転手はタクシーの種別表示を『支払』から『予約』へ変更した。
 善場は通用口の方へ向かう。
 リサと高橋も続いた。
 警備室で善場は身分を明かし、用件を伝えた。
 警備員から病棟の方へ連絡が行く。
 しばらくすると、奥の方から……。

 愛原:「よお、皆!」
 高橋:「先生!」
 リサ:「先生!」

 病院職員に付き添われ、大きな荷物を持った愛原がやってきた。

 高橋:「先生、よく御無事で……」
 リサ:「先生は大丈夫だと思ったもん……ね……!」

 涙ぐむ2人。

 職員:「こちらが書類になります」
 善場:「ありがとうございました。費用その他につきましては、こちらの請求先に……」

 そんな2人をよそに、事務職員と事務的手続きの話を始める善場。

 愛原:「密になるといけない。外で待ってよう」
 高橋:「はい!」

 愛原達は外に出た。

 愛原:「おおっ!さすがにもう寒いな」
 高橋:「先生、コートをお持ちしました!」
 愛原:「おっ、気が利くな。サンキュ」

 高橋は家から持って来た愛原の冬用コートを渡した。
 愛原は早速安いスーツの上からコートを羽織る。
 これとて、スーツ屋のバーゲンセールで購入したものなのだが。

 愛原:「リサは寒くないのか?」
 リサ:「全然。私、BOWだから」
 愛原:「はは、そうか」
 高橋:「入院中は大変でしたね、先生?」
 愛原:「ああ。何か久しぶりにインフルエンザに罹ったような気がする。何の予防接種も受けないでインフルエンザを発症したって感じだった。よく肺炎にならなかったもんだ」
 高橋:「先生は頑丈でいらっしゃいますから」
 愛原:「Tウィルスの抗体が元々あって、で、更にCウィルスの予防接種もしたわけだ。にも関わらず、俺の体に入ったリサ・トレヴァーのウィルスがインフルエンザっぽいものに変異するなんて、ウソみたいな話だよな」
 高橋:「でも先生、これで今年のインフルエンザも免疫ができてOKってことっスね?」
 愛原:「そうだ。……って、言えるのか?インフルはインフルで、また別に打たないといけないかもな」
 リサ:「私は要らない」
 愛原:「だろうな」

 そんなことを話しているうちに、善場が出て来た。

 善場:「お待たせしました。以上で手続きは終了です。タクシーを待たせてありますので、行きましょう。こちらです」
 愛原:「どうもすいませんね。費用は……」
 善場:「全てこちらとBSAAで負担させて頂きますので、愛原所長の御負担はありません。これから東京へ戻りますが、その費用もこちらで持ちます」
 愛原:「本当にいいのかい?」
 善場:「『1番』を除くリサ・トレヴァーを殲滅することができました。これだけでも、愛原所長の御協力への感謝は大きいものです」
 愛原:「『1番』はまだ見つからないのか?」
 善場:「そうなんです。目下のところ捜索中なんですが。それと、気になることが最近発生してまして……」
 愛原:「気になること?」
 善場:「道々お話します。まずは車へ」

 さっきの場所へ戻ると、タクシーが待っていた。
 車の外で待っていた運転手が手動で、助手席のドアと助手席のドアを開ける。
 あとはトランクを開けた。
 プリウスがハッチバックではなく、形式的にはセダンとされているのは、トランクがあるからだろう。
 ワゴンと違って座席から手を伸ばして荷物が取れない、だからセダンだと。
 そこに愛原の荷物などを置く。
 往路と同じく、助手席に善場が座る。
 あとの3人は後ろに座るが、確かにプリウスに3人は狭いかもしれない。
 だが、高橋とリサは愛原に密着できることが何より【お察しください】。

 善場:「それでは駅まで戻ってください」
 運転手:「分かりました」

 車は静かに走り出した。

[同日10:10.天候:晴 同町内 会津田島駅]

 タクシーは再び会津田島駅のロータリーに戻って来た。
 善場は料金を現金で払っていたが、しっかり領収証をもらっていた。

 善場:「まだ少し時間があるので、中でゆっくりしていましょう」

 会津田島駅は列車ごとに改札を行う方式らしい。
 つまり、キップさえあれば自由にホームに入れるというわけではないということだ。
 地方の駅ではたまに見られるタイプである。
 この時間ともなると、駅舎内に併設された物産館もオープンしているので、それを見ることにする。

 愛原:「ボスにお土産を送ってあげよう。今、事務所はどうなってるんだ?高野君は……残念だけど」

 愛原は退院の数日前に、善場から高野のことについては聞いていた。

 高橋:「一応、俺で何とかしてますよ。たまに、善場の姉ちゃんも手伝いに来てくれて」
 愛原:「善場主任が!?」
 善場:「あくまで、リサの様子を見に来たついでですよ。事務作業くらいでしたら、私も事務所でやっていますから」
 愛原:「本当に、何から何まですいません」
 善場:「いえいえ」
 愛原:「まさか、高野君が“青いアンブレラ”だったとは……」
 善場:「“青いアンブレラ”以前の、日本アンブレラの関係者でもあったということですよ。彼女の供述のおかげで、五十嵐元社長の罪を更に告発できそうです」
 愛原:「素直に供述してるんだ?」
 善場:「意外でしたね。もっとも、“青いアンブレラ”に入るくらいですから、既に消滅した日本アンブレラのことなど、どうでもいいのかもしれませんが」
 愛原:「ふーむ……。後で面会に行ってもいいですか?」
 善場:「構いませんよ。ただ、面会は平日のみでお願いします」
 愛原:「分かりました」

 とはいえ、高橋の話によると、ボスも心配してよく電話を掛けてくるらしい。
 心配させたのは事実だから、ボスにお土産を送っておこう。

 高橋:「先生、酒もありますよ?」
 愛原:「ほおほお」
 善場:「飲み過ぎないようにお願いしますよ」
 愛原:「分かってますよ」

 ボスへのお土産は菓子折りでいいだろうが、私は地酒でも買って行こうかな……。
 因みに物産館とは別に売店もあり、そこでは弁当なども売っていた。

 リサ:「お菓子、お菓子……」
 愛原:「ああ、いいよ。買いな」
 リサ:「おー!……お昼はどうするの?」
 愛原:「途中で駅弁でも買うか?」
 善場:「下今市で長い時間止まるようなので、その時に買いに行けそうですね」
 愛原:「そうですか」

 因みに帰りは特急列車一本である。
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“愛原リサの日常” 「エブリンの夢」

2020-12-03 15:40:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月28日07:00.天候:晴 福島県南会津郡南会津町 グリーンホテルミナト5F客室]

 リサ:「……はっ!」

 枕元に置いたスマホからアラームが鳴り、それでリサは目が覚めた。

 善場:「ううーん……」

 パッとリサがアラームを止めると、それで善場も起きた。
 善場は部屋備え付けの浴衣を着ている。

 善場:「おはよう、リサ」
 リサ:「お、おはよう……」
 善場:「どうしたの?汗びっしょりよ?悪い夢でも見た?」
 リサ:「うん。見た」
 善場:「とにかく、シャワー浴びて汗を流した方がいい。ただでさえBOWは体臭が強いからね」

 より多くの人間を捕食した者ほど体臭が強くなる傾向がある。

 リサ:「愛原先生、私の体臭好きだって言ってくれた」
 善場:「臭いフェチ?とにかく、洗って着替えた方がいいから。分かった?」
 リサ:「はい」

 リサはベッドから出ると、バスルームに向かった。
 リサは白いTシャツに黒いスパッツを穿いている。

 善場:(マスター認定した愛原所長と、上位BOWの言う事は聞く、か……)

 善場はリサの目を見て命令した。
 リサの目にはどのように見えたのかは不明だが、恐らく自分より上位のBOWに見えたとしたら聞くだろう。
 これは最近のBOWの傾向でもある。
 2010年代に入ってから、上級BOWが下級BOWやクリーチャーを使役する傾向が見られるようになった。
 最近話題になっているBOWエブリンもその1人。
 自身が保有している特異菌を感染させた人間を自由に使役できる。
 日本版リサ・トレヴァーは、早くからこの能力を開花させていた。

 リサ:(あの人に反発して、愛原先生に迷惑を掛けるのもアレだからね)

 ……というわけでもなく、リサの判断によるものだった。
 確かにリサは、学校では必ずしも優良生徒というわけではない。
 成績そのものは優秀であるが、素行に関しては下級生イジメを起こして停学になるほど。
 というか……もう既に『使役』する為の『種』は蒔いているのだが、あまり必要無いので発芽させていないだけだ。
 それはリサ自身が強いBOWである為、わざわざ配下を作る必要が無いというのもある。
 タイラントなど、力自慢のBOWを護衛に使うくらいはしていたことがあるが。
 わざわざ人間を使う必要は無いというのが現状だ。

[同日08:00.天候:晴 同ホテル2Fレストラン]

 レストランで朝食を取る。
 コロナ禍前は、ベタなホテル朝食の法則でバイキングだったらしいが、今はそれではなく、定食方式となっている。

 リサ:「えっ、お兄ちゃんも同じ夢を見たの!?」
 高橋:「ああ。どうやらそうらしいな」
 善場:「後で詳しく聞かせてもらえますか?」
 高橋:「姉ちゃんは見てねーのか?」
 善場:「私は見てないですねぇ……」

 リサと高橋は同じ夢を見たようだ。
 大まかな内容はこうだ。
 2人はとある廃屋の中で目が覚めた。
 その廃屋は日本の家というよりは、欧米にある一般の住宅といった感じであった。
 アメリカのホームドラマに出て来るくるような家を廃屋にした感じ。
 映画だと、“ホーム・アローン”とかに出て来るような家でもある。
 その家から脱出しなくてはならないのだが、リサと高橋が上手い事連携した。
 普通なら、家の玄関とか勝手口とか窓から脱出しようとするだろう。
 しかし窓には格子が取り付けてあったり、或いは板が打ち付けられていたりと、そこからの脱出は不可。
 玄関の鍵も、どういうわけだか内鍵ではなく、内側からも鍵が無いと開かないタイプ。
 高橋はどうにかその鍵を見つけるものの、そこから脱出しようとするとリサが止めた。
 変な臭いがするから、そこから出るのは止めた方がいいと。
 昔の高橋ならそんなリサの発言、戯言と意にも介さず無視していただろう。
 だが、今は違う。
 リサの発言を重要なヒントとし、他の出口を探すことにした。

 高橋:「地下室に現れた変な化け物は覚えているか?」
 リサ:「うん、知ってる!黒いオバケ!」
 善場:「特徴は?」
 リサ:「黒いオバケ!」
 善場:「もっと詳しくお願いします」
 高橋:「背丈は俺よりも高ェんだよ。で、すっげーカビ臭いんだよな」
 善場:「夢の中なのに、カビの臭いがしたんですか?」
 高橋:「何かな」

 高橋の身長は181cmである。
 それよりも高いというのだ。

 リサ:「何かしたよね、カビの臭い」
 高橋:「何かしたな」
 善場:「高橋助手より大きくて、カビの臭いのするオバケ……。黒いオバケ……黒カビのオバケ……クリーチャー」

 善場は頭の中でイメージ検索を行った。
 そして、何やらヒットしたらしい。
 今度はスマホを取り出して、それで検索したようだ。

 善場:「その黒いオバケというのは、こんな感じですか?」

 善場はスマホの画像を高橋とリサに見せた。

 https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%83%83%E3%83%89
(ピクシブ百科事典より、イメージ。具体的に動く画像はYouTubeに多数ある)

 但し、善場が実際に見せているのは本物の画像である。

 リサ:「そう、それ!」
 高橋:「そうだそうだ。そんな感じだ」
 善場:「これはモールデッドと言います」
 リサ:「もーるでっど?」
 善場:「カビを英語でモールドと言い、デッドは“死人”という意味ですね。その2つの単語を合わせて、モールデッドと言います。これは人間が特異菌に感染し、クリーチャー化したものです」
 高橋:「ゾンビみてーなモンか?」
 善場:「そうですね。立ち位置的にそうなります。特異菌に感染した人間の成れの果ては、3つあります。まずは特異菌がそもそも体に合わず、死亡するパターン。もう1つは、このようにモールデッドに転化するパターン。もう1つは人間の姿を保ったまま、BOWに転化するパターンです。アメリカのルイジアナ州で起きたバイオハザードでは、舞台となった農家の住人達が最後のパターンでした」

 あくまでも普段は人間の姿を保っている状態という意味であり、思考や嗜好、人格などが大きく変わることが確認されている。
 また、敵と対戦する時、自身が不利になると、おぞましい化け物に変化する所は従来のBOWと変わらない。

 善場:「それが現れたのですね?」
 高橋:「一匹だけな。俺は家ん中でハンドガンを手に入れたんだが、それが効いてるのか効いてないのか分かんねー状態でよ。で、結局、リサがブッ殺してくれた」
 リサ:「取りあえず、触手を絡めて首をねじり切ったら動かなくなっちゃった」
 善場:「新型のクリーチャーであっても、旧型のBOWには勝てないようですね」
 高橋:「その地下室で3階の窓の鍵を手に入れて、そこから脱出したんだ。俺はそこで目が覚めた」
 リサ:「私は窓から出る時、後ろから、『あーあ。負けちゃった』って声が聞こえた」
 善場:「どんな声?」
 リサ:「私より年下の女の子っぽい声」
 善場:「それが恐らくエブリンでしょうね」
 高橋:「おいおい。まさか俺も感染してるんじゃねーだろーな?」
 リサ:「お兄ちゃんからは、そういう変な臭いはしないけどね」
 善場:「でも万が一ということもあります。幸いBSAAのアメリカ支部には、特異菌のサンプルがありますので、それで抗体検査ができます。私から極東支部に依頼して、取り寄せてもらいましょう」
 高橋:「そんな簡単にできるのか?」
 善場:「日本国内にエブリンの存在の恐れありと報告はしていますので、それを理由に依頼することは可能です。もちろん、今回お2人が見た夢のことも報告させて頂きます」
 高橋:「そうなのか。夢の中の話が本当だとすると、リサの方が強いっぽいな」
 善場:「まだ分かりませんね。日本国内にもし本当にエブリンがいると仮定して、彼女はまだ何の命令も受けていないのかもしれません。しかし、私達……特にリサに興味を持って、色々調べているのかもしれません。もしかしたら、お友達になりたいのかも」
 リサ:「BOWのライバルなら要らないねぇ」

 BOWには仲間意識を持って群れる種類もあるが、多くは単独プレーである。
 特に、ラスボスを張れるほどの強さを持つ者は。
 それは強い独占意識の表れであるが故。
 なので自分より弱い人間を『友人』にすることはあっても、自分と同等或いはそれ以上の強さBOWと『友人』になることはできないのである。
 リサをして、他のリサ・トレヴァー達を『仲間でも何でもない』と言い放つほど。

 善場:「9時半にはホテルを出ますので、それまではゆっくりしててください」
 高橋:「分かった」
 リサ:「早く愛原先生に会いたい」
 高橋:「ああ、全くだ」
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