報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「おがさわら丸の旅」 2

2024-10-21 20:50:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月1日15時30分 天候:晴 小笠原諸島 小笠原海運おがさわら丸・4デッキ]

 
(グーグルマップより)

 私は百円玉を手に、公衆電話の受話器を取った。
 因みに船舶内の公衆電話は、地上の公衆電話と見た目は似ていても、使い勝手が異なる。
 私も久しぶりに使うので、使い方を確認しながら掛けた。
 実は名刺の裏に、手書きで善場係長の携帯番号が書かれている。
 これに掛けてみた。
 この場合、向こうには何て表示されるのだろう?
 『公衆電話』だろうか?それとも……。

 善場「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」

 聞き覚えのある声が受話器から聞こえて来た。

 愛原「善場係長!私は愛原です!」
 善場「愛原所長!?本当に愛原所長ですか?」
 愛原「はい!東京の菊川で探偵事務所をやっております愛原学です!」
 善場「御無事なのですか!?今、どちらですか!?」
 愛原「無事です。今は小笠原諸島から船に乗って、東京に向かっているところです」
 善場「小笠原……それは本当なのですか!?」
 愛原「本当です。小笠原島……あっ、父島だ!父島では私の伯父の愛原公一と、元うちの事務員だった高野芽衣子と行動していました」
 善場「すると、“青いアンブレラ”ですね!彼らは今どこに!?」
 愛原「父島に残りました。船には私だけが乗っている状態です」
 善場「父島ですか……!」
 愛原「その隣の母島に向かうと言ってました」
 善場「母島ですね!」

 母島には病院船ブルーアンブレラ号が停泊していると思うのだが、そのような情報は善場係長達の所には入っていないのだろうか。
 もっとも、デイライトが高野君達を目の敵にしているのは、何も“青いアンブレラ”が、悪の製薬会社アンブレラを元にしているからだけでなく、日本では禁止されている民間軍事会社の体を成しているからである。
 しかし、病院船を航行して、医療事業を行うこと自体は違法ではない。
 さすがの“青いアンブレラ”も、そこはちゃんと許可を取ってやっていることだろう。

 愛原「すいません。意識が回復した時には、彼らの病院船の中で荷物も無く、父島に上陸して荷物を回収した時にはスマホのバッテリーが切れていて充電もできずといった感じで……」
 善場「仕方が無いです。仮に所長に連絡手段があったとしても、彼らは何のかんのと理由をつけて、我々に連絡をさせなかったことでしょう」
 愛原「そ、そうですかね……」
 善場「今、船内からどなたかのケータイ……いや、公衆電話ですね、これは……」
 愛原「そうです」

 私は100円硬貨を継ぎ足していた。

 善場「もしかしたら、船内には所長を見張る“青いアンブレラ”の工作員はいるかもしれません。ただ、私共に連絡することは想定しているようで、特に妨害する気は無いようですね」
 愛原「そうですか」
 善場「洋上ではケータイの電波も入らないので、気軽に連絡もできない。考えたものです」
 愛原「な、なるほど……」
 善場「詳しい話は、翌日にしましょう。小笠原から出航したということは、その船は小笠原海運が運航するおがさわら丸ということで宜しいですね?」
 愛原「そうです。一応、伯父さんからも船代は出してもらっていて……」

 私は自分の船室の番号を善場係長に伝えた。

 善場「かしこまりました。では明日、改めて……。もしも船内で何か異常が発生しましたら、またいつでも御連絡ください」
 愛原「分かりました。あの……リサにも連絡していいですか?」
 善場「リサですか?そうですね……」
 愛原「リサの状況は、公一伯父さんから聞きました。何か、学校で暴れたそうですね」
 善場「ええ……まあ……。処理につきましては、こちらでできる限りのことはさせて頂きました。リサへの連絡ですが、所長から直接はお控えください。また興奮して、暴走する恐れがありますので」
 愛原「そうですか……」
 善場「私から、リサが収容されている施設には伝えておきます」
 愛原「どうか、宜しくお願い致します」
 善場「明日、船が到着する時間と場所を教えて頂けますか?」
 愛原「はい。ダイヤ通りですと、明日の15時、東京の竹芝桟橋に到着するそうです」
 善場「かしこまりました。では翌日、そこへお迎えに参ります。船内でもお気をつけて。どこに“青いアンブレラ”や“コネクション”の工作員がいるか分かりませんから」
 愛原「しょ、承知しました。それでは、失礼致します」

 私は電話を切った。
 これで少しは安心できた。
 リサの声が聞こえないのが残念だが、どうやら伯父さん達が言っていたのは本当だったらしい。
 恐らくスマホとかも取り上げられていて、今は電話もできない状態なのかもしれない。
 善場係長から、私の無事をリサに伝えてくれるそうなので、それでリサが安心してくれれば良い。
 私は1度、部屋に戻ることにした。

 愛原「ふーむ……」

 船室のある6デッキには売店もあり、お土産もここで売っている。
 そういえば、島寿司は食べれても、お土産を買う暇は無かった。
 お金も下ろしたことだし、ここで善場係長やリサへのお土産を買って行ってもいいだろう。
 それらを選んで購入して、一旦は部屋に戻る。
 室内にはテレビがあるので、それを点けて過ごすことになる。
 善場係長に連絡は取れてホッとしたのも束の間。
 予期せぬ一人旅をすることになってしまった寂しさが込み上げて来た。
 思い立った一人旅なら、解放感を満喫していただろう。
 しかし、今回は違う。
 何者かの手の上で踊らされているような気がして、それが何だか落ち着かなかった。
 やっぱりリサや高橋の声を聴かないと、心配で仕方が無いな。
 スマホの充電具合もみると、まだ100%にはなっていないものの、ある程度は充電できていた。
 そして、既に圏外となっている。
 WiFiも無い。
 しかし、LINEには、私の安否を確認するリサの悲痛なメッセージが残されていた。
 これは……リサにも可哀そうなことをしたな。
 まあ、私の責任ではないのだが。
 それにしても、“コネクション”とは一体……?
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“私立探偵 愛原学” 「おがさわら丸の旅」

2024-10-21 14:17:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月1日15時00分 天候:晴 東京都小笠原村父島東町 二見港→小笠原海運おがさわら丸船内]

 私は公一伯父さんからもらった1等船室のキップを手に、待合所で待った。
 1等以上から個室になるという。
 最高級の部屋は特等で、その下が特1等、そして私が乗る1等……と続く。
 伯父さん達は私を見送った後、母島に渡るとのこと。
 その方法については教えてくれなかったが、何故か定期船ではなく、村営バスの時刻の方を気にしていた。
 もしかしすると、またどこかの海岸からボートか何かで向かうつもりなのだろうか。
 搭乗のタイミングは航空機と同じ。
 等級の高い順から案内される。
 もちろん、バリアフリー希望の客も先に案内される所も同じ。
 私もようやく船に乗り込むことができた。

 
(小笠原海運公式サイトより)

 エントランスのある4デッキから、階段で客室上階に向かう。
 ビルで言えば2階上の6デッキに、私の部屋はあった。
 6デッキの客室は1等と特1等のみなので、比較的静かに過ごせるかもしれない。
 また、中央部には売店もあった。

 愛原「ん?ここか……」

 もらったカードキーでドアを解錠し、中に入る。

 
(同上)

 愛原「ほお……」

 1人旅ながら、室内は2人用であるようだ。
 恐らく1人用の個室は無いか、あっても伯父さん達が手配する時点で満席だったか……。
 シングルベッドが2つに……。

 
(同上)

 椅子とテーブル、テレビや電気ケトルがあった。
 スマホが使えないので、部屋ではテレビを観て過ごすことになるのだろう。
 この辺はありがたい。
 ただ、それ以外の設備については簡素で、バスルームは無く、アメニティもフェイスタオルや歯磨きセットはあったが、寝巻などは無かった。
 エアコンは個別設置であり、暑い小笠原諸島内では重宝する。

 愛原「よし、早速充電しよう」

 私はキャリーケースを開けると、その中から充電ケーブルを探した。

 愛原「ん!?」

 運び出される時、結構乱暴に扱われたのだろう。
 ケースは傷だらけであったが、基本的に中身は大丈夫だった。
 それでも、ゴチャゴチャになってしまったが。

 

 何故かリサの下着が入っていた。
 それも使用済みである。
 ショーツの中にメモ書きが入っており、リサの字で、『わたしのことを忘れないように』と書かれていた。
 どうやら、私の手術の結果如何によっては、記憶が無くなるとでも思っていたらしい。
 それを避けて、ようやく充電ケーブルを見つけた。
 それを早速室内のコンセントに接続する。
 ようやくスマホを充電することができた。

 愛原「ああっ!」

 しかも、ここで私はあることに気が付いた。
 リサの下着と充電ケーブルの下に、名刺入れが入っていたのだ。
 その中には、善場係長から頂いた名刺もある。
 当然そこには、善場係長への連絡先が書かれているのだ。
 どうして気が付かなかった!?
 これさえあれば、スマホの電話帳など見なくとも、電話番号が分かるではないか!
 確か、船内には公衆電話があると言っていたな。
 私は充電中のスマホはそのままにしておき、財布とカードキーだけ持って、部屋の外に出た。

 愛原「ん?」

 部屋の外に出ると、船が大きく揺れた。
 どうやら、今から出航するらしい。
 私は左舷デッキに出た。
 私が過ごす6デッキとその上の7デッキは、部屋の外はプロムナードデッキになっているのである。
 外が賑やかなのは、かなり派手な見送りをしてくれるからのようだ。
 岸壁では太鼓の音が響き、横断幕なども出て、私達、船客を見送ってくれる。
 おがさわら丸は毎日運行というわけではなく、だいたい週に1度の運航である。
 なので島民にとっては、毎週恒例のお祭りのようなものだ。
 見送りは何も、岸壁でだけで行われるのではない。
 島が見える間くらいまでは、島民の漁船やらレジャーボートまで出てきて船を見送るくらいだ。

 愛原「うわ……伯父さん達……」

 岸壁で見送るのは、島民達だけではない。
 恐らく、まだ島内に残って観光を続けると思われる観光客も一部おり、その中に公一伯父さんや高野君の姿もあった。
 あの2人、これからどうするのだろう?
 こうやっておがさわら丸は出航したことで、岸壁には空きが出たが。
 そこにあの病院船でも着けるつもりなのだろうか?
 いやいや、『母島に行く』とは言ってたからな……。
 おっと!こうしちゃいられない!
 私は伯父さん達に手を振り返すと船内に戻り、4デッキの案内所に向かった。
 そこに両替機があるのを発見したからだ。
 八丈島に向かう船でもそうだったが、船内の公衆電話は、確か100円硬貨専用だった気がする。
 案内所のスタッフに聞くと、やはりそうであるという。
 私は両替機に1000円札を突っ込み、そこで100円玉と両替した。
 財布の中には既に、それが何枚かはあったのだが、恐らく1枚や2枚では、そんなに長く通話できないだろう。
 公衆電話は案内所のすぐ近くにある。
 善場係長の名刺を手に、私は公衆電話に向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「小笠原諸島・父島(東町)」

2024-10-21 11:16:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月1日13時00分 天候:晴 東京都小笠原村父島東町 ハートロックカフェ→二見港船客待合所]

 島寿司などを堪能した後、店を移動してカフェに入った。
 そこで食後のコーヒーやデザートを楽しむ。
 だが、リサの状況などを聞くに、とても味わいを楽しむどころではなかった。
 その前に高橋の方はというと、検察庁に身柄を送られ、起訴されたとのこと。

 高野芽衣子「日本には明確な司法取引の制度が無いですからね。まあ、『コネクション』の情報を流せば、実質的に情状酌量の余地ありと見てくれることもありますが……」
 愛原公一「彼のそれまでの素行が不良じゃったから、裁判所も良い目では見てくれぬかもな……」
 愛原学「俺が自費で弁護士を立てるよ!俺自身は被害届を出すつもりはないし……」

 当初は医師法違反に問われた高橋だったが、私の手術の目的が『治療』ではなかったことから、それの立件は見送られた。
 今では傷害罪での立件となっている。
 私の頭を傷つけて、そこに異物を埋め込んだという事実に対しての罪だな。

 学「高橋は『コネクション』のことについては、喋ったの?」
 公一「分からん。ただ、弁護士はもう国選弁護人が付いとるよ」
 学「起訴されたんだからねぇ……。あれ?親告罪じゃなかったっけ?」
 公一「それは過失傷害罪じゃ。高橋君の場合は、普通の傷害罪。つまり、故意にお前に脳手術をしたから、普通の傷害罪じゃよ」
 学「顕正号のバイオハザードが、マサの組織によって引き起こされたものなら、死刑もありえますかねぇ……」
 公一「顕正号の乗客、2000名が化け物と化した上、海の藻屑と化した大事件じゃからなぁ……」
 高野「確かに私はあの時点で“青いアンブレラ”に所属してましたけど、もちろん私達はそんなことしてませんからね。私は私で、別の組織がバイオハザードを起こすかもという情報は得てましたが……」
 学「すると何だい?俺は知らず知らずに、工作員達と行動してたんかい」
 高野「ま、そういうことになりますね」
 学「高橋が怪しかったんなら、どうしてずっとマークしてなかったんだ?」
 高野「その時は、まだマサが怪しいとは思っていなかったんです。私は私で、別の工作員が乗り込んできて、そこでバイオハザードを起こすかもという情報だったので。要は、クイーン・ゼノビアみたいな感じですね」
 学「本当か?」
 高野「はい。ところが気が付いたら、いつの間にか船内はゾンビだらけでしょう?あの時でもTウィルスは旧式のゾンビウィルスなのに、どうしてまた使ったんだろうと思ってましたけど……。そしたら、マサや先生とはぐれてしまって……」
 公一「顕正号と姉妹船の正信号には、豪華客船ならではの設備があった。それは簡単な手術もできる、医務室じゃな。高橋君はお前をそこに連れ込み、例のチップを埋め込んだらしい。そして、あとは何食わぬ顔して、彼女と合流したというわけじゃ」
 学「その間、俺は放ったからし?ゾンビ船内に?」
 高野「私達が駆け付けた時、医務室周辺にはゾンビはいませんでした。マサはそれを知ってて、先生を放置したのかもしれません。あの時は、まだダクトから侵入してくる化け物とかはいませんでしたからね。しかも、医務室には鍵が掛かってましたから」

 沈み行く顕正号から何も知らない高野君と、何食わぬ顔した高橋が医務室から連れ出してくれ、そして船首甲板にあるヘリポートまで行って、救助ヘリに乗せて脱出したとこのと。

 公一「それで学、顕正号の記憶はどうじゃ?」
 学「確かに今はそれを思い出そうとしても、頭痛とかフラッシュバックとかは無くなったけど、記憶が戻ったというわけでもないや。『あれは夢の出来事』的な感じ?」
 公一「やはりチップを確認しなければダメか……」
 学「チップはBSAAが持ってるんでしょ?それともデイライトかな?」
 公一「いや、ここにあるぞ」
 高野「はい」

 高野君はさっきから持っている、A4サイズくらいのジュラルミンケースを指さした。

 学「いや、何で持ってんの!?」
 高野「仲間が先生を藤野から救出した時、そこにあったらしいので、ついでに持って来たと」
 公一「一応、学の荷物とかあったら、それも持って来てやるよう頼んではいたのじゃが、まさかそれも持って来るとは……」
 学「もしかしてBSAAとかデイライトさんとか、必死に探してる?」
 公一「うむ」
 高野「普通、探しますよね?」
 学「俺、もしかして逮捕される?」
 公一「いや、それは大丈夫じゃろう。お前は完璧な被害者なのじゃから」
 高野「何でしたら、私達を悪者にしていいですよ。今の時点においても、私達に監禁されていたことにして頂いても構いません。そしたら先生は、尚更被害者ですから、先生が逮捕されることはありません」
 公一「例えば、立てこもり犯が人質に見張り役とかさせることがあるじゃろう?普通なら犯人の協力者は逮捕モノじゃが、この場合、人質が逮捕されることはない。それと同じじゃ」
 学「な、なるほど……」
 高野「もっとも、このチップを今ここでお渡しするわけにはいきませんけどね」
 公一「向こうに帰ったら、間違いなくデイライトの人間と接触するじゃろう?チップは後で必ずそちらに引き渡すとだけ伝えてくれ」

 恐らく“青いアンブレラ”は“青いアンブレラ”で、独自に解析するつもりなのだろう。
 そして、解析が終わったら引き渡すということなのかもしれない。
 或いはコピーできるものなら、そうしてコピーの方を渡すとか?

 学「リサの方は?」
 公一「いやあ……高橋君よりもヒドいぞ」
 学「え?」
 高野「先生が襲撃されたのは昼間なんですよ。ええ、もう、白昼堂々。BSAAも、まさか白昼堂々襲って来るとは思っていなかったようですね。夜間警備の準備はしていたみたいですけど……。多分、先生の手術が終わったタイミングを見計らって襲撃する計画だったのでしょうね。で、リサちゃんは学校でした。学校にもテレビがありますから、ショックで第3形態まで変化しちゃって、こちらもBSAA案件です」
 学「……マジ?」
 高野「はい」
 学「……被害は?」
 高野「最初はショックでトイレで吐いていたらしいので、そこからの変化ですから、トイレの損壊と、屋上で暴れたので屋上の損壊ですね」
 学「……退学か……」
 高野「いえ、停学です」
 学「停学で済んだの!?」
 高野「幸い人的被害は出てないのと、修理代はBSAAとデイライトで出したそうです」
 学「マジか……。だ、第3形態まで変化って、射殺?」
 高野「私達も何とか協力しまして、何とか眠らせることに成功しました。今は第1形態くらいに戻ってると思いますよ」
 学「そ、そうか……」

 私は心底ホッとした。

 高野「ただ、中間テストが受けられないので、もしかしたら留年かもしれませんね」
 学「留年かぁ……」
 高野「あ、でも期末テストじゃないから、大丈夫かな……」
 学「そ、そうなの?」
 高野「先生の交渉次第で、追試受けるとかすれば何とかなるかもしれませんね」
 学「こうしゃ居られない!早く帰ろう!」
 公一「はっはっは!慌てんでも、出航が早まるわけではないぞ。15時出航じゃ」
 学「リサは今どこに?」
 高野「さすがに家にいるわけにはいかないので、どこかの施設に収容されてるんじゃないでしょうか?藤野は……多分ムリでしょうねぇ……。多分、他に施設を持っているでしょうから……」
 学「と、善場係長に電話を!」
 公一「お前、スマホのバッテリー切れとるんじゃないのかい?」
 学「公衆電話は!?」
 公一「この近くにあるじゃろうが、電話番号知っとるのか?」
 学「う……!全部、スマホの中だ……」
 公一「幸い船の中にも公衆電話はある。船内である程度充電して、それから電話すればいいんじゃないのかね?」
 学「そのままスマホで電話するよ」
 高野「それはムリですよ」
 学「何で?」
 高野「島を出て外洋に出てしまうと、電波が届かないんです。なのでケータイは軒並み圏外、船内はWiFiの設備もありません」
 学「つまり、船内では公衆電話しか連絡手段が無いのじゃよ」

 もしかして、彼らが私を小笠原諸島に連れて来たのは、それが目的か?
 連絡の取りようが無いのなら、BSAAもデイライトも私を探し出せないはずだ。
 GPSで追おうにも、それは私のスマホのGPSだから使えない。
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