[6月1日15時30分 天候:晴 小笠原諸島 小笠原海運おがさわら丸・4デッキ]
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/31/cba1191660b9aaebc67ac99e90a64632.jpg)
(グーグルマップより)
私は百円玉を手に、公衆電話の受話器を取った。
因みに船舶内の公衆電話は、地上の公衆電話と見た目は似ていても、使い勝手が異なる。
私も久しぶりに使うので、使い方を確認しながら掛けた。
実は名刺の裏に、手書きで善場係長の携帯番号が書かれている。
これに掛けてみた。
この場合、向こうには何て表示されるのだろう?
『公衆電話』だろうか?それとも……。
善場「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」
聞き覚えのある声が受話器から聞こえて来た。
愛原「善場係長!私は愛原です!」
善場「愛原所長!?本当に愛原所長ですか?」
愛原「はい!東京の菊川で探偵事務所をやっております愛原学です!」
善場「御無事なのですか!?今、どちらですか!?」
愛原「無事です。今は小笠原諸島から船に乗って、東京に向かっているところです」
善場「小笠原……それは本当なのですか!?」
愛原「本当です。小笠原島……あっ、父島だ!父島では私の伯父の愛原公一と、元うちの事務員だった高野芽衣子と行動していました」
善場「すると、“青いアンブレラ”ですね!彼らは今どこに!?」
愛原「父島に残りました。船には私だけが乗っている状態です」
善場「父島ですか……!」
愛原「その隣の母島に向かうと言ってました」
善場「母島ですね!」
母島には病院船ブルーアンブレラ号が停泊していると思うのだが、そのような情報は善場係長達の所には入っていないのだろうか。
もっとも、デイライトが高野君達を目の敵にしているのは、何も“青いアンブレラ”が、悪の製薬会社アンブレラを元にしているからだけでなく、日本では禁止されている民間軍事会社の体を成しているからである。
しかし、病院船を航行して、医療事業を行うこと自体は違法ではない。
さすがの“青いアンブレラ”も、そこはちゃんと許可を取ってやっていることだろう。
愛原「すいません。意識が回復した時には、彼らの病院船の中で荷物も無く、父島に上陸して荷物を回収した時にはスマホのバッテリーが切れていて充電もできずといった感じで……」
善場「仕方が無いです。仮に所長に連絡手段があったとしても、彼らは何のかんのと理由をつけて、我々に連絡をさせなかったことでしょう」
愛原「そ、そうですかね……」
善場「今、船内からどなたかのケータイ……いや、公衆電話ですね、これは……」
愛原「そうです」
私は100円硬貨を継ぎ足していた。
善場「もしかしたら、船内には所長を見張る“青いアンブレラ”の工作員はいるかもしれません。ただ、私共に連絡することは想定しているようで、特に妨害する気は無いようですね」
愛原「そうですか」
善場「洋上ではケータイの電波も入らないので、気軽に連絡もできない。考えたものです」
愛原「な、なるほど……」
善場「詳しい話は、翌日にしましょう。小笠原から出航したということは、その船は小笠原海運が運航するおがさわら丸ということで宜しいですね?」
愛原「そうです。一応、伯父さんからも船代は出してもらっていて……」
私は自分の船室の番号を善場係長に伝えた。
善場「かしこまりました。では明日、改めて……。もしも船内で何か異常が発生しましたら、またいつでも御連絡ください」
愛原「分かりました。あの……リサにも連絡していいですか?」
善場「リサですか?そうですね……」
愛原「リサの状況は、公一伯父さんから聞きました。何か、学校で暴れたそうですね」
善場「ええ……まあ……。処理につきましては、こちらでできる限りのことはさせて頂きました。リサへの連絡ですが、所長から直接はお控えください。また興奮して、暴走する恐れがありますので」
愛原「そうですか……」
善場「私から、リサが収容されている施設には伝えておきます」
愛原「どうか、宜しくお願い致します」
善場「明日、船が到着する時間と場所を教えて頂けますか?」
愛原「はい。ダイヤ通りですと、明日の15時、東京の竹芝桟橋に到着するそうです」
善場「かしこまりました。では翌日、そこへお迎えに参ります。船内でもお気をつけて。どこに“青いアンブレラ”や“コネクション”の工作員がいるか分かりませんから」
愛原「しょ、承知しました。それでは、失礼致します」
私は電話を切った。
これで少しは安心できた。
リサの声が聞こえないのが残念だが、どうやら伯父さん達が言っていたのは本当だったらしい。
恐らくスマホとかも取り上げられていて、今は電話もできない状態なのかもしれない。
善場係長から、私の無事をリサに伝えてくれるそうなので、それでリサが安心してくれれば良い。
私は1度、部屋に戻ることにした。
愛原「ふーむ……」
船室のある6デッキには売店もあり、お土産もここで売っている。
そういえば、島寿司は食べれても、お土産を買う暇は無かった。
お金も下ろしたことだし、ここで善場係長やリサへのお土産を買って行ってもいいだろう。
それらを選んで購入して、一旦は部屋に戻る。
室内にはテレビがあるので、それを点けて過ごすことになる。
善場係長に連絡は取れてホッとしたのも束の間。
予期せぬ一人旅をすることになってしまった寂しさが込み上げて来た。
思い立った一人旅なら、解放感を満喫していただろう。
しかし、今回は違う。
何者かの手の上で踊らされているような気がして、それが何だか落ち着かなかった。
やっぱりリサや高橋の声を聴かないと、心配で仕方が無いな。
スマホの充電具合もみると、まだ100%にはなっていないものの、ある程度は充電できていた。
そして、既に圏外となっている。
WiFiも無い。
しかし、LINEには、私の安否を確認するリサの悲痛なメッセージが残されていた。
これは……リサにも可哀そうなことをしたな。
まあ、私の責任ではないのだが。
それにしても、“コネクション”とは一体……?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/31/cba1191660b9aaebc67ac99e90a64632.jpg)
(グーグルマップより)
私は百円玉を手に、公衆電話の受話器を取った。
因みに船舶内の公衆電話は、地上の公衆電話と見た目は似ていても、使い勝手が異なる。
私も久しぶりに使うので、使い方を確認しながら掛けた。
実は名刺の裏に、手書きで善場係長の携帯番号が書かれている。
これに掛けてみた。
この場合、向こうには何て表示されるのだろう?
『公衆電話』だろうか?それとも……。
善場「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」
聞き覚えのある声が受話器から聞こえて来た。
愛原「善場係長!私は愛原です!」
善場「愛原所長!?本当に愛原所長ですか?」
愛原「はい!東京の菊川で探偵事務所をやっております愛原学です!」
善場「御無事なのですか!?今、どちらですか!?」
愛原「無事です。今は小笠原諸島から船に乗って、東京に向かっているところです」
善場「小笠原……それは本当なのですか!?」
愛原「本当です。小笠原島……あっ、父島だ!父島では私の伯父の愛原公一と、元うちの事務員だった高野芽衣子と行動していました」
善場「すると、“青いアンブレラ”ですね!彼らは今どこに!?」
愛原「父島に残りました。船には私だけが乗っている状態です」
善場「父島ですか……!」
愛原「その隣の母島に向かうと言ってました」
善場「母島ですね!」
母島には病院船ブルーアンブレラ号が停泊していると思うのだが、そのような情報は善場係長達の所には入っていないのだろうか。
もっとも、デイライトが高野君達を目の敵にしているのは、何も“青いアンブレラ”が、悪の製薬会社アンブレラを元にしているからだけでなく、日本では禁止されている民間軍事会社の体を成しているからである。
しかし、病院船を航行して、医療事業を行うこと自体は違法ではない。
さすがの“青いアンブレラ”も、そこはちゃんと許可を取ってやっていることだろう。
愛原「すいません。意識が回復した時には、彼らの病院船の中で荷物も無く、父島に上陸して荷物を回収した時にはスマホのバッテリーが切れていて充電もできずといった感じで……」
善場「仕方が無いです。仮に所長に連絡手段があったとしても、彼らは何のかんのと理由をつけて、我々に連絡をさせなかったことでしょう」
愛原「そ、そうですかね……」
善場「今、船内からどなたかのケータイ……いや、公衆電話ですね、これは……」
愛原「そうです」
私は100円硬貨を継ぎ足していた。
善場「もしかしたら、船内には所長を見張る“青いアンブレラ”の工作員はいるかもしれません。ただ、私共に連絡することは想定しているようで、特に妨害する気は無いようですね」
愛原「そうですか」
善場「洋上ではケータイの電波も入らないので、気軽に連絡もできない。考えたものです」
愛原「な、なるほど……」
善場「詳しい話は、翌日にしましょう。小笠原から出航したということは、その船は小笠原海運が運航するおがさわら丸ということで宜しいですね?」
愛原「そうです。一応、伯父さんからも船代は出してもらっていて……」
私は自分の船室の番号を善場係長に伝えた。
善場「かしこまりました。では明日、改めて……。もしも船内で何か異常が発生しましたら、またいつでも御連絡ください」
愛原「分かりました。あの……リサにも連絡していいですか?」
善場「リサですか?そうですね……」
愛原「リサの状況は、公一伯父さんから聞きました。何か、学校で暴れたそうですね」
善場「ええ……まあ……。処理につきましては、こちらでできる限りのことはさせて頂きました。リサへの連絡ですが、所長から直接はお控えください。また興奮して、暴走する恐れがありますので」
愛原「そうですか……」
善場「私から、リサが収容されている施設には伝えておきます」
愛原「どうか、宜しくお願い致します」
善場「明日、船が到着する時間と場所を教えて頂けますか?」
愛原「はい。ダイヤ通りですと、明日の15時、東京の竹芝桟橋に到着するそうです」
善場「かしこまりました。では翌日、そこへお迎えに参ります。船内でもお気をつけて。どこに“青いアンブレラ”や“コネクション”の工作員がいるか分かりませんから」
愛原「しょ、承知しました。それでは、失礼致します」
私は電話を切った。
これで少しは安心できた。
リサの声が聞こえないのが残念だが、どうやら伯父さん達が言っていたのは本当だったらしい。
恐らくスマホとかも取り上げられていて、今は電話もできない状態なのかもしれない。
善場係長から、私の無事をリサに伝えてくれるそうなので、それでリサが安心してくれれば良い。
私は1度、部屋に戻ることにした。
愛原「ふーむ……」
船室のある6デッキには売店もあり、お土産もここで売っている。
そういえば、島寿司は食べれても、お土産を買う暇は無かった。
お金も下ろしたことだし、ここで善場係長やリサへのお土産を買って行ってもいいだろう。
それらを選んで購入して、一旦は部屋に戻る。
室内にはテレビがあるので、それを点けて過ごすことになる。
善場係長に連絡は取れてホッとしたのも束の間。
予期せぬ一人旅をすることになってしまった寂しさが込み上げて来た。
思い立った一人旅なら、解放感を満喫していただろう。
しかし、今回は違う。
何者かの手の上で踊らされているような気がして、それが何だか落ち着かなかった。
やっぱりリサや高橋の声を聴かないと、心配で仕方が無いな。
スマホの充電具合もみると、まだ100%にはなっていないものの、ある程度は充電できていた。
そして、既に圏外となっている。
WiFiも無い。
しかし、LINEには、私の安否を確認するリサの悲痛なメッセージが残されていた。
これは……リサにも可哀そうなことをしたな。
まあ、私の責任ではないのだが。
それにしても、“コネクション”とは一体……?