じつはこのエピソードは随分昔にブログに書いたことがあるのだが、けっこう好評だったので、あらためて現在の文章力で表現してみようかな、、、と。
「成人後に初めて泣いた」エピソード、ではいってみよう。
いまでも大して変わらない状況ではあるが、25歳の秋、自分は「カッツカツ」な生活を送っていた。
体調不良を理由に職を辞し、数日間を無職で過ごす。
貯金はないから最後の給料だけで日々を過ごしていたが、家賃の支払期限が来週に迫っていた。
とりあえずこの、48000円をどうにかしなければならない。
数日間で手っ取り早く稼ごうと、アルバイト情報誌を見て日払いバイトに応募した。
こういうところは面接もなにもない、本人確認さえ出来れば即採用、希望すれば即日から働けるという「うまみ」がある。
日給10000円の仕分け作業。
なんかイヤなヤツしか居なさそうだけれども、5日間だけ我慢すれば家賃払えるじゃん!
作業そのものは、ほんとうに単調である。
ダンボールに貼られた宛先シールを見て、「区分け」していくだけである。
敢えてこう書くが、目が見えて両手・両足を動かせれば出来る仕事だった。
その最終日に、コトは起こった。
作業員の9割が男子だったのは、重たい荷物が多かったから。
面接時に「充分、気をつけるように」と注意は受けていたが、最終日だからと気が抜けていたところもあったのだろう、日本酒の6本セットを落とし、それらを割ってしまったのである。
作業場は、そこそこ騒がしい。
周囲を見回してみると、誰も瓶が割れた音に気づいていないようである。
最終的にはバレるであろうことが予想出来るのに、自分も気づいていない振りをした。
その、5分後・・・。
「なんか、酒くさくね?」
「・・・ん、そうですかね」
白状すればいいものを、あくまでも白を切ろうとする自分。
その、10分後・・・。
積荷をチェックし始めたドライバーさんが、日本酒で湿った床と、そこに散らばるガラスの破片を見て
怒鳴り始めた。
「おいおい誰だ、八海山を割ったのは!?」
よりにもよって、割ったのは銘酒・八海山のセットだった。
ビール党の自分でも八海山のブランド力は知っている、安酒であればその場で「すいません、割っちゃいました!」と告白出来たかもしれない、
実際、割った直後に「あぁ、これ八海山だ・・・」と身体が固まったのだった。
素人が即日で働ける現場だから、こういう事故はよく起こるのだと思う。
だが面接時に事故対応などの説明は受けておらず、自分がどうすべきか・どうなるのかなどということは、この時点では想像もつかなかった。
「すいません、たぶん自分がやりました」
「・・・たぶん? これだけ派手に割って、たぶん?」
「・・・・・」
そのまま自分は、派遣会社の事務所に「連行」された。
あぁ、なんか犯罪者みたいだなぁ・・・。
結果を先にいえば、全額弁償だった。
そして、これが嘘みたいなほんとうの話なのだが・・・
自分が欲していた家賃が48000円、八海山のセットも同額の48000円なのである。
5日間で稼いだ50000円をもらい、その場で48000円を弁償する自分。
残金、2000円也。
せ、せつねぇ・・・。
さて、帰りの電車のなか―。
ここまで自己嫌悪に陥ったのは、たぶん生まれて初めてである。
ドア付近に立ち、あぁくだらん人生だ、サイテーだな自分、なんのための5日間だったんだ・・・と落ちこみながら何気なく座席を見渡すと、ある中年女性の姿が視界に入った。
ハッとした。
女性が、1年前に死んだ「かーちゃん」にそっくりだったからである。
そのことに気づいた瞬間、涙が溢れてきた。
悔しさと、情けなさと、
なんというか、この滑稽な数日間をかーちゃんに目撃され、そのうえ叱責された感じがして恥ずかしくなった―そうした感情があわさって、どうにも涙が止まらなかった。
たしか一駅では涙はやまず、しばらくは目を腫らしていたはずである。
流した涙のぶんだけおとなになる、、、なんていう歌もあったような気がするけれど、
自分は果たして、おとなになったんだべか。
※トップ画像は「電車で涙、、、」というと、この漫画を想起するので。
動画は、景気づけのためにエミネムのナンバーを・・・と思ったのだが、
検索していたら、よく出来た日本語訳パロディを見つけたのでこれを。
ネット用語満載だが、まぁ面白い。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『“syndrome”シンドローム』
「成人後に初めて泣いた」エピソード、ではいってみよう。
いまでも大して変わらない状況ではあるが、25歳の秋、自分は「カッツカツ」な生活を送っていた。
体調不良を理由に職を辞し、数日間を無職で過ごす。
貯金はないから最後の給料だけで日々を過ごしていたが、家賃の支払期限が来週に迫っていた。
とりあえずこの、48000円をどうにかしなければならない。
数日間で手っ取り早く稼ごうと、アルバイト情報誌を見て日払いバイトに応募した。
こういうところは面接もなにもない、本人確認さえ出来れば即採用、希望すれば即日から働けるという「うまみ」がある。
日給10000円の仕分け作業。
なんかイヤなヤツしか居なさそうだけれども、5日間だけ我慢すれば家賃払えるじゃん!
作業そのものは、ほんとうに単調である。
ダンボールに貼られた宛先シールを見て、「区分け」していくだけである。
敢えてこう書くが、目が見えて両手・両足を動かせれば出来る仕事だった。
その最終日に、コトは起こった。
作業員の9割が男子だったのは、重たい荷物が多かったから。
面接時に「充分、気をつけるように」と注意は受けていたが、最終日だからと気が抜けていたところもあったのだろう、日本酒の6本セットを落とし、それらを割ってしまったのである。
作業場は、そこそこ騒がしい。
周囲を見回してみると、誰も瓶が割れた音に気づいていないようである。
最終的にはバレるであろうことが予想出来るのに、自分も気づいていない振りをした。
その、5分後・・・。
「なんか、酒くさくね?」
「・・・ん、そうですかね」
白状すればいいものを、あくまでも白を切ろうとする自分。
その、10分後・・・。
積荷をチェックし始めたドライバーさんが、日本酒で湿った床と、そこに散らばるガラスの破片を見て
怒鳴り始めた。
「おいおい誰だ、八海山を割ったのは!?」
よりにもよって、割ったのは銘酒・八海山のセットだった。
ビール党の自分でも八海山のブランド力は知っている、安酒であればその場で「すいません、割っちゃいました!」と告白出来たかもしれない、
実際、割った直後に「あぁ、これ八海山だ・・・」と身体が固まったのだった。
素人が即日で働ける現場だから、こういう事故はよく起こるのだと思う。
だが面接時に事故対応などの説明は受けておらず、自分がどうすべきか・どうなるのかなどということは、この時点では想像もつかなかった。
「すいません、たぶん自分がやりました」
「・・・たぶん? これだけ派手に割って、たぶん?」
「・・・・・」
そのまま自分は、派遣会社の事務所に「連行」された。
あぁ、なんか犯罪者みたいだなぁ・・・。
結果を先にいえば、全額弁償だった。
そして、これが嘘みたいなほんとうの話なのだが・・・
自分が欲していた家賃が48000円、八海山のセットも同額の48000円なのである。
5日間で稼いだ50000円をもらい、その場で48000円を弁償する自分。
残金、2000円也。
せ、せつねぇ・・・。
さて、帰りの電車のなか―。
ここまで自己嫌悪に陥ったのは、たぶん生まれて初めてである。
ドア付近に立ち、あぁくだらん人生だ、サイテーだな自分、なんのための5日間だったんだ・・・と落ちこみながら何気なく座席を見渡すと、ある中年女性の姿が視界に入った。
ハッとした。
女性が、1年前に死んだ「かーちゃん」にそっくりだったからである。
そのことに気づいた瞬間、涙が溢れてきた。
悔しさと、情けなさと、
なんというか、この滑稽な数日間をかーちゃんに目撃され、そのうえ叱責された感じがして恥ずかしくなった―そうした感情があわさって、どうにも涙が止まらなかった。
たしか一駅では涙はやまず、しばらくは目を腫らしていたはずである。
流した涙のぶんだけおとなになる、、、なんていう歌もあったような気がするけれど、
自分は果たして、おとなになったんだべか。
※トップ画像は「電車で涙、、、」というと、この漫画を想起するので。
動画は、景気づけのためにエミネムのナンバーを・・・と思ったのだが、
検索していたら、よく出来た日本語訳パロディを見つけたのでこれを。
ネット用語満載だが、まぁ面白い。
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明日のコラムは・・・
『“syndrome”シンドローム』