Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん男優列伝(232)津川雅彦

2014-06-18 00:30:00 | コラム
40年1月2日生まれ・現在74歳。
京都出身。

公式ブログ


まだまだ、あと20年は生きそうで、あと10年くらいはバイアグラなど必要がない感じの津川雅彦(つがわ・まさひこ)さん―その個人的なイメージを挙げるとするならば・・・

(やっぱり)ラブシーンのひと。であり、つまるところ、それは絵に描いた助平オヤジ。
おっぱいの大きな奥さんと仲睦まじく、ファッションセンスは若い。
政治的信条は、ガッチガチの保守本流であると。

マキノの血が流れる芸能一家に育ち、かつて愛娘さんが誘拐事件の被害者になった・・・こんな風になるかな。

(1)誘拐事件…詳しくはウィキペディアを参照してください

その昔、成人した愛娘さんとバラエティ番組で共演し「いまでも一緒に風呂に入る」と発言、ほかの出演者は驚いていましたが、この事件から生じた不安も根底にあるのではないかな、、、なんて思いました。

いまの若い映画小僧は、この事件のことを知らないですよね。
だって、自分が生まれた74年のことですもの。

(2)ラブシーンのひと

伊丹十三の『スーパーの女』(96)は超のつく駄作だとは思いますが、ひとつだけ印象に残るシーンがあります。

同級生だった宮本信子と津川さんが大人になって再会し、いろいろあって、さあベッドへ・・・という展開。

津川さんは「ほかの女にやっているように」愛撫を始めるものの、たぶん同級生というのが引っかかるのでしょう、宮本信子は笑いが止まらずに白けてしまいます。

結局、ふたりはベッドをともにしません。

なんかちょっと、分かるんですよね。

自分にもそういう経験、ありますから。

(3)助平オヤジ

ほとんど(2)と変わらない項目ではありますが。

ずっと前、津川さんが多摩大学で特別講演をおこないまして。
そこに忍び込んだのですが、開口一番「ブロマイドの売り上げは一時期、裕次郎を抜いていたんだよ。ボクはすごくモテた。でも裕次郎のほうが経験は豊富でね、それが悔しかった。そのころ、ボクはまだ童貞だったんだ。・・・あれ、これ笑うところだよ、みんな」と発していたのが記憶に残っています。

最初のつかみは「絶対にエロネタだ」と信じているようなところがあって、自分は好きだなぁ、こういうひと笑


※あのころ、みんな若かった





<経歴>

芸能事務所「グランパパプロダクション」の代表取締役。

父はスターの沢村国太郎、母は牧野省三の四女・智子、兄は長門裕之、そして妻は朝丘雪路。
フォンダ一族やコッポラ一族に引けを取らない家系だと思います。

その環境ゆえ、『狐の呉れた赤ん坊』(45)や『天狗飛脚』(49)、『乞食大将』(52)などに子役出演しています。
『山椒大夫』(54)で少年時代の厨子王を好演していることは有名ですが、本格的な映画俳優になるのは10代後半になってからでした。

それが56年に発表された傑作、『狂った果実』です。
いま観返すと岡田真澄の美男子ぶりに慄きますが、津川さんも負けてない。
というか出演者全員が美形。(ただし、特別出演した原作者・慎太郎兄ちゃんを除く)

フランスの鬼才―ゴダール、トリュフォーら―たちに多大なる影響を与えたとされるこの青春映画、21世紀の映画小僧にとっても刺激的だと思うんですけれど、みんな観てないのですよね。

もったいない、じつにもったいない。

ともかくこの映画1本でスターになった津川さんは立て続けに話題作に出演しますが、初登場のインパクトが強過ぎて、それを超える作品にはなかなか出会えませんでした。

56年…『夏の嵐』『人間魚雷出撃す』
57年…『青春の抗議』『十七才の抵抗』
58年…『禁じられた唇』
59年…『明日の太陽』『素晴らしき十九才』『霧ある情事』
60年…『朱の花粉』『伊豆の踊子』

日活を離れ松竹に移り、オオシマの『太陽の墓場』(60)や『日本の夜と霧』(60)に出演し演技の幅を広げる。
それでも兄・長門裕之と比べると、けっして安定したキャリアとはいえません。

60年…『ろくでなし』『悪人志願』『旗本愚連隊』
61年…『悪の華』『図々しい奴』『甘い夜の果て』『妻あり子あり友ありて』『あの波の果てまで』前篇・後篇・完結篇
62年…『酔っぱらい天国』『この日美わし』『愛と悲しみと』
63年…『残菊物語』『魚河岸の旋風娘』『次郎長三国志』
64年…『さまざまの夜』
66年…『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』『氷点』
67年…『昭和残侠伝 血染めの唐獅子』
69年…『日本残侠伝』『悪名一番勝負』『女賭博師花の切り札』

このころ「あの」デヴィ・スカルノと不倫騒動が起こり、これが痛手となってオファーが激減したとされています。

70年…『女組長』
73年…『男はつらいよ 私の寅さん』
74年…『直撃! 地獄拳』
76年…『春琴抄』

それまで男前の主演を張ることが多かった津川さんはプライドを捨て、テレビドラマで悪役を演じました。
これが復活のきっかけになったといわれていますが、実際、映画俳優としての深みと面白さが出てきたのは70年代後半からだったと思います。
いい感じに、ガタイもでかくなりましたしね。

81年…『マノン』
82年…『ザ・レイプ』
83年…『時代屋の女房』
84年…『お葬式』
85年…『化身』『ひとひらの雪』『タンポポ』
87年…『マルサの女』
88年…『マルサの女2』
89年…『善人の条件』
90年…『あげまん』『天と地と』
91年…『幕末純情伝』
92年…『墨東綺譚』『ミンボーの女』
93年…『大病人』
94年…『忠臣蔵外伝 四谷怪談』
96年…『スーパーの女』
97年…『マルタイの女』

・・・うん、急に助平なキャラクターが増えましたよね笑


東條英機を演じた『プライド・運命の瞬間』(98)、テレビシリーズから好演していた『サラリーマン金太郎』(99)、
『いつかA列車に乗って』(2003)、『欲望』(2005)、『THE有頂天ホテル』(2006)、『燃ゆるとき』(2006)、『雪に願うこと』(2006)。
還暦を過ぎても「渡辺淳一が原作なら俺が出る!」とばかりに『愛の流刑地』(2007)に出演、
『怪談』(2007)や『落語娘』(2008)、『風が強く吹いている』(2009)、『死刑台のエレベーター』(2010)、『脇役物語』(2010)などなど、冒頭で「あと20年は生きそう」と書きましたが、ほんとうにそう思える元気なキャリア。
最近の出演作に、『あしたのジョー』(2011)、『一枚のハガキ』(2011)、『青木ヶ原』(2013)、『偉大なる、しゅららぼん』(2014)、
そして最新作は、9月公開の『舞妓はレディ』。

2006年―マキノの血が騒いだのでしょう、マキノ雅彦名義で映画監督に挑戦。

『寝ずの番』では兄を主演にし、
『次郎長三国志』(2008)や『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』(2009)などを発表しました。

うん、堂々たる演出だと思います。
こんどは、日本の映画史を総括するような作品を撮ってほしいですね。


次回のにっぽん男優列伝は、津田寛治さんから。

…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『劇場ひとり』

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする