先日―「冬になると観たくなる映画はなにか」みたいな話を友人と展開した。
友人は『ホーム・アローン』(90)、自分は『ダイハード』(88)と答える。
どっちもベタではあるし、冬という括りより「クリスマス限定」のような気がするが、こういうこと話すのはじつに楽しい。
歳を取る毎にビッグバジェットに対する興味が薄れてきたが、『ダイハード』だけは個人的に別格扱いというかね、
物語の隅々まで考え抜かれていて、また、空間演出といえばいいのか、爆破シーンひとつとっても「この撮りかた以外、考えられない」というアングルで表現されており、21世紀の現在でもアクション描写における最高のテキストなんだと思う。
ブツブツと文句をいいながらテロリスト(じつは強盗)を倒していくマクレーンはもちろん素敵だが、この映画を面白くしているのは、やはり主犯のハンス・グルーバー(アラン・リックマン)のキャラクター性だろう。
(1)学歴、経済的コンプレックスがある
ナカトミ商事の社長室に開発計画中のミニュチュアが置かれていて、
それを見たハンスは「アレクサンダー大王はインドまで来て泣いたそうだ。もう征服する土地がないとね」といい、
タカギ社長に向かって「歴史的素養があるだろう?」と聞く。
タカギ社長が着るジョン・フィリップスのスーツを褒めたあと、「わたしも二着持っている」という。
嘘の要求「同胞テロリストたちの釈放」のなかで「アジアの曙」というテロリスト集団の名を挙げ、「なんだそれは?」という顔をする仲間に向かって「『TIME』誌に出てた」と返す。
ほかに「『Forbes』誌に載っていた」という台詞もあり、ともかく自分が「学のある人物」であることをアピールしたいのだろう。
ダサいが、こういう犯罪者、実際に居そうだものね。
(2)マクレーンには見破られたが、被害者を演じられる演技力も備わっている
・・・う~ん、見事。
実在する犯罪者と比較論みたいなことをやってみたいが、きょうはそれがテーマではない。
自分にとっても思い出深いこの映画は、自分の父、さらには姉にとっても、たぶん思い出に残る映画なんじゃないかと。
<父編>
公開当時に劇場で「いちどだけ」観た自分は「繰り返し」観たかったので、レンタルビデオのリリース日を心待ちにしていた。
リリース初日―わざわざ学校を休んで借りにいったのに、午前11時の時点で既に「すべて貸し出し中」。
それが数日つづき、3週目くらいにやっとレンタルすることが出来た。
21時―居間で、とーちゃんと一緒に鑑賞。
もっと早い時間に再生したかったが、とーちゃんにも観せたかったため、会社から帰還するのを待っていたのである。
ここで問題が起きた。
リリースされて間もないのに、テープに傷がついていて、画面にいくつもの線が生じるのである。
ガッデム!!
トラッキングをいじってみても、線は消えず。
はじめの20分は伏線をばらまくことに費やされ、大きなアクションは起きない。
ちょうどハンス率いる強盗団がナカトミビルを占拠したあたりで、線は消えた。
ホッとする自分に、とーちゃんがヒトコト。
「みんな飽きてきて、ここいらへんで再生やめちゃったんだろう」
そうなのだ。
とーちゃんも、この時点で『ダイハード』に飽きちゃっていたのである。
大事な伏線がばらまかれているんだから!!
そう訴えたかったが、我慢して観てもらうことにする。
そして、タカギ社長の射殺シーン。
このあたりから、とーちゃんは身を乗り出して夢中になっていく。
最後の「マクレーン夫人がテレビリポーターをぶん殴る」シーンでは拍手喝采、それまでトイレに立つこともせず、ビールのお代わりもせず、ひたすらマクレーンを応援していたのだった。
「光永、もうこのビデオ、返すのか?」
「2泊3日で借りたから、あしたまで大丈夫だよ」
「よし、あした、もういちど観ようじゃないか」
ひとに薦めた映画をそのひとに喜んでもらえるのは映画小僧としても幸福だが、ここまで夢中になってくれるとは思わなかったねぇ。
以来、とーちゃんにとって『ダイハード』は、『シャーシャンクの空に』(94)と並ぶ「お気に入りの外国映画」のトップに君臨しているのである。
<姉編>
大ヒットから2年―ツイてない男が再び不運に遭う続編『ダイハード2』が公開される。
褒められた出来ではないが、たけしが批評本でいったように「10-9の野球を観ているようで、馬鹿にはちょうどいい」単純なアクションであり、まぁつまらない映画ではなかった。
当時、自分は場末の劇場『清流』で映写技師のアルバイトをしており、息子が、弟がちゃんと仕事をしているのか、父、姉ともに映画を観にきてくれた。
とーちゃんはひとりで、ねーちゃんは当時(たぶん)付き合っていた彼氏とふたりで鑑賞。
とーちゃんが観にきたのは土曜の午後だったと記憶する。
米国ではマチネーと呼ばれる時間帯であり、場末とはいえ、わが劇場も半分くらいは埋まっていた。
しかし、ねーちゃんが観にきたのは平日の最終回。
客はねーちゃんのカップルと、中年男性ひとりしか居ない。
不入りの映画は数あれど、たった3人で映画を観る機会というのは「なかなかに、レア」なんじゃないだろうか。
この年、ねーちゃんは米国留学を終えて日本に帰国したばかり。
あくまでも想像だが、国内における初デートが『ダイハード2』鑑賞だったんじゃないだろうか。
だから出来ることなら、ふたりきりで観せてあげたかったな~、、、なんつって。
「どうだった?」
「面白かったよー、爆発ばっかりで」
「3人しか居ないから、空調の調整が難しかったんだけど。暑くなかった?」
「うん暑かったー!! 上着、2枚脱いだもん!!」
なにはともあれ、とーちゃん/ねーちゃんともに楽しんでもらえたようで、よかったよかった。
ありがとうね、マクレーンくん!!
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(98)』
友人は『ホーム・アローン』(90)、自分は『ダイハード』(88)と答える。
どっちもベタではあるし、冬という括りより「クリスマス限定」のような気がするが、こういうこと話すのはじつに楽しい。
歳を取る毎にビッグバジェットに対する興味が薄れてきたが、『ダイハード』だけは個人的に別格扱いというかね、
物語の隅々まで考え抜かれていて、また、空間演出といえばいいのか、爆破シーンひとつとっても「この撮りかた以外、考えられない」というアングルで表現されており、21世紀の現在でもアクション描写における最高のテキストなんだと思う。
ブツブツと文句をいいながらテロリスト(じつは強盗)を倒していくマクレーンはもちろん素敵だが、この映画を面白くしているのは、やはり主犯のハンス・グルーバー(アラン・リックマン)のキャラクター性だろう。
(1)学歴、経済的コンプレックスがある
ナカトミ商事の社長室に開発計画中のミニュチュアが置かれていて、
それを見たハンスは「アレクサンダー大王はインドまで来て泣いたそうだ。もう征服する土地がないとね」といい、
タカギ社長に向かって「歴史的素養があるだろう?」と聞く。
タカギ社長が着るジョン・フィリップスのスーツを褒めたあと、「わたしも二着持っている」という。
嘘の要求「同胞テロリストたちの釈放」のなかで「アジアの曙」というテロリスト集団の名を挙げ、「なんだそれは?」という顔をする仲間に向かって「『TIME』誌に出てた」と返す。
ほかに「『Forbes』誌に載っていた」という台詞もあり、ともかく自分が「学のある人物」であることをアピールしたいのだろう。
ダサいが、こういう犯罪者、実際に居そうだものね。
(2)マクレーンには見破られたが、被害者を演じられる演技力も備わっている
・・・う~ん、見事。
実在する犯罪者と比較論みたいなことをやってみたいが、きょうはそれがテーマではない。
自分にとっても思い出深いこの映画は、自分の父、さらには姉にとっても、たぶん思い出に残る映画なんじゃないかと。
<父編>
公開当時に劇場で「いちどだけ」観た自分は「繰り返し」観たかったので、レンタルビデオのリリース日を心待ちにしていた。
リリース初日―わざわざ学校を休んで借りにいったのに、午前11時の時点で既に「すべて貸し出し中」。
それが数日つづき、3週目くらいにやっとレンタルすることが出来た。
21時―居間で、とーちゃんと一緒に鑑賞。
もっと早い時間に再生したかったが、とーちゃんにも観せたかったため、会社から帰還するのを待っていたのである。
ここで問題が起きた。
リリースされて間もないのに、テープに傷がついていて、画面にいくつもの線が生じるのである。
ガッデム!!
トラッキングをいじってみても、線は消えず。
はじめの20分は伏線をばらまくことに費やされ、大きなアクションは起きない。
ちょうどハンス率いる強盗団がナカトミビルを占拠したあたりで、線は消えた。
ホッとする自分に、とーちゃんがヒトコト。
「みんな飽きてきて、ここいらへんで再生やめちゃったんだろう」
そうなのだ。
とーちゃんも、この時点で『ダイハード』に飽きちゃっていたのである。
大事な伏線がばらまかれているんだから!!
そう訴えたかったが、我慢して観てもらうことにする。
そして、タカギ社長の射殺シーン。
このあたりから、とーちゃんは身を乗り出して夢中になっていく。
最後の「マクレーン夫人がテレビリポーターをぶん殴る」シーンでは拍手喝采、それまでトイレに立つこともせず、ビールのお代わりもせず、ひたすらマクレーンを応援していたのだった。
「光永、もうこのビデオ、返すのか?」
「2泊3日で借りたから、あしたまで大丈夫だよ」
「よし、あした、もういちど観ようじゃないか」
ひとに薦めた映画をそのひとに喜んでもらえるのは映画小僧としても幸福だが、ここまで夢中になってくれるとは思わなかったねぇ。
以来、とーちゃんにとって『ダイハード』は、『シャーシャンクの空に』(94)と並ぶ「お気に入りの外国映画」のトップに君臨しているのである。
<姉編>
大ヒットから2年―ツイてない男が再び不運に遭う続編『ダイハード2』が公開される。
褒められた出来ではないが、たけしが批評本でいったように「10-9の野球を観ているようで、馬鹿にはちょうどいい」単純なアクションであり、まぁつまらない映画ではなかった。
当時、自分は場末の劇場『清流』で映写技師のアルバイトをしており、息子が、弟がちゃんと仕事をしているのか、父、姉ともに映画を観にきてくれた。
とーちゃんはひとりで、ねーちゃんは当時(たぶん)付き合っていた彼氏とふたりで鑑賞。
とーちゃんが観にきたのは土曜の午後だったと記憶する。
米国ではマチネーと呼ばれる時間帯であり、場末とはいえ、わが劇場も半分くらいは埋まっていた。
しかし、ねーちゃんが観にきたのは平日の最終回。
客はねーちゃんのカップルと、中年男性ひとりしか居ない。
不入りの映画は数あれど、たった3人で映画を観る機会というのは「なかなかに、レア」なんじゃないだろうか。
この年、ねーちゃんは米国留学を終えて日本に帰国したばかり。
あくまでも想像だが、国内における初デートが『ダイハード2』鑑賞だったんじゃないだろうか。
だから出来ることなら、ふたりきりで観せてあげたかったな~、、、なんつって。
「どうだった?」
「面白かったよー、爆発ばっかりで」
「3人しか居ないから、空調の調整が難しかったんだけど。暑くなかった?」
「うん暑かったー!! 上着、2枚脱いだもん!!」
なにはともあれ、とーちゃん/ねーちゃんともに楽しんでもらえたようで、よかったよかった。
ありがとうね、マクレーンくん!!
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