Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(187)

2016-07-29 00:10:00 | コラム
みすぼらしい格好のその男Aは、清算を済ませた袋を持ってうろつき、そのなかに醤油と梅干を放り込んだ。

清算済みの袋のなかには、焼酎の瓶があった。
たぶんそっちのほうが高いのだから、醤油を買って焼酎を盗めばいいのに。

歳は、50代後半。

生活苦だろうか?

店を出た直後に声をかけると、あっさり罪を認めた。


事務所にて―。

「買った商品もあるでしょう。買ったものと盗ったもの、ここで分けてみてください」
「・・・あの、身分証とか要りますか?」
「それは、あとの話」
「・・・あの、車のなかに免許証忘れたので、取ってきていいですか」
「ダメです。とりあえず買ったものと盗ったもの、分けてって」
「・・・・・」

当然だが、逃走のおそれが1%でもある場合は、事務所の外に出すわけにはいかない。
トイレだって気をつけなきゃいけない。

15分後、ふたりの警官がやってくる。
身元の確認が始まり、男はやっと免許証を取りに行くことを許された。

保安員はときどき証言を要求されるので、いちおうの処分が決まるまでは、その場を離れることが出来ない。
通常は、(1)事務所で30分程度、(2)警察署に場所を移動してから、60分程度だろうか。

しかしこの日は、(1)だけで60分を経過していた。

ふと気づくと、パトカーが2台に増えている。

なんで?
ことばは悪いが、小粒の犯罪者なのに!

「―Aさん、ちょっと確認したいんだけどね、シャツをめくって、お腹のあたりを見せてくれますか」

なんだろう、どういうことなんだろう。

Aは躊躇したあと、ゆっくりシャツをめくった。

大きな傷があった。


「北海道に住んでましたね?」
「・・・」
「親戚の方から、10年前に、家出人捜索願が出ています」
「・・・・・」

えぇ!!


こうなると、窃盗事案のことなど「どうでもよくなって」くる。
いや、店と保安員にとっては大事だが、警察にとってはそうじゃないってこと。

沢山の書類を書かなければいけないのだろうし、北海道警に連絡もしなきゃいけないのだろうし。

Aが家出人であることが判明して以降、おまわりは何人も居るのに「誰も自分にかまってくれない」。

おいおい! といいたかったが、いっぽうで、このあとどういう手続きがされるのか興味を抱いた。

それは店長も同じだったようで、ふたりして(邪魔にならないよう後方で)腕組みをしていたのである。


Aにとってこれが、ハッピーなんだか、アンハッピーなんだか・・・それは、彼の表情を見ても読み取ることが出来なかった。


―以上が、今回の初体験エピソード。
まだまだあるけれど、守秘義務は守らなきゃね!!


さて保安員を主人公としたドラマは、テレビでは多いけれど映画では「ほぼ、ない」といっていい。

面白いと思うのだが、なぜなんだろう。

やっぱりあれか、扱う内容も含めて「小粒感」があるからか。

しかし今回取り上げたように、想像も出来ないドラマを展開させることも出来るのになぁ。。。


トップ画像は、黒澤の傑作『野良犬』(49)。

拳銃を盗まれた若い刑事の物語。

その拳銃により、殺人事件が起きてしまうという展開―なるほど、これぞ映画的! だろう。





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明日のコラムは・・・

『のんある?』
コメント (3)
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