後藤竜二の作品に、エミシと朝廷の争いを描いた『野心あらためずー日高見国伝』があります。
光文社文庫 (新日本出版から出されたものを、あらたに文庫化したもの)
アビという架空の少年を作り出し、彼の視点によるエミシ達、アザマロの物語になっています。
アビは村全体が日向国(九州)に流されていた一族。鮫狩りをしながら、舟で北上し、ふるさとへ戻ります。
道嶋大楯という朝廷の役人になった男の残忍さ。
後藤さんの筆は、そこを容赦なく描いています。
正直申し上げて、この本を最初の頃は、すんなりと読むことができませんでした(最初のころというのは、児童文学を書き始め、後藤竜二代表の「季節風」に入ったころ)。
私自身が、アテルイを書こうと、いろいろ調べ、現地に足を運び、土地勘や登場人物の名前がようやく頭に入って、それから読んでようやく・・でした。
悪いということではなく、そういう本だということ。すんなり読める本ではないということ。
そして、アテルイは、後書きにちょろりと出しているだけ。
どうして、後藤さんはアテルイを書かなかったんだろう。それは、たぶん、後藤さんはスーパーヒーローを書きたくなかったから。
かな。
でも、私は「アテルイ」を書きたいと思った。
そして、書きながらずっと『野心あらためず』が念頭にありました。
あるときからは、意識しないようにもしていましたが(矛盾しているようですが、そうしないと、書けなかったです)。
後藤さんが、私の『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』を読んだら、どういったかな・・・。甘いなって言われるかな、なんて思うこともあります。それでも、読んでいただきたかった。
『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』が出てから、ラジオ出演などもありました。そこで感じているのは、やはりまだまだ「アテルイ」の認知度は低いということです。東北出身で、歴史の好きな方は、かなり知っています。でも、そこをちょっとはずれると、まだまだ・・。
アテルイの顕彰に一役かうことができたら、嬉しいです。
どうぞ、子ども達も、大人も、かつて古代の東北に、このような不屈の精神を持った男がいたことを、かみしめていただきたく思います。
発売中です。ぜひ、お読みいただけますよう、お願いいたします。