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帯に、「ひこ・田中氏がイッキ読み!」とある。
私もでした!!
父は医者。必死に勉強して有名私立中学に入ったものの、優秀なクラスメートについていけず、中三で公立中学に入りなおした和真。父が死に母は鬱病になり働けず、生活保護を受けている樹希。幼い妹の面倒をみてもいる。
この二人の視点でそれぞれが交互に描かれ絡んでいく。
章タイトルは 挫折、苛立ち、忍耐、哀れみ、羨望、逃避、共鳴、落胆、探求、希望、喪失、不安、脱出、旅立ち・・・。
樹希が妹に夕飯を食べさせてから行くのが、「居場所」という名前のカフェの二階。小学校時代に野球のコーチだった人がやっている店。そこには彼女を慕うアベルというハーフの子もきている。小学校レベルの算数ができないアベルに、和真は勉強を教えることになる。樹希に脅されて嫌々だ。
と、あらすじはここまでにしないと。なぜなら、私は読み始めてからすぐに(この二人の行き所のなさを、ラストまでどう展開させるのだろう)という気持ちを抱いてたからだ。この二人のぎりぎり感に安易なラストは許されない。
安田さんは、落語を題材にした物『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』、お笑い芸人を題材にした『なんでやね~ん』(どちらも講談社)などがある。ご本人も落語をやってらっしゃる楽しい方だ。その方がまさかこのような現代社会に目を向けた意欲作を書かれるとは。
書かずにはいられなかったのだろうという気迫が伝わってくる本だ。
重いテーマなのに、読後感がいい。ここ、書き手として大いに見習いたいところだ。
この物語の子達に「つまらない大人」と思われないようにしなくてはと思わせてもくれた。
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