日本児童文学者協会長編新人賞受賞作、そして椋鳩十賞受賞作です。
嘉歩は母に死なれ、再婚した父とは離れて、祖父母と暮らしています。少女が、自分のこれからの道に目覚め、決してたやすくはないその道を歩き始める物語。見つけた道は、声楽。作中で嘉歩は、「私を泣かせてください」というアリアを唄います。ヘンデルの有名な歌曲だそうですが、私はこの作品で知り、ユーチューブで聴いて、すっかり気に入りました。
レトリックを駆使することについては、賛否両論があります。俳句でもそうですが、比喩を安易に使うととても安っぽくなってしまいます。でも『ピアチェーレ』という物語の世界に気持ちがすっと入っていけるのは、巧みなレトリックの力だと思います。巧みというと小手先とか技巧的とか感じてしまうでしょうか。でも魂によりそったレトリックだと思います。
児童文学長編新人賞の締め切りは、今月末。こちらは、受賞がでるといいな。