僕は来年小学生になる。もちろん星見ちゃんもだ。
僕はお父さんが行ってた高原大学附属に行きたい。でも難しいテストがあるので今勉強中。
幼稚園が終わったら水曜日は遊ばないで、塾に行ってる。
お受験の幼児教室だ。
親戚の中には、
「お受験してるんだぁ、宇宙君もほ~んとに大変ねぇ~。」
なんて、なんか嫌味みたいに言う人もいるけど、ぼくは気に入ってる。だって面白いし、できるとうれしい。
先生だって好きだ。特に吉田先生なんかすっごく面白い。お勉強中なのに静かにしなさいとか、ちゃんとしなさいとかあんまり言わない。いつも面白い事言って笑わせる。
みんなが大きな声で笑うと、
「じゃあ、お勉強するからね、お静かに願います。」なんて言ってまた笑わせる。何だかお勉強じゃあないみたいだ。
そのくせ、帰る時間になってお母さん達に説明するときはなんか真面目な顔になってる。お母さんも、うんうん、ってうなずきながら感心してる。
お母さんの方がお勉強しに来てるみたいだ。 つづく
僕はお父さんが行ってた高原大学附属に行きたい。でも難しいテストがあるので今勉強中。
幼稚園が終わったら水曜日は遊ばないで、塾に行ってる。
お受験の幼児教室だ。
親戚の中には、
「お受験してるんだぁ、宇宙君もほ~んとに大変ねぇ~。」
なんて、なんか嫌味みたいに言う人もいるけど、ぼくは気に入ってる。だって面白いし、できるとうれしい。
先生だって好きだ。特に吉田先生なんかすっごく面白い。お勉強中なのに静かにしなさいとか、ちゃんとしなさいとかあんまり言わない。いつも面白い事言って笑わせる。
みんなが大きな声で笑うと、
「じゃあ、お勉強するからね、お静かに願います。」なんて言ってまた笑わせる。何だかお勉強じゃあないみたいだ。
そのくせ、帰る時間になってお母さん達に説明するときはなんか真面目な顔になってる。お母さんも、うんうん、ってうなずきながら感心してる。
お母さんの方がお勉強しに来てるみたいだ。 つづく
絵本が大好きなその子はお弁当の後にやってきて、ちょっとはにかんだ顔で絵本を差し出しました。
「ねぇせんせい、寒い本読んで」
「ん?」
私はお化けでも出てきてぞっとするお話なのかと思い、持ってきた本を受け取りました。特別変わったものではなく保育室にいつもある絵本でした。
「ね、これならいいでしょう?」
と得意げです。
私は読んだ後、しばらくしてもそのことに気が付きませんでした。
「なぁんだそういうことだったのか!」
子どもが帰った後、職員室で突然大きな声を出した私に同僚たちがけげんな顔を向けました。
「寒いんじゃないんだよ」
ますます心配そうな顔をする同僚たちに答えの訳を説明しました。
その子は昨日も絵本を持ってやって来たのです。
その時私は他にしなければいけない仕事があり、時間を気にしていました。長いお話だったので、途中で切り上げてしまいました。
「ごめんね、今日はちょっと用事があるんだ。この本厚いから全部読めなかった。また今度つづきにしよう」
彼は『薄い本』を選んで持ってきたのです。
昨日の私のことばをちゃぁんと覚えていたんですね。
「ねぇせんせい、寒い本読んで」
「ん?」
私はお化けでも出てきてぞっとするお話なのかと思い、持ってきた本を受け取りました。特別変わったものではなく保育室にいつもある絵本でした。
「ね、これならいいでしょう?」
と得意げです。
私は読んだ後、しばらくしてもそのことに気が付きませんでした。
「なぁんだそういうことだったのか!」
子どもが帰った後、職員室で突然大きな声を出した私に同僚たちがけげんな顔を向けました。
「寒いんじゃないんだよ」
ますます心配そうな顔をする同僚たちに答えの訳を説明しました。
その子は昨日も絵本を持ってやって来たのです。
その時私は他にしなければいけない仕事があり、時間を気にしていました。長いお話だったので、途中で切り上げてしまいました。
「ごめんね、今日はちょっと用事があるんだ。この本厚いから全部読めなかった。また今度つづきにしよう」
彼は『薄い本』を選んで持ってきたのです。
昨日の私のことばをちゃぁんと覚えていたんですね。