久しぶりな気がした。
本当に、久しぶりだった。
おはようございます。
私は何度、同じことを説明しただろう。
「保護しちゃった猫のために、お部屋を借りたいんです。」
問い合わせた物件は5~6件。
その都度、不動産屋さんに、そう説明をした。
すると、まず、
「えっ?」という返答から交渉は始まった。
そこから、審査して管理会社からの確認の連絡が来る。
そしてついに、借りられる物件が決まり、
土曜日には不動産屋へ、直接出向くこととなった。
お店へ行くのも、担当の営業さんと会うのも初めてだった。
電話でやり取りしていた担当の営業さんは、
声がか細く、少なくとも私のタイプの声じゃなかったが、
物件探しに関しては、親身になって交渉してくれて、とても心強かった。
しかし、店に入って見てみれば、
「わざわざ、お越しいただいちゃって、すみません。」
と笑顔で迎えてくれた担当の営業マンは、どイケメンだった!
こんな、どイケメン、久しく見たことが無いくらいの、どイケメンだ。
私は思わず、挨拶ではなく、
「えっ?」から始めてしまった。
この営業マンには、
「場所は分からないけど、住所では間違いなく近所なので、
そのアパートを借りたい。」
と説明した時も、「えっ?」と言わせてしまったが、
この時、担当の営業マンに言わせたすべての「えっ?」を
お返しされた気分だった。
それでも、私はどうにか踏ん張って、
「この度は、厄介なお願いをいたしまして、誠に申し訳ありません。」
と深々と頭を下げた。
しかし、これが限界だった。
どイケメンが、私の半径1メートル以内から砲撃して来る。
「ところで、おかっぱ様?
アパートの場所は、見つかりましたか?」
「まっ・・・まだです。」
アパートの場所も確認せずに契約をしようとしている私に、
どイケメンは、なんとか説明をせんと、さらに撃ってくるせいで、
私の返答は、しどろもどろになっていく。
「えっと、こちらの地図をご覧ください。ここを曲がって、分かりますか?」
どイケメンは、パソコンの画面と共に、更に近づいてくる。
ああ~、息が出来ん~!
窒息状態の私の返答は、もう
「わかりません」
しか言えない。
「では、この駅からの道は?」
「わかりません」
「えっと、この看板は見たことあります?」
「わかりません」
ほんとに厄介だな、おい!
何がって、私自身が、厄介極まりないな、おい!!
私はもはや、駄々っ子みたいに、分からないというばかりだ。
それでも、最終的に、どイケメンは無情な言葉を私に手向けた。
「猫ちゃん、ご実家に馴染めるといいですよね。
そうなれば、アパートもご解約なさりたいと思うので、
短期解約の違約金なども確認しておきますね。
いずれにせよ、おかっぱ様の猫ちゃんが、どうか、長生きしてくださいますように。」
死んだ!
あたし、死んだ!!
そんな訳で、イケメンって恐ろしいですね。
あら、おたま?
珍しく、イケメン顔してる、おたま。
がしかし、
あぁ、可笑しな顔になってきた?!
まさか・・・
おたま「あや姉、おらのクネクネ見るだ」
やっちゃったな。
おたま「あや姉、おら、イケてるだろ?」
バシッ!
やっちゃったな。