うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

最近のかずこさん

2023年09月04日 | カズコさんの事

最近のかずこさんは、

さらに面白くなってきている。

 

おはようございます。

味噌汁、ごはん、お茶を縦に並べて食べるかずこに、

「それは、食べやすい?」

と聞くと、

「どえらい、食べづらい。」

と言うかずこが、大変面白い。

 

最近よく、

「背中が痒い」

と訴えるかずこに、

私は毎晩、保湿クリームを塗ってやる。

昔から、

「わしは、もう早よ死にたい。」

と口癖のように言うくせに、ちょっと不安になるとすぐ病院へ行く人だった。

今でも、背中がちょっと痒いだけで病院へ行きたがる。

しかも、行き慣れた内科へ連れていけと言うのだけれど、

「わしは、生きれるだけ生きたい。」

と言うようになった。

どういう訳か、認知症になったおかげでなのか、

ようやく、発言と行動が一致するようになった。

 

「ほれ、クリーム塗ろうか?」

そう言うと、かずこは子供のように反射的に背中を向ける。

爪を切るよと言えば、その時も反射的に両手を揃えて差し出す。

まるで、母親に世話をされ慣れている子供のようだ。

そういう時の子供は、少し自慢げに見える。

だから私は、仕方ないから、

「おお、偉いな~かずこさんは。」

と褒めてやる。

「じゃ、背中捲るからね。」

そう声を掛けて、黒いTシャツを捲ると、肌ではなく、

また黒いTシャツが露わになった。

「いや母さん、何枚同じの着てんの?マトリョーシカか?!」

と言って笑うと、かずこは

「そうや。」

と、そこでも謎に自慢げだ。

かずこは、おそらくマトリョーシカが何かなんて知らない。

 

かずこには、あまりにも知らないことが多すぎる。

それは、昔からのことだ。

目の前の暮らしに必死だったせいかも知れない。

そう思うと、私はふと、父さんを恨めしく思う。

どうしてももっと、この人を守ってやらなかったんだと。

私は、母親に背中を擦ってもらったことも無ければ、

爪を切ってもらった記憶も無い。

目の前の暮らしに必死だった母親は、

私を見る余裕なんて無かったからだと、今の母親を見ているとそう気づく。

昔から、背中を擦って欲しかったのは、かずこ自身だった。

「わしは、ちゃんとしとる。」

と言って、ちゃんとしなくちゃっと頑張った。

「わしは、なんでも知っとる。」

と言って、訳の分からぬ世間から自分を守った。

きっと、そうだったのだろう。

 

今からだって、間に合うだろうか。

喫茶店で昼食を摂った後、

「かずこさん、サンドウィッチ美味しかったね。」

と、言うと、

「サンドウィッチ?わし食っとらん。」

と、全力で否定してくるが、間に合うだろうか。

この世には、案外楽しいこともあって、

すぐ側に、とっても美しい景色があるということを、

伝えられるだろうか。

 

「かずこさん、こっち見て!虹が出てるよ。」

かずこ「うわぁ、すごいな~。あの虹はどこから生えとるんや?」

ん?

生えてる?

虹って、生えるの?

こんな、瑞々しい子供みたいな質問の答えを、私は知らない。

そう感心していると、父さんは、

「水蒸気が、太陽に反射しとるんだ。

あっちの方で雨が降ってたということだ。」

と、きっぱり答える。

「父さん、あんたはロマンチックを知らんな!」

と、そんなことを言い合いながら、3人並んで見上げた虹は、

本当に美しかった。