連休が明けて、
出社してみると、空き瓶にコオロギが入っていた。
おはようございます。
私は、ヒィっと身を固くした。
コオロギは、特に苦手だ。
鳴き声は「コロコロ」と美しい響きだけれど、
あのビジュアルが、非常に苦手なのだ。
「入れたのだから、出て行けるよね?」
そう思い、見て見ぬふりをしていたが、昼になっても瓶の中にいる。
私は、ふと哀れになった。
「仕方ない・・・。やるか。」
ちょうど、社内には私しかいない。
私は意を決して、空き瓶を持ち上げた。
コオロギの入った透明の瓶を手に持つことすら、
私には恐怖だった。
「飛び出さないでよ?飛び出すなよ?ちょっと待てよ?」
静まり返った社内に、私の念仏のような独り言が漂う。
ドアへの20歩の間、3度念仏を唱えた頃、外へ辿り着いた。
「ほら、行きな。」
私はゆっくり瓶を寝かせて置いた。
「よし、これで一応、役割は終わった。」
私は一旦、そう安堵しながらも、
「そろそろ、居なくなったかしら?」
と、何度も何度も外へ出て、瓶の中のコオロギを見ていた。
この時私は、業務という本来の役割を一切忘れていた。
3時を過ぎた頃、外は異常な暑さだった。
それでも、耳を澄ませば遠くで虫の音がする。
チリチリ、チリチリ・・・
ジージジ、ジージジ・・・
コロコロ、コロコロコロ・・・
「あっ、コオロギもいる!ほら、君の仲間も鳴いているぞ?」
私はどういう訳か、コオロギの鳴き声を聞いていたら、
瓶の中のコオロギまでが怖くなくなっていた。
躊躇なく瓶を手に持ち傾けて、コオロギを促した。
「ほらほら、もう自由になれるんだから。」
それでもまだ動かないから、瓶をゆらゆらと揺すってみた。
すると、コオロギはカサっと地面に落ちた。
「あっ?!」
なすがまま、微動だにせず、固まったままだった。
私は動かないコオロギを見て、
「そうか・・・。そうか。」
と呟きながら、しばらく虫の音を聴いていたら、
目に涙が集まってくるのを感じで、私は急いで社内へ入った。
「さよなら、ごめんね。」
私の本来の役割は、事務なのです。
ごめんなさい、社長!
さて、我が家でも見るべき光景がある。
ここから見るのん太は、私としてはもっとも可愛いと思えるのだ。
なんか、可愛くないですか?
この口元!
うふふふ、うふふふふふふ
のん太「変態かかぁ!」
うっせーわ、うっせーわ!