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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

「ベジャール追悼記念公演」 ②

2008-05-17 04:14:47 | BALLET
「春の祭典」
LE SACRE DU PRINTEMPS



音楽イーゴリ・ストラヴィンスキー
初演1959年。センセーションを呼んだ、ベジャールの出世作です。
東バ初演は1993年4月。
題材は鹿の発情期。
冬眠から覚めて、男女の群れがそれぞれの生贄を定め、自然界の掟に従って突き動かされていく様に生命の神秘を感じさせる傑作。

前半、冬眠から覚めた雄鹿たち。生贄は、リーダーたちによって乱暴に小突かれて選出される。
今回が生贄初役の長瀬さん、今まで全くNOチェックだったダンサーですが、選ばれたときの慄き、怯え、がダイレクトに伝わってきて、胸に迫る名演でした。正直、ベテランの井脇さんの相手がこんな新人だなんて一体?くらいに思っていたのが嘘のよう。
井脇さんのHPによると、以前カラボスとその部下で共演したときには、自分は自分、でヒトの意見をきかないところがあったのが、今回は「謙虚になりました」と2人で踊るシーンの練習を自分から願い出てきたとか。
成長していたのですね、水面下で。
光の筋に導かれるように跳ねながら退場していく鹿の群れの最後をまろびつつ付いていく彼の姿にから感じられる切迫感に息を呑みました。

雌の生贄は、自ら自分が生贄になったことに気付き、かすかに戸惑い恐れを抱きつつも、雄雄しくその運命を受け入れる・・・
群れを率いる巫女のようなりりしさと純粋さを見せる井脇さん。
井脇さんの生贄は、ベジャールさんをして賞賛の言葉を引き出したほどの定評ある当り役ですが、今回はまた初心に帰って、という気持ちと、心身ともに未だかつてないほど好調で勝手に音楽にあわせて身体が動く、と自身で表現されているくらい好調なコンディションもあってのことか、作品世界と、そして音楽と一体化して見事でした。

カーテンコールでの2人、は放心状態の長瀬さんの手をギュッと握って前に出る井脇さんの笑顔、長瀬さんの手を握られてホッとした表情が印象的。

プログラムにベジャールさんと自身の思い出をダンサーが個々に語るページがあったり、東バだけのゲストなしの公演だったためか、ソリストクラスでも、プロフィールが詳しく書かれていたのですが、興味深かったのが、男性ダンサーのほとんどが、ベジャール作品に惹かれて他のダンスや体操からバレエに転向していたり、ベジャール作品を踊りたいという気持ちがきっかけで東バに入団したりしているということ。

そのせいか、いつもはこのところ平均的に美しさの増している女性ダンサー比べて、身長も容姿も見劣りする、と残念に思う男性陣が活き活きと群舞の隅々に至るまで気の入った演技をみせてくれて、緊密な舞台を堪能しました。

ダンサー個々の個性や魅力、という面では、やはりベジャール作品はベジャールバレエ団のものだなぁと思うのですが、正確無比な群舞が作り出すソリッドな造形美もまたベジャール作品の魅力。
「ベジャールバレエ団と同様にわたしの子供。」と言われていた団員がベジャールさんへの敬愛から心を一つにしてその定評ある群舞での造形的な美しさと気迫でみせてくれた好演でした・・・


「ベジャール追悼記念公演」 ①

2008-05-17 03:28:07 | BALLET
先週の日曜日、東京文化会館にて、土・日と2日間、CAST替わりで上演された、東京バレエ団による「モーリス・ベジャール追悼特別公演」に行って参りました。

昨年11月に惜しくもお亡くなりになったベジャールさんにとって、自身の「ベジャール・バレエ・ローザンヌ」とともに2人の子供、と表現されたくらい、3演目の作品(「ザ・歌舞伎」「M」「舞楽」)の振付も行っている縁の深いバレエ団。

今回、上演されたのは代表的な3作品。

「ギリシャの踊り」「火の鳥」「春の祭典」

◆主な配役◆

「ギリシャの踊り」
Ⅰ.イントロダクション
Ⅱ.パ・ド・ドゥ(二人の若者):高橋竜太‐小笠原亮
Ⅲ.娘たちの踊り
Ⅳ.若者の踊り
Ⅴ.パ・ド・ドゥ:吉岡美佳‐平野玲
Ⅵ.ハサピコ:上野水香‐高岸直樹
Ⅶ.テーマとヴァリエーション
 ソロ:中島周
 パ・ド・セット:佐伯知香、阪井麻美、岸本夏未、高木綾、奈良春夏、福田ゆかり、河合眞里
Ⅷ.フィナーレ:全員

「火の鳥」
火の鳥:木村和夫
フェニックス:後藤晴雄
パルチザン:
  奈良春夏、田中結子、乾友子
  青木淳一、横内国弘、小笠原亮、氷室友、野辺誠治

「春の祭典」
生贄:長瀬直義
2人のリーダー:平野玲‐横内国弘
2人の若い男:松下裕次‐中川リョウ
生贄:井脇幸江
4人の若い娘:小出領子、高村順子、西村真由美、佐伯知香

「ギリシャの踊り」
DANCES GRECQUES



抜粋では何度か観ているのですが、通しで観るのは初めて。
1982年「タラサ・われらの海」の抜粋編として1984年に「ギリシャの踊り」初演。
東バでの初演は2003年1月。
ミキス・テオドラキスの民族色の濃い音楽。
潮騒の音から始まり、ギリシャの太陽に照らされた海と土の香りが漂ってくるような舞台。
衣装はシンプルで構成もバッハのフーガの如く厳密に仕立てられていて、所謂泥臭さは微塵もないのに、濃密に香る地中海の景色に引き込まれ、時を忘れさせてくれる作品でした。

ソロの中島さんは、バレエに開眼したきっかけがこの「ギリシャの踊り」だった、というだけのことはあり、美しいラインとキレのある動きでベジャールの世界に入り込む好演。
PDDの吉岡さんと平野さんは、ほっそりとして長い手脚がどことなく似ていてそして可愛らしい。
この2人が踊る場面はあまり今まで観たことがないけれど、ラインがきれいで軽やかな相似形がここでは活きていたと思います。
ハサピコの高岸さんはこういう作品にぴったり。出て来るだけで舞台が明るくなる個性はやはり貴重。
リフトされた状態でポジション移動をする振りを水香ちゃんが勢い良く大胆に行うので、高岸さんが微妙に辛そう(?)ではありましたが、長身の2人の明るさはいいアクセント。

「火の鳥」
L'OISEAU DE FEU



こちらも初めて(?)かも。
1970年初演。東バでは1989年7月。
1910年にストラヴィンスキーが大成功を収めたという音楽。
バレエ組曲版ではなく、ベジャールはオーケストラ版を使用。
民話の世界ではなくパルチザンの闘争という設定もオリジナル。
パルチザンの群舞のセンターは奈良さん。彼女はクラシックではちょっと乱暴?な感じがすることもあるのですが、こういう役は目力と持ち前のシャープさが引き立ってピッタリ。
ただ、この作品、なぜかわからないのですが、ちょっと自分自身があまり舞台とシンクロ出来ず・・・
やや中休み的な見方をしてしまいましたxxx