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ロイヤル・オペラ「椿姫」 9/16 ②

2010-09-18 00:37:34 | OPERA
ロイヤル・オペラ日本公演2010
ヴェルディ「椿姫」 
2010年9月16日(木)東京公演初日(日本公演初日は12日、神奈川県民ホール)
NHKホールにて

第一幕



パリの高級娼婦ヴィオレッタのサロンでの夜会。
幕が開くと、夜会服の男女がわっとなだれ込んでくる。
円形にしつらえられた、艶のあるブラウンの温かみのある色調の部屋。
奥に続きの間が見え、センターに巨大なシャンパンクーラーが。

髪に星型の煌めく髪飾りをたくさん散りばめたブルネットの美女。
30代の美人ソプラノ、アルバニア出身のヤルモネラ・ヤオはほっそりとした美人。
白いドレスで、ちょっとハプスブルクのエリザベートの肖像画か、ヴィスコンティの「夏の嵐」のアリダ・ヴァリか、というこしらえ。
ちょっとフリーダ・カーロを彷彿とさせる真っすぐな眉と生真面目な表情通り、一幕の享楽的なシーンでは
本領を発揮しきれていない観あり。
きっちりと歌ってはいますが、カリスマティックな輝かしさは残念ながらあまり感じられません。
アリアの最後の高音部もあえてオクターブ上げないで地道に歌い切り、慎重運転。
初日降板の話を聞いているので、こちらも無理しないでね、と見守りモード。

田舎貴族の若者、アルフレードとの出会い。
テノール歌手には珍しい、190cmのスラリとした長身に黒髪のハンサム、ジェームス・ヴァレンティ33歳。
ヴィオレッタに一目惚れ。
周囲から頭一つ抜きんでて高いので、ヴィオレッタの姿を認めてフリーズし、そのまま目を離せなくなってしまった様子が手に取るように見えるのがドラマ的にGOODです。
声も出ていて優等生的な歌唱。
ただ、テノールならではの輝かしさ、響きの豊かさは特に感じられず、歌はどちらかといえば凡庸な印象。

真剣にくどく彼をを最初はあしらい、気まぐれから薔薇を渡して、この花が枯れたらまた会いましょう、と恋の手管のヴィオレッタ。
そんな都会の恋の作法を知らない純真な彼が、恐ろしく真剣にいつ?と迫るのに気押されては、では明日、と応えてしまう彼女。病を隠して華やかにふるまうものの、心に不安を抱えています。
真っすぐな若者の求愛に、ゲームではなくて応えてみたいと思ったのも、短い人生を思ったからでしょうか。

この場面で良かったのはガストン子爵のパク・ジミン。軽やかな歌唱で演技も的確。


第2幕 第1場



さぁ、待ってました!の第2幕。
パパ・ジェルモンのキ―ンリサイドが見どころ聴きどころ!

ヴィオレッタが用意したカントリーハウス。
醒めたパステルカラーの室内は中央に長テーブルが。
比較的奥行きの浅い、簡素で横長の部屋のしつらえですが、奥の扉から更に奥に部屋と入口がある気配。

狩りから帰ったアルフレード。
この3カ月のヴィオレッタとの田舎の生活の幸せを歌います。
ヴィオレッタの小間使い、アンニ―ナがパリから戻ってきます。
どうしてパリに?
田舎暮らしの生計を立てるため、ヴィオレッタの言いつけで家財を処分してきたというアンニ―ナ。
費用の工面を女性にさせていたとは!と驚き怒るアルフレード。パリに行って買い戻してくるよ!

ヴィオレッタ登場。アルフレード様はパリに向かわれましたと聞かされて。

そこに登場したのが!
お待ちかねのジョルジョ・ジェルモンです!
シルクハットを脱いでそこにはずした手袋を入れ、ステッキを持ち、3つ揃いのスーツはライトブラウン。上襟が茶色のベルベットのチェスターコート。アスコットタイはワインカラー。メガネをかけていますが途中でかけたり外したり。あ、ハンカチーフもふところから出して顔を押さえたり、結構小道具を総動員。演技が細かく忙しいです(笑)
「高慢と偏見」を絵に描いたような(笑)佇まい、口調。
息子をたぶらかした悪い女にモノ申してやる!との強い意志がにじみ出るへの字に結ばれた薄い唇。
感じ悪く自己紹介。
アルフレードの父です。あなたが誘惑した男の。

アルフレードの妹の縁談に差し支えるので、と息子との別れ話を切り出します。
では一時的に別々に・・・。
ヴィオレッタの身を切るような譲歩にもジェルモン父は納得しません。
きっぱりと別れるようにと、説得に入ります。

女性の容色は年齢ととも衰え、男心は移ろいやすい。
天から祝福された関係ではないから、神のご加護もありません。

鬼のようにたたみかけるパパ・ジェルモン。
優しいヴィオレッタはついに折れます。

わかりました。でも彼になんと?
愛してないと言ってください。
彼は信じませんわ。
あなたが立ち去ればいい!
彼は追いかけてきますわ。

イラつくジェルモン、ヴィオレッタをねめつけて、ではどうすれば?!

ヴィオレッタはここで、ジェルモンに懇願します。
勇気を出すために力を。「娘として抱擁してください」

娼婦と見下した相手の意外な行動に、固まるジェルモン。
ヴィオレッタの懇願を冷たく無視します。
「私は見返りに何をすれば?」

絶望に駆られたヴィオレッタ。「死にます」
「死んではいけません」
彼女の顔に手を伸ばすジェルモン父をスッと避けるヴィオレッタ。
帽子を手袋を回収し、いとまごいを告げる父。

ふ~。第一ラウンド終了です。
いやはや、がっぷり4つに組んだ心理戦。見応えがありました。

早速手紙をしたためるヴィオレッタ。
アルフレードが戻ってきて、手紙を書いているヴィオレッタに後ろから目隠し。
驚いたヴィオレッタ、手紙を持って逃げようとします。
見せて。ダメよ。ごめん、父が来るらしくて。

ヴィオレッタはアンニ―ナを連れてこの家を出ていきます。

小さな娘を連れた男が入ってきて、二人が出ていったことをアルフレードに伝えます。
ヴィオレッタからの手紙はその小さな娘がキチンとお辞儀をして、アルフレードに手渡します。
可愛らしい演出。

嫌な予感に動揺する彼。 この手紙は・・!
そこに入ってきたのがキーンリーサイド。いやがうえにも高まる緊張。

動揺する息子が歯がゆい父。
「プロヴァンスの海と土地」
息子に故郷を思い起こさせ、一緒に帰ろうと諭すバリトンの名曲。
一小節ごとにたくさんの感情がこもり、決して大げさに歌い上げることはないのですが、
心にしみる素晴らしい歌唱です。会場からも大きな拍手。
・・が、歌いながらも、息子の手紙を奪い、脚をステッキで打ちすえる演技が!
これは演出の指示?サイモン独自の演技?

真っ向から対立する父と子。
ヴィオレッタの心変わりで頭がいっぱい、父の言葉は完全スル―状態のアルフレード。
復讐に行くぞ!と出て行ってしまいます。

何だと!固まるジェルモンパパ。 で、ひとまず暗転。