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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ダニール・シムキン「インテンシオ」 初日

2012-11-23 12:58:05 | BALLET
「ダニール・シムキンのすべて」のガラ公演、
「インテンシオ」(INTENSIO)の初日、に行って参りました。



2012年11月22日(木)19:00~

五反田のゆうぽうとホールにて

ダニール・シムキンのすべて
<インテンシオ>


〈オープニング〉

「Qi (気)」
ダニール・シムキン

「葉は色あせて」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
イザベラ・ボイルストン、ホアキン・デ・ルース

「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
ジュリー・ケント、ロベルト・ボッレ

「海賊」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン

-休憩-

「雨」
イザベラ・ボイルストン、ダニール・シムキン

「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ホアキン・デ・ルース

「クルーエル・ワールド」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
吉田都、ロベルト・ボッレ

「レ・ブルジョワ」
ダニール・シムキン

〈フィナーレ〉

※音楽は特別録音によるテープを使用

◆上演時間

第1部 19:00 - 20:00 <休憩  20分> 第2部 20:20 - 21:15

内容は、ダニール・シムキンと彼が所属するABTを中心とした新旧のダンサーによるGALA公演、なのですが、
日頃から映像や写真に興味があり、TWITTERなどを活用しているシムキンくんと、映像作家に転身を図るプロフェッショナルバレエダンサーのお父上のコラボレーション、ということで、冒頭からTwitterのつぶやきがリアルにぐるぐる回っている映像が、上演前の舞台に映し出されており、いつものバレエ公演とはちょっと様子が異なる雰囲気・・。

2演目登場予定のロベルト・ボッレが「遅刻した!30分遅らせてもらえる?」などと冗談交じりに書きこんでいるものなど、読むともなしに眺めていたら、ドラマチックな流れる水のような画像処理がなされた、シムキンくんの巨大画像がスクリーンいっぱいに映し出され、その紗幕の向こうで、リハーサルをしているらしきペアたちが次々にスポットをあてられ、どこまでな現実でどこまでが録画映像なのか・・・と混沌としたムードで開幕。

実際のパフォーマンスが始まると、それぞれの演目ごとに目次のページのようにタイトルと演者の名が映し出される他は、通常のバレエ・ガラとさして変わらず。

ただ、映像でつないでいるからか、会場の照明が全体的に暗め設定で、連日仕事帰り劇場へダッシュ!の身としては つい、睡魔に襲われる瞬間が・・・
というわけで、穴だらけながら、これぞ!という瞬間だけはちゃっかり凝視するといういささか変則的な観賞となってしまいましたが、印象に残ったペア毎に感想を。。。


■「Qi (気)」
ダニール・シムキン

今回、4演目で大車輪の活躍のシムキンくん。
アナベル・ロペス・オチョアの振付で、シンプルな白いナイトシャツのようなシンプルな衣装で踊りますが、先述の画像演出で作り込まれたオープニングに続いて、、、ですので、作品としての輪郭が曖昧になってしまったかも?
画像の演出そのものは面白いと思いました。

■「葉は色あせて」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

ABTの名花ジュリー・ケントも大ベテランながら、3演目とフル出場。
どの作品も丁寧に踊りこんでいながら軽やかな持ち味に円熟とちょっと枯れた味わいが加わって・・・。
ちょっと見る方の体制が整っていなかったのですが、今の彼女にあった演目だと思いました。

■「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
イザベラ・ボイルストン、ホアキン・デ・ルース

うーん、とても健康的なボイルストンととにかく身体能力が高くて身体が効いてしまうデ・ルースのチャイパド。
実に踊れてはいるのですが、、、、この演目に春風のような軽やかさと若々しいエレガンスを求めてしまうわたくしの美意識からするとちょっとこの2人は違うのですよね・・・^^;
特にデ・ルースは、技巧を見せようとする試みとアレンジが、見た目の美しさを損ねているように見える部分が気になりました。トム・クルーズのようなハッキリしたお顔が目立つ筋肉質の中背のダンサー、という外見が単に好みではない、ということなのかもしれませんが^^;(ゴメンナサイ)

■「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

サンクトぺテルブルク・バレエ・シアターのプリンシパル、コレスニコワを見たのは初めて。
非常に表情豊かなアームスを持ち、軸のしっかりとした安定感抜群の踊りに目を惹かれました。
シショフは伸びやかな踊りをするダンサーですね。
マリインスキーから移籍して、今、ウィーンでルグリ先生の薫陶を受けているだけのことはあります。
このお二人はともにワガノワ出身長身ペアで安定のクラシックダンサー、という感じ。

■「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
ジュリー・ケント、ロベルト・ボッレ

ボッレを見るのは久しぶりです。
フェレの引退公演以来?それまではNBSの公演に、東バのゲストで呼ばれたり、バレフェスに出たり、頻繁に観る機会があったのに・・・。
相変わらずの美丈夫ぶりですが、青年期の甘い美貌からちょっとおじさんっぽくなったかな(笑)?
踊りの方は、ジュリー・ケントは往年の美女が病魔に襲われて・・・の風情にぴったり。細いですし。演技が細やかで情感もあり、ステキなマルグリットでしたし、ボッレのアルマンもニンに合っているはず・・・なのですが、ノイマイヤーの振りが入り切っていないのか、2人の呼吸を合わせるリハーサルが充分でなかったからか、ちょっとリフトのタイミングなどが取りづらそうな場面がチラホラと。
それより気になったのは、後半、客席に聞こえるレベルでボッレの息遣いが荒くなっていたことですね。
劣化?調整不足?
公演を重ねて行くと調子が出てくるのかもしれません^^

■「海賊」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン

バレフェス初登場のときに話題をさらったフレッシュペア再び・・・!
やっぱりコチェトコワとシムキンは合いますね!
白と金の目映い衣装で、小柄で均整のとれた2人が技巧を凝らしつつ余裕綽々で魅せてくれました。
コチェトコワ、最後の高速フェッテ、ダブルも繰り出しつつ、45度ずつ角度を変えてきれいに一周しながらのパフォーマンスが圧巻。
この2人は、オリジナルをいじって難易度を上げるアレンジをしても、それが美しく、音に合う収まり加減をわかってやっているところが素晴らしい。
クラシックの晴やかなPDDで、ガラ公演にふさわしい演目と踊り。

■「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ホアキン・デ・ルース

コチェトコワはクールなジゼルでした。髪を耳隠しに結うと雰囲気が随分と変わって大人っぽくなりますね。
ホアキン・デ・ルースは端正に踊ると良いダンサーだということが良く分かります。

■「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ


吉田都、ロベルト・ボッレ

諸々すっとばして(失礼)いきなりここですが・・・。
この演目のために、ゆうぽうとに来て本当に良かった!と思える演技でした!!

都さんはクリーム色のシフォンの衣装に髪には繊細なラインストーンの連を飾った技巧的なまとめ髪。
少女らしい上気したピンクの頬と艶のある肌が、まさに16の乙女。
バルコニーでうっとりとして舞踏会の出会いを思い出している・・・ところでまさかの機器トラブルによる演奏中断。
ドキッとする客席を尻目に、眉ひとつ動かさず夢見る表情の都さんを見ていると一瞬の無音の後に音楽復活。
何事もなかったかのようにそのままロミオ登場~バルコニーの階段を駆け降りる・・・と続き、2人の初恋のときめきと歓喜をともに味わう至福のひとときを・・・。
胸にロミオの手を導き、恥じらうジュリエットに、歓喜の踊りを見せるロミオ。
これが、あのゼイゼイ息を切らしていたアルマンと同じ人とは思えないくらいニッコニコでパワー全開のロベルトロミオ。ソロで踊っていても、常に相手を感じて視線を絡める幸福感いっぱいの2人・・・。
ふわっとシフォンの裾が翻り、体重がないのではないかと思えるほどの軽やかなリフト。
ボッレの伸ばした腕の上で幸福な笑顔で揺れる都さんは今にもさえずりだしそうな小鳥のようでした。

ボッレはABTの前、ミラノスカラ座在籍中に長身のプリマのお相手として、各国の一流ダンサーと組んできたキャリアの中で、ロイヤルバレエへの客演もあったわけですが、小柄な都さんと組んだことはなく・・・。
今回の協演は初で、両者ともに熱望していたプロジェクトらしく、とても幸せそうなお二人で・・・。
とりわけボッレがカーテンコールでもとても嬉しそうに都さんを観ていたのが印象に残りました。

観られて良かった!シムキンくんのおかげですわ!ありがとう!

■「レ・ブルジョワ」

で、〆は座長が・・・。
やさぐれた男がシャンソンに乗せて、酔っぱらってよろよろしつつも豪快に踊る、というこの演目。
この演目はシュツットガルトの男くささが魅力のフィリップ・バランキエヴィッチの十八番という印象があるのですが・・・。
シムキンくんが、白シャツ、ネクタイ、黒ズボンにメガネ、くわえたばこでやってくれました。
うーん顔をしかめたり表情豊かに盛大にやさぐれているのだけれどもどうみても少年のいたずらだわ^^;

はい、別物ではありましたが、上半身を固定して下半身だけで蹴上がって脚をぐるりと空中で回す・・など、彼ならではのダイナミックな軽業満載のサービス精神溢れるパフォーマンスに会場は沸き、ドヤ顔の座長でありました^^;


そのまま、OPENINGではブルー基調に深海で揺れているような画像だったのが、
ラストは黄金色~オレンジの炎のような画像で、その紗幕の向こうに透けて見えるのは、この公演の衣装を身に付けたペアが次々と映し出される瞬間、そのPDDのキメのポーズなり、場面を演じるなりしているのが見える・・・という趣向。

最後、映像作品を観賞しているような感覚に陥って、どこで拍手を入れたらいいのか、観客側としては一瞬とまどうところもありましたが試みとしては面白いものでした。
もっと客席と呼応するような形で進化していけば、一層盛り上がるのではないかしら?と思ったことでした


*追記*
シムキンくんが、11月29日付でABTのプリンシパルに昇格したそうですね^^
WonderBoyもいつしか25歳のプリンシパルに。
今後の活躍も楽しみです






Filage Quintet 東京芸大生のコンサート

2012-11-23 11:57:15 | MUSIC
2012年11月21日(水)19:00~
虎ノ門のJTビル、アフィニスホールにて

現役の東京藝大の学生5人による、フィラ―ジュ・クィンテットの第65回定期演奏会に行って参りました。

以下は、今回のプロデュースを手掛けられた元N響の首席ヴァイオリン奏者、川崎助教授の御挨拶。

「今回登場するのは、ヴァイオリンの石田紗樹と下田詩織、ヴィオラの松村早紀、チェロの山本直輝、ピアノの小塩真愛の5人からなるFilage Quintet(フィラージュ クインテット)。若さ溢れる5人の気の合った演奏をお聴きいただきます。
前半の曲目は、「冗談」と名付けられたウィットに富んだ仕掛けが楽しいハイドンの「弦楽四重奏曲 第38番 変ホ長調 Op.33-2 Hob.Ⅲ‐38」と、フランス室内楽作品を代表するラヴェルの「弦楽四重奏曲 ヘ長調」。後半は知名度こそないものの作曲家の資質が遺憾なく発揮されたフォーレの「ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 Op.115」。
若い団体にありがちな力で押すタイプではなく、どちらかといえば繊細な表現が得意な彼らがこれらの難曲にどのようにアプローチするのか、どこまで作品の持つ内面に迫れるのかとても楽しみです。ぜひ会場に足をお運びいただき、若い演奏家の挑戦をご覧になっていただければ幸いです。

第65回プロデューサー:川﨑和憲」



Filage Quintet】
石田紗樹(ヴァイオリン)
下田詩織(ヴァイオリン)
松村早紀(ヴィオラ)
山本直輝(チェロ)
小塩真愛(ピアノ)


ハイドン : 弦楽四重奏曲 第38番 変ホ長調 Op.33-2 Hob.Ⅲ‐38 「冗談」
ラヴェル : 弦楽四重奏曲 ヘ長調
フォーレ : ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 Op.115

ハイドンではまだやや硬さが見えたものの、ラヴェルでは瞬間4人の音色が混然と溶け合ってうねりを見せる素晴らしい瞬間などもあり、確かな技量を持つ若手による真摯な音楽への取り組みとラヴェルらしい華やかな色の4重奏でまずは前半。

第2部は、ピアノも加わり、フォーレらしい幻想的で華やかな作品を、地に足のついた演奏で、互いの音を感じながらの緩急もしっかりと見えて、息のあったグループ公演ならでは、でした。
5重奏曲自体が そうたくさん選択肢があるものではないと思うのですが、その中で、このフォーレの晩年の傑作を選んだ、という選曲のセンスの良さは、プロデューサーの手腕なのか、演奏者らの趣味をも反映しているのか、いずれにしても、構成の良さが際立って、音楽好きを満足させる演奏会だったと思います。

始まりのピアノのアルペジオから、弦が絡んで、雄大でちょっとノスタルジックな哀感もあるこの作品、大河ドラマや精細な心理を描いたフランス映画などにも合いそうだなぁと思いましたら、
1984年のフランス映画、ベルトラン・タヴェル二エ監督の佳作「田舎の日曜日」のラストに使われていたのですね^^
あの頃はフランス映画社配給で、受け皿としての芸術映画を上映するミニシアターも降盛を極めていた頃・・・で、わたくしも次々と上映され良質なヨーロッパの新作・名作に心奪われていた時期だった・・・と思い出したことでした