3月1日から10日まで、東京文化会館で8公演が行われるBejart Ballet Lausanneの来日公演です。
A、B、2種類のプログラムのまずはAプロ。
2013年3月4日(月)19:00~
上野の東京文化会館に行って参りました。
今回の目玉?は、ジュリアン・ファブローが初めてのメロディを踊る「ボレロ」
ベジャール・バレエ団の押しも押されぬ中心人物、スターダンサーとして揺るぎない信頼を得ているダンサーですが、ボレロの円卓の上、1人踊る「メロディ」としてベジャールさんから指名されることはなく・・・。
過去には映画「愛と哀しみのボレロ」での名演でこの作品の代名詞ともなっているジョルジュ・ドン、を始め、シルヴィー・ギエムなど、名ダンサーが任されてきましたが、ベジャールバレエ団内では、今回も踊る、女性のエリザベット・ロスや他にもカトリーヌ・ズアナバ―ルらも踊りましたし、東バでは、上野水香さんや後藤晴雄さんも指名を受けて踊ってきたことを考えると、その基準は?と首をかしげたくなりますが・・・。
多分ジュリアンはあまりに健康的なのかも?ちょっと魔性というか、シャーマン的なものが求められるのかも、とは思いますが。
本人はそれは踊りたかったと思います・・・。
ということで、満を持しての彼の「MELODY]を目当てに選んだこの日、ですが、同時に上演された2作品もそれぞれに面白く・・・。
ベジャールさんが2007年に亡くなってもう5年。ジル・ロマンの体制のもと、ベジャール作品を守るだけでなく、ジルによる新作の発表など、この先このバレエ団はどうなっていくのか・・と退団者が相次いだ時期には不安に思ったこともありましたが、今回のベテラン、新人ともにベジャールバレエ団ならではの魅力を発散させてくれた今夜の舞台を見て、なんだかホッと安心するものがありました。
それは、ジルの新作が、べジャ―ルさんのCOPYや焼き直しではなく、彼独自のアイデアで魅力的に彩られていて、しかもベジャールダンサーにぴったりだったから!
では、個々の感想を・・・。
2013年3月4日(月)19:00開演 会場:東京文化会館
モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演
<Aプロ>
■「ディオニソス組曲」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:マノス・ハジダキス
ディオニソス: オスカー・シャコン
ギリシャ人: マルコ・メレンダ
ゼウス: ハリソン・ウィン
セメレー: ポリーヌ・ヴォアザール
マヌーラ・ムウ*: リザ・カノ(*ギリシャ語で"私のお母さん"の意)
タベルナ(居酒屋)の人々
ギリシャの女: リザ・カノ
上流社会の婦人: マーシャ・ロドリゲス
アナーキスト: フロレンス・ルルー=コルノ
娘: キアラ・パペリーニ
二人の水夫: 那須野圭右、ヴィタリ・サフロンキーネ
労働者: フェリペ・ロシャ
ジゴロ: ローレンス・リグ
学生: ウィンテン・ギリアムス、エクトール・ナヴァロ
船長: アンジェロ・ムルドッコ
ならず者: ファブリス・ガララーギュ
ギリシャの農民: ホアン・ヒメネス
若者: 大貫真幹
他、モーリス・ベジャール・バレエ団
横尾忠則の大きな抽象画をセンターに据えた舞台で、
ギリシアの人々が互いに行き来し様々なドラマが繰り広げられる・・という場面と、男性ダンサーが輪になっての”ダンス・バトル”的な祝祭場面で構成された、「ディオ二ソス組曲」。
1984年に初演された、ワーグナー、コジマ、ニーチェの関係性を描いた大作のギリシャ的エッセンスだけを抽出したものとして1985年に発表されたものだそう。
ベジャール・バレエ団の男性ダンサーが踊りたい曲NO.1なのだそうですが、これは後半のダンス・バトルがまさに古代から続く「祝祭」の熱を帯び、円陣を組んだメンバーのその中心に踊り出て、ファナティックな野性的なダンスを見せる・・・・という「オトコ祭り」ゆえそれは踊っていても楽しいであろう(笑)と納得。
赤い、たっぷりとしたドレープで太腿の部分が大きく、膝下がスリムになったパンツだけを着用しているダンサーたちが、古代ギリシャのフォーン(半神半獣の牧神)のように見えるところがポイントか。
衣装はヴェルサーチなんですよね・・・。
「娘」役のキアラ・パペリーニの黒いクチュールっぽいピッタリしたノ―カラ―ジャケットにひらひらした黒白プリントのマーメイドタイトが彼女のパンッと若々しく張り詰めたゴムまりのような肢体を惹きたてているところとか、アナーキストのルルー・コルノの濃紺の柔らかなハリのある素材のビッグシルエットのトレンチ風コートとか、80年代のヴェルサーチのエッセンスが凝縮されていて、とても懐かしい気分が蘇りました^^
個人的には、ゼウスとセメレ―の場面、白いユニタードの長身の2人が美しく、印象的。
この上半身は細いストラップで背中の開いたキャミソール状で足首までのタイツで真っ白・・・の衣装ってとてもベジャール的で、それにキチンとした目鼻立ちがくっきりとして見えるメークに金髪の夜会巻き・・・ベジャール・ダンサーだなぁとタメ息。
金髪に白肌長身のダンサーもいれば、ラテン系の筋肉質のブルネット、黒髪を艶やかになでつけた黒人、ナチュラルメイクでストレートヘアの日本人など、国籍・人種は様々なれど、皆、どこか面長でくっきりした目鼻立ちですらりと伸びやかな筋肉質の体型を持ち・・・というベジャール・ダンサーの風情を纏っている。
ベジャールさんが亡くなっても片腕だったジルのもと、バレエ団が存続してることの意味を嬉しく確認したオープニング、でした。
-休憩-
■「シンコペ」
振付:ジル・ロマン 音楽:シティ・パーカッション
序曲: ガブリエル・アレナス・ルイーズ-エリザベット・ロス
水滴の踊り:
カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
キャサリーン・ティエルヘルム-ホアン・ヒメネス
シモナ・タルタグリョーネ -マルコ・メレンダ
リザ・カノ-イケル・ムリーリョ・バディオラ
フロレンス・ルルー=コルノ-ウィンテン・ギリアムス
ソロ: ガブリエル・アレナス・ルイーズ
トリオ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン-ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: アランナ・アーキバルド-ガブリエル・アレナス・ルイーズ
パ・ド・ドゥ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
白衣の踊り:
キャサリーン・ティエルヘルム、シモナ・タルタグリョーネ、フロレンス・ルルー=コルノ、
キアラ・パペリーニ、リザ・カノ、イケル・ムリーリョ・バディオラ、マルコ・メレンダ、
ウィンテン・ギリアムス、ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: コジマ・ムノス-アンジェロ・ムルドッコ
若者の踊り:
ガブリエル・アレナス・ルイーズ、オスカー・シャコン、イケル・ムリーリョ・バディオラ、
マルコ・メレンダ、ウィンテン・ギリアムス
ソロ: エリザベット・ロス
フィナーレ:全員
ドラマの効果音のような断続的な音楽をバックに、不可思議でユーモラスな世界が展開します。
ジル・ロマン新監督の新作は、ベジャールバレエ団に振りつけた前作「アリア」の闘争と衝突のテーマとは打って変わって軽快で日常生活からちょっとズレた世界。
ガブリエル・アレナス・ルイーズが、50年代のアメリカンコミックにでてくるひきこもり気味のマザコン少年のような風情。目を見張り、膝を抱えて安楽椅子に吸い込まれる半袖シャツに短めチノパンの主人公。
しゃなりしゃなりと頭にかぶったおドンブリのような帽子を時折点灯させつつつ、息子?の安楽椅子をナースが車椅子を動かすように押しながらも白のパイピングの紺のクロップトパンツとジャケットで、まるで、ランウェイを歩くモデルのようなエリザベット・ロス。
そこに、白いトランスペアレントな軽快な衣装の男女の群舞が現れては消え・・・。
トリオやパ・ド・ドゥで中心的な役割を演じるカテリーナ・シャルキナが金髪を眼の上で切りそろえたロングのポブで、柔らかな赤口紅でなんともコケティッシュ。今最旬のモデルのミランダ・カ―のような愛らしさ。
彼女ってこんなにカワイイキャラクターだったかしら・・・?
それをいうなら、G・A・ルイーズの首をちょっと前に出してびっくりしたような表情を顔に張り付けた少年はどうでしょう?
いえ、彼は前回の来日ツアーで観た時には、一応イケメンダンサーズの部類にカテゴライズしていたもので・・・・^^;
ベジャールさん亡き後、求心的なカリスマを失って、団を離れるダンサーも多かったけれども、カトリーヌ・ズアナバールのようなベテランも残り、ガブリエルやカテリーナのような若いダンサーが頭角を現し、個性を発揮している姿を観ると、新体制のベジャールバレエ団が、ベジャールの遺産を大切に守るだけでなく、健康的に生きて、進化している有機体であるのだなぁと。
そんな確信を与えてくれた、ジル・ロマンの新作でした。
そして、嬉しいことに、彼の作風はべジャ―ル作品とは全く異なる個性を持ちながら、べジャ―ルダンサーに良く似合います!
-休憩-
■「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:モーリス・ラヴェル
メロディ: ジュリアン・ファブロー
リズム: 那須野圭右、マルコ・メレンダ、アンジェロ・ムルドッコ、イェー・ルッセル
他、モーリス・ベジャール・バレエ団
協力:東京バレエ団、東京バレエ学校
ジュリアンが本当に体を絞っていて、この作品のセンターを踊ることへの意気込みを感じました。
孤高のカリスマや憑依する巫女のようなタイプではなく、どちらかというと台の下で盛り上げるリズムのリーダー的存在、「良い兄貴」のような彼は、台の上からリズム隊を煽り、呼びかけ、最後は一体となって燃え尽きようとする祭の神輿の上にいるような存在感でもって、ジュリアンのメロディを見せてくれました。
基本ベジャールバレエ団の男性舞踊主が台を囲んでリズム隊を構成しているのですが、人数が足りなかったのか、勉強のためなのか、東京バレエ団のソリストクラスが後方に配されていて、センターにいる長瀬くんが目立っていました。
ところで、彼は東バの公式サイトのダンサーリストに載っていないのですが、いつ退団されたのでしょう?
このところ、松下・高橋と実力派の男性ダンサーの退団が続いている東バですが、オネーギンでレンスキー役にクレジットされていたほどのクラスにいた長瀬くんまで・・・。ちょっと心配です@@
※音楽は特別録音によるテープを使用。
◆上演時間
「ディオニソス組曲」 19:00 - 19:55
休憩 20分
「シンコペ」 20:15 - 20:55
休憩 10分
「ボレロ」 21:05 - 21:25
※終演後に芸術監督ジル・ロマン、「ボレロ」主演のジュリアン・ファヴローによるポストトークがバレエ評論家の佐藤友紀さんの司会で開催されました。
10時まで、という会場の都合で、とても巻きが入っていましたが、「シンコぺ」日本初演なのに舞台に姿を見せなかったジル・ロマンの姿を観られて良かったです。
ただ、今回のトークは火曜日と2夜連続の企画ゆえ、「シンコぺ」については明日・・・と振られていて、ジルの口から自作の作品についての解説を聴きたかったわたくしとしてはちょっと残念でした^^;
◆◇----------------------------------------------------◇◆
「ディオニソス組曲」 より バレエ作品には珍しく、台詞のある場面があるのですが、
その台詞の対訳が当日のCAST表の裏面に載っていました。
哲学的・神話的、かつ、地中海人的な、実にベジャールさんらしい一節だと思いましたので、転記しておきます^^
タベルナ
ヤーサス※1!ティカニス※2......カラ※3?
われらギリシャ人、われらには必要なのだ...
ワインが、音楽が、太陽が、海が、そしてわれらの神々が必要なのだ。
ご存知か、ギリシャの古代の神々は、一度もわれらの国を離れたことはない。
とくとご覧あれ、神々はわれらと共にいる。どの村にも、どのタベルナにも、
どのダンスのなかにも!
神々は永遠に生きているのだ!
※1ギリシャ語で"こんにちは"の意
※2ギリシャ語で"お元気ですか"
※3ギリシャ語で"元気?"
パ・ド・ドゥ「ゼウスとセメレー」
神々の王であるゼウスは、人間に姿を変えている。
だが彼女、人間の女である彼女は、神に会いたがる。
彼は拒否する!
でも一人の女が、一人のギリシャ人の女があることを望むとき...
彼女はその愛のために命を奪われ、雷に打たれる。
でもその子どもは永遠に生き続ける。
ディオニソスよ!
A、B、2種類のプログラムのまずはAプロ。
2013年3月4日(月)19:00~
上野の東京文化会館に行って参りました。
今回の目玉?は、ジュリアン・ファブローが初めてのメロディを踊る「ボレロ」
ベジャール・バレエ団の押しも押されぬ中心人物、スターダンサーとして揺るぎない信頼を得ているダンサーですが、ボレロの円卓の上、1人踊る「メロディ」としてベジャールさんから指名されることはなく・・・。
過去には映画「愛と哀しみのボレロ」での名演でこの作品の代名詞ともなっているジョルジュ・ドン、を始め、シルヴィー・ギエムなど、名ダンサーが任されてきましたが、ベジャールバレエ団内では、今回も踊る、女性のエリザベット・ロスや他にもカトリーヌ・ズアナバ―ルらも踊りましたし、東バでは、上野水香さんや後藤晴雄さんも指名を受けて踊ってきたことを考えると、その基準は?と首をかしげたくなりますが・・・。
多分ジュリアンはあまりに健康的なのかも?ちょっと魔性というか、シャーマン的なものが求められるのかも、とは思いますが。
本人はそれは踊りたかったと思います・・・。
ということで、満を持しての彼の「MELODY]を目当てに選んだこの日、ですが、同時に上演された2作品もそれぞれに面白く・・・。
ベジャールさんが2007年に亡くなってもう5年。ジル・ロマンの体制のもと、ベジャール作品を守るだけでなく、ジルによる新作の発表など、この先このバレエ団はどうなっていくのか・・と退団者が相次いだ時期には不安に思ったこともありましたが、今回のベテラン、新人ともにベジャールバレエ団ならではの魅力を発散させてくれた今夜の舞台を見て、なんだかホッと安心するものがありました。
それは、ジルの新作が、べジャ―ルさんのCOPYや焼き直しではなく、彼独自のアイデアで魅力的に彩られていて、しかもベジャールダンサーにぴったりだったから!
では、個々の感想を・・・。
2013年3月4日(月)19:00開演 会場:東京文化会館
モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演
<Aプロ>
■「ディオニソス組曲」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:マノス・ハジダキス
ディオニソス: オスカー・シャコン
ギリシャ人: マルコ・メレンダ
ゼウス: ハリソン・ウィン
セメレー: ポリーヌ・ヴォアザール
マヌーラ・ムウ*: リザ・カノ(*ギリシャ語で"私のお母さん"の意)
タベルナ(居酒屋)の人々
ギリシャの女: リザ・カノ
上流社会の婦人: マーシャ・ロドリゲス
アナーキスト: フロレンス・ルルー=コルノ
娘: キアラ・パペリーニ
二人の水夫: 那須野圭右、ヴィタリ・サフロンキーネ
労働者: フェリペ・ロシャ
ジゴロ: ローレンス・リグ
学生: ウィンテン・ギリアムス、エクトール・ナヴァロ
船長: アンジェロ・ムルドッコ
ならず者: ファブリス・ガララーギュ
ギリシャの農民: ホアン・ヒメネス
若者: 大貫真幹
他、モーリス・ベジャール・バレエ団
横尾忠則の大きな抽象画をセンターに据えた舞台で、
ギリシアの人々が互いに行き来し様々なドラマが繰り広げられる・・という場面と、男性ダンサーが輪になっての”ダンス・バトル”的な祝祭場面で構成された、「ディオ二ソス組曲」。
1984年に初演された、ワーグナー、コジマ、ニーチェの関係性を描いた大作のギリシャ的エッセンスだけを抽出したものとして1985年に発表されたものだそう。
ベジャール・バレエ団の男性ダンサーが踊りたい曲NO.1なのだそうですが、これは後半のダンス・バトルがまさに古代から続く「祝祭」の熱を帯び、円陣を組んだメンバーのその中心に踊り出て、ファナティックな野性的なダンスを見せる・・・・という「オトコ祭り」ゆえそれは踊っていても楽しいであろう(笑)と納得。
赤い、たっぷりとしたドレープで太腿の部分が大きく、膝下がスリムになったパンツだけを着用しているダンサーたちが、古代ギリシャのフォーン(半神半獣の牧神)のように見えるところがポイントか。
衣装はヴェルサーチなんですよね・・・。
「娘」役のキアラ・パペリーニの黒いクチュールっぽいピッタリしたノ―カラ―ジャケットにひらひらした黒白プリントのマーメイドタイトが彼女のパンッと若々しく張り詰めたゴムまりのような肢体を惹きたてているところとか、アナーキストのルルー・コルノの濃紺の柔らかなハリのある素材のビッグシルエットのトレンチ風コートとか、80年代のヴェルサーチのエッセンスが凝縮されていて、とても懐かしい気分が蘇りました^^
個人的には、ゼウスとセメレ―の場面、白いユニタードの長身の2人が美しく、印象的。
この上半身は細いストラップで背中の開いたキャミソール状で足首までのタイツで真っ白・・・の衣装ってとてもベジャール的で、それにキチンとした目鼻立ちがくっきりとして見えるメークに金髪の夜会巻き・・・ベジャール・ダンサーだなぁとタメ息。
金髪に白肌長身のダンサーもいれば、ラテン系の筋肉質のブルネット、黒髪を艶やかになでつけた黒人、ナチュラルメイクでストレートヘアの日本人など、国籍・人種は様々なれど、皆、どこか面長でくっきりした目鼻立ちですらりと伸びやかな筋肉質の体型を持ち・・・というベジャール・ダンサーの風情を纏っている。
ベジャールさんが亡くなっても片腕だったジルのもと、バレエ団が存続してることの意味を嬉しく確認したオープニング、でした。
-休憩-
■「シンコペ」
振付:ジル・ロマン 音楽:シティ・パーカッション
序曲: ガブリエル・アレナス・ルイーズ-エリザベット・ロス
水滴の踊り:
カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
キャサリーン・ティエルヘルム-ホアン・ヒメネス
シモナ・タルタグリョーネ -マルコ・メレンダ
リザ・カノ-イケル・ムリーリョ・バディオラ
フロレンス・ルルー=コルノ-ウィンテン・ギリアムス
ソロ: ガブリエル・アレナス・ルイーズ
トリオ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン-ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: アランナ・アーキバルド-ガブリエル・アレナス・ルイーズ
パ・ド・ドゥ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
白衣の踊り:
キャサリーン・ティエルヘルム、シモナ・タルタグリョーネ、フロレンス・ルルー=コルノ、
キアラ・パペリーニ、リザ・カノ、イケル・ムリーリョ・バディオラ、マルコ・メレンダ、
ウィンテン・ギリアムス、ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: コジマ・ムノス-アンジェロ・ムルドッコ
若者の踊り:
ガブリエル・アレナス・ルイーズ、オスカー・シャコン、イケル・ムリーリョ・バディオラ、
マルコ・メレンダ、ウィンテン・ギリアムス
ソロ: エリザベット・ロス
フィナーレ:全員
ドラマの効果音のような断続的な音楽をバックに、不可思議でユーモラスな世界が展開します。
ジル・ロマン新監督の新作は、ベジャールバレエ団に振りつけた前作「アリア」の闘争と衝突のテーマとは打って変わって軽快で日常生活からちょっとズレた世界。
ガブリエル・アレナス・ルイーズが、50年代のアメリカンコミックにでてくるひきこもり気味のマザコン少年のような風情。目を見張り、膝を抱えて安楽椅子に吸い込まれる半袖シャツに短めチノパンの主人公。
しゃなりしゃなりと頭にかぶったおドンブリのような帽子を時折点灯させつつつ、息子?の安楽椅子をナースが車椅子を動かすように押しながらも白のパイピングの紺のクロップトパンツとジャケットで、まるで、ランウェイを歩くモデルのようなエリザベット・ロス。
そこに、白いトランスペアレントな軽快な衣装の男女の群舞が現れては消え・・・。
トリオやパ・ド・ドゥで中心的な役割を演じるカテリーナ・シャルキナが金髪を眼の上で切りそろえたロングのポブで、柔らかな赤口紅でなんともコケティッシュ。今最旬のモデルのミランダ・カ―のような愛らしさ。
彼女ってこんなにカワイイキャラクターだったかしら・・・?
それをいうなら、G・A・ルイーズの首をちょっと前に出してびっくりしたような表情を顔に張り付けた少年はどうでしょう?
いえ、彼は前回の来日ツアーで観た時には、一応イケメンダンサーズの部類にカテゴライズしていたもので・・・・^^;
ベジャールさん亡き後、求心的なカリスマを失って、団を離れるダンサーも多かったけれども、カトリーヌ・ズアナバールのようなベテランも残り、ガブリエルやカテリーナのような若いダンサーが頭角を現し、個性を発揮している姿を観ると、新体制のベジャールバレエ団が、ベジャールの遺産を大切に守るだけでなく、健康的に生きて、進化している有機体であるのだなぁと。
そんな確信を与えてくれた、ジル・ロマンの新作でした。
そして、嬉しいことに、彼の作風はべジャ―ル作品とは全く異なる個性を持ちながら、べジャ―ルダンサーに良く似合います!
-休憩-
■「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール 音楽:モーリス・ラヴェル
メロディ: ジュリアン・ファブロー
リズム: 那須野圭右、マルコ・メレンダ、アンジェロ・ムルドッコ、イェー・ルッセル
他、モーリス・ベジャール・バレエ団
協力:東京バレエ団、東京バレエ学校
ジュリアンが本当に体を絞っていて、この作品のセンターを踊ることへの意気込みを感じました。
孤高のカリスマや憑依する巫女のようなタイプではなく、どちらかというと台の下で盛り上げるリズムのリーダー的存在、「良い兄貴」のような彼は、台の上からリズム隊を煽り、呼びかけ、最後は一体となって燃え尽きようとする祭の神輿の上にいるような存在感でもって、ジュリアンのメロディを見せてくれました。
基本ベジャールバレエ団の男性舞踊主が台を囲んでリズム隊を構成しているのですが、人数が足りなかったのか、勉強のためなのか、東京バレエ団のソリストクラスが後方に配されていて、センターにいる長瀬くんが目立っていました。
ところで、彼は東バの公式サイトのダンサーリストに載っていないのですが、いつ退団されたのでしょう?
このところ、松下・高橋と実力派の男性ダンサーの退団が続いている東バですが、オネーギンでレンスキー役にクレジットされていたほどのクラスにいた長瀬くんまで・・・。ちょっと心配です@@
※音楽は特別録音によるテープを使用。
◆上演時間
「ディオニソス組曲」 19:00 - 19:55
休憩 20分
「シンコペ」 20:15 - 20:55
休憩 10分
「ボレロ」 21:05 - 21:25
※終演後に芸術監督ジル・ロマン、「ボレロ」主演のジュリアン・ファヴローによるポストトークがバレエ評論家の佐藤友紀さんの司会で開催されました。
10時まで、という会場の都合で、とても巻きが入っていましたが、「シンコぺ」日本初演なのに舞台に姿を見せなかったジル・ロマンの姿を観られて良かったです。
ただ、今回のトークは火曜日と2夜連続の企画ゆえ、「シンコぺ」については明日・・・と振られていて、ジルの口から自作の作品についての解説を聴きたかったわたくしとしてはちょっと残念でした^^;
◆◇----------------------------------------------------◇◆
「ディオニソス組曲」 より バレエ作品には珍しく、台詞のある場面があるのですが、
その台詞の対訳が当日のCAST表の裏面に載っていました。
哲学的・神話的、かつ、地中海人的な、実にベジャールさんらしい一節だと思いましたので、転記しておきます^^
タベルナ
ヤーサス※1!ティカニス※2......カラ※3?
われらギリシャ人、われらには必要なのだ...
ワインが、音楽が、太陽が、海が、そしてわれらの神々が必要なのだ。
ご存知か、ギリシャの古代の神々は、一度もわれらの国を離れたことはない。
とくとご覧あれ、神々はわれらと共にいる。どの村にも、どのタベルナにも、
どのダンスのなかにも!
神々は永遠に生きているのだ!
※1ギリシャ語で"こんにちは"の意
※2ギリシャ語で"お元気ですか"
※3ギリシャ語で"元気?"
パ・ド・ドゥ「ゼウスとセメレー」
神々の王であるゼウスは、人間に姿を変えている。
だが彼女、人間の女である彼女は、神に会いたがる。
彼は拒否する!
でも一人の女が、一人のギリシャ人の女があることを望むとき...
彼女はその愛のために命を奪われ、雷に打たれる。
でもその子どもは永遠に生き続ける。
ディオニソスよ!