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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚雪組 「パルムの僧院」 バウホール公演

2014-11-02 04:21:05 | TAKARAZUKA
2014年10月30日(木)11:00~

宝塚バウホール公演「パルムの僧院」を観て参りました。



壮一帆さんTOP時代に芝居の雪組として魅せる作品が多く、個性豊かなスターが若手からベテランまでまんべんなく揃っていて、宙星中心に観ていたわたくしの観劇回数が急上昇した昨今の雪組。
今回は、若手注目株として期待され続けてきた彩彩コンビ、93期首席入団の彩風咲奈氏主演。新公主演の常連で、劇団押しの強い期待の星・・とはいえ、コンビ売りされてきた92期の彩凪翔くんが2013年バウの名作「春雷」でブレイク、一歩抜かれた感があるところ、95期の華も実もある月城かなと氏、97期のアイドル的な永久輝せあちゃんなど後方からの追い上げも激しく、今回の初単独主演は彼女にとっての正念場となるに違いない・・・という「本気の咲奈ちゃん」を期待して遠征してみました。
今年はバウのみで東上しない作品に秀作話題作が多く、もう、今年は100周年だし、バウをコンプリートしてしまおうかな!?と100周年特需を勝手に作りだしているわたくしです^^;
ちなみに雪組新TOPコンビを含むチームは日生劇場で「伯爵令嬢」を絶賛上演中。上級生と最下級生で構成し、こちらバウに中堅~若手スターを集めた模様。脇を固めるところに役者を揃え、兵士や看守にも新人公演で存在感を発揮した桜路薫、真地佑果といった面々が顔を揃えています。

Wヒロインの片割れは、今やTOP以外全ての男役スターのマドンナとして常に寄りそいサポートする年上美女枠固定の大湖せしる嬢。対するのはその圧倒的な可憐さ愛らしさで期待されつつも、歌唱力が追い付かずあと一歩のところで、早霧氏の相手役としてのTOP娘役の座を逃してしまった星乃あんり嬢。このところ、脇にまわって良い味のある演技力を垣間見せてはいますが、本来のニンである王道ヒロイン役でどこまで今後に期待をつなげるか・・・も見どころかと。

バウ・ミュージカル・ロマネスク
『パルムの僧院 ―美しき愛の囚人―』

~スタンダール作『パルムの僧院』より~
脚本・演出/野口 幸作

[解 説]
 フランスの文豪スタンダールが晩年に発表した長編小説「パルムの僧院」をミュージカル化。19世紀初頭のイタリアの小公国パルムを舞台に享楽的な美青年の恋と破滅を描いた波乱万丈の愛憎劇。
 神学校を卒業したばかりの純粋無垢な主人公ファブリスが、故郷のパルムに帰って来た。育ての親である叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人は成人したファブリスの精悍な姿に心奪われ、叔母と甥の仲を越えた感情を抱く。やがて許されざる関係に発展するが、ファブリスは公爵夫人に思いを寄せるパルム宮廷の男たちの陰謀により投獄される。絶望するファブリスであったが、牢獄の窓の下に住む城塞長官の娘クレリアと出会い恋に落ちる。ふたりは看守を通じて愛の言葉を交わし、禁断の逢瀬を繰り返す。しかし蜜月は長くは続かなかった……。
 歴史の渦の中で様々な困難に傷付きながらも、愛の為に命を賭け、燃え上がる恋に身を滅ぼす若者の一途な姿を鮮烈に、また美しく描き出します。

【主な配役】

ファブリス・デル・ドンゴ(パルムの大貴族デル・ドンゴ家の次男。幸福の追求に生命を賭ける享楽的で行動的な美青年。) : 彩風 咲奈
サンセヴェリーナ公爵夫人(ファブリスの叔母) : 大湖 せしる
クレリア・コンティ(パルム公国の牢獄長官ファビオ・コンティの一人娘): 星乃 あんり
*~*~*
エルネスト四世(暴君として悪名高きパルム大公): 一樹 千尋
ラッシ(エルネスト四世の寵臣) 帆風 成海

フェランテ・パッラ(自由主義者で詩人。元医者): 月城 かなと

モスカ伯爵(パルム公国の首相): 香綾 しずる
ブルノ(モスカ伯爵の参謀) 久城 あす
キキーナ(サンセヴェリーナ公爵夫人の召使い): 早花 まこ

ジレッティ(旅芸人一座の座長でマリエッタの用心棒): 朝風 れい
マリエッタ・ヴァルセラ(旅芸人一座の女優): 桃花 ひな
ヴィオレッタ(旅芸人一座の副座長): 愛 すみれ

クレサンジ公爵(元商人でパルム随一の資産家) 永久輝 せあ
ファビオ・コンティ(パルム公国の牢獄長官。クレリア・コンティの父): 奏乃 はると

野口幸作先生は新進の演出家。
雪組のロミジュリ新人公演での演出を手掛けていらっしゃるのでそのときロミオ役だった咲奈ちゃんとはご縁がありますね。初バウ作品は花組芹香斗亜主演「フォーエバー・ガ―シュイン」。
見せ場の作り方は上手いけれど、色々と要素を盛り込みすぎた結果、尺が足りなくなり、本筋を大幅に端折ってしまった・・・が故に、楽しいけれども主役の行動に主体性と一貫性がなく、魅力が感じずらい・・・という致命的な欠点が。
 「パルムの僧院」を題材にした宝塚作品には大地真央さん主演の柴田作品「情熱のバルセロナ」がありますが、見た人に聞くとあの柴田先生でさえ釈然とするハナシの展開にはなっていなかったそうです。
当時の貴族社会とキリスト教会の関係性など、バックグラウンドが現代日本人が周知しているものではないので、手ごわい原作、ということなのかもしれませんが。

目立つところから個々に寸評を・・・(注:盛大にネタばれしています)

■フェランテ・パッラ(自由主義者で詩人。元医者): 月城 かなと
「情熱のバルセロナ」では剣幸さんが演じられた堂々の2番手どころ。ナポリの神学校から帰京したファブリスと出会ってパルマ大公の独裁ぶりを訴え、知らないうちに親友となり、ファブリスが陰謀で収監されると救出作戦を立て、最後は彼のために革命を先導して命をかけて大公暗殺に至る。
ステキな黒髪、あごにちょい髭、ややダークな肌色で情熱的な革命家という月城さんの新たな魅力全開。
民衆を率いてセンターで もともと強い眼力をギラギラさせてのナンバーが各幕一つずつあり、この上ない求心力を見せてくれます。ベルばらのベルナール的場面です。
ファブリス救出作戦では自ら医者に扮したり、”友人の”カワイ子ちゃん揃いの踊り子たちを手配したり、実行力と人脈もあり、サンセヴェリーナ公爵夫人には憧れているものの、恋のためには死ねない、大義のためなら死ねる、と言い放つ・・・と大層魅力的な人物ではあるが、なぜファブリスのためにそこまで??という疑問が最後まで解消されないのは脚本のせい。ファブリスとの交流がきちんと描かれていないので、脳内補填するよりほかなく・・・。
憧れの公爵夫人が愛する甥の収監に悲嘆にくれているのをみかねて・・・とか、革命も、もともと準備していて機会を窺っていたところでファブリス救出を口実にした、とか、自分で考えて納得してみました^^;
公爵夫人への思いも台詞でさらりと語られるだけですしね。出番を親友設定の割に、主人公と並び立つ場面を最小限に抑えられていたのは咲奈ちゃんより目立たないようにというコントロールかと。
あ、バウホール公演ならではの見どころは、一幕すぐの大公お誕生日舞踏会。ここの招待客の貴族たちがペアでダンスを踊るのですがワインカラ―の宮廷服で月城さんが参加。上手2列目の観賞位置でしたので目の前で堪能。黒い革命家も良いけれど、このノーブルな貴族姿必見です


■クレサンジ公爵(元商人でパルム随一の資産家) 永久輝 せあ
この作品の黒王子が月城さんなら、白王子は彩風さん・・のはずなのに、わたくしの心に浮かぶ白王子はなぜかこの人なのですよね・・。
ロミジュリのパリス伯爵ポジです。お金持ちで爵位はお金で買ったらしいのですが、立ち居振る舞いがエレガントなのに加え、華やかな宮廷服の着こなしもキレイ。ソフトな雰囲気の美男であるだけでなく、クレリアの心が自分にないのではと気付き、ジェローデル張りの「身を引きましょう・・」のセリフまで飛び出す、最強キャラです。
永久輝さん自身の持つスター性のせいでこのちょっと3枚目よりな役どころが美味しい2枚目になっているような・・・。
終盤、公爵と結婚したクレリアがきっぱりと妻として母としてファブリスへの未練を断つのは当然すぎるほど当然の帰結と思えて、悲恋の味わいが薄れるのは永久輝さんのせいですね^^;
フィナーレのダンスナンバーではこの方の軽やかなダンスを堪能できます。上手でずっと踊ってらしたので他が見えなかったわ(苦情?

■ファビオ・コンティ(パルム公国の牢獄長官。クレリア・コンティの父): 奏乃 はると
娘思いの父親。よくぞ見つけてきた!と理想的な婿殿クレサンジ公爵との縁談をなぜか娘には受け入れてもらえない・・・。「お父さまにはわたしの気持なんてわかりっこないわ!」
・・・ジュリエット再び。「娘よ・・・」のナンバーが反射的に脳内に流れます。一樹千尋さんが出演されているだけに。(笑)
いえ、奏乃さんのお声でも聞きたかったかも^^安定の脇役者で、この公演ほんとうに脇が充実しています。

■エルネスト四世(暴君として悪名高きパルム大公): 一樹 千尋
その一樹さん。パルマで権勢を誇る悪代官・・失礼、大公殿下です。この方の風貌、眼の下の皺、たるみでさえも高貴で重厚な大貴族の壮年男性としてのリアル感をいやがうえにも増している、ひっぱりだこの専科さん。
今回はお腹に肉布団を投入でより年配者の拵えに。
美貌の未亡人サンセヴェリーナ公爵夫人を狙っています。彼女の恋人モスカ伯爵は言わば彼の部下なので、遠慮なくチャンスを狙って外堀から攻めるという。このサンセヴェリーナ公爵夫人に向かう男達の恋のさや当ても当作品の見どころで、この矢印に参加しているメンバーが一樹さん、香稜さん、月城さんとイイ男揃いなので、一層咲奈ちゃんの恋の比重が薄まってみえる・・・のは仕方ないですね(諦め?^^;)

■ラッシ(エルネスト四世の寵臣) 帆風 成海
その部下に帆風さん。忠実な部下、なのですが、大公の指示で毒殺未遂とかどんどん悪いことに手を染めて行く・・・過程を丁寧に演じていらっしゃいました。

■モスカ伯爵(パルム公国の首相): 香綾 しずる
白いものが混じったロマンスグレーでステキな叔父様。フィナーレナンバーのスター格3組のデュエットダンスでも若手キラキラ月城・永久輝のセンターでなめらかに踊り、前回の大劇場作品「前田慶次」で枯れ切ったくぐつの首領を演じた人とは思えぬ艶やかな恋する壮年。せしるサンセヴェリーナ公爵夫人とは純愛ですね。
夫人の甥への溺愛ぶりに嫉妬しながらもいよいよとなるとテキパキと救出作戦に加わるあたりも良いオトコ。
幸せになって欲しい人たちの一人です。

■ブルノ(モスカ伯爵の参謀) 久城 あす
安定の”出来る”部下。久城さんが仕えている・・・というだけでその人物の格が上がる、という現象再び。
明るくテキパキと仕えるブルノくん。作戦とコトの次第によっては自らプルチネッラに変装したり、もはや部下の枠を超えての活躍っぷりはここ数作でみている久城さんの役とかぶりダメな人役が想像できない・・・。
モスカ伯爵への忠臣っぷりから伯爵の器量の大きさが見えるという役作りがあすくんだなと納得。

■キキーナ(サンセヴェリーナ公爵夫人の召使い): 早花 まこ
そして各方面からモテモテのサンセヴェリーナ公爵夫人に仕えるのが文豪(「歌劇」のコラムの玄人感がただならぬゆえ)早花女史、今回の公演レポも楽しみです(←そこ?)

■ジレッティ(旅芸人一座の座長でマリエッタの用心棒): 朝風 れい
影の主役その一。
甥と叔母の関係を超えた愛が芽生えた様子に気が気ではないモスカ伯爵と忠臣ブルノの差し金で、旅芸人一座の花、マリエッタにファブリスを誘惑させる計画が・・・ジレッティのマリエッタへの執着を甘くみたところから歯車が狂うというキーパーソン。
ブルノの導きで一座の舞台をファブリスが見に来るのですが、この舞台をしれっと観ているファブリスくん、ナポリでは相当鳴らしていたのではなかろうかと。ジレッティとマリエッタの鞭プレイ・ショーがなんとも陰薇かつ強烈なのは朝風先輩の大人の男の色気ゆえ。ジレッティはオペラ「道化師」の道化師である夫と2枚目の間男を足して2で割ったような役どころ。南イタリア男のアモ―レの強さと嫉妬深さが非常に良く表現されていると思いました。

■マリエッタ・ヴァルセラ(旅芸人一座の女優): 桃花 ひな
影の主役その二。
透き通るような美貌とBJのピノコをも演じられる表現力を持った逸材娘役。
彼女がなんと!カルメンばりの赤黒お衣装に髪に紅バラで朝風先輩と鞭プレイのパフォーマンスで人気を博す美人ドサ回り女優に。ジレッティのDVに耐えかねてファブリスに救いを求めたことから、殺人事件を引き起こし正当防衛を主張するファブリスが大公の差し金で牢に入れられるきっかけを作るキーパーソン。
非常に上手く、かつ、下品に陥る一歩手前の演出を彼女の上品な美貌がギリギリのところで「刺激的な宝塚のショー場面」の範疇に留めているバランス。この作品が脚本のまとまりについては大いに疑問を持ちつつも、満足度の高いものとなっているのは3人の主役をめぐる女たちを演じる娘役がいずれも美しく演技が良いためだと思います。
ポスター入りこそしていませんが、ファブリスと3人の女たち、でも良かったくらいの存在感でした。

■クレリア・コンティ(パルム公国の牢獄長官ファビオ・コンティの一人娘): 星乃 あんり
愛らしさ一番の小顔で小柄な娘役あんりちゃん。子役的可愛さが先に立って、ヒロインとしては役どころが限られるかと思いきや、今回清純派のヒロインとして堂々の演技。新公主演で注目されていた頃には歌と演技のつたなさが惜しまれた彼女、脇に回るようになって着々と演技力がついてきた模様。

■サンセヴェリーナ公爵夫人(ファブリスの叔母) : 大湖 せしる
きれいで品のある色香が匂い立つような未亡人。夫公爵の死後、モスカ伯爵が恋人で、パルマ大公からの秋波をあしらい、革命家詩人も密かに憧れている・・・そんなパルマ中の男達のハートをがっちりとつかむ美女なれど、いざ愛する甥を人質にとられての駆け引きでは知略もめぐらせ一歩も引かない強さも見せる、さすがの宮廷人。
観ている側としてちょっとふに落ちないのは、母親代わりに家督を継げない次男である甥の将来を見据えて、ナポレオン権勢下であっても浮沈が激しく命の危険のある軍人よりも実力でのし上がれる聖職者の道を進むよう説くなど、立派な後見人としての義務を果たしていたのにもかかわらず、成長した甥の美しさについ・・と道をはずれる行為をするところ。
自由恋愛の貴族とはいえ、それはさすがにタブーでしょう!と思ってしまい・・・。
そこ以外、知的で正義感も強そうなせしる嬢ゆえにますます違和感が・・・・。

■ファブリス・デル・ドンゴ(パルムの大貴族デル・ドンゴ家の次男。幸福の追求に生命を賭ける享楽的で行動的な美青年。) : 彩風 咲奈

で、主役の咲奈ちゃんですが。
素晴らしくお歌もスタイルも良くて、相変わらず丸顔でxxx大層CUTEではあるのですが・・・。
あんりちゃんが永久輝せあクレサンジ公爵との縁談に眉をくもらせ、想いを募らせるような吸引力は?
せしる嬢が肉親である甥を・・・と禁断の果実を手にしてしまうほどの色気は??
いつの間にかなとくんが命がけで助けたい!とそのために革命を起こすほどの逸材であるという証明は???

ナポリの神学校では首席卒業前途洋洋で帰京し、叔母のとりまきからは疎んじられつつも、女性たちからはちやほやされ、まんざら知らないでもない女遊びにも本気になれない、運命に流される美青年・・・設定ですが、こういう受け身でいて周囲を動かしていく、最後は宗教家としてカリスマ的人気を博す、妖しい魅力の持ち主がファブリスという主人公なのであり、咲奈ちゃんの陽な持ち味がこの作品に合うかというと・・・。
と、ここだと思うのですよね。
演出の野口先生は、プログラムでしきりと咲奈ちゃんの時分の花満開の今こそこの役がぴったりだと思って!と力説されていますが、持ち味を見誤った、それがすべてだと思います。
彩風咲奈さん本人としては、出来る限りのパフォーマンスで特に歌唱力の向上を印象付けられました。
もっと彼女自身が運命を切り開いていくような明るい好青年な役どころでの主演で観たかったかも。。。