2011年5月18日18:30~
日本青年館で、雪組2番手 早霧せいなさん主演の
バウ・ミュージカル「ニジンスキー -奇跡の舞神-」を観て参りました。
ムラでのバウ公演を終えて、青年館も翌日が千秋楽というタイミングでの観劇でしたので、かなり作品としても練れてきたところでの観賞かと。
今回の観劇ポイントは3つ
① バレリュス好きゆえ
もともとバレエでも、バレリュス関連の演目は大好き。
また、リアルにこの時期のバレリュスは衣装・装置・音楽・振付と、後世にその名を残す大物が偶然にもつながって公演に尽力したという、奇跡のようなコラボレーション。
どの人物をメインに持ってきても、個性豊かな周りの才能をどう舞台で表現するのか・・・という興味から。
② 小林十市氏
振付に元・ベジャールバレエ団スターダンサー、現・俳優兼ダンサーの小林十市さんが、振付ご担当。
今でもご自身のためのレッスンは継続されていますし、ベジャール氏のレパートリーを東京バレエ団が公演にかけるときには必ず指導に入られるので、バレエ・マスターとしては現役といって良い方ですが、宝塚に振りつけるのは初めてということで、どうバレエダンサーではないショーダンサーにあの振りを落とし込むのか・・・というところにワクワク。
③ チギキタ
雪のロミジュリでマーキューシオをキレキレに演じていたちぎたさん(早霧せいな)。
演技力と顔立ちの美しさは確認済なので、この主演作で伝説のダンサーにして狂気の天才をどう演じるのか、ということと、稀代の興行師、セルゲイ・ディアギレフを雪で配役するとしたらキタさん(緒月遠麻)しかいないな、と思ったら配役されていたので、これは観なくては!と。
で、、またもや、いつもの星組ファンの観劇仲間とは離れて単独行動(笑)
青年館の6列目は近い!そしてサブセンター通路側ゆえ視界良好。オペラ持参で行きましたがメイク確認以外不要でした。
オープニングはヴァーツラフ・ニジンスキー演じる「シェへラザード」の金の奴隷のソロ。(上の画像がその場面です)
・・・踊りってスゴイ。
その人の全てが出ますね。いきなり。
小林氏の振り付けは実に巧みで、エキゾチックなフォルムをキメのポーズに盛り込みつつ、バレエ的なテクニックをさほど要さず、早霧さんのお得意な跳躍を活かしたダイナミズムのある振りで、ちぎたさんも実に渾身の踊りで応えていました。
小林氏のブログによると、東京公演前にチェックをされたそうなのですが、バウ公演の前と後では「早霧さんの踊りが一回り大きくなっていて嬉しかった」とか^^
・・・ただ、あまたの男性スターダンサーによる、リアル「金の奴隷」を観てきたバレエオタクからすると・・・。
惜しまれるのが、金の奴隷の圧倒的な色気が欠落しているところ。
「シェへラザード」って王様のお留守に寵姫がたくましい奴隷を解放して禁断の悦楽に浸る・・・という大変 色っぽい物語なので、この、姫のお相手である金の奴隷のソロとは、牢から出された解放感と姫を籠絡するフェロモンを爆発させる、「俺を観ろ」的なナルシズムと一体化したオーラがまぶしい・・・そんな場面なのですよね。
それを冒頭に、というところが、ですね。
解放感、というか、踊りの真摯さとキレの良さはGOOD。
ただ、ここでこのポーズの指先に這わせる視線を更に忘我の境地に持っていくことで醸し出されるものもあろうものだのに・・・と思われるところできちっと寸止めるチギちゃんって・・・。
あぁ勿体ない。
その代わりに、美しい端正なお顔から広がる清潔なオーラがあり、ひたむきな踊りと相まって、それはそれで若き天才ニジンスキーのひとつの魅力を感じさせてくれました。
そして、この印象は最後まで付きまといます。
【STORY】
終演後のパーティで、興行主ディアギレフは上流社会のパトロンたちにヴァーツラフを引き合わせますが・・・。
社交嫌いの彼は耐えられず、席を立ってしまいます。
その後ディアギレフの部屋で明かされる二人の関係。
ニジンスキーの才能と美しさに男色家であるディアギレフが惹かれ、現在に至る強固なパートナーを持つに至った経緯と現状を比較的直截な表現で説明してしまいますが、とてもきれいな並びなので、違和感はなかったですね。
バレエ団の稽古風景。音楽はジゼル。
ダンサーとしてはソロは天才的だけれどもパ・ド・ドゥは踊れない、とプリマ・バレリーナであるタマラ・カルサヴィナ(五峰亜季)にダメ出しをされるヴァーツラフ。
皆の前で言い込められてその場から走り去ります。
追いかけてきたのは、大女優の母(涼花リサ)を持つハンガリーの財閥の令嬢タマラ・ド・プルツキ―(愛加あゆ)。
彼女はヴァーツラフのファンが高じてバレエ団に入団。ある意味究極の追っかけ、といえますが、育ちを感じさせる芸術への理解、孤独で複雑な過去を持つヴァーツラフを包み込む彼女の明るさが、彼にとっても救いとなっていきます。
一方、ミハイル・フォーキン(大凪真生)の振付で踊ることに飽き足らなくなったヴァーツラフはセルゲイに直訴。
「自分の心のままに踊りたいんだ・・・」
振付をしたくなったのだな、と理解したディアギレフ。パリの目の肥えた観客に飽きられないように、常に新鮮な企画を捜している自分のニーズにも合う、ということでラヴェルの新曲に振りつけたフォーキンと、ドビュッシーの曲で挑むヴァーツラフを真っ向勝負させる商売上手。
このあたりの話の流れは面白く、フォーキンが選んだダンサー、アドルフ・ボルムをダンサーである大湖せしるがキャスティングされていたので、てっきり踊り比べを観られるのかと思いきや、アドルフのダンスは観られず・・というのがちょっと不満でしたが、その分、ほとんどフルで踊られた「牧神の午後」はオリジナルの雰囲気を上手く伝えつつ、宝塚的なショーアップされた作品として、とても良くできていたと思います。
眉を塗りつぶして目張りを入れ、金髪を立ててサリーちゃんのパパ(笑)のようにして、ドレープで牧神のシルエットを作った衣装を着た早霧せいなちゃんはヴィジュアルも良く、そのダンスは音楽にも内容にも合っていてとても良かったです。
最後、ニンフの残したショールを持って自○行為で締めるのはオリジナルの「牧神」通り、デフォですが、そのことをご存じない宝塚ファンの方には演出がやりすぎだと思われた方もいらっしゃるようで・・・^^;
このことがセンセーションを呼ぶのが大事なので、省くわけには行きませんし、振りとしては猥雑でもなく許容範囲かと。
むしろ、ニンフたちのアルカイックな振りが中途半端に思えたことの方がちょっぴり残念でした^^;
話題性充分のニジンスキー。彼は自身の信じる新しい芸術を、ロシア出身の作曲家イゴール・ストラヴィンスキー(蓮城まこと)と手を携えて作り上げていきます。
衝撃作「春の祭典」(この作品は今観てもモダンです)
従来のバレエの枠を取り去った意欲作は時代の先を行きすぎていて・・・。
興行的には難しいと打ち切りを判断。ディアギレフは芸術を理解しつつ、現実との折り合いをつけることのできるバランス感覚の持ち主。アーティストにもそのことをキチンと伝えます。
失意のヴァーツラフを慰めるロモラ。欲しい言葉、慰め、励まし。彼女なしではいられなくなるヴァーツラフ。
船旅が苦手なセルゲイが同行しない南米ツアーにロモラを同行させて、ブエノスアイレスで結婚します。
報道で初めてそれを知ったセルゲイは激怒。
ロシア・バレエ団を解雇されて自身のカンパニーを立ち上げたものの不慣れな経営、生まれた子供への責任感などに直面。あげくにハンガリーで皇太子暗殺事件が起きたのを受けて、ロシア国籍を理由に軟禁状態に置かれる羽目に。
袂を分かったセルゲイに手紙を書き、スペイン王家からの働き掛けで釈放。
再びディアギレフのバレエ団に所属したヴァーツラフの昔日の輝きはなく、その精神は日に日に蝕まれ・・・。
ロモラが単身ディアギレフを訪ね、真っ向から夫の不調の原因を尋ねますが、その答えとして、助けを求めたヴァーツラフからの手紙が提示され・・・。
真実は(史実的にも)闇の中。
そして、遂に狂気の世界に旅立つヴァーツラフ。
数年後・・・劇場に車椅子の夫とともにロモラが訪れます。
その舞台で踊るのは、ニジンスキー。冒頭と同じ、金の奴隷の踊りで・・・。
日本青年館で、雪組2番手 早霧せいなさん主演の
バウ・ミュージカル「ニジンスキー -奇跡の舞神-」を観て参りました。
ムラでのバウ公演を終えて、青年館も翌日が千秋楽というタイミングでの観劇でしたので、かなり作品としても練れてきたところでの観賞かと。
今回の観劇ポイントは3つ
① バレリュス好きゆえ
もともとバレエでも、バレリュス関連の演目は大好き。
また、リアルにこの時期のバレリュスは衣装・装置・音楽・振付と、後世にその名を残す大物が偶然にもつながって公演に尽力したという、奇跡のようなコラボレーション。
どの人物をメインに持ってきても、個性豊かな周りの才能をどう舞台で表現するのか・・・という興味から。
② 小林十市氏
振付に元・ベジャールバレエ団スターダンサー、現・俳優兼ダンサーの小林十市さんが、振付ご担当。
今でもご自身のためのレッスンは継続されていますし、ベジャール氏のレパートリーを東京バレエ団が公演にかけるときには必ず指導に入られるので、バレエ・マスターとしては現役といって良い方ですが、宝塚に振りつけるのは初めてということで、どうバレエダンサーではないショーダンサーにあの振りを落とし込むのか・・・というところにワクワク。
③ チギキタ
雪のロミジュリでマーキューシオをキレキレに演じていたちぎたさん(早霧せいな)。
演技力と顔立ちの美しさは確認済なので、この主演作で伝説のダンサーにして狂気の天才をどう演じるのか、ということと、稀代の興行師、セルゲイ・ディアギレフを雪で配役するとしたらキタさん(緒月遠麻)しかいないな、と思ったら配役されていたので、これは観なくては!と。
で、、またもや、いつもの星組ファンの観劇仲間とは離れて単独行動(笑)
青年館の6列目は近い!そしてサブセンター通路側ゆえ視界良好。オペラ持参で行きましたがメイク確認以外不要でした。
オープニングはヴァーツラフ・ニジンスキー演じる「シェへラザード」の金の奴隷のソロ。(上の画像がその場面です)
・・・踊りってスゴイ。
その人の全てが出ますね。いきなり。
小林氏の振り付けは実に巧みで、エキゾチックなフォルムをキメのポーズに盛り込みつつ、バレエ的なテクニックをさほど要さず、早霧さんのお得意な跳躍を活かしたダイナミズムのある振りで、ちぎたさんも実に渾身の踊りで応えていました。
小林氏のブログによると、東京公演前にチェックをされたそうなのですが、バウ公演の前と後では「早霧さんの踊りが一回り大きくなっていて嬉しかった」とか^^
・・・ただ、あまたの男性スターダンサーによる、リアル「金の奴隷」を観てきたバレエオタクからすると・・・。
惜しまれるのが、金の奴隷の圧倒的な色気が欠落しているところ。
「シェへラザード」って王様のお留守に寵姫がたくましい奴隷を解放して禁断の悦楽に浸る・・・という大変 色っぽい物語なので、この、姫のお相手である金の奴隷のソロとは、牢から出された解放感と姫を籠絡するフェロモンを爆発させる、「俺を観ろ」的なナルシズムと一体化したオーラがまぶしい・・・そんな場面なのですよね。
それを冒頭に、というところが、ですね。
解放感、というか、踊りの真摯さとキレの良さはGOOD。
ただ、ここでこのポーズの指先に這わせる視線を更に忘我の境地に持っていくことで醸し出されるものもあろうものだのに・・・と思われるところできちっと寸止めるチギちゃんって・・・。
あぁ勿体ない。
その代わりに、美しい端正なお顔から広がる清潔なオーラがあり、ひたむきな踊りと相まって、それはそれで若き天才ニジンスキーのひとつの魅力を感じさせてくれました。
そして、この印象は最後まで付きまといます。
【STORY】
終演後のパーティで、興行主ディアギレフは上流社会のパトロンたちにヴァーツラフを引き合わせますが・・・。
社交嫌いの彼は耐えられず、席を立ってしまいます。
その後ディアギレフの部屋で明かされる二人の関係。
ニジンスキーの才能と美しさに男色家であるディアギレフが惹かれ、現在に至る強固なパートナーを持つに至った経緯と現状を比較的直截な表現で説明してしまいますが、とてもきれいな並びなので、違和感はなかったですね。
バレエ団の稽古風景。音楽はジゼル。
ダンサーとしてはソロは天才的だけれどもパ・ド・ドゥは踊れない、とプリマ・バレリーナであるタマラ・カルサヴィナ(五峰亜季)にダメ出しをされるヴァーツラフ。
皆の前で言い込められてその場から走り去ります。
追いかけてきたのは、大女優の母(涼花リサ)を持つハンガリーの財閥の令嬢タマラ・ド・プルツキ―(愛加あゆ)。
彼女はヴァーツラフのファンが高じてバレエ団に入団。ある意味究極の追っかけ、といえますが、育ちを感じさせる芸術への理解、孤独で複雑な過去を持つヴァーツラフを包み込む彼女の明るさが、彼にとっても救いとなっていきます。
一方、ミハイル・フォーキン(大凪真生)の振付で踊ることに飽き足らなくなったヴァーツラフはセルゲイに直訴。
「自分の心のままに踊りたいんだ・・・」
振付をしたくなったのだな、と理解したディアギレフ。パリの目の肥えた観客に飽きられないように、常に新鮮な企画を捜している自分のニーズにも合う、ということでラヴェルの新曲に振りつけたフォーキンと、ドビュッシーの曲で挑むヴァーツラフを真っ向勝負させる商売上手。
このあたりの話の流れは面白く、フォーキンが選んだダンサー、アドルフ・ボルムをダンサーである大湖せしるがキャスティングされていたので、てっきり踊り比べを観られるのかと思いきや、アドルフのダンスは観られず・・というのがちょっと不満でしたが、その分、ほとんどフルで踊られた「牧神の午後」はオリジナルの雰囲気を上手く伝えつつ、宝塚的なショーアップされた作品として、とても良くできていたと思います。
眉を塗りつぶして目張りを入れ、金髪を立ててサリーちゃんのパパ(笑)のようにして、ドレープで牧神のシルエットを作った衣装を着た早霧せいなちゃんはヴィジュアルも良く、そのダンスは音楽にも内容にも合っていてとても良かったです。
最後、ニンフの残したショールを持って自○行為で締めるのはオリジナルの「牧神」通り、デフォですが、そのことをご存じない宝塚ファンの方には演出がやりすぎだと思われた方もいらっしゃるようで・・・^^;
このことがセンセーションを呼ぶのが大事なので、省くわけには行きませんし、振りとしては猥雑でもなく許容範囲かと。
むしろ、ニンフたちのアルカイックな振りが中途半端に思えたことの方がちょっぴり残念でした^^;
話題性充分のニジンスキー。彼は自身の信じる新しい芸術を、ロシア出身の作曲家イゴール・ストラヴィンスキー(蓮城まこと)と手を携えて作り上げていきます。
衝撃作「春の祭典」(この作品は今観てもモダンです)
従来のバレエの枠を取り去った意欲作は時代の先を行きすぎていて・・・。
興行的には難しいと打ち切りを判断。ディアギレフは芸術を理解しつつ、現実との折り合いをつけることのできるバランス感覚の持ち主。アーティストにもそのことをキチンと伝えます。
失意のヴァーツラフを慰めるロモラ。欲しい言葉、慰め、励まし。彼女なしではいられなくなるヴァーツラフ。
船旅が苦手なセルゲイが同行しない南米ツアーにロモラを同行させて、ブエノスアイレスで結婚します。
報道で初めてそれを知ったセルゲイは激怒。
ロシア・バレエ団を解雇されて自身のカンパニーを立ち上げたものの不慣れな経営、生まれた子供への責任感などに直面。あげくにハンガリーで皇太子暗殺事件が起きたのを受けて、ロシア国籍を理由に軟禁状態に置かれる羽目に。
袂を分かったセルゲイに手紙を書き、スペイン王家からの働き掛けで釈放。
再びディアギレフのバレエ団に所属したヴァーツラフの昔日の輝きはなく、その精神は日に日に蝕まれ・・・。
ロモラが単身ディアギレフを訪ね、真っ向から夫の不調の原因を尋ねますが、その答えとして、助けを求めたヴァーツラフからの手紙が提示され・・・。
真実は(史実的にも)闇の中。
そして、遂に狂気の世界に旅立つヴァーツラフ。
数年後・・・劇場に車椅子の夫とともにロモラが訪れます。
その舞台で踊るのは、ニジンスキー。冒頭と同じ、金の奴隷の踊りで・・・。
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