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東京バレエ団・マラーホフ「ニジンスキー・ガラ」2012

2012-01-15 05:07:59 | BALLET
今年のバレエ初めは東京バレエ団の「ニジンスキー・ガラ」

ベルリン国立バレエ団の芸術監督としても活躍中のマラーホフと、
ウィーン国立バレエ団の芸監時代に見出してともに移籍したディヌ・タマズラカルがゲスト出演。

20世紀の偉大なダンサーであり、
振付でも非凡な才能を発揮したヴァツラフ・ニジンスキーの伝説的な演目を4つ。
こういう演目をレパートリーとして持っているというのは東京バレエ団にとって財産ですね。

ニジンスキーガラと言えば、思わず西宮の日本最終公演まで遠征してしまった2007年9月、
ローラン・イレールの伝説的舞台が脳裏をよぎりますが、そもそも、イレールが東バの「ぺトリューシュカ」に出演したのは、マラーホフが足を痛めたかなにかで出られなくなった代役だったという・・・。



あれから4年半。
その後、マラーホフは来日し、自分のガラの中で、牧神など数演目、このときの約束?を果たしてくれてはいるのですが。
様々な思いを胸に東京文化会館に赴きました。
今回は、9列目どセンター(笑)で、舞台構成をきれいに観たい演目に理想的な席。気合が入ります^^。

<ニジンスキー・ガラ>
◆ 主な配役◆

「レ・シルフィード」
プレリュード:吉岡美佳
詩人:ウラジーミル・マラーホフ
ワルツ:佐伯知香
マズルカ:奈良春夏
コリフェ:矢島まい-川島麻実子


「薔薇の精」
薔薇:ディヌ・タマズラカル
少女:高村順子


「牧神の午後」
牧神:後藤晴雄
ニンフ:井脇幸江


「ペトルーシュカ」
ペトルーシュカ:ウラジーミル・マラーホフ
バレリーナ:小出領子
ムーア人:森川茉央
シャルラタン:柄本弾


指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ピアノ:尾崎有飛(「ペトルーシュカ」)


◆上演時間◆

「レ・シルフィード」 19:00 - 19:40
-休憩 20分-
「薔薇の精」「牧神の午後」 20:00 - 20:25
-休憩 15分-
「ペトルーシュカ」 20:40 - 21:20


■「レ・シルフィード」



振付: ミハイル・フォーキン
音楽: フレデリック・ショパン

白いマラーホフを堪能!
彼は早くから金髪の天才美少年ダンサーとして認識されていた割に、
卓越した身体能力ゆえにコンテンポラリー作品を踊ることが多く、古典や物語バレエでは、
芝居心の豊かさゆえ、コミカルな脇役(ABTの「海賊」では奴隷商人ランケデム)に回ったりで、
意外と王子様的な正統派2枚目役を観るのは貴重な機会かも。
マラーホフ自身、いつも素晴らしい演技とはいえ、全盛期のような流れるような圧倒的身体表現で魅せる時代は過ぎており、ひとつひとつのパを慎重に噛みしめるような丁寧さが、一層その感を強めていたことも否めませんが・・・。

白いロマンティックチュチュがお似合いの東バ美女群舞もそれぞれに良かったのですが、
ソリストがそれぞれに輝いていました。

プレリュードの吉岡美佳さんは、たおやかで繊細、甘く切なく気品とリリシズムに溢れた演技、特にやりすぎずに情感を伝えるアームスのタメが絶妙で・・・マラーホフのお気に入りダンサーだけあって、本当に良くお似合い。



マラーホフって、テクニックにも相手役のサポートにも優れているのですが、それ故に、お互いBESTパートナーと自認するヴィシニョ―ワのような強いバレリーナと組むと、女性の強さを惹きたてる側に回って忠実なる僕になってしまうきらいがあり・・・。
彼自身の客席に対するアピールが見事に消失してしまうのを惜しく思ったこと多々ありなのですが、
今回の吉岡さんとは、彼のロマンティシズム、繊細な感覚による丁寧な演技が、しっかりと見えてきて本当にお互いの美質を引き立て合う相性だなぁと、うっとりしてしまいました

ワルツの佐伯さん、手脚が長く、きびきびとした踊りとキュートな風貌でもともと好きなバレリーナさんの1人ですが、この日もなにか白く発光しているようなホワっとした華やかなオーラを感じました。
子供のためのバレエという企画ですが、近々(3月3日)「眠れる森の美女」で主役を踊る予定という旬の勢いでしょうか^^

マズルカの奈良さんもイキイキとしていて良かったです。
ベジャール作品などで役がつくようになった当初は、ヘアスタイルの作り方など、現代的なセンスの良さと男前なシャープさが魅力だと思ったのですが、その後、ネオクラシックやクラシックの演目では、そのシャープさが物足りなさにつながって、今一つ感が長く続き・・・。
昨年のギエム公演の「田園の出来事」のカーチャ役で、思いがけない役柄への理解の深さと軽快な演技に新境地をみた彼女。今回も良い感じで生命力の溢れるイキイキとした演技。今後もちょっと楽しみです。


■「薔薇の精」

振付: ミハイル・フォーキン
音楽: カール・マリア・フォン・ウェーバー(編曲: L.H.ベルリオーズ)



デビュタントの少女が、初めての舞踏会の余韻に浸りながらうとうととしていると・・・
薔薇の精が現れて・・・。
上手の窓から大きな跳躍で登場、下手の窓から同じく空に消えていく、という構成。
見事に消える薔薇の精に拍手を送りたくなる気持ちはわかりますが、音楽が続いて、少女が目覚め、
夢の余韻に浸る・・・というところまでで幕、ですので、出来れば控えていただきたいところ^^;

薔薇の精のディヌ・タマズラカルは、素晴らしい筋肉質の肉体美を濃い薔薇色の衣装に包み、しなやかな跳躍、ダイナミックな回転など、申し分のないテクニックを披露。
特にジャンプの着地の猫のようなしなやかさは(全く音がしません)特筆に値しますね。
どちらかというと甘いマスクで、とても男性的な体型ですが、中性的な妖しい色気とは無縁の、健康的で上品な(笑)薔薇の精でした。
これは演者それぞれですので、彼の場合は、それが個性ということで^^
高村さんの少女は、以前、ピッタリのキャスティングだわ!と楽しみにしていたら、前髪を降ろした上に白いナイトキャップのようなものをつけていたのがなんとも子供じみていてがっかりしたことがあったので、ちょっと心配していましたが、今回は控え目なヘッドドレスにセンターパーツのヘアスタイルで、彼女本来の愛らしさが素直に出ていてとても良かったと思います。



■「牧神の午後」

振付: ワツラフ・ニジンスキー
音楽: クロード・ドビュッシー
装置・衣装: レオン・バクスト



My BEST「牧神の午後」は2007年のシャルル・ジュド様。
ニンフの井脇幸江さんとの緊迫感溢れる対峙と、存在の神秘的なまでの高雅さは、いたずらな牧神レベルを超え、アポロかゼウスかという荘厳な趣で、ひれふしたくなるような圧倒的な存在感でしたが、今回の牧神、後藤晴雄さんはもっとカジュアルで、ちょっといたずら心もありそうな感じ。
どうやってつけているのか尻尾があるのですが、ニンフの残したスカーフと戯れようとしている牧神のところに戻ってきたお付きのニンフたちにとがめられるところなどで、飛び退く牧神のこの尻尾、バネがついているように揺れてちょっとコミカル^^;。
御正月のNHK「ニューイヤーオペラコンサート」で、上野水香さんとともに出演して、この作品が通しで放映されましたが、後藤さんの持つ、日本人離れした厚みのある立体的な肉体が、このアルカイックな絵画的作品の輪郭にきちんとおさまり、バレエ団代表としてTV出演するだけのハマり役であると再認識しました。

そしてニンフの井脇さん。
変わらぬ美貌の大ベテランですが、流石の存在感。
見つめ合うようでいてすれ違うニンフと 牧神の視線。横向きに腕を差し伸べる牧神と緩やかに上体をそらせて逃れるニンフ。
息をのむ緊迫感の中に、井脇さんならではの洗練された色香もほのかに漂い、ドビュッシーの音楽とともに、時空を超えた古代の田園に暫し心を遊ばせたひとときでした。

オケの出だしの菅がはずれていなければ完璧だったかと^^;

お付きのニンフたち3人X2チームの登場は、組んだ腕の鎖のようなフォルムも完璧で、絵画的な美しさを堪能しました。



■「ペトルーシュカ」

振付: ミハイル・フォーキン
音楽: イ―ゴリ・ストラヴィンスキー
台本: アレクサンドル・ブノワ、イ―ゴリ・ストラヴィンスキー
装置・衣装: アレクサンドル・ブノワ



この作品は音楽と言い、構成と言い、舞台美術と言い、本当に大好きなのですが
つらいのは、どうしてもイレールの洗練の極みとも言えるあの神がかり的な素晴らしさがデフォルトとなっているので、主役に完璧に満足することができないというところ。

そうです。
マラーホフでさえ・・・。
とはいっても、ニジンスキーの残された写真などから想像するに、案外、マラーホフの役作りの方がオリジナルに忠実で、イレールのほうが、実は、パリオペ仕様に、この哀れなる人形を磨き上げてしまったのかもしれませんが・・・。

人形振りも見事で、とりわけ、グダっと中におが屑が詰まっているようなちょっと重い感じが良く表現されていて、彼の悲しみや憤り、がしっかりと表出されていました。
眉と口元の片方を上げて片方を下げる描き方も、「ニジンスキーの舞台写真通り。
対するイレールは、白塗りはしたものの、特に表情を隠すようなメイクはせず、踊りも軽やかな中にマリオネット的な自分の体重がないようような浮遊感、と美しさが透徹した悲しみに集約されていたなと。

他者に今回、配役表には人形たちとシャルラタンしか出ていませんが、
お祭りの祝日、広場に集うロシアの民衆の群像劇が次第に暗くなるどんよりとした曇り空とともにイキイキと描き出されていて、東バのソリスト、プリンシパルたちがとても良い仕事を見せてくれています。

わかったところでは、連続フェッテなどの軽技を見せる少女の1人が西村さん。
前髪を帽子で押さえた髪形が新鮮でとてもキュート。
乳母の長は多分、前回と同じで、高木さん。4年前はおおらかな優雅さでどこの姫かと思いましたが、今はしっかりとお仕事もしてそうな^^;雰囲気も。
乳母たちが華やかに列を作って登場するシーン、高木さんの後に続くナンバー2はここ数年でめっきり女らしくなられた乾さん、しんがりは美少女吉川留衣ちゃん。
吉川さんは、鎖につながれたクマに皆が怯えるところでクマに絡んでいましたね^^
金持ち男と陽気に酔っぱらうボヘミアン?の女の1人は田中さん。
豪快で華やか。こういう役もお似合い。
ブルーのルパシカのコサックダンスチームのリーダー格、ピンクのルパシカの2人は、宮本さんと松下さん?
踊り出す冒頭での2人のジャンプの高さに目を見張りました。
突如として広場を駆け抜ける黒づくめの悪魔はシルエットからして氷室さんかな、と。
小柄で疾風の如くスピーディで小気味良い踊りは彼ならでは、ですね。

そして2人の人形たち。
バレリーナ役の小出さんは・・・リアルお人形ですね。
小柄で丸顔、ほっぺにマルを描いたようなお人形メイクとパ二エを仕込んだ膝丈スカ―トが可愛らしく、人形振りがお見事。
ムーア人は黒塗りで、表情が見えないもの・・と思いがちですが、どうしてなかなか、動きで個性が出るものなのですね。以前観たときの後藤さん、平野さんは、オレンジ?と戯れるところなど、少年ぽい 遊び心が垣間見られましたが、初役の森川さんはまだ振りをこなす・・という段階なのかも。
シャルラタンの柄本弾さんは、甘いマスクを御爺さんメイクに封印しての健闘でしが、高岸さんの怪しい大物っぷりに及ばず。
若手は今後に期待です^^

4作品、丁度100年前パリの話題をさらったバレエ・リュスの名作の数々を、現代の東京で堪能できるとは、芸術の継承とは不思議なものですね。
天才ニジンスキーの世界に浸りきることのできる、素敵なGALAでした





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