2011年12月12日(月)18:30~
ル・テアトル銀座にて
「8人の女たち」を観ました。
友人の誘い・・で、10年前に観たフランソワ・オゾンの映画が面白かったのと、
今回の舞台化で配役された女優陣の顔ぶれに興味があったので、行くことに。
結果、映画版よりも、よりスリリングで、ミステリーものらしいタッチの面白い舞台という印象。
とても楽しめました。
劇場のセンターに一段高くなった床の上にしつらえられたリヴィングルームのセット。
その上手側に青いペンキで塗られたような2階に続く階段とドア。
セットの上手と下手には向かい合うように数脚の簡素な椅子が置かれている。
舞台には背景がなく、手前も奥も、同様に向かい合うように客席が階段状に作られている。
という、ちょっと変わった設定の舞台。
入りと出はどうするのだろう、役者はどちらを正面に演技を?などとの疑問が浮かびます。
実際に物語が動き始めると、部屋のあちこちで自由に過ごしている役者が自然にふるまっている様を
色々な場所から観客は眺めているような状態になり、それはそれで、違和感なし。
只、セリフを言う役者を正面から観ることになるのか、その背中を観ながら声を聞くことになるのか、
というのは座席の位置次第。
こういうことも滅多にない経験ゆえに面白い。
入りと出は、ちょっと様子をみてくるわ、などと、部屋を示す壇上から下りた役者は椅子に無表情に腰掛ける。
それが、舞台の上に存在していない、という記号となって、出入りが煩雑にならない。
これもまた演出上のアイデアとして上手く機能していました。
1950年代、という時代設定を意識して、パステルカラーのPOPな色遣いが前面に出た演出が特徴的だった映画版は、監督フランソワ・オゾンの、ジャック・ドゥミに代表されるフレンチ・ミュージカル映画黄金期へのオマージュであったかと。
今回のG2の演出では、各々の役どころにあった衣装、簡素な装置で、舞台劇としての役者同志の掛け合い・間を主とした正統派の密室劇としての再構成。
演技を存分に味わえて、効果的に時折挿入されるフリージャズっぽいスタイリッシュな音楽とともに、好印象でした。
物語は、1950年代のフランスの人里離れた屋敷が舞台。
クリスマスに久しぶりに集う家族と使用人、その一家の主が殺されているのを発見され、
雪に閉ざされた空間で、女たちは互いに疑い、思いやり、自分の立場を主張し、暴露され・・・
絡み合った糸と隠された過去と事実。
豪華女優陣の丁々発止の演技バトルが見もの。
映画では、カトリーヌ・ドヌ―ヴとファニー・アルダンという大輪の花のような2大女優の対決が
印象に残っているのですが、さて。
登場人物についての所感を書き出してみました^^
( )内は、映画でのCASTです。
■マミー : 加賀まりこ( ダニエル・ダリュー)
屋敷の女主人の母。リューマチで足が悪く車椅子に乗っている。
亡き夫の遺産である国債を枕に隠している守銭奴ですが、そう見えないのは加賀まりこだから。
(ダニエル・ダリューも懐の大きな女性で、ここは日仏共通)
大地真央と親子設定が自然。
この親にしてこの娘ありの華やかさ。ユーモアの味付けも上手い。
■ ギャビー : 大地真央( カトリーヌ・ドヌーヴ)
マミーの長女で、殺害されたマルセルの妻。シュゾンとカトリーヌの母。
ゴージャスなフランスマダム。夫の会社の会計士と浮気をしている。
美しくて、大芝居も役にあっていて素敵。このメンバーの中にあって更に堂々たる主役。
■シュゾン : マイコ (ヴィルジニー・ルドワイヤン)
ギャビーの長女。イギリス留学からクリスマス休暇で里帰りしたところ。大学生。
巻紙とAラインの紺のワンピースとボレロジャケットのアンサンブルが清楚で可愛らしい。
前半場を仕切るが、後半自らの秘密を明かしてからは形勢が不利に?
■ ピエレット : 浅野温子( ファニー・アルダン)
マルセルの妹。ストリップダンサー。
うーん、実は、映画のファニー・アルダンが実に良い女ぶりだったのでとても楽しみにしていたのですが・・・。
浅野さん、わざとらしい細かいソバージュヘアに赤いボンテージ風ワンピがあまりに似合っておらず・・・。
ナチュラルな眉もこの衣装・ヘアには合っていないような・・・。
トレンディドラマ女優の昔日の栄光を知っているだけにちょっと残念。
演技や態度は役にあってました。残念だったのはVISUAL.
■ シャネル: 荻野目慶子 (フィルミーヌ・リシャール)
古くから一家に仕えるメイド。映画では美女の黒人女性設定だったが、今回は小柄な荻野目慶子が
ちんまりと地味で平凡な女の役作りで。
彼女も、魔性の女として一世を風靡したイメージがあるので、ひととおり登場人物が出そろったところで、
あれ、荻野目慶子はどこに?と思い、消去法でシャネル役とわかったときには正直驚きました。
いやぁ・・・役者ですねぇ。
お肌はとてもきれいで(一列目での観劇でしたので、間近でガン見)、後半メイドの御仕着せを脱いだところは、
荻野目慶子、でした^^
■ ルイーズ ; 牧瀬里穂 (エマニュエル・ベアール)
新入りメイド。ポーカーフェイスのファムファタールタイプ。
牧瀬里穂はやっぱりキレイ。
黒白でスカートにパニエを入れた所謂コスプレ調のメイド服で、出から華やか。
最初はアンニュイに、だんだん堂々としてくる辺りも面白く、戸田恵子へのお色気指南場面は
2人の対照的な様子が可笑し味を引き出して。
■オーギュスティーヌ: 戸田恵子 (イザベル・ユペール)
マミーの次女で、ギャビーの妹。心臓が悪い。ひねくれ者で、色気がないが密かにロマンスに憧れている。
うるさくて嫌われ者だけど、かまってほしいトラブルメイカ―。
感じ悪いのにとにかく笑える演技巧者の面目役如。
■カトリーヌ: 南沢奈央 (リュディヴィーヌ・サニエ)
シュゾンの妹。推理小説が好きな17歳。
大詰めの長台詞の場面で一度噛んだのが惜しい。
とはいえ、これだけの大御所との共演でそれなりに伸びやかに若者ポジを演じるのは大変だったことでしょう。
大人扱いされない大人になりたい年頃の役。
映画の結末を上手い具合に忘れていて、きちんと引き込まれ、楽しめた2時間10分でした。
(休憩はプラス20分)
後半、展開を思い出して、あぁ、この人が犯人、というオチだったなぁ・・・・ガンバレ!
と密かに思いはしましたが^^;
この顔ぶれゆえか、ほぼ満員の客席に、演劇関係者、ミュージシャン、女優さんなどお見かけしました。
25日が千秋楽。
当日券もあるそうですので、ご興味のある方は是非
おススメです。
ル・テアトル銀座にて
「8人の女たち」を観ました。
友人の誘い・・で、10年前に観たフランソワ・オゾンの映画が面白かったのと、
今回の舞台化で配役された女優陣の顔ぶれに興味があったので、行くことに。
結果、映画版よりも、よりスリリングで、ミステリーものらしいタッチの面白い舞台という印象。
とても楽しめました。
劇場のセンターに一段高くなった床の上にしつらえられたリヴィングルームのセット。
その上手側に青いペンキで塗られたような2階に続く階段とドア。
セットの上手と下手には向かい合うように数脚の簡素な椅子が置かれている。
舞台には背景がなく、手前も奥も、同様に向かい合うように客席が階段状に作られている。
という、ちょっと変わった設定の舞台。
入りと出はどうするのだろう、役者はどちらを正面に演技を?などとの疑問が浮かびます。
実際に物語が動き始めると、部屋のあちこちで自由に過ごしている役者が自然にふるまっている様を
色々な場所から観客は眺めているような状態になり、それはそれで、違和感なし。
只、セリフを言う役者を正面から観ることになるのか、その背中を観ながら声を聞くことになるのか、
というのは座席の位置次第。
こういうことも滅多にない経験ゆえに面白い。
入りと出は、ちょっと様子をみてくるわ、などと、部屋を示す壇上から下りた役者は椅子に無表情に腰掛ける。
それが、舞台の上に存在していない、という記号となって、出入りが煩雑にならない。
これもまた演出上のアイデアとして上手く機能していました。
1950年代、という時代設定を意識して、パステルカラーのPOPな色遣いが前面に出た演出が特徴的だった映画版は、監督フランソワ・オゾンの、ジャック・ドゥミに代表されるフレンチ・ミュージカル映画黄金期へのオマージュであったかと。
今回のG2の演出では、各々の役どころにあった衣装、簡素な装置で、舞台劇としての役者同志の掛け合い・間を主とした正統派の密室劇としての再構成。
演技を存分に味わえて、効果的に時折挿入されるフリージャズっぽいスタイリッシュな音楽とともに、好印象でした。
物語は、1950年代のフランスの人里離れた屋敷が舞台。
クリスマスに久しぶりに集う家族と使用人、その一家の主が殺されているのを発見され、
雪に閉ざされた空間で、女たちは互いに疑い、思いやり、自分の立場を主張し、暴露され・・・
絡み合った糸と隠された過去と事実。
豪華女優陣の丁々発止の演技バトルが見もの。
映画では、カトリーヌ・ドヌ―ヴとファニー・アルダンという大輪の花のような2大女優の対決が
印象に残っているのですが、さて。
登場人物についての所感を書き出してみました^^
( )内は、映画でのCASTです。
■マミー : 加賀まりこ( ダニエル・ダリュー)
屋敷の女主人の母。リューマチで足が悪く車椅子に乗っている。
亡き夫の遺産である国債を枕に隠している守銭奴ですが、そう見えないのは加賀まりこだから。
(ダニエル・ダリューも懐の大きな女性で、ここは日仏共通)
大地真央と親子設定が自然。
この親にしてこの娘ありの華やかさ。ユーモアの味付けも上手い。
■ ギャビー : 大地真央( カトリーヌ・ドヌーヴ)
マミーの長女で、殺害されたマルセルの妻。シュゾンとカトリーヌの母。
ゴージャスなフランスマダム。夫の会社の会計士と浮気をしている。
美しくて、大芝居も役にあっていて素敵。このメンバーの中にあって更に堂々たる主役。
■シュゾン : マイコ (ヴィルジニー・ルドワイヤン)
ギャビーの長女。イギリス留学からクリスマス休暇で里帰りしたところ。大学生。
巻紙とAラインの紺のワンピースとボレロジャケットのアンサンブルが清楚で可愛らしい。
前半場を仕切るが、後半自らの秘密を明かしてからは形勢が不利に?
■ ピエレット : 浅野温子( ファニー・アルダン)
マルセルの妹。ストリップダンサー。
うーん、実は、映画のファニー・アルダンが実に良い女ぶりだったのでとても楽しみにしていたのですが・・・。
浅野さん、わざとらしい細かいソバージュヘアに赤いボンテージ風ワンピがあまりに似合っておらず・・・。
ナチュラルな眉もこの衣装・ヘアには合っていないような・・・。
トレンディドラマ女優の昔日の栄光を知っているだけにちょっと残念。
演技や態度は役にあってました。残念だったのはVISUAL.
■ シャネル: 荻野目慶子 (フィルミーヌ・リシャール)
古くから一家に仕えるメイド。映画では美女の黒人女性設定だったが、今回は小柄な荻野目慶子が
ちんまりと地味で平凡な女の役作りで。
彼女も、魔性の女として一世を風靡したイメージがあるので、ひととおり登場人物が出そろったところで、
あれ、荻野目慶子はどこに?と思い、消去法でシャネル役とわかったときには正直驚きました。
いやぁ・・・役者ですねぇ。
お肌はとてもきれいで(一列目での観劇でしたので、間近でガン見)、後半メイドの御仕着せを脱いだところは、
荻野目慶子、でした^^
■ ルイーズ ; 牧瀬里穂 (エマニュエル・ベアール)
新入りメイド。ポーカーフェイスのファムファタールタイプ。
牧瀬里穂はやっぱりキレイ。
黒白でスカートにパニエを入れた所謂コスプレ調のメイド服で、出から華やか。
最初はアンニュイに、だんだん堂々としてくる辺りも面白く、戸田恵子へのお色気指南場面は
2人の対照的な様子が可笑し味を引き出して。
■オーギュスティーヌ: 戸田恵子 (イザベル・ユペール)
マミーの次女で、ギャビーの妹。心臓が悪い。ひねくれ者で、色気がないが密かにロマンスに憧れている。
うるさくて嫌われ者だけど、かまってほしいトラブルメイカ―。
感じ悪いのにとにかく笑える演技巧者の面目役如。
■カトリーヌ: 南沢奈央 (リュディヴィーヌ・サニエ)
シュゾンの妹。推理小説が好きな17歳。
大詰めの長台詞の場面で一度噛んだのが惜しい。
とはいえ、これだけの大御所との共演でそれなりに伸びやかに若者ポジを演じるのは大変だったことでしょう。
大人扱いされない大人になりたい年頃の役。
映画の結末を上手い具合に忘れていて、きちんと引き込まれ、楽しめた2時間10分でした。
(休憩はプラス20分)
後半、展開を思い出して、あぁ、この人が犯人、というオチだったなぁ・・・・ガンバレ!
と密かに思いはしましたが^^;
この顔ぶれゆえか、ほぼ満員の客席に、演劇関係者、ミュージシャン、女優さんなどお見かけしました。
25日が千秋楽。
当日券もあるそうですので、ご興味のある方は是非
おススメです。
すご~く観たくなってしまいました。
でも寒い中、当日券に並ぶ元気がないかな・・(^^;
WOWOWあたりでいつか放送されるかしら・・?
でもこういう演出はその場で味わってこそ、ですよね~。
浅野温子さんはデビュー当時(かなり前ですよね^^;)わりと
好きな女優さんでしたが、いつの頃かヘアやメイク、演技にも
違和感を感じることが多くてxxx
チラシの写真だと加賀まりこさんはちょっと分り難いですね。
駅でポスターを見かけて、どなたかな?と思ってました。
G2さんの演出は、2本観た事がありますが、どちらも観劇後の
余韻が心地よく好きな作品でした。
ミュージカル「THE LIGHT IN THE PIAZZA」と
「W~ダブル」という芝居です。
テアトル銀座も色々な舞台づくりが可能なのですね。
蜷川さんの「ひばり(松たか子主演)」や野田さんの「赤鬼」も
舞台と客席の仕切りが曖昧な感じで、自分も芝居の中に
入り込むような錯覚があり、面白かったです。
あぁ、宝塚以外の舞台・・・観たいかも^^
なるほど~
G2演出のお芝居、色々とご覧になっているのですね^^
照明、音楽など、とても上手に作品をさばいて、
フランスのヒッチコックと言われるロベール・トマの脚本の味わいが
うまく引き出されていたと思います{YES}
女優さんそれぞれに見せ場のある脚本なので、
気になる方がいらしたらおススメですよ~
ちなみに、上手いな、と思ったのは戸田恵子さんです。
とりあえず、劇場窓口にTELしてみるっていうのはいかが?{考えるひよこ}
いつもこっそり読んでいます(笑)。
WOWOWでこれを生中継していたものを録画してちょうど昨日見たところ、
今日こちらのブログを見てタイムリーだったのでコメントさせて頂きますね。
私も映画が好きだったのでこの舞台非常に興味があったのですが、
WOWOWが生中継してくれたのでよかったです。mariaさん最前列でしたか。うらやましい。
wowowでは休憩中に女優さんへのインタビューが放送されていたのですが、
ほとんどの女優さんが「みんな中身はおっさんなのでとか、おっさんの集まりだから」って
言っていたところが印象的でした。
やっぱり中身が男性的じゃないと女優というお仕事は勤まらないのかしらと思いました(笑)
センターステージは見たことがあるけれど、全くはけるわけじゃなく席に座っているっていうは
面白い演出でしたよね。座ってるだけの時の女優さんをちょっと観察したくなりますね{スマイル}
こちらでは初めまして~
そしてようこそおこしくださいました{ラブ}
「実は読んでます」、とよく言われます^^;
どうも、わたくしが圧倒的に語りすぎる傾向にあるので、
コメントの余地なし、と思ってしまわれる方が多いようなのデスが・・・
そんなことありませんので(え?^^)
お気軽にご感想など、どうぞお寄せくださいね{走るひよこ}
ちょうど、WOWOWで中継があったのですね!
演出も洒落ていて、この配役ですから、きっと映像でも楽しくご覧になれたことでしょう{ルンルン}
中身がおっさん^^;
このメンツで変に細かいとパワ-バランスが難しいんじゃないでしょうか?
若手でも舞台については妥協せず遠慮せず、自分の持ち味をドンと出す、くらいで
丁度良いのかも。
逆に先輩格も変にボス化せず、どーんとおおらかに構えていてくれると
空気が良くなるのかもしれませんね。
おっさんはおっさんでも「良いおっさん」風味なのだと理解しました^^;
あのはける代わりに脇で座っている、というのは新鮮でしたよね。
女優さんたちは皆、一様に座ると存在感を消す、という記号からか、
無表情になっていました{おばけ}
これは映画も面白かったですよね^^
ファニー・アルダンとドヌ―ヴがさすがの存在感でしたが、
べアールやヴィルジニ―・ルドワイヤンも役に合っていたと思います{ラブラブ}