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ミラノ・スカラ座来日公演2013「リゴレット」

2013-09-10 00:17:33 | OPERA
2013年、ミラノ、スカラ座OPERAのもうひとつの演目は「リゴレット」
スカラ座で最も多く上演されているオペラ、ということで、VERDI YEARにふさわしい、ヴェルディ中期の傑作、とのこと。

NHKホールか・・・と逡巡しつつも、タイトルロールがレオ・ヌッチ、マントヴァ侯爵がジョセフ・カレヤということで行くことに・・・したのですが、どうやら、カレヤがロンドンのプロムスとWブッキング??(という噂)原因不明のキャンセルで、CAST変更。イタリア人テノールとして注目されているフランチェスコ・デムーロはオペラファンの評価も押し並べて高く、悪くない変更かも。それにしても、スカラ座のステートメントでも、契約が成立していたにも関わらずの降版、という書き方で、どうもはっきりしませんね・・・。

2013年9月9日(月)18:30開演/NHKホール

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「リゴレット」全3幕

Giuseppe Verdi
RIGOLETTO
Melodramma in tre atti

指揮:グスターボ・ドゥダメル
Direttore:Gustavo Dudamel
合唱監督:ブルーノ・カゾーニ
Maestro del Coro:Bruno Casoni
演出:ジルベール・デフロ
Regia Gilbert Deflo
再演演出:ロレンツァ・カンティーニ
Ripresa:Lorenza Cantini
美術:エツィオ・フリジェリオ
Scene:Ezio Frigerio
衣裳:フランカ・スクァルチャピーノ
Costumi:Franca Squarciapino 

マントヴァ公爵:フランチェスコ・デムーロ
Il Duca di Mantova:Francesco Demuro
リゴレット:レオ・ヌッチ
Rigoletto:Leo Nucci
ジルダ:エレーナ・モシュク
Gilda:Elena Mosuc
スパラフチーレ:アレクサンドル・ツィムバリュク
Sparafucile:Alexander Tsymbalyuk
マッダレーナ:ケテワン・ケモクリーゼ
Maddalena:Ketevan Kemoklidze

ジョヴァンナ:ジョヴァンナ・ランツァ
Giovanna:Giovanna Lanza
モンテローネ:エルネスト・パナリエッロ
Monterone:Ernesto Panariello
マルッロ:セルジョ・ヴィターレ
Marullo:Sergio Vitale
ボルサ:ニコラ・パミーオ
Borsa:Nicola Pamio
チェプラーノ伯爵:アンドレア・マストローニ
Conte di Ceprano:Andrea Mastroni
チェプラーノ伯爵夫人:エヴィス・ムーラ
Contessa di Ceprano:Evis Mula
廷吏:ヴァレリー・トゥルマノフ
Un usciere:Valeri Turmanov
小姓:ロザンナ・サヴォイア
Paggio:Rosanna Savoia

ミラノ・スカラ座管弦楽団、ミラノ・スカラ座合唱団、ミラノ・スカラ座バレエ団
協力:東京バレエ学校
Orchestra, Coro e Corpo di Ballo del Teatro alla Scala
Cooperation:The Tokyo Ballet School

*当初発表いたしました出演者から、下線で示したキャストに変更が生じております。何卒ご了承ください。また、出演者、その他に急な変更が生じることがありますので、あらかじめご了承ください。


◆上演時間◆

第1幕 Act 1 (with pause) 18:30 - 19:35(舞台転換あり)
休憩 Inter  30 min
第2幕 Act 2 20:05 - 20:35
休憩 Inter  30 min
第3幕 Act 3  21:05 - 21:40

スカラ座公演「リゴレット」初日。
なんと言いますか・・・・素晴らしい舞台でした!!

もう、とにもかくにもまずヌッチ!
公式だけでも493回、非公式を含めると600回はリゴレットを歌っているという70すぎたバリトンの自在な演技と完全なる歌唱。
「エル・システマ」出身の1981年生まれの新進大注目指揮者のドゥダメルの活き活きとした指揮に導かれる演奏を楽しみつくしているようなヌッチは圧巻。世界の人間国宝とでも言うべき歌唱と存在感でした。
このドゥダメルの生まれた1981年がスカラ座の初来日で、その時にもヌッチは帯同していたとか。



印象的な歌は、ジルダ役のエレーナ・モシュクの艶やかなソプラノ。
フランカ・スクァルピチャ―ノの重厚な金糸銀糸の織物で作られたバロック調の宮廷服の人々の中にあってひとりシンプルなアイボリーホワイトのドレスに身を包み、ウェーブの入った長い黒髪で、VISUAL的にも可憐で純粋な乙女。

今日は初日ということもあってか、アリア毎に拍手が入る客席の熱狂ぶりでしたが、幕ごとにある幕前のカーテンコールで、2幕最後のアリアをBIS!の声に応えて、ヌッチが指揮者に合図して、2幕最後の父娘の2重唱を再び歌ってくれたのには感動!
なんだかんだで、3幕のスタートは25分の遅れで始まり・・・。

ドゥダメルもインタビューで言及しているのですが、「リゴレット」はストーリー自体はもう暗くて救いようがないプロット。それに美しすぎる音楽をつけたオペラで、このパラドックスが魅力である、というようなことだったかと思うのですが、今夜の舞台はまさに、悲劇のオペラをこの上なく幸せで爽快な気分で味わう、というパラドックス・ワールドだったかと。

幕ごとに個別に・・・

【第1幕】

好色なマントヴァ公爵は夜会に集まった婦人たちを〈あれかこれか〉と品定め。そこに現れたモンテローネ伯爵は、娘がマントヴァ公爵に弄ばれたと訴える。伯爵をからかったマントヴァ公爵に仕える道化リゴレットは、呪いの言葉を浴びせられる。
夜、家路につくリゴレットは殺し屋スパラフチーレから“商売”をもちかけられる。取り合わずにやり過ごしたリゴレットだが、1人になると「あいつは剣で、俺は舌で人を殺す」と〈おれたちは同じ穴のむじな〉と歌う。家でリゴレットを迎える娘ジルダ。〈娘よ、お前は私の命〉は父娘の深い情愛が歌われる二重唱。リゴレットが去ると、学生姿に変装したマントヴァ公爵がジルダの前に現れる。教会で会ったこの学生に恋心を抱いていたジルダは驚き、公爵の情熱的な告白で夢見ごこちに。2人の素晴らしい愛の二重唱〈あなたは私の心の太陽だ〉は、全曲中最大の聴きどころのひとつ。
1人になったジルダが、「なんて素敵な名前!」と歌う〈麗しい人の名は〉は、華麗なコロラトゥーラが心のときめきを表す名アリア。このアリアの終盤で、ジルダをリゴレットの情婦と勘違いした廷臣たちの合唱〈静かに、静かに〉とともに彼女はさらわれて行


夜会の場面、バレエが挿入され、とても華やか。
スパラフチ―レは美男バスで売り出し中(今シーズンバイエルンで「ボリス・ゴドゥノフ」のタイトルロールを歌っています)のツィムバリュク。
マントヴァ公爵のデムーロは久方ぶりのイタリア人本格派テノールとして、活躍中の若手。
今回、ツィムバリュクもデムーロもそして指揮者も含めて、30代半ば~40代の若手で固められ、全体に若々しく華やいだ雰囲気が漂います。演出・衣装などがこの上なく重厚な本格派で、タイトルロールがヌッチ御大という重厚感に清々しく活き活きとした風が通っているような、絶妙なバランスのCASTING。
ジルダと学生のふりをしたマントヴァ公爵の愛の2重唱は素晴らしくロマンティック。

【第2幕】
宮殿で、公爵はジルダが誘拐されたと知って〈あの女が誘拐された~ほおの涙が〉と歌う。心配と犯人への復讐、そしてジルダへのひたむきな愛が表されるこの歌は、公爵の真の愛を垣間見せる聴きどころ。しかし、ジルダが宮廷にいると知るや一転、好色な公爵に戻り、浮き浮きとジルダのもとへ。リゴレットは心配極まりないが、道化らしく装い〈ララ、ララ〉と鼻唄を歌いながらジルダの行方を案じる。やがて廷臣たちの素振りからジルダが公爵の手にかかったことを嗅ぎつけたリゴレットは「俺の娘だ!」と叫び廷臣たちを驚かせる。娘を取り戻そうと歌う〈悪魔め、鬼め〉は、憤怒から悲痛な訴え、やがて絶望までを表す悲痛で劇的な名アリア。走り出て来たジルダは、父に事情を訴える。二重唱〈いつも日曜日に教会で~娘よ、お泣き〉。娘をなぐさめながら、リゴレットは公爵への復讐を決意する。

デムーロの歌唱は容姿も含めて、誠実な若者、という感じのどこか堅実さを感じさせる手堅いもの。
それだけに、冒頭のアリアはピッタリで、彼があの(笑)女たらしのマントヴァ公であることを忘れそうに。
女たちが真心尽くして愛をささげ、裏切られても彼を救おうと奔走するのがなんとなくうなずけてしまいます・・・。

モンテローザに呪いの言葉を投げつけられ、ジルダの誘拐に身も世もなくショックを受け心労に打ちのめされたリゴレットの嘆きと復讐への決意。
対する娘の赦しを願う清らかな声との2重唱は絶品。最終幕での悲劇を知りつつもわくわくしていたら・・・・
鳴りやまぬ拍手に、なんと!アンコールに応えてオケ・字幕つきでの再度の父娘の2重唱のご披露を
よく字幕が間に合ったなぁと感心していたのですが、どうやら、ゲネプロの段階で、ヌッチが「BIS(アンコール)が出たら歌うと言っていらしたらしく・・・。

【第3幕】
 スパラフチーレの酒場兼安宿で、「風のなかの羽のように」と歌うマントヴァ公爵の明るい声が聞こえる。〈女心の歌〉として有名なアリアだ。リゴレットはジルダを連れて来て、恋をあきらめさせようと、スパラフチーレの妹マッダレーナと公爵との情事の様子を覗かせる。宿の外で苦悩する父娘、宿のなかで情事をすすめる公爵とマッダレーナによる四重唱〈あなたにはいつか会ったことがある〉は、それぞれの心情が吐露される四重唱の傑作。
 父からヴェローナへ行けと命じられたジルダだが、公爵の身を案じて宿の外に戻って来る。ジルダは、スパラフチーレがリゴレットからマントヴァ公爵殺害を依頼されていることを知り、自分が身代りになろうと決意する。三重唱〈嵐が来るな〉は、死を覚悟し父への許しを願うジルダと緊張するスパラフチーレ、マッダレーナ兄妹による緊迫感に満ちている。
 スパラフチーレから死体の入った袋を受け取ったリゴレット。しかし沈黙のなかに公爵の歌う〈女心の歌〉が聞こえる。愕然としたリゴレットが袋を開くと、中には瀕死のジルダが! フィナーレの二重唱〈ついに復讐のときがきた~おお、わたしのジルダ〉が始まり、父に許しを請いながら息絶えるジルダの傍らで、リゴレットは「あの呪い!」と悲痛な叫びを上げる。



デムーロの「女心の歌」はあくまでさりげなくライトな歌唱。朗々と歌い上げる系や艶やかな美声・・・でと言う感じではなく、ちょっとした鼻歌程度のつい出てしまった歌、という感じの方が、物語の流れ的には合うので、そういう解釈なのかも。
マッダレ―ナのケモクリーゼが遠目でも美女で驚く。カルメンのような黒髪に紅バラを飾り、スカートを引き上げて膝上からさっくりと見せる美脚に赤い靴がなまめかしい。
スパダフチ―レ役のツィムバリュクと並んで美男美女の兄妹。いつものように愛している結婚したい!と迫る公爵に口説かれるのには慣れてるわといなしつつもしっかり誘惑するマッダレ―ナ。
これが奴の正体だ!と物陰からジルダに見せるリゴレット。もう、こんなところからは離れて、ヴェローナへ行こう。
復讐を完結させるためにまだ残っている必要があるが、お前は先にヴェローナへ向かいなさい。男装して。
ショックをうけつつも、でも彼への愛が消えることのないジルダ。
殺し屋家業の兄に協力する妹なれど、あのアポロのような若者を殺すのは惜しいわ、なんとかならないのかと兄に談判するマッダレ―ナ。
通りかかった人間を身代わりに。こんな嵐の夜に通りかかるものはいまい。だったら金を受け取って依頼人を殺してしまえばいい。
ジルダは決断します。彼の命か父の命か。どちらも救うためには・・・。と敢えて自らがその身代わりにと。

受け取ったズタ袋を足元に、一瞬の主従関係の逆転に心が高揚するリゴレット。
顔を見てみたい・・・と開けるとまだ息のあるジルダ。先程の全能感による高揚から一転、手から滑り落ちようとする宝物を慈しみ、嘆き、神に命乞いする父リゴレット。
公爵への赦しを求め、天国で亡き母とともに父のために祈るとジルダ。
最後の最後まで、見事な舞台でした。



惜しむらくは、歌が終わってすぐに、オケの演奏が続いているのに入るフライング拍手。
配役表に異例の記載「各幕切れの拍手は上演効果を損なわないよう、音が完全に終わりきるまでお控えくださいますよう、ご協力をお願い致します」があるにも関わらずxxx

それはともかく、何度も続くカーテンコール、会場と舞台の充足感がNHKホールいっぱいに広がる名演でした。
ヌッチ出演のリゴレットは11日、15日とあと2回。
これから行かれる方は堪能されますように・・・




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