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ミラノ・スカラ座来日公演2013「ファルスタッフ」

2013-09-09 06:08:50 | OPERA
9月はスカラ座月間。
東京文化会館での「ファルスタッフ」を観て参りました。

2013年9月6日(金)18:30開演/東京文化会館

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
「ファルスタッフ」全3幕

Giuseppe Verdi
FALSTAFF
Commedia lirica in tre atti

指揮:ダニエル・ハーディング
Direttore:Daniel Harding
合唱監督:ブルーノ・カゾーニ
Maestro del Coro:Bruno Casoni
演出:ロバート・カーセン
Regia:Robert Carsen
再演演出:ロレンツァ・カンティーニ
Ripresa:Lorenza Cantini
美術:ポール・スタインバーグ 
Scene:Paul Steinberg
衣裳:ブリギッテ・ライフェンシュトゥエル
Costumi:Brigitte Reiffenstuel 
照明:ロバート・カーセン、ピーテル・ヴァン・プレート
Luci:Robert Carsen e Peter Van Praet

In coproduzione con Royal Opera House, Covent Garden, Londra; Canadian Opera Company, Toronto
The Metropolitan Opera, New York; The Nederlandse Opera, Amsterdam

サー・ジョン・ファルスタッフ:アンブロージョ・マエストリ(バリトン)
Sir John Falstaff:Ambrogio Maestri
フォード:マッシモ・カヴァレッティ*(バリトン)
Ford:Massimo Cavalletti
フェントン:アントニオ・ポーリ(テノール)
Fenton:Antonio Poli 
医師カイウス:カルロ・ボージ
Dr. Cajus:Carlo Bosi 
バルドルフォ:リッカルド・ボッタ
Bardolfo:Riccardo Botta 
ピストラ:アレッサンドロ・グェルツォーニ
Pistola:Alessandro Guerzoni 
フォード夫人アリーチェ:バルバラ・フリットリ(ソプラノ) 
Mrs. Alice Ford:Barbara Frittoli
ナンネッタ:イリーナ・ルング(ソプラノ)
Nannetta:Irina Lungu 
クイックリー夫人:ダニエラ・バルチェッローナ(メゾ)
Mrs. Quickly:Daniela Barcellona 
ページ夫人メグ:ラウラ・ポルヴェレッリ
Mrs. Meg Page:Laura Polverelli

ミラノ・スカラ座管弦楽団、ミラノ・スカラ座合唱団 
Orchestra e Coro del Teatro alla Scala

◆上演時間◆

第1幕、第2幕  18:30 - 20:00 (舞台転換3回あり)
Act 1, Act 2 (with 3 pauses)
休憩  30 min
第3幕 20:30 - 21:15
Act 3

ヴェルディ生誕200年にあたる今年のスカラ座引っ越し公演、ということで、ヴェルディの最後の作品となった「ファルスタッフ」を持ってきました。初演が1893年スカラ座、だったのですね^^

シェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」を下敷きにしたこの作品。
ヘンリー5世に仕えた老年にさしかかったふとっちょ騎士ファルスタッフ。
彼はエピキュリアンで美食と女性に目がなく、全く枯れたところのない人物。
お金目当てで女性を誘惑するものの、二股がばれてお灸をすえられるのですが、その騒動が若者2人の結婚を後押しする結果となり、最後は「世の中全て冗談だ」と大団円に・・・。
重厚な歴史ものが多いヴェルディの作品には珍しくオペレッタのように軽快で、でも老年に差し掛かった騎士の人生の秋、という風情もあり、深い作品で実はとても好きな演目です。

今回は主役がこの役を最大の当たり役としているアンブロージョ・マエストリ。
肉布団いらずの天然ファルスタッフ体型で、伸びやかな声と体型に関わらずどこか貴族的な雰囲気も醸し出せるところがとても良いです。
浮気相手として目をつけられた美しい主婦アリ―チェに、世界のソプラノ、安定した実力と落ち着いた美貌のバルバラ・フリットリ。
今回の演出では狂言回し的な役どころも担うクイックリー夫人にダニエラ・バルチェッロ―ナ。
ファルスタッフをこらしめるための策略で、彼をその気にさせる場面、大げさでコミカルな演技力が光っていました。お花を盛り上げた帽子やデコラティブなブロケ―ドなど豪華な織の素材を使った衣装がキャラクター設定を上手に暗示していて、衣装もセンスあり。
ちなみにアリ―チェ親子はシルクタフタなどの上品パステルの無地で仕立てられたDiorのニューライン的なフォルムのドレスで、対比を。
小柄なメグは白黒の千鳥格子など・・と50年代調のワンピースの中にそれぞれの個性を際立たせるデザインがとても可愛い。
アリ―チェの娘ナンネッタには注目の若手イリ―ナ・ルング。伸びの良いソプラノでこれからスターになりそう!
黒髪のポニーテールにドレスとお揃いのカチューシャをしているのがとてもCUTE.
彼女の恋人、父親の反対を乗り越えて最後結ばれるお相手フェントンのアントニオ・ポ―リもチャ―ミング。
アリ―チェの夫、嫉妬深いフォードのマッシモ・カヴァレッティもハマっていて、CASTはVISUAL.歌ともに最高に役に合っていて、とても満足。

3幕ものですが、舞台転換を休憩を取らずに幕内で行い、全体を3時間という、オペラ公演にしてはコンパクトな時間にまとめて、その分大休憩を30分にした構成も良かったと思います。
これなら終演後食事に行けますね^^
東京文化会館のホワイエはソワレのオペラ公演らしく、華やかなワンピ―ス姿の女性が多く、ロングドレスの方もお見受けしました。

指揮のダニエル・ハーディングは律動感のあるきびきびとした音作り。
英国ロイヤル・オペラと共同制作のロバート・カーセン演出は、ファルスタッフをイギリス貴族とした設定。
1950年代風のブルジョワ(アリ―チェたち、フォード家)対旧貴族文化(ファルスタッフを)の対比を場面設定の舞台美術で強調した演出でとても好み。

ファルスタッフをがねぐらにしているガ―タ―亭が、オーク材を象嵌細工にした壁面に整然と並んだ白いテーブルクロスに黒いお仕着せの給仕たち・・・と英国のクラブのような壁面に馬術の銅版画?が飾られている重厚なもの。


対するドタバタ喜劇の舞台となるフォード家のキッチンはパステルカラーで、「奥様は魔女」の世界。
川に落とされたファルスタッフを表現するのに大騒ぎの末に窓の外をのぞきこんだフォードが大量にはねた水を浴びる・・・というのが2幕最後のビックリ演出。



対して第3幕1場は、川に落ちたファルスタッフがたどりついた厩で、干し草にくるまって暖をとる彼の向かいには干し草を食むリアルなお馬が!

この、水と馬、というのがカ―センの驚き演出と言われていましたが、思ったほど違和感なく物語に溶け込んでいました。
再び夫人たちにだまされて、ファルスタッフがシカの角の扮装をして出かけるのが2場の夜の森の場面。

暗いブルーの照明に浮かび上がるシルエットが幻想的。
彼はここで、美しいエウロペを手に入れるためにゼウスも牛に姿を変えたのだ・・・と独白。
こっけいな役どころではめられるシーンですが、女性に夢中で目がくらみつつも、教養がにじみ出る老騎士が味わい深いところです。
3場での大団円の祝宴ではシャンデリアの下、白いテーブルクロスが黒と赤で正装した男女との対比で鮮やかな場面・・・と舞台上の場面毎のテーマと色彩設計が明確でセンス良く、目にも耳にも心地よい舞台。



だまされて、人々に人妻に手を出す肥った欲深い男として糾弾されるも、平謝りに謝って、やれやれ・・・と人生全て冗談・・・と、この騒動に乗じて結婚を認めてもらえた若いカップルを祝福する余裕とエスプリに満ちたファルスタッフ。
食べ散らかした食卓が並んだ部屋の中央、大きなベッドにオールインワンのグレーの下着姿で飽食後の昼寝をむさぼる冒頭やみじめな厩、ご婦人がたとの密会に心躍らせてお洒落して出かける赤いジャケットにステッキ小脇の小粋な姿・・・の対比といい、実に緩急のタズナの取り方を心得た、と言わんばかりの演出と演技、でした。


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