Musical
『The Lost Glory ―美しき幻影― 』
written and directed by Keiko Ueda, choreographed by Gustavo Zajac
作・演出/植田 景子
[解 説]
■主演・・・(専科・特別出演)轟 悠、(星組)柚希 礼音、夢咲 ねね
“栄光の20年代”と謳われた、第一次世界大戦後の好景気に沸くニューヨークを舞台に、シェイクスピアの「オセロー」をイメージモチーフとして、男女の愛憎のドラマを描いたミュージカル。不屈の精神でアメリカンドリームを体現させた主人公に専科より特別出演の轟悠、執拗に復讐心を燃やす敵役に柚希礼音、そして、魅惑的なヒロインに夢咲ねねという、最高のキャスティングでお届けします。振付に、グスタヴォ・ザジャック氏を迎え、狂乱のジャズエイジを描き出す極上のエンターテイメント作品。

この作品は9月14日、17日、26日、30日と新公を除いて4回観ましたが見るたびに新しい発見が。
最初は配役のバランスが悪く感じたり、アルマーニの衣装が普段ヅカスーツと比べて身体のラインをシャープに強調しないのに違和感を感じたりしたのですが、どんどん見るたびに良くなり、味わいが増してきて、最後にはとても好きな作品に。
役ごとに一言感想を。
■オットー・ゴールドスタイン 轟 悠
轟理事が降臨して主役を演じ、その組のTOPスターが2番手どころを演じる、という「理事降臨公演」がその昔、年に一度の割合で行われており、それが当たった組ファンは頭を抱えたと言う・・・伝説再び。
わたくしがこの理事降臨公演を観たのは「黎明の風」でした。TOP男役大和悠河さんがマッカーサー役で轟さんが白州次朗の役で、お芝居自体は面白かったのですが、組ファンにとってみれば、ポジションがひとつずつ下がるわけですし、TOPファンにしてみれば、限りあるTOP人生の貴重な主演作一作が消えたようなものなので・・・。今回TOP6年の柚希さん率いる星組に降臨されたのは配慮ある組選びだったと言えるかも?星組は理事主演のバウ公演でもご縁がありますしね^^;
オセロ的ポジションの役どころ。ギリシア移民のたたきあげながら、大財閥の後ろ盾もあり、成功者として確固たる地位を得た熟年男性。ところが若く美しい名門令嬢ディアナをめとり、新規プロジェクトの子会社社長に腹心の部下イヴァーノを差し置いて名門出身の若手カーティスを任命したときから運命の歯車が狂い始める。
裏切られたと感じたイヴァーノがオット―のディアナへの執着を利用して巧みにオット―を苦しめ、会社の乗っ取りを計画し、バブル最高潮のNYは大恐慌へのカウントダウンが始まっていた・・・。
最終的に多くの人々が苦しみ、人生を狂わせる惨事を招いたのはオット―のイヴァーノへの配慮のなさ、あるいは過度な信頼による思いこみが原因。ある意味鷹揚で純粋な人柄、それが深層心理のコンプレックスを刺激されて妻への疑いが芽生えて嫉妬を炸裂させ苦しむ姿は年齢的なものも含めてやはりさすがの演技でした。整った顔立ちと星組にあっては小柄なスタイルも設定にピッタリ。
■イヴァーノ・リッチ 柚希 礼音
自身は恋愛マタ―に絡まず、他人の愛憎を操ることで会社乗っ取りを成功に導く。
もともとビジネスについてはやり手。イタリア移民と妾の子であるという出自により、常に正当な評価を得られていないという世間に対する不満をマグマのように抱えた男。唯一正当に評価してくれたと信頼するオット―がカーティスを選んだことへの失望から裏切りに転ずるあたり、握手のために差し出した手をディアナの呼びかけに答えたオット―がスル―。カラ振りに終わった片手を静かにひくイヴァーノの心中など、ひとつひとつの動きが秘めた感情を表していて、少ない台詞の豊かな行間がやはりTOPの力を感じさせる。
大柄な体に浅黒いメイク、常に黒のWのスーツスタイルで、物静かに存在していても、秘めたパワーのオーラを放つ。
最終章でディアナとの愛についての問答で心動かされる場面こそあれ、女性との交流はあったにせよ、常に自分しか信じず、心とざし続けたのだろうと。宝塚においては大変珍しい人物像ですが、TOP男役の重みをもって、この脇役を演じる姿あってこそ、緊迫感溢れる重厚な舞台が成立したのでは、と。
ハスキーで重みのある低音なので、轟さんとの低音どおしの2重唱の場面は大変お見事で・・・ここタカラヅカだよね、出演者は女性だけ・・・のはずだよね??となりました^^;
■ディアナ・キャンベル 夢咲 ねね
この作品中唯一無傷な人。主要な男性陣が、主役は結婚前は建設王として立身出世を遂げ、成功者と名高かったのに全てを一度失って再出発をしなくてはならなくなり、2番手どころは勘違いから恩人を裏切り命を落とし、3番手どころはだまされ、殺人犯となり、別格は自殺・・・と散々な目にあっているのに。
裕福な名門一族出身で画家としての名声もすでに手にしており、それは大恐慌後も彼女を支え続け、夫の嫉妬にさいなまれ、辛い思いをするものの、彼女のもともと持っている属性を失うには至らず。
植田景子先生の作品中、必ず作者が自己投影しているのでは?と思わせるヒロインがいるのですが、今回はディアナ?イメージソ―スの「オセロ」のデスデモ―ナよりずっと幸せなディアナです。
ゴージャスなドレスの着こなしも良いのですが、なんと言っても魅力を最大限に発揮するのは妄想タンゴのシーン。真っ赤なフリンジミニドレスでキレ味良く多くの男役と踊る姿はそのスタイルと美貌と名ダンサー柚希礼音さんの相手役として切磋琢磨してきた6年間が見事に投影されていて・・・。
逆に?なのは、普通のプリントワンピースの場面。長身の彼女が轟さんとの芝居をするときには低めのヒールのパンプスなのですが、そのことで全身バランスが崩れている・・・。幕間に関西から来たと思われるファンの女性が「あれは貧乏くそうてあかんわ」とノタもうておられましたが、同感です。
■サム 美城 れん
■ウォルター・ライマン 十輝 いりす 漣 レイラ
■ エマ 音花 ゆり 妃海 風
■ウィル・スミス 鶴美 舞夕 桃堂 純
■ロナルド・マーティン 紅 ゆずる 瀬央 ゆりあ
■ムッシュ・ヴァラン 壱城 あずさ 凰羽 みらい
■ドン 如月 蓮 音咲 いつき
■ スタンリー 汐月 しゅう 拓斗 れい
■ レイモンド・ウォーカー 天寿 光希 天華 えま
■フランシス・デュモント 音波 みのり 天乃 きよら
■運の良い主婦 優香 りこ 白鳥 ゆりや
■ カーティス・ダンフォード 真風 涼帆 紫藤 りゅう
■へンリー 十碧 れいや 湊 璃飛
■マイケル 麻央 侑希 彩葉 玲央
■パット・ボローニャ 礼 真琴 綾 凰華
■エヴァ 妃海 風 五條 まりな
■エリオット 瀬央 ゆりあ 天希 ほまれ
■ミラベル 綺咲 愛里 城妃 美伶
■ビル 紫藤 りゅう 紫 りら
■7歳のオットー 城妃 美伶 美都 くらら
『The Lost Glory ―美しき幻影― 』
written and directed by Keiko Ueda, choreographed by Gustavo Zajac
作・演出/植田 景子
[解 説]
■主演・・・(専科・特別出演)轟 悠、(星組)柚希 礼音、夢咲 ねね
“栄光の20年代”と謳われた、第一次世界大戦後の好景気に沸くニューヨークを舞台に、シェイクスピアの「オセロー」をイメージモチーフとして、男女の愛憎のドラマを描いたミュージカル。不屈の精神でアメリカンドリームを体現させた主人公に専科より特別出演の轟悠、執拗に復讐心を燃やす敵役に柚希礼音、そして、魅惑的なヒロインに夢咲ねねという、最高のキャスティングでお届けします。振付に、グスタヴォ・ザジャック氏を迎え、狂乱のジャズエイジを描き出す極上のエンターテイメント作品。

この作品は9月14日、17日、26日、30日と新公を除いて4回観ましたが見るたびに新しい発見が。
最初は配役のバランスが悪く感じたり、アルマーニの衣装が普段ヅカスーツと比べて身体のラインをシャープに強調しないのに違和感を感じたりしたのですが、どんどん見るたびに良くなり、味わいが増してきて、最後にはとても好きな作品に。
役ごとに一言感想を。
■オットー・ゴールドスタイン 轟 悠
轟理事が降臨して主役を演じ、その組のTOPスターが2番手どころを演じる、という「理事降臨公演」がその昔、年に一度の割合で行われており、それが当たった組ファンは頭を抱えたと言う・・・伝説再び。
わたくしがこの理事降臨公演を観たのは「黎明の風」でした。TOP男役大和悠河さんがマッカーサー役で轟さんが白州次朗の役で、お芝居自体は面白かったのですが、組ファンにとってみれば、ポジションがひとつずつ下がるわけですし、TOPファンにしてみれば、限りあるTOP人生の貴重な主演作一作が消えたようなものなので・・・。今回TOP6年の柚希さん率いる星組に降臨されたのは配慮ある組選びだったと言えるかも?星組は理事主演のバウ公演でもご縁がありますしね^^;
オセロ的ポジションの役どころ。ギリシア移民のたたきあげながら、大財閥の後ろ盾もあり、成功者として確固たる地位を得た熟年男性。ところが若く美しい名門令嬢ディアナをめとり、新規プロジェクトの子会社社長に腹心の部下イヴァーノを差し置いて名門出身の若手カーティスを任命したときから運命の歯車が狂い始める。
裏切られたと感じたイヴァーノがオット―のディアナへの執着を利用して巧みにオット―を苦しめ、会社の乗っ取りを計画し、バブル最高潮のNYは大恐慌へのカウントダウンが始まっていた・・・。
最終的に多くの人々が苦しみ、人生を狂わせる惨事を招いたのはオット―のイヴァーノへの配慮のなさ、あるいは過度な信頼による思いこみが原因。ある意味鷹揚で純粋な人柄、それが深層心理のコンプレックスを刺激されて妻への疑いが芽生えて嫉妬を炸裂させ苦しむ姿は年齢的なものも含めてやはりさすがの演技でした。整った顔立ちと星組にあっては小柄なスタイルも設定にピッタリ。
■イヴァーノ・リッチ 柚希 礼音
自身は恋愛マタ―に絡まず、他人の愛憎を操ることで会社乗っ取りを成功に導く。
もともとビジネスについてはやり手。イタリア移民と妾の子であるという出自により、常に正当な評価を得られていないという世間に対する不満をマグマのように抱えた男。唯一正当に評価してくれたと信頼するオット―がカーティスを選んだことへの失望から裏切りに転ずるあたり、握手のために差し出した手をディアナの呼びかけに答えたオット―がスル―。カラ振りに終わった片手を静かにひくイヴァーノの心中など、ひとつひとつの動きが秘めた感情を表していて、少ない台詞の豊かな行間がやはりTOPの力を感じさせる。
大柄な体に浅黒いメイク、常に黒のWのスーツスタイルで、物静かに存在していても、秘めたパワーのオーラを放つ。
最終章でディアナとの愛についての問答で心動かされる場面こそあれ、女性との交流はあったにせよ、常に自分しか信じず、心とざし続けたのだろうと。宝塚においては大変珍しい人物像ですが、TOP男役の重みをもって、この脇役を演じる姿あってこそ、緊迫感溢れる重厚な舞台が成立したのでは、と。
ハスキーで重みのある低音なので、轟さんとの低音どおしの2重唱の場面は大変お見事で・・・ここタカラヅカだよね、出演者は女性だけ・・・のはずだよね??となりました^^;
■ディアナ・キャンベル 夢咲 ねね
この作品中唯一無傷な人。主要な男性陣が、主役は結婚前は建設王として立身出世を遂げ、成功者と名高かったのに全てを一度失って再出発をしなくてはならなくなり、2番手どころは勘違いから恩人を裏切り命を落とし、3番手どころはだまされ、殺人犯となり、別格は自殺・・・と散々な目にあっているのに。
裕福な名門一族出身で画家としての名声もすでに手にしており、それは大恐慌後も彼女を支え続け、夫の嫉妬にさいなまれ、辛い思いをするものの、彼女のもともと持っている属性を失うには至らず。
植田景子先生の作品中、必ず作者が自己投影しているのでは?と思わせるヒロインがいるのですが、今回はディアナ?イメージソ―スの「オセロ」のデスデモ―ナよりずっと幸せなディアナです。
ゴージャスなドレスの着こなしも良いのですが、なんと言っても魅力を最大限に発揮するのは妄想タンゴのシーン。真っ赤なフリンジミニドレスでキレ味良く多くの男役と踊る姿はそのスタイルと美貌と名ダンサー柚希礼音さんの相手役として切磋琢磨してきた6年間が見事に投影されていて・・・。
逆に?なのは、普通のプリントワンピースの場面。長身の彼女が轟さんとの芝居をするときには低めのヒールのパンプスなのですが、そのことで全身バランスが崩れている・・・。幕間に関西から来たと思われるファンの女性が「あれは貧乏くそうてあかんわ」とノタもうておられましたが、同感です。
■サム 美城 れん
■ウォルター・ライマン 十輝 いりす 漣 レイラ
■ エマ 音花 ゆり 妃海 風
■ウィル・スミス 鶴美 舞夕 桃堂 純
■ロナルド・マーティン 紅 ゆずる 瀬央 ゆりあ
■ムッシュ・ヴァラン 壱城 あずさ 凰羽 みらい
■ドン 如月 蓮 音咲 いつき
■ スタンリー 汐月 しゅう 拓斗 れい
■ レイモンド・ウォーカー 天寿 光希 天華 えま
■フランシス・デュモント 音波 みのり 天乃 きよら
■運の良い主婦 優香 りこ 白鳥 ゆりや
■ カーティス・ダンフォード 真風 涼帆 紫藤 りゅう
■へンリー 十碧 れいや 湊 璃飛
■マイケル 麻央 侑希 彩葉 玲央
■パット・ボローニャ 礼 真琴 綾 凰華
■エヴァ 妃海 風 五條 まりな
■エリオット 瀬央 ゆりあ 天希 ほまれ
■ミラベル 綺咲 愛里 城妃 美伶
■ビル 紫藤 りゅう 紫 りら
■7歳のオットー 城妃 美伶 美都 くらら