新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

12月2日 その2 ホテル代が高騰

2024-12-02 16:08:45 | コラム
「なるほど」と思ったほど高くなっていた:

国の内外に出張で出かけなくなってほぼ30年。ホテルとも縁が遠くなってしまったが、近年日本でもアメリカでもホテル代が急騰していると聞いている。午前中にジムのサロンで拾い読みしたNY Timesには、New Yorkでもホテル代が高騰しているとの記事があった。

どのくらい高いのかと言えば、マンハッタンのホテルの平均が$1,000(約\150,000)で、St, Regisに至っては$1,854(約¥278,000)とあった。想像もつかない金額だった。それでもニューヨーク市当局は「今年の観光客は650,000人で、来年は史上最高の660,000人を見込んでいる」との事。しかも当局はこの高額なホテル代でも「高いから来ない方が良い」と言う気はないのだから恐れ入る。

そこで、比較の意味で(念の為にも)我が国の東京と大阪の所謂シティホテルの料金を当たってみた。矢張り聞きしに勝るものだった。都内では帝国ホテルが¥52,040と貫禄を見せていたが、京王プラザホテルが¥24,200、リーガロイヤルホテルが¥22,749、品川プリンスが¥15,689というところ。アメリカ系はリッツ・カールトンが¥144,180、ヒルトンホテルが¥43,800だったが、フォーシーズンズホテル(大手町)が¥172,440という高値だった。

大阪市内ではニューオータニ大阪が¥20,074、帝国ホテルが¥27,374であり、リーガロイヤルホテルが¥10,940とあったのは意外な低価格だった。アメリカ系ではヒルトンが¥31,663、リッツ・カールトンが¥82,200、コンラッドが¥75,860となっていた。何れにせよ、この価格では気楽に遊びに出かける訳には行かないだろうし、出張者が経済的なビジネスホテルを探し回るのだと解る。

だが、我々のようなアメリカの会社にいる者にとっては「企業における経費の支出の基準が『社用で行動中の経費は会社負担』と定められているし、当時の我が社ではこれというシテイホテルには、年間の宿泊数を補償して、corporate rateという価格を設定してあり、経費は全て実費精算なので自己負担が生じるような事はない」のである。

念の為に細かい事を言えば「全ての出費は必ず領収証を取って経費伝票に添付する事」になっている。しかも、tipも「何処で誰に、どんな場合に払ったか」をメモしておいて請求できるのだ。また、会社によって異なるが「例えば$20以下はりょうしゅうしょうなしで良い」となっている。この意味は毎日、出費する度に記録を取っておく事なので、案外面倒な(大変な)負担になる。

また、アメリカの上場企業の会社では誇りが高く、その社員には会社の格に相応しいホテルに泊まって良いという決まりになっている。この辺りは、我が国の出張手当と旅費が役職によって異なっているような制度ではない。アメリカの某大手メーカーの役職者から「嘗ては我が社も日本式な制度だったが、実費精算に変えてからは予想外に全社的に旅費の出費が減る結果になった」という話を聞いた。

自分の経験からも言いたくなる事は「もうそろそろ、我が国の会社でも実費精算主義の採用を検討してもう良い時が来ている」のではないのか。現在の制度ではニューヨークは言うに及ばず、シカゴでもLAでもシアトルでも迂闊に出張すると費用を背負い込んでしまうと危惧する。何となく、因習的に社員に意欲を失わせる制度を続けているのではないのかなと言いたくもなる。

最後に、例によって余計な英語の話を。St. Regisの発音は「セントレジス」ではなくて「スント・リージス」に近い「セント・リージス」のように聞こえる。


「熊がバックヤードに」だと

2024-12-02 07:22:12 | コラム
熊が裏庭に逃げ込んだのか?

「秋田県のスーパーマーケットに熊が侵入してバックヤードの立て籠もった」と報道されている。カタカナ語排斥論者でも「バックヤード」の意味くらいは察しがつく。要するに英語の”backyard”とは異なる「小売店のお客には見えない裏側の施設」のことだろうと思った。まさか、その店舗が「裏側に板囲いされた庭」を持っていた訳ではあるまい。

Wikipediaの定義では「バックヤードとは、小売店舗あるいは博物館等の施設で、通常の利用客や来場者が立ち入らない場所を指す。英語で「裏庭」を意味するbackyardに由来するが、日本語独自の用法である。」となっていて明快。チャンと英語のbackyard由来とまで指摘してくれてあった。

私は「報道する側が業界の用語をちゃっかり借用して、具体的に熊が何処に立て籠もったかの説明を省略したのだ」と解釈した。つまり、詳細に業界用語のカタカナ語を説明すれば長くなるから端折ったという、不親切な行為である。一般の客様が売り場の裏側にある調理場その他を「バックヤード」と呼ぶと承知している事を前提にしたのだと疑う。言うなれば「手抜き報道」ではないか。

だが、報道する側に多少の理解を示せば「熊が小売店舗あるいは博物館等の施設で、通常の利用客や来場者が立ち入らない場所に立て籠もった。バックヤードとは英語で「裏庭」を意味するbackyardに由来するが、日本語独自の用法である」とまで細かく報道する代わりに、一言「バックヤード」で片付けたという事だろう。相変わらず、彼等はカタカナ語を重宝に使うのだ。

折角”backyard”の話を取り上げたので、それに纏わる経験談を。Mead社のオゥナー(ownerの発音は「オーナー」ではない)のネルソン氏に「ご近所にゴルフのチャンピオンコースであるNCRカントリークラブがありますね」と語りかけたところ「そうだ。あれはウチのbackyard(=裏庭)を貸しているのだ」と一言。

この話は「アメリカの富豪とはこういうものだ」という事に加えて、「アメリカは国土が非常に広いので余裕があるのだという事」を如実に示しているのだと思った。それにしても桁が違う。熊が何頭立て籠もれる事か。