生者(盛者)必滅、会者定離:
昨日辺りから、2代で50年続いた共和国シリア(Syria)のアサド政権が崩壊して、数百万人と言われるアサドの圧政を嫌って隣国のトルコ等に亡命していた人々が喜び勇んでいるとの報道が流れている。当方不勉強にしてあのイスラム教圏内の諸国の事情には極めて疎い。そこで、この機会にと、色々と検索してみた。
今回、反体制派に制圧されてロシアに亡命したというバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領は前大統領の二男で優秀な医師だったとか。それが何故か独裁的な圧政的な政治に転換したのだそうだ。今回はその圧政に対抗した反政府派の勝利だとか。私はその辺りを聞いて(調べて?)あらためて「生者必滅、会者定離」という言い習わしを思い浮かべた。
これまでの人生で「今というか現時点で栄えている人、会社、組織、物事は長くその良い状態を維持できるものではない」という例を、余りにも沢山見聞きしてきたのだ。そこには悲しい例も、はかない例も、そうなって良かったと皆で手を取り合って喜ぶような出来事もあった。悟ったような事を言えば「それが世の中っていうもの」なのだから。
自分の経験を思い起こせば「昭和29年(1944年)に今風に言う就活に励んでいた頃は、三白と言って紙・砂糖・セメント会社が我が世を謳歌していた。私はその中の『製紙』会社に雇って頂けた。だが、三白が長続きしなかった辺りは、誰もが記憶しているだろう、はかない事実。要するに「今栄えている業種が、その状態が長続きするものではない」という冷厳なる流れだ。
それ以後というか、21世紀になった世の中で、繁栄していた国の衰退から滅亡、大いなる成長発展を遂げていた会社の衰退から破滅、栄耀栄華を誇った資産家の破滅、何処まで成長するのかと見込まれた産業の没落、一国を抑えていた支配者と政党の衰退等々の例は数え切れないほどあったのだ。
現在では何事も急速に発展し変化していく流れだ。卑近であり良い例ではないかも知れないが、その大いなる就労可能人口と低賃金に着目された世界の下請け工場となっていた中国は、今やアメリカに次ぐ世界第2の経済大国である。その中国に生産拠点を設け、サプライチェーンとして活用していた我が国は4位に下がってしまった。
外車というか「アメ車」に乗っているのがステータスシンボルだった時代は過ぎ去って、デトロイトは時代に取り残されてしまった例として論じられるようになった。1980年代にショルダーバッグのように担いでいた重たい携帯電話が、今やスマートフォンとなって電話という名称に相応しくない携帯PCの機能どころか、万能の機器に進化している。誰がスティーブ・ジャブズが世の中を変えると予期していたか。
往年は「時代の先行きと変化を見通せない経営者は失格」と言われていたが、20世紀にGAFAMがアメリカどころか世界を操りかねない業種に発展すると予知できていた人、学者、経営者がいただろうか。二酸化炭素が悪影響を与えて地球温暖化を齎すと予言はされていたが、その対策を怠ってしまった為か、現在の異常気象による途方もない豪雨であり、12月になっても暖房をかけるかと言いたい暑さを予測できていなかった。
私が気になって仕方が無い事はといえば、現在我々が直面しているというか対峙している状態は自然現象だけではなく、我々人類が招来してしまった出来事なのではないのかと言う点だ。
合成樹脂などと言ってあらゆる産業の分野で無数のプラスティックと言うか、石油化学の製品を創り出した結果が、プラスティックのゴミの公害に悩んでいるのではないか。プラスティックの製品が劣化する事くらいは、先刻承知だったのにも拘わらず。形があるものは必ず壊れるのだ。
話をシリアに戻せば、昨夜だったか専門家が「アサド政権が崩壊したからと言って、次に政権を担う者たちはアルカイーダ(Al-Qaeda)というスンナ派ムスリムという国際テロ組織からの分派であるから」と指摘しておられた。英語に言う”remain to be seen“、即ち「後の課題である、現時点では[今のところ]不明である[まだ分からない]という事。