立派な勝ち方だったと賞賛したい:
何をさて措いても、私は森保一監督には「信頼していない」などと言ってしまったことをお詫びせねばならないと思う。失礼致しました。また、選手たちに向かっても「素晴らしいサッカーを見せてくれて有り難う。君たちは偉い」と褒め称えねばならないと思う。
私は「勝つか負けるか」の予想はしなかったが、それはスペインのそれまでの試合を見ていなかった為なので、「パスサッカー」なるものにどれほどの威力があるのかが皆目分かっていなかったのだ。
前半では詳しいスタッツは解らないが、恐らくスペインのパスサッカーではボールの支配率は90%に近かったのではなかったかと思わせられたほど、回しに回して我が方に攻め込む機会を与えていなかった。だが、その精密に組み立てられたパス回しの組織を良く観察して見ると「パス回しの為のパス」になっている場合が非常に多かったのだった。言い方を変えれば「相手に触らせずに良く回すが、点を取る形には組み立てられていないことが多い」と読めたということ。
その徹底したパス回しの中には常に安全を期して、一寸でもディフェンダーが寄せてくるか、前が空いていないと見るや躊躇うことなく中盤からでも一気に後陣に戻すか、GKにまで蹴り返してしまうのだった。これでは、後半に解説の岡田武史氏が指摘したように「我が方の守備のブロックの前で回しているだけならば怖くない」と指摘されたように、先日取り上げた「レッドゾーン・オフェンス」にも似た、手詰まりのようにも考えられたのだった。
我がディフェンス陣はそのパス回しに耐えて良く守っていたし、結果的には吉田麻也を含めて4人だったかにイエローカードを出されたが、右斜め後ろから蹴り込んだ長いパスをヘディングで合わされた1点だけに食い止めたのは良かったと思う。小野伸二だったかは「ディフェンス陣の体力消耗が気になる」とは言っていたが、後半には富安や遠藤を入れて補うことができていたようだった。
その状況が、後半に久保に代えて堂安と三苫を入れてきた辺りから大きく変わってきた。スペインのパス回しが殆ど効果的ではなくなってきた辺りで、私は「ひょっとすると、ひょっとするかも知れない」という気がしてきた。彼らスペインが三苫や堂安に恐れをなしたのかも知れないが、もたつき始めたかと思えば、自陣のゴール前でハッキリと蹴り出さなかったところを堂安が衝いて、見事なミドルシュートで同点に持ち込んだのだった。
そこから先には明らかにスペインの足並みが乱れ、明らかにパス回しの為のパスというのか、焦りからか無意味な展開に終始してきた。すると、右サイドに切り上がった浅野だったか誰か確認できなかったが、ゴール前を横切るパスが通り、それにGKが倒れながら出した手に触れてゴールラインを割ったかに見たところに駆け込んだ三苫が、VAR判定で「割っていなかった」となった切り返しで無人となったゴールに田中碧が蹴り込んで2対1と勝ち越したのだった。
実は、ここまで来る間に「もしかして」との期待が高まったので、殆ど時計を気にしている暇が無かったのだった。そして気が付けば残りは15分を切っていたのだった。スペインは引分けでも勝ち抜けられるはずだったから、その期に及んでも悠長に後方に展開しては再度「ビルドアップ」というのだそうだが、後陣から組み立て直す方式で攻勢に出てきた。私は如何にスペインでも、その方式では15分で2点は取れないと読み切ったので、ほぼ「勝利」を信じていた。
何の事はない、スペインは私が散々貶してきた我が方の「後陣でのディフェンダー間の横パス交換と、FWが一寸でも前に空いていると後方に戻してしまう、私に言わせれば無意味にボール支配時間を延ばす戦法」と同じ事を繰り返していただけになって、7分という長いアディショナルタイムの間にも、得点できる気配も見せずに終わってしまった。しかも、我が代表は「後陣でのパス回し戦法」には出ていなかったのだった。
私にはあれがスペインのパスサッカーの実力負けなのか、驕りから来た負けなのか判断出来ないが、我が方の選手交代の上手さと後半に見せた気力溢れる攻撃を賞賛すべきだと思っている。こと守りについても、伊東純也や三苫薫が良く下がって懸命にスペインの攻撃に対応していたことも褒めて上げるべきだと思っている。
兎に角、後半の我が代表選手たちのあの「勝ってやろう」との気力に満ちたサッカーは安心して見ていられた。何れがFIFAのランキングの上位なのかも解らなくなったと思わせてくれた勝利だった。上位のスペインとドイツに勝っての16強だったのも賞賛すべきことだろう。
ここに次なるクロアチア戦の勝利を祈って終わる。未だ「勝利を期待すると言わないのか」と言われそうだが、白紙状態で見ている方が精神的に楽なのだ。
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