新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領の相互関税政策への対応は

2025-02-21 06:31:47 | コラム
トランプ大統領は関係諸国が対策を立ててくるとは想定していないのか:

昨日からしきりに報道され始めた「トランプ大領のゼレンスキー・ウクライナ大統領に対する物議をかもした発言」があったが、今回も相殺関税について論じていこうと思う。

昨20日に朝日新聞は「武藤容治経済産業相が3月に訪米し、米上院で商務長官の人事が承認されたラトニック氏らトランプ政権の閣僚と会談する方向で調整に入った」と報じていた。10日以上も先の話だが、計画があることは“Better late than never.”であろう。私が懸念することは「トランプ大統領に忠誠を誓った閣僚やトランプ政権の要人を説得できるのか」という点だ。

私は「連結の売上高は45.2兆円、利益は53.3兆円、従業員38万人」というトヨタ自動車では、豊田会長が全社員に「25%のトランプ関税に対応すべく生産を合理化し(協力工場にも協力してもらい)、一層のコスト合理化を果し(関税分を何%か負担して?)、輸出価格を引き下げる渾身の努力を」という大号令をかけるということもあり得るのではと想像している。

マスコミ報道は「ただただ大変だ、大問題だ。日本の産業界を危機が襲うのでは」と騒ぎ立てるばかり。著名なエコノミストたちも危機感を煽っている気がする。恰も日本の政財官界が拱手傍観ばかりで、打つ手がないと言わんばかり。そんな事があるのだろうか。いや、ないだろうと期待している。

私はトランプ大統領があそこまでの大幅な関税を賦課するとの強硬な方針を打ち出した以上、関係各国がひれ伏すことなく、猛烈に反撃してくることくらいを予想しているだろうし、その場合に打ち出す二の矢、三の矢(contingency plan)くらいは立ててあると思うのだが。

また、アメリカ式の商法という視点から考えれば、アメリカの輸入車ディーラーが関税対策で利幅を引き下げて売りに出るか否かは極めて疑問だと思う。だが、日本のメーカーが懸命の努力でコストの合理化を図り輸出価格を引き下げて対抗することは想定可能な範囲内ではないか。また、これにより、日本車の国内販売価格が関税ほどには高騰しなければ、熱心な日本車の需要層が買い続ける可能性があるのではなかろうか。

私のアメリカの知り合いのビジネスマンの中には「自分の好みの性能と品質と価格の車を買うときに、貿易赤字や国益を考えて国産車を買おうとまでは考えてはいない」とまで言い切った者がいた。トランプ大統領は高率の関税をかけてまで、自国民の好みにまで立ち入ることができるのだろうか。

先日、林官房長官が「自動車産業は日本の産業の根幹をなしているのだから、考え直してくださいと申し入れたい」と言った気の弱さには失望した。相手国に与える損傷が大きくなるのからこそ、トランプ大統領がそこを狙って、何かを引き出すdealの材料にしようとしているのだから、臆することなく「その手には乗りません。我が方は対策を考慮中」くらいのことを言って欲しかった。

私はどうしても、トヨタに「多額の関税を払いたくなければ、アメリカに工場を作って云々」というトランプ大統領の脅迫めいた表現は見当違いだと思わざるを得ない。要点は「関税を支払うのはトヨタではない」のだから。問題は「トランプ大統領の関税についての誤解と誤認識を、我が方から指摘して訂正させるにはどうすべきか」の手段を練り上げるが必要だと思う。

願わくは「石破首相、岩屋外相、武藤経産相にそこまでやってやろうという強行突破の姿勢とそれを支える度胸があること」ではなかろうか。長年の国際交渉の経験から言えば「頑固に自説に固執する偉い人ほど、その弱点を恐れることなく(慣れるまでは恐ろしいことだが)強硬について出ると、結局は突き崩せることがある」のである。

ここまでくると、残念なことは、故安倍晋三元総理の「トランプ大統領と付き合う方法」と、そこに必要な知恵に学べなくなったことなのかも知れない。このトランプ政治への対応策は、この度の関税問題だけではなく、これから先の4年間にも通用することを忘れてはなるまい。


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