新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

“inbound”って何のこと

2018-10-16 13:56:20 | コラム
何故カタカナ語を使うのか:

本日の産経新聞の「談話室」に元英語塾講師の方が「政府は何故カタカナ語を使うのか」という趣旨の投稿をしておられた。この方の解釈では“inbound”(=インバウンド)とは手元の英英辞書に「特に出発地点に戻る場合とある」と言っておられるのだ。実は、カタカナ語排斥論者の私は、訪日する人々を「インバウンド」とカタカナ語で表現されていることに余り注意していなかった。恥ずかしながら、それが政府が使う公用語だったとは全く知らなかった。

そこで、あらためて「インバウンド」を考えて見ることにした。極めて大雑把に言って「我が国を訪れる外国人」と言っても、外交官もおられれば、仕事(商用)でやって来られる方もあるし、日本見物(観光)の人たちもいれば、留学生も技能修習生いるだろう。それを十把一絡げにして如何に表現するかと考えた時に、アメリカの入管で問いかけてくるように“Business or pleasure?”と割り切れないだろうから、全てを包含できそうな「インバウンド」を選んだのかと考えた次第。

では“inbound”とはどういう意味かを手元のOxfordで調べてみた。これはそもそも形容詞であるし、formalだとあった。そこには“travelling toward a place rather than leaving it”とあり、投稿者の辞書の解釈とは異なるように思えた。そこで、Webster’s を見ればアッサリと“inward bound”とあった。そこでお馴染みのジーニアス英和を見れば「[通例限定]《船・飛行機が》本国行きの、帰航の」とあった。そして2番目には「市内[国内]に向かう」とあった。この辺りまでで私も十分に混乱させられた。と言うのは、“inbound”という言葉はWebster’sにあったように「内側に向けて」だろうと考えていたからだった。

解釈論はこれくらいにして、政府に言いたいことは「これほど様々な解釈がある英語の言葉をわざわざ選んで公用に使うとは何事か」なのである。更に追加すれば「もっと正確に『訪日客』か『来日者』といったような表現にして、意味不明か意味が正確に取られにくいカタカナ語を使うのは即刻お止めなさい」となるのだ。それでは不十分というのだったならば「商用、観光その他の来訪者」とでもしたら良いじゃないかとでも言ってやりたくなる。

何れにせよ、マスコミが何でもかんでも「トラブル」で括ってしまうような「英語の単語の本来の意味を無視したような粗雑なカタカナ語を使って表現するのは一国の政府がするべきことではないのではないか」と主張しているのである。因みに、“outbound”(アウトバウンド)はOxfordでは“travelling from a place rather than arriving in it”とある。何故、これで「夏休みや年末に海外旅行をする人たち」を表現しないのだろうか。だから、カタカナ語は辞めようと私は言うのだ。



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