新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

私が内側から見てきたアメリカ

2021-02-21 11:38:29 | コラム
MBAとは:

言う前もなく「経営学修士」と訳されているのですが、我が国では余り知られていない「経営管理修士」という教育機関であるとか病院等の管理運営を担当する分野を研究された課程もあるのだそうです。

正直に告白して、私は1975年にウエアーハウザーに転進して、初めて「MBAとは」と「ビジネススクール(大学院)という存在」を知ったほどこの面には疎かったのです。同時に、そもそもMBAとは如何なるものかを学んだ次第です。その当時のウエアーハウザーの東京オフィスにはPh.D.とMBAの日本人と日系人がいて、彼らから大いに仕事も英語も教えられて「なるほど」と思った程度に、このアメリカの教育制度を勉強させられたのでした。それと共に、アメリカの大手企業にあっては、如何にMBAという学歴、それも有名私立大学のそれが有利かも知り得たのでした。

当時に私が所属した事業部の本部には州立大学出身のMBAでかなり有能な若手のウオルトがいて、私も直ぐに親しくなりました。ある時彼が私を食事に誘って不満をぶちまけました。それは、ある日突然彼の上司に、かの有名なるスタンフォード大学で彼と同年齢のMBAのトムが入って来たのだそうです。彼の怒りは「俺は親に資力がなくて州立大学のビジネススクールにしか行けなかった。だが、トムは親が裕福だったので大して能力もないのにスタンフォードに行けたので、俺の上司に君臨した。遺憾千万だ」というものでした。

この私立大学と州立大学との間の格差は今でも厳然として存在し、寧ろ開く一方でもあるようです。即ち、Ivy League等の私立大学の授業料以外も含めた年間の学費は1,000万円を遙かに超えて1,500万円にも迫っているのです。世間一般での州立大学の扱いについては既に述べましたが、この学費の負担は余程資産家であるか裕福な家庭でないと負担しきれないと聞いております。尤も、我が国でも人気が高い州立のカリフォルニア大学は州の財政が破綻したので、今や私立大学並みに授業料になっているとかですが。

経済的な面はこれくらいにして、学問の点では如何なるものかにも触れておきます。私が1970年代後半に知り得たビジネススクールでは、専ら「ケーススタディ」で教育されているようでした。ではその“case study”とは何かと言えば、検索してみると

「ケーススタディ(case study)とはどんな意味なのでしょうか。小学館の『精選版 日本国語大辞典』辞典では「現実に起こった具体的事例を分析、検討し、その積み重ねによって帰納的に一般的な原理、法則を引き出す研究法。事例研究。個別調査」と定義されていました。

これだけでは不十分でしょうが、私は1980年代だったと記憶しますが、ウエアーハウザーの日本担当の駐在の副社長が社員教育に熱心で、ハーバード大学のビジネススクールと提携していると聞いた慶応大学の大学院からアメリカ人の教授を招聘して、社員を2日間だったかホテルに缶詰にして「ケーススタディ」を学ばせられた事がありました。その内容は確かに小学館の辞典にあった通りでした。だが、我々百戦錬磨の即戦力として雇われた者どにとっては退屈でした。

理由は簡単でした。確かに実際にあった「ケース」を採り上げて「此れ此れ然々の場合には如何にして局面を打開すべきか」との討論(discussion)をしよう」という形式でした。だが、我々40歳を超えた者たちに取っては討論するも何も、結論というか先が見えてしまって、ほとんど全員がいきなり答えを出してしまったのです。アメリカ人の教授は困惑して「先を読まないで下さい。討論しましょう」とまで言い出す始末でした。ここでは「ケーススタディ」が無意味だと言うのではなく、受講者の経験と年齢次第では有効ではないかも知れないという事です。

では、現在のアメリカの企業社会においてはMBAは如何なる地位にあるか、あるいは存在であるかを考えて見ます。私は1994年1月にリタイアした後で、改めてアメリカの大学について学ぶようになりました。そこで解ってきた事は「アメリカのある程度以上の規模の会社において生存競争を勝ち抜く為の資格というか能力の基準には『MBA』である事」となってきたという厳然たる事実でした。それも後述する私立・州立の有名大学で取得したMBAでなければとなったようです。

尤も、私が1975年にウエアーハウザーに転進した頃でも、経営上の主要な地位にある者は先ずMBAかPh.D.でした。中央研究所の技術者等はPh.D.が掃いて捨てたくなるほどいました。現在ではその学位所有者は経営を担う者たちばかりではなく、実務担当者の中にも圧倒的に多くなったという意味です。

ここまでを振り返ってお気付きかと思いますが、有名大学で2年かけてMBAを取得するまでに投資する学費は、俗な言い方をすれば「半端ではない」のです。という事は、これまでに繰り返して指摘した事で「アメリカ(のビジネスの)世界を支配している者たちは、それこそ一握りの裕福である資産家か、大手企業の副社長程度以上の地位にある者の子弟であり、尚且つ頭脳極めて明晰である者たちに限定されてしまうのではないか」なのです。勿論、奨学金や学生ローンなどはありますが、そう簡単にその恩恵に浴する事が出来るようでもないようです。

余り長くなるので、これ以上は次回に致しますが、ここでアメリカでのビジネススクールの評価で上位に入っている大学を紹介しておきます。これには色々な調査があるようですが、皆著名な私立大学ばかりですが、一校だけ州立のカリフォルニア大学バークレー校が入っています。以下の評価では、同率1位でスタンフォード大学とペンシルベイニア大学、3位にはノースウエスタン大学、4位にシカゴ大学、5位にMIT、6位が意外にもハーバード大学、7位がUCバークレー校となっていました。



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