9~10日と立て続けに浜松通い。現在制作中のJA静岡経済連情報誌スマイルの『静岡そだち』特集で、こだわりの焼肉専門店や販売店の取材です。
『特選和牛静岡そだち』は、JA静岡経済連が開発したブランド牛。経済連が飼育を委託した認定農家が、厳しい管理マニュアルのもと、おおむね327~30ヶ月齢ほど飼育した黒毛和種雌牛で、3等級以上の格付けをされたものです。認定農場は御殿場、富士宮、島田、浜松、湖西、三ケ日にあり、08年6月現在、11農場で1575頭を育てています。
黒毛和種雌牛の特徴は、きめ細かくやわらかい肉質と上品な旨味。和牛の中でも最も肉質がいいそうです。…なんか実感のない無責任な言い方ですが、私、食べたことないんですよね~静岡そだち。もともと限定牧場で限定飼育され、販売先も限定されていて、ロースで100g900円前後、サーロインで100g1300円前後といった価格帯。
今回、スマイルでは静岡そだちが食べられる店として、島田のステーキハウス『魯菴』(写真左)と、浜松の焼肉専門店『ソニャーレ』(写真右下)を取材しましたが、ふだん、牛肉を買って食べること自体、年に1度か2度あるかないかの下級市民の身からすると、目の前にしたサーロインの塊は、食べ物という実感がわきません。宝石の原石か、さし模様のオブジェのように見えます。
魯菴の小田切シェフには「原稿を書く前に必ず食べに来ます」と大見得を切ってしまいましたが、映画作りで食費すら切り詰めている身の上、どうやってねん出しよう…。
魯菴もソニャーレも、郊外の目立たないところにある席数の少ないこじんまりとした店ですが、新幹線や高速道路を使う県外客もやってきて、予約なしでは入れない人気店。ふだん気軽に入れるチェーン焼肉店とは対極にあるのかもしれませんが、静岡そだちというブランド牛で繁盛する店が現実に存在するということは、苦労してブランド牛を育てる価値もあるわけですね。
ちなみに静岡そだちを最もおいしくするソースは、魯菴の小田切シェフは「わさび」、ソニャーレの小澤シェフは「岩塩」だそうです。
お二人とも「肉そのものにうまみがあるので、シンプルな調味料にすべし」とのことでした。
私は取材者として、厳しい管理マニュアルを守ってブランド牛で勝負する生産者や、割高なブランド牛の価値を消費者に伝える努力を怠らない流通業者、ブランド牛の美味しさを最大限に引き出して提供する飲食店主らの努力を、川上~川下の縦軸で俯瞰視できる立場にあります。この立場にある者の使命・役割というものを意識し続けることは、静岡吟醸の取材で培った大切な資質だと思っています。
今回の取材は、川下の消費者と接触する飲食店の取材からスタートし、流通、生産者と川上に取材が進む予定です。飲食店主や販売店主からこれだけ大事に扱われ、いい商売をさせてもらっていると喜ばれる牛肉を育てる生産者って、どんな人だろう・・・。静岡吟醸では川上から川下へと取材してきたので、逆ルートの取材もまた楽しみです。
1本の縦軸でブランドが確立する姿が、この先いくつ取材できるのか。・・・それは静岡県の豊かさのバロメーターといえるかもしれません。