私、地元静岡で20数年取材活動をしていますが、静岡にある有名スポットで1度も行ったことがないところがまだまだあるんですね、お恥ずかしながら・・・。その一つ・浜名湖競艇に、今日、初めて取材に行きました。
競艇はもちろん、競馬、競輪、株、宝くじetc・・・ギャンブルの類はほとんど縁がなく、飲み仲間の女性から、休日は浜名湖に行く、と聞いた時は、マリンスポーツかシーフードグルメツアーでもするのかと思ったら、「競艇」と聞いて吃驚した経験があります。その時は、彼女が特殊な趣味を持つ人種のように見えてしまいましたが、今日、初めて会場に入って、改めて吃驚! メイン施設はディズニーランドにあるようなお城仕立ての瀟洒な建物で、コンシェルジュみたいなお姉さまがウエルカムしてくれるのです。なんでも、競艇初心者はお一人様もサポートがつき、競艇新聞の読み方とか券の買い方を指南してくれるそうです。
3年前に浜名湖競艇企業団のトップに就いた疋田竹幸企業長は、ディズニー、コンビニ・スーパーを参考に、競艇施設のハード&ソフトを大改革。まず、コンビニの“いつでもやってる、どこでも買える”に倣い、年間で206日のレース開催(開催数日本一)を断行。集客数が増える土日はナイターを含めて1日30レース行うほか、場外売り場を茨城、福島にも設置しました。
ディズニーに倣ったのは、レース以外にも楽しめるメニューを増やし、女性や家族連れでも1日過ごせるよう、施設のリニューアルを定期的に行うこと。サービスに関しては、252人のスタッフの意見やアイディアを積極的に採用しています。彼らが意欲的に取り組めるよう、「日本一の競艇を目指せ」を合言葉に、毎月の営業会議で経営的な数字も公開し、一人ひとりが、どうやったら利益が生み出せるか考えるようになったといいます。
異業種との連携によるイベントや展示会で、新たな客足を向けさせる仕掛けも、スタッフのアイディアでさかんに行われています。たとえば浜松は浴衣の街としてPRしたいと聞けば、人気選手に浴衣を着てもらったり、地元の静岡文化芸術大学の学生にボートのデザインや施設の壁面アートを担当してもらい、ボルボやハーレーダビットソンに展示会場として無償提供したり、ネイル体験、ダンスショー、お笑い芸人ショー、農産物展示即売会といったイベントも開催。疋田さんは「プロ野球のパリーグでお荷物球団だったロッテや日ハムが、観客サービスをとことん追求し、球場に来る楽しさを演出し、見事な成果を上げた。あれに倣って、レース券を買うだけではない、滞留時間が長くなるような仕掛けをあれこれ考えています」と楽しそうに語ります。
日本には24場の競艇があるそうですが、どこも経営は芳しくないよう。そんな中、浜名湖競艇は4年前は売上704億円で利益7900万円、3年前に売上642億円で利益9000万円、疋田さんがテコ入れした2年前には売上763億円で利益7億円、昨年は692億円で5億円(SGレース開催費用に2億かかったそう)と、他場では例のない高収益体質に転換しました。
「公務員が出向しているような公営ギャンブルで利益を出す知恵が生まれるはずがない。仕事の基本は何といっても<人>です。うちはスタッフ全員がプロパーで専任意識を持っている。それが一番の自慢です」と疋田さん。話を聞きながら、ホントに、いろんな業種や企業のサクセスストーリーを実践したんだ・・・と実感しました。
浜名湖競艇は入場料100円。オープンして55年間、まったく変わらない値段だそうです。疋田さん曰く「100円で大人が遊べる元祖100円ショップ」。まあ、でも100円で済むはずはなく、私もせっかくだからと生まれて初めてレース券を買ってみました。競艇新聞の予想を鵜呑みにし、◎を1着、〇を2着の2連単を1000円で買ったところ、△が1着、◎が2着の大外れ・・・。ビギナーズラックとは行きませんでした。1000円は疋田さんの講演料代わりと思うしかありません(涙)。
今回は、同じく競艇場訪問は初めてという人がほとんどの、静岡県ニュービジネス協議会西部部会18名と一緒の取材でした。私は夕方、初亀醸造さんで『吟醸王国しずおか』の撮影打ち合わせがあったため、1レースだけ参加して失礼しましたが、残った西部部会の皆さんは、やみつきになりそうと言いながら楽しんでいました。新聞の細かなデータを読んだり、頭を働かせるのは、まさに生きた“脳トレ”。現金がかかっているとなると、本気度も違います。ストレス解消にはもってこいかも(私みたいに、小心者のくせにすぐにムキになっちゃう人間には、逆にストレスになるかもしれませんが・・・)。
競艇は日本で生まれた、日本にしかないギャンブルです。しかも公営ギャンブルは売上のいくばくかが社会資本に還元されています。
ギャンブルである以上、相応のリスクがあるのは当然ですが、リスク面ばかり見て後ろ向きにならず、たとえばカジノや競馬場が大人の社交場として機能する諸外国のように、今、進展中の競艇場の新たな付加価値づくりをもっともっとアピールし、我々地域住民もその動きや可能性を、ギャンブルという色眼鏡だけでなく、多角的に見るべきだと思いました。
静岡空港開港以降は、国内外から新たな観光客を引っ張ってくる大きな強みになるかもしれませんね。