評価
再読(前回2020年4月1日)。
A級戦犯で処刑された7人の中で唯一の文官、元首相・外相の広田弘毅の半生を綴った作品。「エリート外務官僚であったが、政治家としては無力で静観主義をとり、軍部に追随した」とされる広田を「死者たちの罪まで背負って死者の国へ赴こう」との思いを背景に抑制した筆致で描く。
日中戦争勃発前後に政権の要職を担った広田は、東京裁判において首相当時立案の「国策の基準」に検事側から目をつけられ、南京虐殺(外相時)に対しては「防止の怠慢の罪」に問われることになる。死刑判決の評決は6対5。助命・減刑嘆願運動もむなしく、昭和23年11月23日午前0時20分刑に服す。
広田は日中戦争勃発時に戦線不拡大を唱えるも、それに反発する陸軍を「外交の相手は日本軍部」と評したほどの協調外交を柱とした考えの持ち主であったのだが、「自ら計らわず」をモットーとし、東京裁判においては一切の抗弁を断ち運命を受け入れたのだった。
当時の状況で軍部に抵抗できる政治家、官僚、マスコミ、国民はいたのだろうか?正直、気の毒だな~という気持ちが強い。
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