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母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

賢帝の世紀(上)-塩野七生

2020年07月31日 | 読書
評価4

・第13代皇帝トライアヌス(98年~117年)

公明正大で健全そのものの私生活を送る「至高の皇帝」と称されたトライアヌスは執政官、高地ゲルマニア軍司令官を経て属州(スペイン南部属州ベテカ)出身初の皇帝となり、①元老院議員に「資産の三分の一はイタリアに投資すること」としたイタリア本国の空洞化対策②育英資金制度の創設③公共工事の積極的推進(代表例:スペインのアルカンタラの橋)等多くの政策を実行した。この頃にはすでにコンクリート製法を開発しており、レンガの間をコンクリートで固めていたというのだから驚く!

国境を接するダキアとの間では第1次、2次のダキア戦役で勝利をおさめ、それで得たダキア地方の鉱山とダキア王の財宝を公共事業へとつなげることに成功した。引き続きパルティアへと軍を進めたトライアヌスは首都バグダッドを攻略、ペルシャ湾岸に到達する。しかし、その後、勃発した諸侯の蜂起とユダヤの反乱に苦しめられ、後継にハドリアヌスを指名した後の117年にその生涯を閉じる。

必ず出て来る、パルティアとの戦いとユダヤの反乱。これぢゃ~賢帝だぢもゆるぐない(笑)。

マスカレード・ホテルー東野圭吾

2020年07月28日 | 読書
評価4

都内で謎のメッセージを残した3件の殺人事件が起き、警察当局は連続殺人事件と見て捜査を開始。メッセージの解読で、次の事件現場を一流ホテル・コルテシア東京と断定した警察は刑事・新田浩介など多くの警官を派遣し厳重な警備に当たる。フロントマンに扮した新田は山岸尚美の教育を受けながら、次から次へと怪しい来客が訪れる中、鋭い目を光らせる。

久しぶりに東野圭吾のエンタメ小説を満喫!
意外な犯人の用意周到な戦略と謎解き、そこに新田と尚美が絡むなんとも怪しい客たちが巻き起こす出来事、なかなか頁をめくる手が止まらず515頁一気読み!尚美が口走る言葉をヒントにした、あまりにも鋭い新田の閃きで謎が一つ一つ解けて行く展開には「ちょっとご都合主義・・・」と思わないでもないが、かなり面白かった!ただの推理小説で終わらないエンタメ小説!さすが!東野圭吾!

リセットー垣谷美雨

2020年07月25日 | 読書
評価3

垣谷美雨さん12冊目。
専業主婦の香山知子、キャリアウーマンの黒川薫、パートの赤坂晴美の3人は高校の同級生で47歳。現状に不満を持つ3人が高校時代にタイムスリップ!知子は女優、薫は主婦、晴美は開業医の妻として第2の人生を歩む。さて、3人の行く末は?

知子が女優として再出発するくだりは「後悔病棟」で芸能界デビューを果たす小都子を彷彿とさせる。男中心社会を打破し自立を目指す女性を描く垣谷作品は軽快なテンポで進み、あいかわらずの安定感。今回も男としていろいろと考えさせられました。

危機と克服(下)-塩野七生

2020年07月24日 | 読書
評価4

・第10代皇帝ティトゥス(79年~81年)
・第11代皇帝ドミティアヌス(81年~96年)
・第12代皇帝ネルヴァ(96年~98年)

ヴェスパシアヌスから始まったローマ史上2番目の世襲皇系(フラヴィウス朝)も27年で終焉を迎える。ローマ帝国が直面した危機を収拾し、帝国を再び軌道に乗せ、しかも「リメス・ゲルマニクス(ゲルマニア防壁)」の建設など数多くの政策を実行することで帝国の活力を復活させ、ローマ帝国のさらなる繁栄の基盤を築いたのがこの3人の皇帝の功績であった。

その後、ネルヴァを皮切りにしてトライアヌスへと続く5賢帝時代を迎えることになる。

しかし、ゲルマン人しぶとい。ブリタニア(イングランド、ウェールズ)はローマに侵略されたっていうのに・・・

新検察捜査ー中嶋博行

2020年07月22日 | 読書
評価3

女性の心臓をえぐり出す猟奇殺人を起こした17歳少年が無罪となり、法廷では診療報酬の不正受給で公判中の医師が射殺される。この2つの事件に関った横浜地検の岩崎紀美子(36歳)が検察捜査を始め、思わぬ巨悪の渦へ引き釣り込まれる。ハードボイルド+社会派サスペンス。

事件の根幹には、マイナンバー制度を犯罪者追跡に利用して犯罪者を根絶やしにしようとする、警察権力、官僚、政府のたくらみがあったのだった。いやはや、このために人を4人も殺して、猟奇殺人をでっち上げて・・・ちょっと荒唐無稽過ぎる気がします。

「第2の音道貴子」に期待(笑)したのですが、作者の力量不足からか岩崎検事はそんなに魅力的には感じられませんでした。

危機と克服(中)-塩野七生

2020年07月21日 | 読書
評価5

・第9代皇帝ヴェスパシアヌス(69年12月~79年6月)

ヴィテリウスを死に追いやり皇位に就いたのは、騎士階級(エクイタス)出身のユダヤ方面司令官・61歳のヴェスパシアヌスだった。新皇帝はユダヤ戦役の見通しを確認して(70年1月1日に元老院の承認を得てから10ヵ月後)本国帰還を果たす。

ヴェスパシアヌスは二人の息子(ティトゥス、ドミティアヌス)への皇位継承を見据えた「皇帝権」の法制化を成し遂げ、元老院による皇帝へのチェック機能を消滅させることに成功する。また、①「平和フォールム」の建設で平和と秩序の再復と②「コロッセウム建設」で娯楽を与えると同時に皇帝と一般市民とのつながりをアピールすることを忘れなかった。

この「健全な常識人」ヴェスパシアヌスは財政再建も果たし、息子ティトゥスへの皇位継承の道も築いた上で生涯の幕を閉じたのであった。

【追伸】ついに文庫本全43巻の折り返しです!