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母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

日本のいちばん長い日ー半藤一利

2019年01月30日 | 読書

評価5

昭和20年8月15日、終戦の日の24時間ドキュメントを中心に、ポツダム宣言(7月26日)前後の混乱を極める日本政府・軍・天皇周辺の動きを綿密な取材と証言を基に再現した極上のノンフィクション。広島、長崎への原爆投下、ソ連の参戦という現実に直面しても徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられポツダム宣言への対応を決められない日本政府の迷走ぶりに驚くとともに、8月15日の表立っては伝えられない青年将校による宮城占拠事件の一部始終にページをめくる手が止まらなかった。

今まで、8月15日=玉音放送=終戦記念日、としか思っていなかった自分が恥ずかしい。

戦争継続か和平かで紛糾する閣議、2度に及ぶ天皇への聖断願い、苦悩する天皇、青年将校による近衛師団長惨殺とニセ下命、玉音放送録音へ至るいきさつと放送会館占拠、阿南陸相の自刀等々、息をもつかせぬ展開に胸がしめつけられる。フィクションではなくこれが史実だったのだ。今、思う、南方、満州へ陸軍軍曹として出兵した(今は亡き)父親に話を聞いておくべきだったと・・・

名もなき毒ー宮部みゆき

2019年01月27日 | 読書

評価3

主人公の杉村三郎が勤める今多コンツェルン社内報編集室でアルバイト女性が巻き起こすトラブルと青酸カリ連続毒殺事件がシンクロして物語が進み、この2つが出会い劇的なラストを迎える。

アルバイト女性問題の行く末は想像通りだったが、毒殺事件の真相については納得がいかないところ多々あり。ラストもどちらかと言えば力技(笑)。主人公が境遇に恵まれ過ぎてるし悲壮感がなく、そして、とにかく話が長い・・・

マイナス・ゼロー広瀬正

2019年01月24日 | 読書

評価3

昭和45年刊行、タイムマシン物の長編SF。
昭和20年5月26日未明、東京大空襲の最中、中学生の浜田俊夫はお隣の伊沢先生から「18年後にまた同じ場所に来て欲しい」との遺言を受ける。18年後の同場所を訪れた俊夫は、当時の姿のままの伊沢先生の養女・啓子と再会。啓子はタイムマシンで時空を超えてやって来たのだった。啓子を昭和38年の世界に慣らそうとする俊雄だったが、タイムマシンを操作し思わず昭和7年へと遡ってしまう。伊沢先生が現れた昭和9年まで、タイムマシンに隠してあったお金と戦後の知識で乗り切ろうとする俊夫だったが・・・

いきなり啓子にキスしようとする俊夫、それに対する淡白な啓子の態度、知り合ったホステスのレイ子がデパート火災で亡くなったにもかかわらず淡々と進む物語、う~む、あまりにも情緒的に浅い内容に苦笑するも、ストーリーとしてはかなり面白い!当時のテレビやラジオの電化製品に対する薀蓄が凄い(私には全然わからないが・・・)。

若い頃、筒井康隆、眉村卓、平井和正、豊田有恒、小松左京などのSFをしこたま読んだ。SFにも手を出してみよ~かな~と思い始めた今日この頃。

【追伸】
大相撲今場所(2019年初場所)で盛岡出身の錦木が岩手県出身力士として51年ぶりの金星を上げたことが話題になったが、その51年前の金星力士・花光が十両で北の富士と対戦する話題が390頁に登場!ビックリ!

姫椿ー浅田次郎

2019年01月22日 | 読書

評価3

8作品からなる短編集。

・シエ
飼い猫を死なせてしまった私生児で生まれた34歳の女性が近所のペットショップで中国伝説の動物シエを譲り受ける。シエは不幸を食べる動物だった。

・姫椿
経営に行き詰まり死に場所を探す社長の前に現れたのは若かりし頃に通った銭湯とそこに集う人々。その人情に触れる。

・再会
三十年前に別れた女性への断ち難い思いを心に秘めた男が幸福の絶頂にある女性とすれ違い、その直後に詐欺犯に落ちぶれた同じ女性を目撃する。

・マダムの咽仏
・トラブル・メーカー
・オリンポスの聖女
・零下の災厄

・永遠の緑
妻に先立たれ、思い出の競馬場に通う大学助教授がある男性と意気投合。その男性は一人娘の恋人だった。

シエには泣かされました。人生の機微を綴るほのかな作品集です。

宿命ー東野圭吾

2019年01月20日 | 読書

評価3

主人公の勇作が幼い頃にレンガ病院の庭で仲良くしてもらっていた女性サナエが死んだ。勇作が小学校に上がると晃彦という勉強もスポーツも全てにおいてかなわない少年が現れる。晃彦はレンガ病院で見たことがある少年だった。高校まで同じだった勇作と晃彦はそれぞれ警察官、脳外科医師の道へ進む。そこで、晃彦の父の経営する電気機器メーカーを引き継いだ男が謎の死を遂げる。捜査担当になった勇作は晃彦の妻に会って驚く。その妻・美佐子は高校時代の初恋の女性だった。勇作は事件捜査に奔走するが、そこにサナエの死と電気機器メーカー、晃彦の父との関係が浮かび上がって来るのだった。そして、ついに「宿命」の謎が明かされる。

最初に思わせぶりな小ネタを出して、犯人捜しで読者を引きつけ、家の秘密をひた隠しに隠すために様々な人間模様が錯綜する展開は「夢幻花」(2018.9.8読了)と同じパターン。「夢幻花」より20年以上も前の作品なのでその原形となる作品と言えるかもしれない。

私も東野圭吾に慣れて来たらしく、真相がほぼ予想通りでホッとした(笑)。

日本海軍の興亡ー半藤一利

2019年01月18日 | 読書

評価3

知る人ぞ知る海軍物の第一人者・半藤一利の2冊目。著者ならではの日本海軍の誕生から太平洋戦争までの歴史が人物を中心に詳しく語られる。若い頃に歴史本で知った「レイテ沖海戦での栗田艦隊謎の反転」などが懐かしかった。

著者が語る歴史が秘める教訓を2つ紹介しておこう。
1.国民的熱狂を作ってはならず、国民的熱狂に流されてはならない。
2.危機における日本人は抽象的な観念論を好み、具体的な方法論を検討しようとしない。

この二つは、戦争物を読んでいて私も常々感じていたことである。これからの時代もこの点については日々目を光らせて世情を見誤らないようにしたいと思う。