評価
昭和20年8月15日、終戦の日の24時間ドキュメントを中心に、ポツダム宣言(7月26日)前後の混乱を極める日本政府・軍・天皇周辺の動きを綿密な取材と証言を基に再現した極上のノンフィクション。広島、長崎への原爆投下、ソ連の参戦という現実に直面しても徹底抗戦を叫ぶ陸軍に引きずられポツダム宣言への対応を決められない日本政府の迷走ぶりに驚くとともに、8月15日の表立っては伝えられない青年将校による宮城占拠事件の一部始終にページをめくる手が止まらなかった。
今まで、8月15日=玉音放送=終戦記念日、としか思っていなかった自分が恥ずかしい。
戦争継続か和平かで紛糾する閣議、2度に及ぶ天皇への聖断願い、苦悩する天皇、青年将校による近衛師団長惨殺とニセ下命、玉音放送録音へ至るいきさつと放送会館占拠、阿南陸相の自刀等々、息をもつかせぬ展開に胸がしめつけられる。フィクションではなくこれが史実だったのだ。今、思う、南方、満州へ陸軍軍曹として出兵した(今は亡き)父親に話を聞いておくべきだったと・・・