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母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

レベル7-宮部みゆき

2020年03月29日 | 読書

評価4

宮部みゆき34冊目。
マンションの1室で記憶を失った男女が目覚めた。その腕には「Levl7」の文字が刻まれていた。そして、17歳の少女が日記に「レベル7まで行ってみる」と記して失踪した。この二つの謎を追う人々がたどり着いた真相とは?同時並行で進む追跡行が見事に収斂、さすが宮部みゆき!

わけのわからないプロローグで始まってモヤモヤ感が半端ない読み始めだった、が、読み終わって納得。もう一度プロローグを読み返す(笑)!いろいろな方向に歩き出す出来事が徐々に一つの方向に向かって行きつつ、最後にどんでん返しがやって来る。作者に翻弄されつつ768頁読了。

皇帝フリードリッヒ二世の生涯(下)ー塩野七生

2020年03月25日 | 読書

評価5

ここ5日間ひたすら読み続け、ついに読了。いやはや感動の極致!
帯にある圧倒的先駆者まさにそのもの!

フリードリッヒ終焉の地であるカステル・フィオレンチーノ(イタリア)に建つ八角柱には、こう記されている。

「フリデリクス、神の恩寵によってローマ帝国皇帝、常にアウグストゥス、イェルサレムとシチリアの王、シュワーベンの公爵、1194年12月26日イエージに生まれ、1250年12月13日、フィオレンチーノにて死す」「この年、皇帝フリードリッヒが死んだ。世俗の君主の中では最も偉大な統治者であり、世界の脅威であり、多くの面ですばらしくも新しいことを成した改革者であった。」

「政教分離」「法による統治」「支配階級以外からの人材登用」「官僚体制の構築」「イタリア語の普及(ラテン語からの脱却)」などなんという先見性だろう。驚くばかりである。

「こったなやづらど競ったってかなうわげねーべな」
などとちょっぴり気弱になってしまう、島国の辺境に住まう農耕民族の末裔なのであった(笑)。しばらく、ローマ関係に深入りしそうな予感・・・

皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)ー塩野七生

2020年03月23日 | 読書

評価5

塩野七生初読み!
皇帝・フリードリッヒ2世(1194年~1250年)が統治していた頃の神聖ローマ帝国の領域は、今のドイツ、オーストリア、スイス、フランスの一部、北イタリア、南イタリアである。ローマを中心にした地域はローマ法王の直轄領であり、何かにつけ、皇帝と法王の衝突が絶えない。そんな中、フリードリッヒは、第6次十字軍遠征を断行した上、無血でイスラム教徒から聖地エルサレムを奪還、世界初となる国立大学をナポリに開校、さらに、メルフィ憲章制定と「最初の近代的人間」と称されるほどの文武ともに天才的なバランス感覚を持っていた。

いや~こんな人が中世ヨーロッパにいたんですね!知りませんでした!もっと世界史勉強しておけばいがったな~(後の祭り・・・)しかし、塩野七生さんの文章、読みやすい!スイスイ頭に入る!これはしばらく、塩野ワールドに浸ることになりそうです(笑)。下巻にゴー!!!

6月19日の花嫁ー乃南アサ

2020年03月21日 | 読書

評価4

乃南アサ16冊目。
一切の記憶を失った池野千尋は26年の人生を遡る旅に出る。その鍵を握るのが6月19日だった。学生の頃、医大生に無理心中を迫られた日。ホステス時代にその日に結婚の約束をした男がいた。3度目の記憶喪失から蘇った千尋の結婚式の日。複雑に絡み合うストーリーが見事に収斂。今回も一気読み!

何度読んでも乃南さんの作品には引きづり込まれる。今、一番好きな作家!

しかし、主人公の千尋、多少人格は良い方に変わったとは言っても、たぶらかされてガスで死んでしまった医大生の小山君が可哀そう。しかも、高額の財産を手中にするらしい・・・ちょっと共感できなかった。

指揮官たちの特攻ー城山三郎

2020年03月19日 | 読書

評価5

海軍大尉の関行男と中津留達雄は海軍兵学校同期で23歳。関は神風特攻隊第1号(敷島隊)に選ばれレイテ沖に散る。中津留は玉音放送の日、終戦を知らされることもなく宇垣纏司令長官とともに沖縄で最期を迎える。二人の妻、両親との逸話を織り込んだ秀作。涙を禁じえなかった。

人間魚雷・回天、人間ロケット・桜花などの特攻兵器による「虐殺」。幾多の若者が人生を無駄に終わらせられた。あまりにむごい。狂っている。私たちは、この出来事を忘れてはならない。

死んでも忘れないー乃南アサ

2020年03月18日 | 読書

評価4

城戸家は父・崇(41歳)、母・絢子(35歳)、渉(15歳)の三人家族。先妻が男の許に走った後、男所帯に絢子がやって来た。絢子が子供を宿した頃、崇が痴漢の嫌疑をかけられたことをきっかけに渉は学校でいじめにあい、絢子の心もすさんで行く。やがて家族は崩壊への道をひた走る。

いつもの乃南ワールドのジワジワ感で本を離せない!
表面を取り繕うことに終始して来た家族が崩壊寸前で「真の家族」に再生する姿に感動。あの、受験生・友樹が家にやって来なかったら城戸家の再生はなかっただろう。あいかわらず、乃南さんはうまいな~♪

ハンニバル戦争ー佐藤賢一

2020年03月16日 | 読書

評価4

時は紀元前3世紀。ローマ帝国の指揮官スキピオはイベリア、イタリア北部で幾度となく難敵・カルタゴのハンニバルに苦汁を飲ませられる。ハンニバルの戦術「包囲殲滅作戦」に、イタリア南部のカンナエの戦いでは7万人の兵を失った。雪辱に燃えるスキピオはハンニバルの戦術を研究しカルタゴの地・ザマでの最後の決戦に挑むのだった。

いわゆる第二次ポエニ戦争(紀元前218年~201年)の話。フィクションかと思っていたが、調べてみると、史実に沿った物語のようだ。追い詰められたハンニバルが夜陰に紛れて牛の角に松明をくくりつけローマ軍を急襲した話や戦象(せんぞう)を前面に押し立てて戦うシーン、武器は槍、石、刀剣、ってところが「ひゃー古代!」って感じ(笑)。

ちなみに、『平家物語』に、木曽義仲が京に上る途中、倶利伽羅峠を守る平家軍に対し、牛に松明をつけて峠を走り下らせ、大軍が攻めてきたと驚き恐れた平家軍が潰走したという同じような話があるそうです。で、ローマの峠が「カッリクラ峠」で日本の峠が「倶利伽羅峠(くりから)」。なんという符合(驚)!

子供の頃にハンニバルが出て来る本を読んだ記憶があり、いつかハンニバル物を読んでみたいと思っていたことと、「独ソ戦」で西洋史に興味を持ったこと、塩野七生さんの本を読む前にローマ帝国に慣れておこう、ということで手に取った本。地味な戦闘シーンが多いのですが、けっこう面白かったです!いやーっ「知らないことを知ること」って楽しい!!!