白堊スポーツ - since 2004.09.18

母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

ホテル・アイリスー小川洋子

2021年11月30日 | 読書

評価5

母が経営するホテル・アイリスのフロント係マリはロシア語翻訳家の男と知り合う。普段は大人しい男だが島の家に着いた途端に豹変、マリを裸にし紐で全身を縛り凌辱する。次第に官能の世界へのめり込む娘と男の歪んだ愛を独特の筆致で語る小川ワールドの新境地!

異常に髪にこだわる母親、病的なほど几帳面な男、舌がないために口がきけない男の甥、液体状の料理、マリの持ち物を盗むおばさん、小川洋子的キーワード満載だが、小川さんがこのたぐいの小説を書くとは!?ビックリ。まさかの結末にも驚いたが、けっしてドロドロしない小川ワールドに大満足。ぐいぐい物語に読者を引き込む力量はさすがです。



日本国憲法の200日ー半藤一利

2021年11月28日 | 読書

評価5

再読(前回2019年7月17日)。
終戦から203日目の昭和21年3月6日、ついに「憲法改正草案要綱」が政府より発表された。新憲法成立までの道のりを、当時15歳の著者の日常と世相を織り交ぜて膨大な資料をもとに時々刻々と筆写するドキュメンタリー。あたかも当時にタイムスリップした感覚になる歴史探偵の手になる傑作!

「一億玉砕」を叫んでいた国民が連合国進駐とともに手のひら返しでなにもかも米国になびいて行く姿が生々しく描き出されている。先方の戦略にまんまと乗せられた感はあるが、あらためて「ニッポン人ってなんなんだろう?」と考えさせられる。

堅い表題にしては半藤少年のエピソードや当時のユニークな世相も満載なので、さらっと憲法制定までを知るにはうってつけの本だと思います。