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評価
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再読(前回2017年4月3日)。
F医大外科研究生の勝呂と戸田は助手の浅井から米軍捕虜の生体解剖への参加を求められ、それに立ち会う。勝呂は担当患者の死をきっかけに「凡てなるようになるがいい」と自暴自棄になっており、戸田は自身の「良心の麻痺」を訝しんでいる時だった。九大医学部で起こった相川事件をモチーフとした作品。
「相川事件」とは昭和20年5月から6月にかけて、本土空襲で捕虜になったB29搭乗員若干名を九大医学部の一部において、西部軍監視のもとに軍事医学上の実験材料にした事件。その目的は、人間は血液をどの程度失えば死亡するか、血液の代用として生理的食塩水をどれだけ注入することができるか、また、どれだけ肺を切り取れば人間は死亡するか、ということだったらしい。
担当患者の死により無気力になって行く勝呂、幼き頃から「他人の苦痛などに平気であった」戸田、子どもの死産と夫との別れにより心が壊れかける解剖に立ち会った看護婦の上田ノブ、など生体解剖をとりまく人々の心境がじわじわと読む者に迫ってくる名作。
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