1月21日 NHK海外ネットワーク
ミャンマーは人口5,800万で90%が仏教徒である。
1人当たりのGDPはASEANで最下位。
1988年にクーデターで実験を握った軍事政権は、
民主化運動を徹底して弾圧し欧米諸国から経済制裁を受け、
国際社会から取り残されてきた。
去年3月、新しい大統領が就任し、
民主化を加速させている。
長く拘束されてきた政治犯約500人が釈放された。
民主化運動のリーダー、アウン・サン・スー・チーさんは
4月に予定される議会下院の補欠選挙に立候補した。
欧米諸国との関係改善も進んでいる。
アメリカ政府は大使の派遣の手続きを始めることを明らかにした。
日本、イギリス、フランスの閣僚も訪問した。
こうした政策の転換を推し進めているのが
去年3月に就任したテイン・セイン大統領である。
大統領の政治アドバイザーを務めるネイ・ジン・ラート氏は
ミャンマーの改革派後戻りしないと自信を示した。
ミャンマーの潜在的な経済力に日本の企業も注目している。
ミャンマー政府の呼びかけで視察に訪れた経営者たちにとって
一番の魅力は安くて豊かな労働力。
最大都市ヤンゴンでも平均月収は3,000円余で
中国やタイよりもk人件費が安く抑えられる。
また識字率が90%以上と高いことから優秀な労働者を確保できると期待されている。
天然ガスなどの地下資源も将来性が見込まれている。
今月、枝野経済産業大臣が訪問し、
日本がエネルギー開発を支援することが決まった。
これまでミャンマーは人権問題を理由に欧米諸国から経済制裁を受け
隣接する中国の開発援助に大きく頼ってきた。
しかし今、世界に大きく門戸を開くことで投資を呼び込もうとしている。
改革は政治や経済の分野にとどまらない。
今、若者を中心に国民の暮らしも大きく変わり始めている。
ヤンゴンの中心部のショッピングモールには
若者向けの流行のデザインの洋服が並ぶ。
都市部には大型商業施設が次々に建てられている。
ミャンマーでは長く、伝統的な衣装が一般的で、
男性も女性も足首まで長い布を巻くスカート姿だった。
しかし、都市部では若者を中心に服装が変化し、
それを後押ししているのが
去年6月、テイン・セイン政権はファッションやスポーツなどの雑誌の
発売前の検閲を廃止したことである。
ヤンゴン市内の大手出版社では海外などのブランドなどを紹介する雑誌を発行している。
検閲当時の紙面では
ドレスの背中が大きく開いて肌が見えすぎていると指摘され、
黒いレースで覆われているように加工した。
ミニスカートのモデルは足が見えすぎないように写真の修整が行なわれた。
しかし今、雑誌の製作者たちは表現の自由が認められるようになったと感じている。
去年11月に男性向けのファッション雑誌が創刊された。
最新号の企画はヒップホップ。
若者たちの間でも民主化の確かな息吹が感じられる。
都市部の一部に限られているが、富裕層は拡大してきている。
中心となるのは軍の出身者や
海外と取り引きを行なうビジネスマンの家庭。
一方で、国民の大多数を占める貧困層に
経済発展の恩恵をどのようにいきわたらせるのかが課題である。
軍は今も強い影響力を持っている。
議会の4分の1が軍人に割り当てられ、
民主化が進んでも軍が既得権益を手ばなすことは無いと思われるが
国際社会に民主化をアピールした以上、
テイン・セイン大統領の下で民主化が進められていくとみられている。
今後の焦点は、4月の議会の補欠選挙が公正に行なわれるかである。
選挙ではスー・チーさん率いる政党が一定の勝利をおさめるとみられ、
スー・チーさんがとのような役割を担っていくのか注目される。