2月4日 NHK海外ネットワーク
議会選挙の枠組みではイスラム勢力が大きく台頭したエジプト。
民主化運動の中心となった若者の中には、
民主主義の大切さを多くの人に伝えるため、
新たな取り組みを始めた人がいる。
エジプト国旗と同じ赤、白、黒の車体で
街中を駆け抜ける1台のバスは、“フリーダム・バス”と呼ばれている。
車体にはピラミッド、モスクと教会が一緒に描かれている。
乗っているのは20~30代の若者で、
公務員や弁護士など職業はさまざまである。
仕事の合間にボランティアで参加しているアイマン・サイードさんは
スポーツ青年省に勤める公務員である。
この日やってきたカイロの40km北、バンハの大学で、
ムバラク政権が終わった今、
新しいエジプトには若い人たちの参加が重要だと訴えた。
国民ひとりひとりの権利をイラストで説明した冊子が人気を集めた。
サイードさんたちは、
学生たちが政変後、
開放感にあふれていることを実感した。
カイロを拠点に半年前から活動をはじめて、
すでに30近くある県の半分を訪れた。
1日に300km近くも移動するときもあり、疲れもたまる。
農村にある小さな町では、
選挙の仕組みをスクリーンに映しだし、
立候補した人たちの名前が投票用紙に記されること、
そこから投票したい人を選ぶことをわかりやすく説明した。
民主主義とは無縁だった住民たちに理解してもらうのはひと苦労であるが、
対話を続けるうちに住民たちは
いかに独裁的な政権に抑圧されてきたかを語りだした。
エジプトは若者の力が国を動かした。
彼らは民主主義を確かなものにしようとバスで走り続けている。
軍の最高評議会は
“議会で憲法改正を行なった後、6月末までに大統領選挙を実施する”
としている。
しかし、市民は
“軍の暫定統治はムバラク政権と変わらない”
と非難の声を強め、
一日も早く権限を手放すよう求めている。
このため軍が大統領選を前倒しする可能性がある。
中東ではこの1年、
次々と独裁政権が倒れ、
民意を無視することは政権の命取りだという雰囲気が広がっている。
アラブの春の先駆けとなったエジプトが混迷から抜け出し
本当の春を迎えることが出来るのか
中東地域全体にも影響を与えるだけに
その行方が注目される。