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残虐な犯行を天秤に載せて釣り合う刑は

2012-02-24 12:39:07 | 編集手帳


  2月21日付 読売新聞編集手帳


  与謝野鉄幹の詩を。
  〈わたしは十四になりました
   ひまを下さい春の野に
   緑の木かげで本を読も
   何やらかなしいことがある
   何やら知りたいことがある〉。
  劇作家宇野信夫の随筆から引いた。

  思春期の憂いと、
  知的な好奇心と、
  14歳とはそういう年頃だろう。
  本村夕夏ちゃんが存命であれば、
  もうすぐ14歳のはずである。
  生後11か月のとき、
  アパートの床にたたきつけられ、
  首を絞められた。
  母親の弥生さん(当時23歳)も絞殺されている。

  山口県光市の母子殺害事件で最高裁は、
  配水管の検査員を装って襲った当時18歳の被告(30)の上告を棄却した。
  死刑が確定する。

  残虐な犯行を天秤(てんびん)の一方に載せたとき、
  もう片方に何を載せたら釣り合うだろう。
  被告が犯行時に少年だった事情を載せたところで、
  天秤はピクリとも動くまい。
  それ以上に重い刑はないのだから死刑は「極刑」に違いないが、
  犯した罪に比べて重すぎる「厳刑」だとは思わない。

  〈故人老いず生者老いゆく恨(うらみ)かな〉(菊池寛)。
  18歳から30歳へ、
  被告にはそれなりの歳月を重ねる人生があった。
  遺影の母と娘は、
  いまも新妻とみどりごである。
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