2月5日付 読売新聞編集手帳
山好きで、
本紙にもう14年も山行記を連載している
シンガー・ソングライター、みなみらんぼうさんが、
中高年登山について書いたコラムに、
こんな件(くだり)がある。
<中年のうちは“山は逃げない”。
また次に登ろう、
というのが当てはまるが、
高齢者には“山は逃げなくても年が逃げて行く”ので、
中年と高齢者では山に対する切実さが全然違う>。
だからだろうか、
中高年登山がブームと言われる近年、
警察統計で山岳遭難者数が最も多いのは60代だ。
次いで70代、50代。
“年が逃げる”と思えば無理をして、
進む、
引き返すの判断を誤ることがあるのかもしれない。
20~30代の登山人口がここ数年で激増したという統計もある。
人気の富士、
高尾山などに魅了された若い「山ガール」が、
夫を恋人を山へ導く。
90年代半ばの「百名山ブーム」のような現象が、
違う年代層、
目的で再燃する、
と言う人もいる。
らんぼうさん、
こう結ぶ。
<あるピークを越したらゆっくりと安全に下山に向かわねばならない。
これがルールである。
なんと人生のやり方に似ていることだろう>。
山との付き合い方は人の生き方にも似て。