8月11日 NHK海外ネットワーク
8月12日は日中平和友好条約の締結から35年。
直後には中国の当時の最高指導者であった小平氏が初来日。
両国は友好ムードに包まれた。
しかし去年 沖縄県の尖閣諸島の国有化をきっかけに日中関係は急速に悪化。
政府間では話し合いの場につくことすらままならない状況が続いている。
こうしたなか秘密裏に行われたのが北京日中の防衛関係者の会合だった。
(自衛隊元幹部)
「中国の活動を見ていると多くの国は非常に不信感を持っている。」
(中国軍女性幹部)
「日本の戦闘機は近づきすぎだ。」
日中の防衛関係者の間で激しい言葉が飛び交う。
日本と中国の政府間の協議が途絶えていた今年4月に北京で非公式に開かれた会合でのやり取りである。
この会合を開いたのは日本のNPO。
日中関係をテーマにしたフォーラムを開いたり世論調査を行なったりしてきた。
今回はこれまでの活動で培ってきた日中の人脈をたどり会合の実現にこぎつけた。
(言論NPO 工藤泰志代表)
「軍事衝突にまでなる平和を阻害する状況は何としても避けたい。
民間が場を作る。
そこでは本音の議論をしようと。」
参加したのは日中合わせて13人。
日本側参加者6人のうち3人が自衛隊の元幹部などの防衛関係者。
中国側は7人のうち4人が人民解放軍の現役幹部。
防衛関係の出席者が多い会合となった。
尖閣諸島をめぐっては何時偶発的な衝突が起きてもおかしくないほど危険な状態だ。
そんな危機感を抱きながら日中双方の出席者は会合に臨んだ。
(自衛隊元幹部)
「相互不信が原因で偶発的な事件が発生して事態をエスカレートさせていくのを
なんとしても防がなければならない。」
(中国軍女性幹部)
「双方が島の海域を自分のものだと考えるので対立が生じやすい。
お互いが自制しなければ極めて危険な状況だ。」
どうすれば衝突を避けることができるのか。
軍事の専門家同士が意見を交わす。
日本側が一番驚いたのは領空侵犯に対する警告射撃に対する中国の考え方だった。
日本では外国の飛行機が領空を侵犯した場合
まず無線などで自衛隊機の誘導に従うよう警告する。
これに従わなかった場合明るい光を放つえい光弾を発射し警告する。
警告のためにえい光弾を発射することは軍事の世界ではいわば常識だというのが日本側の認識だった。
ところがこれについて中国側は
(中国軍幹部)
「私自身はえい光弾の発射は警告が目的だと理解している。
しかし中国の国民は日本がえい光弾を撃てば攻撃の前ぶれだと受け止めてしまう。
攻撃行為だという人もいる。」
日本が警告目的でえい光弾を発射したとしても
中国では一般的に攻撃行為として受け止められてしまうだろうと言うのである。
こうした認識のずれが衝突の原因になりかねない。
危険を回避する対策として日本側が強調したのが防衛当局同士を結ぶホットラインの早期設置だった。
日本は韓国やインドなど世界の多くの国との間で設けているが
中国との間にはまだホットラインはない。
設置について5年前に協議を始めたものの去年から話し合いが中断しているのである。
(元自衛艦隊司令官 香田洋二さん)
「日本から見てホットラインがないのは中国と北朝鮮だけ。
緊張状態が存在すればするほど意見交換の手段があってしかるべき。」
ホットラインの設置については中国側からも前向きな発言があった。
(中国軍幹部)
「中国の軍事関係者は皆ホットラインが重要で
これがないと何らかの問題が起きるのではと懸念している。」
ちょっとしたボタンのかけちがいが深刻な事態を招きかねない。
それだけに日中が直接話をする場を設けることに意義があったと会合の主催者は感じている。
(言論NPO 工藤泰志代表)
「この舞台の中で意外に本音の議論ができた。
政府外交が非常に重要な局面だがやはり民間の僕たちの役割も大事。
1回で終わりではなくスタートと思っている。」
事務レベルでは日中両政府間の接触が行われるようになったが
閣僚レベルや首脳同士の会談はまだ実現の見通しは立っていない。
中国側からすると
反日世論が厳しいので日本から譲歩を引き出せなければ接触すること自体がリスクになるとみられる。
(中国社会科学院日本研究所 李薇所長)
「日本が『話し合いの余地はない』と言うから中国からは話を切り出せない。
日本がほんの少しでいいから態度を変える必要がある。」
8月11日 NHK海外ネットワーク
日中の世論調査によれば相手のっ国の印象が良くないと答えた人は90%を超えた。
一方で日中関係は重要だという答えも日中ともに7割を超えていて冷静な見方も多くある。
現に今年の春ごろからは日本関係のイベントも再開されるようになってきている。
6月に上海で開かれた日本のアニメソングのコンサート。
去年秋に開催が予定されていたが尖閣諸島の問題で中止になっていた。
(イベント参加者)
「ずっと待っていた。」
「日本人歌手のライブをもっと開いて欲しい。」
9日に上海で開かれた日本の人気キャラクターのイベントは大勢の人でにぎわった。
(イベント参加者)
「日中は長い付き合いがあるから政治問題は民間交流に影響与えない。」
少しずつ再開され始めた日中の市民レベルでの交流。
中国の専門家も慮国の距離を縮めるためには交流を活性化させることが大切だと指摘する。
(上海国際問題研究院 呉寄南副主任)
「日中関係が緊張状態であればあるほど民間交流を進めるべきだ。
特に文化的な交流は両国民の心理的距離を近づける。」
中国は安倍政権の主要な閣僚が靖国神社を参拝するかどうかを注視している。
仮に参拝すると中国側は激しく反発して関係改善をさらに遅らせるのは確実である。
参拝がなかったとしても中国の国営メディアは連日
日本が右傾化して軍備を増強していると警戒感を煽り立てている。
先日の海上自衛隊の護衛艦「いずも」の進水式も
中国メディアは日中戦争で上海に派遣された旧日本海軍の軍艦も「いずも」だったとして
日本の軍国主義と結びつけるうがった見方が伝えられた。
このような世論形成が行われる中では短期に関係改善に向かうとは考えられない。
日中とも政府と民間あらゆるレベルの対話を粘り強く行って
たいがいに相手が本当は何を考えているかを把握する
そして不信感を少しずつ取り除く
そういう努力を続けるしかなさそうである。
8月12日は日中平和友好条約の締結から35年。
直後には中国の当時の最高指導者であった小平氏が初来日。
両国は友好ムードに包まれた。
しかし去年 沖縄県の尖閣諸島の国有化をきっかけに日中関係は急速に悪化。
政府間では話し合いの場につくことすらままならない状況が続いている。
こうしたなか秘密裏に行われたのが北京日中の防衛関係者の会合だった。
(自衛隊元幹部)
「中国の活動を見ていると多くの国は非常に不信感を持っている。」
(中国軍女性幹部)
「日本の戦闘機は近づきすぎだ。」
日中の防衛関係者の間で激しい言葉が飛び交う。
日本と中国の政府間の協議が途絶えていた今年4月に北京で非公式に開かれた会合でのやり取りである。
この会合を開いたのは日本のNPO。
日中関係をテーマにしたフォーラムを開いたり世論調査を行なったりしてきた。
今回はこれまでの活動で培ってきた日中の人脈をたどり会合の実現にこぎつけた。
(言論NPO 工藤泰志代表)
「軍事衝突にまでなる平和を阻害する状況は何としても避けたい。
民間が場を作る。
そこでは本音の議論をしようと。」
参加したのは日中合わせて13人。
日本側参加者6人のうち3人が自衛隊の元幹部などの防衛関係者。
中国側は7人のうち4人が人民解放軍の現役幹部。
防衛関係の出席者が多い会合となった。
尖閣諸島をめぐっては何時偶発的な衝突が起きてもおかしくないほど危険な状態だ。
そんな危機感を抱きながら日中双方の出席者は会合に臨んだ。
(自衛隊元幹部)
「相互不信が原因で偶発的な事件が発生して事態をエスカレートさせていくのを
なんとしても防がなければならない。」
(中国軍女性幹部)
「双方が島の海域を自分のものだと考えるので対立が生じやすい。
お互いが自制しなければ極めて危険な状況だ。」
どうすれば衝突を避けることができるのか。
軍事の専門家同士が意見を交わす。
日本側が一番驚いたのは領空侵犯に対する警告射撃に対する中国の考え方だった。
日本では外国の飛行機が領空を侵犯した場合
まず無線などで自衛隊機の誘導に従うよう警告する。
これに従わなかった場合明るい光を放つえい光弾を発射し警告する。
警告のためにえい光弾を発射することは軍事の世界ではいわば常識だというのが日本側の認識だった。
ところがこれについて中国側は
(中国軍幹部)
「私自身はえい光弾の発射は警告が目的だと理解している。
しかし中国の国民は日本がえい光弾を撃てば攻撃の前ぶれだと受け止めてしまう。
攻撃行為だという人もいる。」
日本が警告目的でえい光弾を発射したとしても
中国では一般的に攻撃行為として受け止められてしまうだろうと言うのである。
こうした認識のずれが衝突の原因になりかねない。
危険を回避する対策として日本側が強調したのが防衛当局同士を結ぶホットラインの早期設置だった。
日本は韓国やインドなど世界の多くの国との間で設けているが
中国との間にはまだホットラインはない。
設置について5年前に協議を始めたものの去年から話し合いが中断しているのである。
(元自衛艦隊司令官 香田洋二さん)
「日本から見てホットラインがないのは中国と北朝鮮だけ。
緊張状態が存在すればするほど意見交換の手段があってしかるべき。」
ホットラインの設置については中国側からも前向きな発言があった。
(中国軍幹部)
「中国の軍事関係者は皆ホットラインが重要で
これがないと何らかの問題が起きるのではと懸念している。」
ちょっとしたボタンのかけちがいが深刻な事態を招きかねない。
それだけに日中が直接話をする場を設けることに意義があったと会合の主催者は感じている。
(言論NPO 工藤泰志代表)
「この舞台の中で意外に本音の議論ができた。
政府外交が非常に重要な局面だがやはり民間の僕たちの役割も大事。
1回で終わりではなくスタートと思っている。」
事務レベルでは日中両政府間の接触が行われるようになったが
閣僚レベルや首脳同士の会談はまだ実現の見通しは立っていない。
中国側からすると
反日世論が厳しいので日本から譲歩を引き出せなければ接触すること自体がリスクになるとみられる。
(中国社会科学院日本研究所 李薇所長)
「日本が『話し合いの余地はない』と言うから中国からは話を切り出せない。
日本がほんの少しでいいから態度を変える必要がある。」
8月11日 NHK海外ネットワーク
日中の世論調査によれば相手のっ国の印象が良くないと答えた人は90%を超えた。
一方で日中関係は重要だという答えも日中ともに7割を超えていて冷静な見方も多くある。
現に今年の春ごろからは日本関係のイベントも再開されるようになってきている。
6月に上海で開かれた日本のアニメソングのコンサート。
去年秋に開催が予定されていたが尖閣諸島の問題で中止になっていた。
(イベント参加者)
「ずっと待っていた。」
「日本人歌手のライブをもっと開いて欲しい。」
9日に上海で開かれた日本の人気キャラクターのイベントは大勢の人でにぎわった。
(イベント参加者)
「日中は長い付き合いがあるから政治問題は民間交流に影響与えない。」
少しずつ再開され始めた日中の市民レベルでの交流。
中国の専門家も慮国の距離を縮めるためには交流を活性化させることが大切だと指摘する。
(上海国際問題研究院 呉寄南副主任)
「日中関係が緊張状態であればあるほど民間交流を進めるべきだ。
特に文化的な交流は両国民の心理的距離を近づける。」
中国は安倍政権の主要な閣僚が靖国神社を参拝するかどうかを注視している。
仮に参拝すると中国側は激しく反発して関係改善をさらに遅らせるのは確実である。
参拝がなかったとしても中国の国営メディアは連日
日本が右傾化して軍備を増強していると警戒感を煽り立てている。
先日の海上自衛隊の護衛艦「いずも」の進水式も
中国メディアは日中戦争で上海に派遣された旧日本海軍の軍艦も「いずも」だったとして
日本の軍国主義と結びつけるうがった見方が伝えられた。
このような世論形成が行われる中では短期に関係改善に向かうとは考えられない。
日中とも政府と民間あらゆるレベルの対話を粘り強く行って
たいがいに相手が本当は何を考えているかを把握する
そして不信感を少しずつ取り除く
そういう努力を続けるしかなさそうである。