7月6日 BIZ+SUNDAY
子どもたちに大人気の“妖怪ウォッチ”。
関連商品は売り切れが続出。
あるおもちゃメーカーは売り上げが今年度70億円を超える見込みである。
いまや社会現象となっている。
6月末に開かれたゲームとおもちゃの展示会“次世代ワールドホビーフェア”。
2日間で12万人が訪れた。
中でもひときわ注目を集めていたのが“妖怪ウォッチ”。
関連グッズの売り場を見ると飛ぶように売れている。
人気の妖怪メダルはわずか数時間で完売。
Q.なぜ妖怪ウォッチが好き?
「えっとなんか・・・
メダル集めるのおもしろい。」
「かわいい妖怪とか・・・」
「興味を持っちゃう。」
「興味を持っちゃうから好きなの。」
「ともだちがやってたからやりたかった。」
「これ本当に溶解なのかな?」
仕掛け人はレベルファイブ社長 日野明博さん (45)。
これまでもレイトン教授シリーズやイナズマイレブンシリーズなどたくさんの人気ゲームを手掛けてきたヒットメーカーである。
(レベルファイブ 日野晃博社長)
「子どもたちが喜んでいるのを見ることが好きなのでそのためにやっている。」
“妖怪ウォッチ”は小学生の主人公ケータが妖怪を見ることが出来る不思議な時計を手に入れ様々な妖怪と出会う物語。
もともとはゲームが原作のこの作品。
マンガ、おもちゃ、アニメへとクロスメディア展開し空前のブームを巻き起こしている。
そのほとんどにクリエイターとしてかかわっている日野さん。
さぞや入念な市場調査や緻密な計算があってのことと思いきや・・・
(レベルファイブ 日野晃博社長)
「全く意識していない。
市場調査うんぬんよりも今の子供たちに受けるものを純粋に
ある意味直感 感覚的なものでクリエーティブとして判断している。
今の自分だったらこっちの方が格好いいと思うけど
子どもの頃の自分はどっちが好きだったかで判断をしていて
そういうところは僕がクリエーティブするうえで
大人の自分に聞かずに子どもの自分に聞く。」
“子どもの自分”に聞く。
幼いころの自分の感性が発想の源だと語る日野さん。
“妖怪ウォッチ”の世界観には徹底した子ども目線が貫かれている。
(レベルファイブ 日野晃博社長)
「“共感”をテーマにして世界観を作る。
キャラクター設定をするうえですごくそこに気を遣った。
主人公は常にテストで0点をとるとかそういう際立ちすぎた設定ではなく
勉強も普通 運動も普通 何をやっても普通
平均値から抜け出せない子。
そういう子こそ現代の子どもたちが 『こういう子いるよね』と感情移入する対象になれるのではないか。」
週に1回開かれるアニメのシナリオ会議。
ユニークなアイデアはどのように生まれているのか。
「普通のアニメっぽい オチの作り方なんで
妖怪ウォッチらしいちょっとひねった感じがないかなとは思っている。」
「このおばあちゃん実は無類のSF好きにしちゃうとか。
最後 鬼が島はモビルスーツで戦わないといけない。
ベースオニガシマみたいな。
パワードスーツをカシャカシャやって。」
子ども目線の自由な発想。
雑談めいたやりとりからストーリーのヒントが生まれると言う。
(レベルファイブ 日野晃博社長)
「今回 妖怪ウォッチでありがたいなと思っているのは
今までアニメ作品 何本も作ってきて仕事ですよね。
どうしたらシナリオよく名rんだろう
どうしたら面白くなるんだろう
やっぱり妖怪ウォッチだけは特別で“居酒屋”みたいな
居酒屋にきて楽しい話をして帰ったらヒットしてたみたいな。
独特の無鉄砲感というか
いろんな作品をオマージュ(尊敬)している部分もあって
手段を選んでいないところがあってそういうところがいまの時代の子どもたち大人たちを含めて心をつかめたと思う。」
7月6日 NHK海外ネットワーク
災害で被害を受けた人たちを支援するため現地で公文書の修復に取り組んでいる日本人の専門家がいる。
修復しようとしている公文書は
たとえば土地の所有権に関する書類や年金の記録など
被災者の生活を支えていくうえでかかせないものばかりである。
東日本大震災で津波の被害を受けた書類の束。
泥がこびりつき読めなくなっている。
しかし修復を続けると文字が読めるようになり記録がよみがえる。
手がけたのは坂本勇さん(66)。
災害で被害を受けた文書の修復を行う世界でも数少ない専門家である。
2004年のインド洋大津波では7000点の公文書を修復。
東日本大震災でも4000点の登記簿をよみがえらせた。
その坂本さんはいま台風で大きな被害を受けたフィリピンで活動している。
台風が直撃したフィリピンのレイテ島。
多くの建物が高潮の被害を受けた。
被災から間もなく8か月になるが復興は道半ばである。
復興を妨げる新たな問題として浮上したのが行政機関の公文書の被害。
公文書が水没したことで家を建て直せずにいる被災者が大勢いる。
リシェール・バチャオさん(24)は自宅を流され家族とともにテント生活を余儀なくされている。
日中は気温が35度を超えるレイテ島。
父親が体調を崩しテント暮らしはこれ以上続けられないと感じている。
自宅を建て直したいと考えたバチャオさんは地元の役所に相談の訪れた。
(土地登記担当の職員)
「事務所にあった登記簿も水につかり残念ですがお力になれません。」
土地の権利を証明する登記簿が水没して記録を確認できないため
家を建て直すことは認められないと言うのである。
(バチャオさん)
「私はテント暮らしでもかまいませんが父にはこれ以上無理だと思う。」
レイテ島では公文書が被害を受けたことで思わぬ事態も起きている。
ごみとして捨てられているのは裁判の記録。
(裁判官)
「これは殺人事件の裁判資料。
目撃者の証言です。」
3万点以上の裁判記録が水没し裁判を中断せざるを得ないケースも出ている。
このままでは被告を釈放しなければならない恐れもある。
(裁判官)
「資料をもとに戻せなければ被告の罪は問えなくなる。」
こうした事態を解決してほしいとフィリピン政府から要請を受けた坂本さんは今年4月 ひとりレイテ島に入った。
数百万点の公文書が被害を受けたとされるなか住宅の再建に欠かせない登記簿の修復から着手した。
坂本さんは東日本大震災でも登記簿の修復にあたった。
そのときはまず氷点下40度の冷凍庫を使って濡れた登記簿を凍らせた。
続いて真空の状態に置き
凍ったまま水分を飛ばすという方法をとった。
紙の成分を傷めずに登記簿を乾燥させることが出来た。
しかし今回は十分な資金の支援がないため冷凍庫などの装置を持ち込めなかった。
濡れたままの紙を手作業で1枚1枚剥がさなければならない。
さらに半年近く放置された文書はカビなどが繁殖し痛みが激しくなっていた。
80%を超える高い湿度と坂本さんを苦しめる。
なんとかできないかと坂本さんが思いついたのが乾燥材を使う方法。
お菓子の袋などに入っている市販のものである。
「乾いた状態で保管できるよう湿度をとばすように。」
収納ケースに文書と乾燥剤を一緒に入れて様子を見ることにした。
紙の具合を確かめてみると表面が乾き始めていた。
「この方法にはひとつの可能性。
達成できる方向性にはある。」
文字が読めるまでに修復することが出来た。
(坂本勇さん)
「1枚1枚助けようとしてチャレンジして弱い人たちの権利を擁護できるなら
なんとかして応えてあげたいと思う。」
(登記簿を管理する担当者)
「感謝している。
とても見やすくなった。」
ただ2日がかりで修復できたのは数十枚だけ。
1人での作業に限界を感じていた。
そこで坂本さんは現地で修復に携わる人を育てようと指導を始めた。
集まったのは自らも被災した若者たち。
10人ほどがとりあえず1か月間修復の訓練を受けることになった。
国連が給与を支給する。
事態を重く見た国連が資金を支援してくれたのである。
坂本さんは今後1年ほどの滞在の間にできるだけ多くの人材を育て
地元の人たちだけでも公文書が修復できる道筋をつけたいと考えている。
(坂本勇さん)
「10人20人となれば何十倍のスピードで助けることが出来る。
そういう努力を積み上げていくのが私たちの仕事。」
坂本さんはあくまでボランティアをして活動をしているが
実は被災直後からフィリピン政府に公文書修復の重要性を訴えてきた。
その大切さがようやく認識されて
今では地元の警察署や大学などからも文書の修復にあたってほしいという依頼が相次いでいる。