7月12日 編集手帳
ずいぶん前のことだが、
ある月刊誌で見かけた帝国ホテルの広告がある。
〈紙クズはもう一泊します〉
チェックアウトをした宿泊客が部屋のごみ箱にうっかり大事なメモを捨ててしまったことにあとで気づいた場合に備えて、
客が立ち去ってから一昼夜、
ごみを別室で預かるのだという。
客の身になっての隠れたもてなしに感心した覚えがある。
同じ一昼夜24時間の対応でも、
こちらは “もてなし”ならぬ“仕打ち”である。
在韓日本大使館が自衛隊創設記念の行事を開くことで予約していたソウルのロッテホテルが、
開催の前日になって一方的に取り消しを通知してきた。
「国民感情に触れる」との理由だが、
前日はひどい。
各方面に招待状を送っている客の身になり、
予定通り会場を用意する。
国内の 批判は甘んじて受ける。
それが最低限の商道徳だろう。
ものの本によれば、
英語の「ホスピタリティー」(歓待)と「ホスティリティー」(敵意)は一つのラテ ン語から派生した同根の言葉という。
「敵意」のほうにくみするホテルもめずらしい。
泊まったことはないが、
さぞかし日本人には快適なことだろう。